フランスvsスペイン最高のスタイルバトル。個でも勝利したスペイン。フランスは緩急に振り回され、引いて守ってカウンターが不発【サッカーW杯2026 準決勝感想】
開催中のサッカーW杯2026、北中米3カ国大会。2026年7月14日(日本時間15日)にテキサス州でフランスとスペインが対戦、2-0でスペインが勝利し決勝進出を決めている。
またスペインはこの勝利で国際Aマッチ37戦無敗とし、イタリア代表が持つ世界最長記録に並んだとのこと。
【W杯】スペイン完勝で4大会ぶりV王手! 鉄壁“無敵艦隊”37試合連続不敗の世界記録並んだ – スポニチ Sponichi Annex サッカー https://t.co/X8vn1TRqvC
— スポニチ・サッカー取材班 (@sponichisoccer) July 15, 2026
一方、敗れたフランスは20試合ぶりの完封負け。
圧倒的な優勝候補として盤石の強さを見せていたが、2024年、2025年に続き対スペイン戦3連敗となった。
- 1. フランスに唯一勝ち筋がありそうなのがスペイン。ノルウェーvsブラジル戦に続いて楽しみにしてた
- 2. フランスは横の動き、急激なチェンジオブペースに若干脆い? スペインが勝つなら点の取り合いじゃないかな?
- 3. 全体的に引き気味で守るフランス。だが、それが裏目に。スペインに自由に動かれる&カウンターが機能しない
- 4. 余裕を持って伸び伸びやれたスペイン。フランスのイライラした表情が印象的だった
- 5. 何でそんなに無限に湧いてくるの? 答えは「いつもやってるから」としか言いようがない
- 6. 個vs個のバトルでもスペインが上回ったのがすごい。累積カードがリセットされたのも大きかったのかも?
- 7. スタッツを見ながら試合を振り返る。ポゼッションとパス数はイメージ通り
- 8. 1対1のデュエルで圧倒、タックル数も異常値、やっぱり積極的に身体を当てにいってたんだよね
- 9. パス数に大きな差はないが中身は全然違う。エムバペも完全に抑えられた
- 10. 決勝トーナメント4試合を比べてもフランス戦はやっぱり異常。攻めまくっているのに守備も相手よりがんばった
- 11. スタイルバトルの醍醐味のような試合。ほぼすべての局面でスペインの流れ
フランスに唯一勝ち筋がありそうなのがスペイン。ノルウェーvsブラジル戦に続いて楽しみにしてた
フランスvsスペイン。
僕はここまで圧倒的な強さを見せるフランスを「百獣の王」と呼び、このチームに勝てるのはどこか? という視点で各国を眺めてきた。
そして、辛うじて勝ち筋があると思ったのがスペイン。
その意味でもこの試合はめちゃくちゃそそる。7月5日のノルウェーvsブラジル戦に続いて脳汁があふれ出すほど楽しみにしていた。
下記で申し上げた通りスペインはパス回しのチーム。
フランスvsスペイン展望。フランスに唯一勝ち筋がありそうなのがスペイン。フランスはパス回しと緩急がちょっと苦手? 点の取り合いになればチャンスかもしれん
近代サッカーのトレンドである最後尾からサイドのプレイヤーを走らせる&そこにロングパスを出すスタイルとは違い、起点となるのは1列前のプレイヤー。
16番のロドリを中心に少ないタッチでボールを運び、緩急と横の動きで相手を揺さぶる流れを得意とする。
スペインは平均体格181.62cm(32位)、74.45kg(34位)と全体的に小柄で日本とも大差ない。
だがタッチの少なさや流れの中で自然に出すヒールキック等、1対1が発生する前にボールを離すことで体格差の影響を最小限に留めるのが大きな特徴である。
フランスは横の動き、急激なチェンジオブペースに若干脆い? スペインが勝つなら点の取り合いじゃないかな?
対するフランスだが、このチームはブラジル並みのしなやかさ、ノルウェーにも劣らない爆発力を兼ね備えた猛獣集団。
縦への推進力を活かしたカウンター、世界一のストライカーであるキリアン・エムバペを中心とした攻撃力が持ち味である。
ただ、横の動きや急激なチェンジオブペースに若干脆い傾向があり、それがスペインの長所とマッチするのではないか。
実際、直近2戦でも2-1、5-4でスペインが連勝している。
恐らく両チームが普通に力を発揮すればスペインは失点を免れない。
だが、上述の通りスペインもフランスに対抗できるネタを兼ね備えている。
つまり、スペインが勝つなら点の取り合い。
「引いて守って後半のカウンター1発勝負!!」などとは考えず、とにかくハイリスクハイリターンの殴り合いを挑む。
先制点を奪って常にリードする展開に持ち込み、最終的に3-2くらいで勝つのが理想に思える。
全体的に引き気味で守るフランス。だが、それが裏目に。スペインに自由に動かれる&カウンターが機能しない
実際の試合だが、この日のフランスは全体的に引き気味のポジショニング。
2連敗中(前回5失点)の影響もあったのかもしれないが、殴り合いよりも守備を重視していた印象である。
だが、それが裏目に出たというか。
本来であればもう少し前でボールを奪う→得意のカウンターにつなげたいのだが、引いて守る分スペインに高い位置でのパス回しやボールキャリーを許してしまう。
自陣の深い位置でボールを奪っても相手ゴールが遠すぎてカウンターが機能しない。毎回スペインのカバーが間に合ってしまうのである。
失点こそ5点→2点と減らせたものの、一番の武器である槍のカウンターが不発に終わったのは本当に痛かった。
余裕を持って伸び伸びやれたスペイン。フランスのイライラした表情が印象的だった
対するスペインは伸び伸びやれていたと思う。
いつも通り最後尾のパス回しは最小限に、大黒柱の16番ロドリは中央にスペースがあるおかげでいろいろな場所から顔を出せる。
で、DFの間に立ったプレイヤーと三角形を形成、ベルギー戦よりも余裕を持ってパスを回せていた(と思う)。
攻撃面での作戦は恐らく“いつも通り”。
前線がタイトに当たる分真ん中にスペースができるが、そこは仕方ない。
ある程度の失点を覚悟でゴールを狙いにいくハイリスクハイリターンの展開を想定していたのではないか。
右サイドからラミン・ヤマルの切れ込みをチラつかせつつ、ロドリとオルモが中央をかき回す。
前半のPKも後半の追加点も“自分たちの形”を作った上での得点だった。
そして、フランスが引いてくれたおかげで自由度が勝手に爆上がりしたのだろうと。
ブラジルvsノルウェーが楽しみすぎて脳汁が止まらない。最強フランスは1988年から改革に着手した。ブラジルがネコ科の猛獣(豹、チーター)ならフランスは百獣の王だね
フランスはとにかく「何もさせてもらえない」「やることなすことすべてうまくいかない」感じ。
DFウィリアン・サリバの負傷交代も響いたのだと思うが、前半40分あたりの各選手のイライラした表情が印象的だった。
何でそんなに無限に湧いてくるの? 答えは「いつもやってるから」としか言いようがない
スペインのディフェンスは「5秒ルール(ボールをロストしたら5秒以内に奪い返せ)」を土台としたゲゲンプレス。
瞬時に攻守を切り替え、相手がスピードに乗る前に複数人で囲む。
フランスのプレイヤーがわずかでも迷いを見せた途端にワラワラと群がって進行方向、パスコースを塞ぐ。どこからともなく顔を出してパスをカットする。
ところがフランスが同じことをやろうとするとなぜか一瞬「うっ」と硬直してしまう。
で、それを見たボールキャリアがドリブルで真ん中を突っ切っていく。
正直、なぜフランスだけがああなるのかが僕にはわからない。
視線の誘導やちょっとした体重移動、タイミングの外し方などがあるのだと思うが、それこそ「普段からやっているから」「ジュニア時代から染みついているから」としか言いようがない。
個vs個のバトルでもスペインが上回ったのがすごい。累積カードがリセットされたのも大きかったのかも?
そして何よりよかったのが、スペインが1対1の勝負を躊躇なく挑んでいたこと。
全プレイヤーが常に三角形を作れる、少ないタッチでパスが出せるおかげで1対1が発生する前にボールを離せる。それで体格差をチャラにできると申し上げたが、この日のスペインはむしろ積極的に身体を当てにいっていた。
ボールをロストしてもすぐに距離を詰めてタックル、肘が当たろうがお構いなしに反則覚悟で身体をねじ込む。
フランスのカウンターが機能しなかった要因として、スペインのプレイヤーがそもそもの発動を抑えていたのも大きいのではないか。
この試合は個vs組織、怪物プレイヤー揃いのフランスを小粒だが技術の高いスペインがどう抑えるか? の視点で語られてきたが、実際にはそれだけではない。
ボールを奪われてもすぐに取り返す。
スピードに乗られる前に囲む。
反則覚悟でラフに身体を当てる。
個vs個のバトルがいたるところで発生し、そのつどスペインが上回った結果の2-0だと思っている。
日本vsブラジル感想。ブラジルは強かった。個の差を随所で感じた。日本は堂安律を下げてから得点の匂いが消えた。森保監督は勝負師としては少し足りなかった?
もっと言うと、準々決勝を経て累積カードがリセットされたのも大きい気がする。
仮にイエローを食らっても1枚だけなら出場停止にはならない。
審判のファウルの基準が若干甘かったのも含めてスペインが思い切りいける要素が揃っていた。
スタッツを見ながら試合を振り返る。ポゼッションとパス数はイメージ通り
では、ここからは各スタッツを眺めながら試合を振り返っていく。
まずは下記。
・ポゼッション(ボール支配率)
フランス:48%
スペイン:52%
・パス数(成功率)
フランス:469本(80%)
スペイン:503本(83.5%)
・枠内シュート数 / 総シュート数
フランス:4本 / 12本
スペイン:2本 / 10本
パス回しが持ち味のスペインだが、この日に関してはポゼッション、パス数ともにぼちぼち拮抗している。
これはイメージ通りというか、フランスもパスで時間を使う局面が多かった印象。
シュート数も「まあ、そんな感じだよね」という数字になっている。
1対1のデュエルで圧倒、タックル数も異常値、やっぱり積極的に身体を当てにいってたんだよね
だが、下記を見ると試合の特徴が顕著になる。
・1対1のデュエル勝利数(勝率)
フランス:44回(44.1%)
スペイン:52回(55.9%)
・タックル企図数(成功数)
フランス:14回(8回)
スペイン:22回(14回)
・空中戦勝率
フランス:32%
スペイン:68%
・ファウル数
フランス:11回
スペイン:12回
1対1のデュエル勝率55.9%は異常値と言っていいレベル。
またポゼッション52%のチームが22回のタックル企図というのもこれまた異常(平均は12~15回らしい)で、ファウル数を12に抑えた精度の高さも特筆すべき部分である。
空中戦の勝率(フランス:32%、スペイン:68%)も興味深い。
単純な高さ勝負ではかなわないはずのスペインが空中戦を7割近く制した。
これはいわゆるセカンドボールの回収、こぼれ球が落ちる位置や着地時の姿勢等の予測で上回った結果であると。
77分から出場した6番ミケル・メリーノがわずか13分で8回中5回の空中戦を制したとのことである。
これらのスタッツから、改めて「この日のスペインは積極的に身体を当てにいっていた」「1対1のデュエルでフランスを圧倒していた」ことがわかる。
主審のファウル基準の緩さもあったと思うが、やはり累積カードがリセットされた影響もあったと想像する。
堂安律の「エゴを出したいヤツは大会が終わってからにして」が漫画「ブルーロック」への強烈なアンサーらしい。連載開始当初エゴの塊だった堂安が8年後に10番を背負ってチームプレーに邁進するエモさ
パス数に大きな差はないが中身は全然違う。エムバペも完全に抑えられた
極めつけは両チームのパス回しの質の違い、それに伴うゴール期待値。
・サード別のパス本数(Passes by Third)
※ピッチを均等に3分割(自陣・中盤・敵陣)したエリアごとのパス本数のこと
◯フランス
自陣サード:192本
ミドルサード:216本
敵陣サード:61本
◯スペイン
自陣サード:98本
ミドルサード:234本
敵陣サード:171本
・フィールドティルト(Field Tilt:敵陣進入率)
※両チームが「敵陣サード(ピッチの1/3)」で通したパスのシェア率
フランス:26.3%
スペイン:73.7%
・インターセプト数
フランス:9回
スペイン:13回
・決定機の数(ゴール期待値 xG)
フランス:0.67
スペイン:1.52
フランスが自陣でのパス回しが圧倒的に多いのに対し、スペインは敵陣でのパス回しが自陣でのパス回しを大きく上回る。
しかも敵陣でパスが通る確率(フィールドティルト)も段違いで、インターセプト数でも圧倒している。
単純なパス本数(フランス:469本、スペイン:503本)に大きな違いはないが、その中身は真逆。
フランスがいかに引いて守っていたか、そのせいで持ち味であるカウンターが機能しなかったかがよくわかる。
エースのキリアン・エムバペの個人スタッツは下記。
・ドリブル成功数(企図数):1回(6回)
・デュエル勝利数(企図数):2回(11回)
・ボールタッチ数:34回
・シュート数:3本(すべて枠外)
スペインはエムバペを始めとしたフランスの攻撃パターンをほぼ封殺したと言えそうである。
日本vsスウェーデン、1-1で引き分けで2位通過決定。出来はよくなかったよね? 「ブラジル戦大丈夫?」って思っちゃった。チュニジア戦後のセルジオ越後さんの記事が身に沁みるw
決勝トーナメント4試合を比べてもフランス戦はやっぱり異常。攻めまくっているのに守備も相手よりがんばった
最後にスペインの決勝トーナメント4試合の
・サード別のパス本数(自陣サード、ミドルサード、敵陣サード)
・タックル企図数 / 成功数
を比べてみる。
◯オーストリア戦(R32 / ○ 3-0)
139本、264本、167本
11回 / 7回
◯ポルトガル戦(R16 / ○ 1-0)
184本、221本、92本
19回 / 11回
◯ベルギー戦(準々決勝 / ○ 2-1)
121本、312本、137本
16回 / 9回
◯フランス戦(準決勝 / ○ 2-0)
98本、234本、171本
22回 / 14回
こうして見るとフランス戦の突出した異常さが伝わってくる。
オーストラリア戦はどちらかと言えば敵陣でのパス回しが多く、ポルトガル戦は自陣に張り付いて守り抜く展開、ベルギー戦は中盤での攻防が続いた。
自陣や中盤でプレーする時間が延びればそれだけタックルの数も増える傾向にある。
ところがフランス戦は違う。
中盤から敵陣でのパス回しが80%以上を占める中、タックル企図 / 成功数が4試合でもっとも多い。
つまり、攻めまくっているのにめちゃくちゃ守備をしている。
これはフランスがボールを持った瞬間(スペインがロストした瞬間)に選手が湧き出て奪い返していることを意味する。
1対1のデュエルでの勝率もしっかりと示されている(フランス:44.1%、スペイン:55.9%)。
日本vsオランダ感想。強豪相手に“普通にやれてる”時点で日本は強い。4年前とは別チームレベルでの進化。高度にシステム化された近代サッカーを肌で感じたよ
スタイルバトルの醍醐味のような試合。ほぼすべての局面でスペインの流れ
・横の動き、緩急に脆いフランスとスペインの特徴がうまく合致した
・フランスは(過去の対戦を踏まえて)引いて守る戦術が裏目に出た
・スペインはいつも以上に1対1での勝負を仕掛け、そのつど勝利した
・個vs組織の構図に見られがちだが、実はスペインは個でも勝っていた
・累積カードがリセットされて思い切りよくいけた可能性が高い
・スペインの敵陣でのパス数とタックル数の逆転現象は異常値レベル
・フランスはエースのエムバペを始め、攻撃パターンを完全に封じられた
一見ポゼッションとパス数に大きな差はないように思えるが、中身を細かく見ていくと質の違いは明らか。
スタッツ上でも7月5日のノルウェーvsブラジル戦に負けず劣らずぶっ飛んだ試合だったと言えるのではないか。
なお、フランスはスペイン以外に負けるイメージが湧かないが、スペインはイングランドやアルゼンチンにコロっとやられそうな気もする。
本当にスタイルバトルの醍醐味のようなマッチアップだったなぁと。
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