スペインvsアルゼンチン感想。あえて展開を遅くしたスペイン。自陣のパス回しを封じられたアルゼンチンは支配されっぱなしでも90分無失点。やっぱり引きこもりのプロだった。メッシ神を下げる選択肢?【サッカーW杯2026 決勝戦】

スペインvsアルゼンチン感想。あえて展開を遅くしたスペイン。自陣のパス回しを封じられたアルゼンチンは支配されっぱなしでも90分無失点。やっぱり引きこもりのプロだった。メッシ神を下げる選択肢?【サッカーW杯2026 決勝戦】

サッカーW杯2026、北中米3カ国大会。
2026年7月19日(日本時間20日)に米・ニューヨーク州でスペインとアルゼンチンによる決勝戦が行われ、1-0でスペインが勝利。2010年以来通算2度目の優勝を果たしている。


歴代最強と言われた日本の強さとともに強豪国との差を見せつけられた今大会だったが、日本の敗退後も何だかんだ最後まで観てしまった。
決勝戦は結果を知った上での視聴となったが、十分楽しめたことをお伝えする。
 
 
ちなみにハーフタイムショー27分はクソ・オブ・クソだった。


とは言え、こうなることはある程度予想できたのも確か。
 
もともと30分で予定していたものを約半分に削るなど可能なのか?
それもぶっつけ本番で。
 
批判を受けて後出しで「17分にします」と宣言したはいいが、結局「超過しちゃいました(てへぺろ」となるのではないか? と。
 
 
アメリカナイズが過ぎると言われたW杯だが、僕の評価は下記の通り。
・ハイドレーションブレイク:時代、気候に即した制度なのでgood
・チャンピオンリング贈呈:独自色が出てていい。否定する理由がない
・決勝戦ハーフタイム17分:ギリギリ許容範囲
・出場国64カ国拡大案:くたばれ
 
とりあえず運営には最低限自分で言ったことは守ってもらいたい。
そうでないとハイドレーションブレイクやチャンピオンリング等、「そこは別にいいのでは?」という部分までケチがついてしまう。
 
僕は諸々の(エンタメ寄りの)変更を割と好意的に見ていたが、ハーフタイムショーの大幅超過によって「やっぱりダメじゃねえか」となっている。
 

スペインの対策がハマった試合。アルゼンチンはチャンスをほぼ作れず

試合の感想だが、スペインの対策がアルゼンチンの長所を上回った印象である。
 
延長1-0と見た目のスコアは接戦だが内容的にはワンサイドゲーム。
アルゼンチンは120分間でシュート2本(枠内シュート0)と最後までチャンスらしいチャンスを作れなかった。
 
しかも後半に退場者を出して以降はどん詰まり状態。少ない人数での守備は視覚的にもスカスカで、これはどこかで決壊するだろうと思わせるものだった。
 
アルゼンチンのGKエミリアーノ・マルティネスの神セーブ連発によって土俵際で耐えていた感じである。
 
フランスvsイングランドとかいう前代未聞のクソ試合。やる気ねえならやめちまえ。エムバペ「3位決定戦はいらない」←でも得点王を辞退する気はないんだろ? こんな舐め腐った試合は記憶にない
 

意図的に展開を遅くしたスペイン。アルゼンチンがボールを持てばタイトに当たって休ませない

スペインの作戦はあえて展開を遅くすること。
 
細かいパス回し、瞬時に三角形を形成してボールを運ぶポゼッションサッカーがスペインの持ち味だが、この試合では最初のアクションを意図的に遅らせていた。
 
最後列でのパス回しをゆっくり目に。
ポジショニングを広めに取り、中央に顔を出した選手が一度バックパスで戻すなどすぐには仕掛けない。
 
 
アルゼンチンは三角形の頂点を潰す、受け手をラフに削りにいくディフェンスが得意だが、スペインが攻めてこないせいでその機会自体がない。
 
またボールを持った際はスペインの前線がタイトにくるため、“立ち止まってのパス回し”や“ボールを保持したまま休む”いつものパターンが機能しない。
そのつど進行方向に回り込まれてワタワタしてしまう。
 
さらに前線のメッシへのパスはスペインの大黒柱ロドリがことごとくカット。
ゲゲンプレスによるパスコースの限定、相手よりも走る&ポジショニングの妙によって早々にメッシが空気化された。
 

引いて守らせればさすがのアルゼンチン。でも退場者を出した時点でほぼ詰みだった…

ただ、そこはやはりアルゼンチン。
攻められっぱなしの状況でも最後の一手だけは踏ませない。
 
自陣ゴール前では適度に広がってスペースを埋める。
スペインのエース、ラミネ・ヤマルが右サイドを駆け上がっても中には入らせず、しつこく食らいつくことで無理な体勢からのマイナスクロスを強いる。
 
いったん裏に出られても簡単には抜かせない、ラストパスやシュートのモーションに入る直前にどこからともなく足が伸びてくる。
素人目からも「おいおい」というタックルもあったが、それも含めてアルゼンチン。
 
ゴール前に密集してサイドがガラ空き、相手のパス回しを“見て”しまったイングランドとは大違いである。
 
アルゼンチンvsイングランド感想。計算して煽るアルゼンチン。血の気の多いイケイケなイングランドは引いて守る適性がない? トゥヘル監督のキャリアを見ると…
 
だが、後半のアディショナルタイムに24番エンソ・フェルナンデスが退場になったのは痛かった。本当に痛かった。
 
後半からチーム全体でプレスを強めたせいで中央にスペースができる→10番ダニ・オルモに自由に動かれる流れに。
それを受けてフェルナンデスも相当ラフに当たっていたので、イエローカード自体は仕方ない。
 
それでもあの時間帯での退場だけは絶対にダメ。試合を通して守り一辺倒だったアルゼンチンは退場者を出した時点でほぼ詰みだった。
 

延長でメッシを下げる選択肢はなかったの? 辛うじて勝機があるのは守備に全振りだった気がする

マジな話、アルゼンチンにメッシを下げる選択肢はなかったのだろうか。
 
今のメッシは1人で局面を変える選手ではない。
前線に味方がいてこその魔法、領域展開である。
 
ドン引きで守っている状態から深い位置でメッシにボールを持たれてもはっきり言って怖さはない。
キャリアにおけるPK成功率も80%弱と絶対的なシューターとも言えない。
 
それなら延長に入った時点で守備的な選手と入れ替えて守りに全振り→PKのワンチャンスにかける方向に舵を切ってもよかったのではないか。
 
 
メッシが中盤にいるだけでスペインはケアに追われる。
本人もパスコースの限定等、やれることはやっている。
アルゼンチンにとってメッシは唯一の得点源であり、下げてしまうとカウンターやコーナーキック、フリーキックといった得点機を逸する。
国の英雄+恐らく最後のW杯となるメッシを下げて負ければ国賊レベルの批判にさらされる。
 
などなど。
実利や政治的要因と天秤にかけた上での判断だったと想像するが、少なくとも106分に均衡を破られるまではアルゼンチンに得点の匂いはまったくしなかった。
 
 
申し上げた通りアルゼンチンは引いて守るのが抜群にうまい。
どの道1人減った時点で詰みに近いのなら、わずかな勝機を見出すために守備に全振りするのが最善だったのでは? と思ったのだが……。
 
もちろん結果論なのは重々承知している。
 
フランスvsスペイン最高のスタイルバトル。個でも勝利したスペイン。フランスは緩急に振り回され、引いて守ってカウンターが不発
 

スタッツを見ながら振り返り。スペインが意図的に展開を遅くしていたことを示すスタッツ

ではここからはスタッツを眺めながら答え合わせ? をしていく。
 
まずはスペインがアルゼンチンのDF機会を減らすために意図的に展開を遅くしていたことを示すスタッツ。
 
・Passes per Sequence (1つのパスワークあたりの平均本数)
アルゼンチン戦のスペイン:6.8本
今大会のスペイン(他試合平均):4.2本
今大会の全チーム平均:3.5本
 
・Sequence Duration (1回のボール保持の平均継続時間)
アルゼンチン戦のスペイン:24.0秒以上
今大会のスペイン(他試合平均):12.0 〜 15.0秒
今大会の全チーム平均:10.5秒
 
・Vertical Progress (1秒あたりにボールが前進する距離)
アルゼンチン戦のスペイン:0.9メートル/秒
今大会のスペイン(他試合平均):1.6メートル/秒
今大会の全チーム平均:1.3メートル/秒
 
アルゼンチン戦のスペインは1回のパスワークがこれまでより2本以上多く、ボール保持時間が2倍近く増えている。その反面1秒あたりのボールの前進距離は短くなった。
 
準決勝までの試合や大会平均値と比べても意図的にテンポを落としていたことは明白である。
 

アルゼンチンがタイトなプレスにワタワタしていたことを示すスタッツ

続いてアルゼンチンがスペインのタイトなプレスにワタワタしていたことを示すスタッツ。
 
・チーム全体のパス成功率
スペイン戦:77%
イングランド戦:90%
スペイン戦以外:88.5%
 
・自陣でのパス成功率
スペイン戦:74%
イングランド戦:95%
スペイン戦以外:94%
 
・自陣での被インターセプト数
スペイン戦:41回(120分)
イングランド戦:9回
スペイン戦以外:7回
 
前回申し上げた通りアルゼンチンは自陣でのパス回しに絶対の自信を持っている。
どれだけ相手が近づいても焦ることなく味方にボールを渡し、なおかつ運動量を極限まで抑えることが可能。
全体のパス成功率88.5%、自陣でのパス成功率94%はともに最上位クラスに位置する。
 
ところが決勝戦では両方の数値が大暴落。特に自陣でのパス成功率20%低下は異常、インターセプトをされた回数も信じられないほど膨れ上がっている。
 
日本vsブラジル感想。ブラジルは強かった。個の差を随所で感じた。日本は堂安律を下げてから得点の匂いが消えた。森保監督は勝負師としては少し足りなかった?
 

アルゼンチンが引いて守るのがうまいことを示すスタッツ

その反面、アルゼンチンが引いて守るのがうまいことを示すスタッツが下記。
 
・守備陣形の破綻回数 (Disruptions)
※マークのズレやスペースを空けた回数
イングランド:1試合換算で18.4回
アルゼンチン:1試合換算で4.2回
 
・相手パス100本あたりのタックル成否
※引いた状態でもボールにアタックできたか
イングランド:2.1回(相手のパス回しを見てしまっている)
アルゼンチン:8.6回(効果的にアタックしている)
 
・被ポケット侵入率 (Pocket Penalty)
※危険エリア(サイドのスペース)に入られた率
イングランド:42.0%(密集しすぎでサイドがスカスカ)
アルゼンチン:11.5%(適度に分散)
 
もともと引いて守るのに向いていない(慣れていない)イングランドは豪快に失敗したが、アルゼンチンは真逆。
マークをズラされることも相手を見すぎて足が止まることもない。ゴール前に適度に分散してサイドを自由に走らせることなく失点を防いでいる。
 
・スペインのクロスはマイナスばかり
・ラストパス、シュート体勢に入る直前にどこからともなく足が伸びてくる
と申し上げた通りの数値である。
 
堂安律の「エゴを出したいヤツは大会が終わってからにして」が漫画「ブルーロック」への強烈なアンサーらしい。連載開始当初エゴの塊だった堂安が8年後に10番を背負ってチームプレーに邁進するエモさ
 

ほとんどの時間をスペインが支配していたことを示すスタッツ

もっとも基本的なスタッツ、ボール、陣地支配率が下記。
 
・ボール支配率(ポゼッション)
スペイン:65%
アルゼンチン:35%
 
・フィールド・ティルト (陣地支配率)
※双方のパスが敵陣でどれだけ回ったかの割合
スペイン:83.3%
アルゼンチン:16.7%
 
これは完全に見たまんま。
スペインはほとんどの時間を敵陣でのパス回しに費やし、アルゼンチンはひたすら守備に追われた。
で、そのつど激しい当たり、しつこい守備によるマイナスクロスなど、何度もピンチを脱している。
 
決勝史上最多の11セーブというエミリアーノ・マルティネスの大当たりっぷりも含めてまさに「プロの引きこもり」である笑
 

冷静だったスペインが延長戦で雑になった。アルゼンチンの陰湿な煽りに堪忍袋の緒が…

両チームがエキサイトする大荒れの決勝戦、スペインは延長に入って若干雑になった印象だが、下記を見るとそれがよくわかる。
 
・90分(延長30分)のファウル数
スペイン:13本(8本 ※90分換算で約24本ペースと激増)
アルゼンチン:19本(6本 ※90分換算で約18本ペースと横ばい)
 
カードの累積を気にしなくていい状況に加え、アルゼンチンのラフさ+90分を走り終えた疲労、その他。
冷静さが持ち味のスペインもついに堪忍袋の緒が切れたと想像する。
 
 
なおアルゼンチンのファール数25本は(GKセーブ数11本とともに)W杯決勝の歴代最多記録とのこと。
試合終了直後に選手同士の小競り合いが起きていたのも納得の荒れっぷりである笑
 
僕の個人的なイメージは、
・イングランド:血の気の多い熱血ヤンキー野武士軍団
・アルゼンチン:計算して煽り倒す狡猾で陰湿な武闘派ヤ○ザ
・スペイン:エレガントなスマート集団だけど、最後の最後で爆発した
 
宿敵アルゼンチンとの直接対決、それもW杯決勝という高揚感(&連戦の疲労)によって糸が切れたが、そこは最強スペイン。数的優位と戦略、組織力で上回ったのだろうと。
 
ノルウェーvsブラジル感想。巨大冷蔵庫軍団がネコ科の猛獣の技巧を粉砕。(いい意味で)イカれた試合だった。PA内タッチ数はブラジル41:ノルウェー11とかいう異常値
 

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メッシは存在が魔法。やっぱりメッシ神を下げるなんてあり得なかった?

上記で「アルゼンチンは延長でメッシを下げるべきだったのでは?」と申し上げたが、試合を振り返るとその選択肢はなかったのかもしれない。
 
メッシが倒されるor削られるとアルゼンチンはチーム全員(ベンチからも飛び出す)で抗議を始める。つられて会場も“そっち側”になる。
 
いわゆる一瞬で空気を変えられる、支配できる選手。
こういう存在は本当に一握りで、画面越しでもメッシの特異さは際立っていた。
 
つまり、今のメッシには1人で局面を変える力はない、前線に味方がいてこそ魔法が発動するというのは半分正解で半分間違い。
なぜならこの人の存在が魔法だから。
 
ウザい言い回しで最後を締めさせていただく笑
 

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