アルゼンチンvsイングランド感想。計算して煽るアルゼンチン。血の気の多いイケイケなイングランドは引いて守る適性がない? トゥヘル監督のキャリアを見ると…【サッカーW杯2026 準決勝】

アルゼンチンvsイングランド感想。計算して煽るアルゼンチン。血の気の多いイケイケなイングランドは引いて守る適性がない? トゥヘル監督のキャリアを見ると…【サッカーW杯2026 準決勝】

開催中のサッカーW杯2026、北中米3カ国大会。2026年7月15日(日本時間16日)に米・ジョージア州でアルゼンチンとイングランドによる準決勝2試合目が行われ、2-1でアルゼンチンが勝利。7月19日(日本時間20日)のスペインとの決勝にコマを進めている。


アルゼンチンvsイングランド。
 
「フランスに勝てるチームはどこか」の一点のみで観てきたW杯だが、それを達成したのがスペイン。
 
フランスvsスペイン最高のスタイルバトル。個でも勝利したスペイン。フランスは緩急に振り回され、引いて守ってカウンターが不発
 
そして今回、スペインと決勝で当たるチームが決まったわけだが。
ここまできたら最後まで見届けようということでこちらも興味深く(見逃し配信で)視聴した次第である。
 
 
一応言っておくと、僕はアルゼンチン、イングランドともにちゃんと試合を観るのは初めて。
先日「フランスに勝てるのは唯一スペインじゃないか?」などとほざいたが、あくまでスタッツやダイジェストで得た薄い情報にすぎないことを告白する笑
 

血の気の多いイングランド。計算して煽りにいくアルゼンチン

試合を通した感想としては、
「イングランドの血の気の多さと、それを計算して煽りにいくアルゼンチン」
というイメージ。
 
アルゼンチンは全体的に小柄なチームだが、パラグアイ同様重心が低く平面でのバトルに強い。1対1での激しいタックル、ファールをいとわず足を絡める、身体をぶつけるラフさを持ち味とする。
 
一方のイングランドはプレミアリーグ所属の選手中心で構成され、高度な戦術とともに「俺が俺が」の熱量を出す傾向が強い。
 
個人の力量で勝負を仕掛けるイングランドをラフな1対1で潰しにくるアルゼンチン。
この時点で何が起こるかは容易に想像がつく笑
案の定、開始数分でケンカが始まって「うん、そりゃそうなるよw」となった次第である。
 
何というか、アルゼンチンはイングランドの短気さ、血の気の多さをわかった上で煽っていた印象。
南米特有のラフなスタイルに加えて「こいつら、煽れば煽るほどドツボにハマるぞ」的な打算を感じた。
 
もちろんイングランドの選手が自分を抑えることはない。
真っ向から受けて立ち、アルゼンチンもつられてヒートアップしていった笑
 
ノルウェーvsブラジル感想。巨大冷蔵庫軍団がネコ科の猛獣の技巧を粉砕。(いい意味で)イカれた試合だった。PA内タッチ数はブラジル41:ノルウェー11とかいう異常値
 

アルゼンチンが走らない。パッと見では何が強いのかがわからないよね笑

そして思ったのが、アルゼンチンがとにかく走らないこと笑
 
メッシが走らない、勝負どころ以外ではずっと歩いているという話は有名だが、それはそれ。チーム全体として走らない(気がする)。
 
GKエミリアーノ・マルティネスが長時間ボールを持つ、最後列のプレイヤーがキープしたまま立ち止まる。
いったんパスを出してもその後が続かない場合はすぐにバックパス→再び待機。
イングランド側も見てしまうために試合がめちゃくちゃスローになる笑
 
 
アルゼンチンはチーム平均走行距離が106.22kmと今大会ワースト5位とのこと。
1対1でラフにいく、躊躇なく削りにいく激しさはあるが、チームとしてタイトに詰めるわけではない。パスの受け手めがけて襲い掛かる嗅覚、三角形の頂点を潰す予測に優れる。
 
その反面スペースを広く使われるケースが多く、この試合でもイングランドに中央をフリーで通過されるシーンが目についた。
歩きまくりのメッシをカバーする意味もあるのだと思うが、「パッと見何が強いのかがわからない」というのが正直なところである笑
 
 
ちなみに同じくポゼッションサッカーを駆使するスペインはアルゼンチンとは真逆で走るチーム(チーム走行距離は平均111~114km前後らしい)。
スプリント距離も出場国の中では上位で、いわゆるボールをロストした瞬間の切り替え、キャリアを複数人で囲む組織力が要因となっている。
 
日本vsスウェーデン、1-1で引き分けで2位通過決定。出来はよくなかったよね? 「ブラジル戦大丈夫?」って思っちゃった。チュニジア戦後のセルジオ越後さんの記事が身に沁みるw
 

ポゼッションに対するタックル企図数、自陣でのパス回しの落ち着きっぷり

それでもポゼッション64%に対してタックル企図数20 / 成功数9の数字を見れば、この日のアルゼンチンがいかに突っかけていたかがわかる。
先日のスペイン同様、準決勝で累積カードがリセットされたのも大きかったと想像する。
 
 
また「相手の激しいプレッシャーを受けた状態でのパス成功率89%」というスタッツも興味深い。
試合を通して思ったのが、アルゼンチンは自陣で圧力をかけられてもまったく焦らないこと。
 
ボールロストが即失点につながりかねない状況で激しくプレスにこられれば多少は乱れが生じる。
 
だがアルゼンチンは相手が目の前に迫った状況でも動じることなくパスを回し続ける。
スタッツで示されている通りこれが立ち止まったままボールをキープできる(省エネの)要因なのだろうと。
 

イライラ全開ながらも力を発揮するイングランド。先制点はお見事だった

対するイングランドだが、こちらもぼちぼちがんばっていたと思う(がんばるに決まってるんだけど)。
 
アルゼンチンのラフさにイライラさせられつつ、前半から何度かゴールを脅かす。個と組織の融合は随所に発揮されていた。
 
54分の先制点は縦へのロングパス→セカンドボールを回収→絶妙なクロスからのボレーという見事な流れ。
右サイドでアルゼンチンに削る暇を与えず、少ないタッチでゴールまで持っていく。
やはりこのチームはスペースのある位置ではめっぽう強い。
 

イングランドが露骨に引いて守る。後半から目覚めたメッシの領域展開の餌食に

ところが先制点以降、イングランドは露骨にラインを下げて自陣に引きこもる
ハイドレーションブレーク後の守備的交代により完全に守り勝つ方向へ舵を切る。
関係者やファンから総スカンを浴びている守備への極端な傾倒である。
 
具体的には67分のハイドレーションブレークから90分+AT9分(実際には約10分)。
後半のキツい時間帯に35分以上自陣に引きこもり、守り一辺倒のファイトを続けた。
 
85分に同点に追いつかれるまでのポゼッションは脅威の12%。相手ボックス内でのタッチ数はまさかの0回とのこと。
 
さらに映像を確認すると、プレイヤーが中央に集中して両サイドがガラッガラ。
前半はラグジュアリーチェアでくつろいでいたメッシ御大がお目覚め遊ばされ、右サイドの広大なスペースで魔法()を行使する流れが続いた。
 
要するにアルゼンチンはそれ前提のプランを立てているのだと思う。
前半は御大が相手を観察する時間を確保するため御大以外が全員礎となる。
で、スカウティングを終えた御大がおもむろにアイマスク(スカウター)を外し、広大な右サイドに魔方陣を領域展開。
御大のお目覚めとイングランドの引きこもり作戦が最悪の形で合致してしまった。
 
日本vsオランダ感想。強豪相手に“普通にやれてる”時点で日本は強い。4年前とは別チームレベルでの進化。高度にシステム化された近代サッカーを肌で感じたよ
 

そもそも引いて守る戦術に向いてない? パラグアイとのスタッツを比べると…

そもそも論として、イングランドは引いて守るディフェンスに向いていないのではないか。
 
イングランドは1対1の個人技で強みを発揮するチーム(組織力がないとは言ってない)。
この部分はローブロックに適しているものの、上述の通り基本は広いスペースを自由に動き回るタイプである。
 
 
試しに(ドン引きのディフェンスでフランスを苦しめた)パラグアイと比較してみると、
 
・PPDA(Passes Per Defensive Action:守備1アクションあたりの相手パス数)
※対人でガシガシいくチームは数値が高くなる
パラグアイ:14.8
イングランド:11.2
アルゼンチン戦のイングランド:19.5
 
・Interceptions per Tackle(タックル数に対するインターセプト数の割合)
※1を基準に数値が高いほど予測・パスカット型
パラグアイ:0.62
イングランド:0.95
アルゼンチン戦のイングランド:0.88
 
・Clearance & Block Density(クリアとシュートブロックの密集度)
※引いて守るのが得意であればPA内でのクリアとシュートブロックが増える
パラグアイ:特A
イングランド:C
アルゼンチン戦のイングランド:B
 
パラグアイはコースを予測したパスカットよりも対人での強さ、PA内での競り合いを得意とする。引いて守るスペシャリストなことは明白である。
 
一方のイングランドは対人と予測はぼちぼちだが、密集度は低い。
「ピッチを広く使って走り回りたい」という印象に近い数値が出ている。
 
ところがアルゼンチン戦ではPPDA19.5と異常値を記録。相手のパス回しを“見てしまう”時間が長かったことがわかる。
さらにInterceptions per TackleもClearance & Block Densityも平均値とは明らかな差がある。
 
つまり、この試合では「適性のない(慣れない)立ち回りを35分間以上継続していた」。
 
 
実際の映像を観るとわかるが、ゴール前のイングランドは相手がパスを出してから動くシーンが目立つ。本来は重心や目線、周りの動きで予測を立てるはずが、常に後手に回らされていた。
 
堂安律の「エゴを出したいヤツは大会が終わってからにして」が漫画「ブルーロック」への強烈なアンサーらしい。連載開始当初エゴの塊だった堂安が8年後に10番を背負ってチームプレーに邁進するエモさ
 

敵陣でのオープンな殴り合いが信条のプレミアリーグ、血の気の多いヤンキー気質も影響した?

もしかしたらこれはプレミアリーグの特性も影響しているのかもしれない。
プレミアリーグは世界屈指のフィジカルバトル、激しいコンタクトが要求されるリーグ(らしい)。
 
そのリーグでプレーするイングランドの選手は敵陣にどんどん攻め込む、オープンな殴り合いが染みついていると考えられる。
 
つまり自陣に引きこもる戦術には慣れておらず、前に出るタイミングがわからない。必然的にパス回しを“見る”時間が増え、メッシの領域展開の餌食となった。
 
 
また血の気の多いヤンキー気質が裏目に出た側面もあるのではないか。
どちらかと言えば奔放な選手が多いイングランドは自由を与えられることで力を発揮する。
ノリノリのときは世界一厄介な野武士軍団となるが、慣れない戦術で窮屈な思いをすると一気に歯車が狂う。
 
作戦の選択や選手交代のタイミングはもちろん、チーム特性の見極め、マネジメント面も敗因の一つと言えるかもしれない。
 

トゥヘル監督のキャリアがゴリゴリに戦術重視のチームばかりな件

数日前にトーマス・トゥヘル監督とジュード・ベリンガムの確執が報道されていたが、それ以前からチーム内では戦術面での対立が続いていたとのこと。
 
トゥヘル監督のキャリアを振り返ると、
・ボルシア・ドルトムント
・パリ・サンジェルマン
・チェルシー
・FCバイエルン・ミュンヘン
 
ほほう、なるほど。
戦術をゴリゴリに重視するチーム(ドルトムント、チェルシー、バイエルン・ミュンヘン)+寝てても勝てるPSGというキャリアを経て、2024年にイングランドの監督に就任したわけか。
 
 
この人は戦術オタクとのことで、要するに自分の戦術に当てはまる選手をカタログスペックを見ながら割り当てていくパズルが得意なのだと思う。
 
年単位でコミュニケーションを取れるクラブはそれでいいが、代表監督は勝手が違う。
限られた時間の中でいかに最大火力を出すか、普段は主役を張っている完成品たちをどうコントロールするか。
特にイングランドのようなイケイケのチームを率いるにはモチベーターとしての素養の方が必須。
野武士軍団を気持ちよくプレーさせるマネージメントという意味ではややミスマッチだった? のかも?
 
それでもベスト4という結果を考えれば指導者としてのキャリアに傷がついたとは思えないが。
軋轢を抱えた中で見せた勝負強さは間違いなく本物である。
 
日本vsチュニジア感想。“個の力”で圧倒する日本、改めて強い。チュニジアは日本の圧が強すぎて糞詰まりに。1対1で歯が立たず、苦し紛れのバックパスでピンチを広げる
 

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ベッカムが連れてきたメッシが2アシストの大活躍でイングランドを下すエモさ

この試合でエモいのが、リオネル・メッシがインテル・マイアミCF所属であること。
 
インテル・マイアミCFはデビッド・ベッカムが共同オーナーを務めるチーム。
ロサンゼルス・ギャラクシーとの契約の際に格安(約27.5億円)でクラブを購入する権利を獲得、2018年にそれを行使して立ち上げたチームである。
 
そして今ではクラブの市場価値は約2200億円に。
ベッカム本人も奥さんのヴィクトリアさんとの合算資産が約11億8500万ポンド(約2540億円)に達して大富豪の仲間入りを果たしている。
 
そのベッカムが2023年にメッシを口説き落とし、2026年の北中米3カ国W杯開催にドンピシャで合わせた。
で、準決勝ではメッシの活躍(2アシスト)によりイングランドが敗れる。
 
北米のサッカーの価値を底上げしたベッカムと、現役最終盤でその一端を担うメッシ。
両者が敵味方に分かれ、大接戦の末に残酷な結末を迎えた。
 
「ベッカム氏が“盟友”メッシと敵対へ W杯準決勝で母国イングランドを応援」
 
イングランドが先制点を決めた際のベッカムのはしゃぎっぷり、無表情で抱き合うヴィクトリア夫人という“お決まりの”光景を含めてあまりにエモすぎた笑
 

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