ノルウェーvsブラジル感想。巨大冷蔵庫軍団がネコ科の猛獣の技巧を粉砕。(いい意味で)イカれた試合だった。PA内タッチ数はブラジル41:ノルウェー11とかいう異常値【サッカーW杯2026 ノックアウトステージ2回戦】

ノルウェーvsブラジル感想。巨大冷蔵庫軍団がネコ科の猛獣の技巧を粉砕。(いい意味で)イカれた試合だった。PA内タッチ数はブラジル41:ノルウェー11とかいう異常値【サッカーW杯2026 ノックアウトステージ2回戦】

開催中のサッカーW杯2026、北中米3カ国大会。7月5日(日本時間6日)に米・ニュージャージー州で決勝トーナメント2回戦が行われ、ノルウェーがブラジルに2-1で勝利している。


この試合は僕は今大会でもっとも楽しみにしていた一戦(4年に一度しか観ないニワカだけどw)。
数日前からワクワクが止まらず当日を待ちわびていた次第である。
 
というわけで今回はその感想を。
スタッツを比較しつつ、どれだけ(いい意味で)イカれた試合だったかを言っていく。
 

ブラジルにとってノルウェーは天敵。巨大冷蔵庫軍団とネコ科の猛獣(豹やチーター)の対決

報道でも言われていた通りブラジルはこれまでノルウェーに勝ったことがない(0勝2敗2分)。
最後に対戦したのは2006年で、今回は約20年ぶりの通算5戦目となる。
 
 
両国の平均身長、体重を比較すると、
・ノルウェー:187.2cm(1位)、84.0kg(1位レベル)
・ブラジル:182.8cm(21位)、76.5kg(25位前後)
大会屈指の巨漢軍団のノルウェーに対してブラジルは日本(181.3cm、74.4kg)よりも少し大きいくらい。
 
6月30日の日本vsブラジル戦で「日本は個の能力で負けた」と言われているが、1対1で当たり負けした感じはない。
 
むしろ劣っていたのは技巧の部分。
ブラジルは少ないタッチでクルッと方向転換する、スペースに走り込む、相手の虚を突いて裏に出る等、しなやかさと足元のうまさで日本を翻弄した。
いわゆる“触らせない技術”である。
 
日本vsブラジル感想。ブラジルは強かった。個の差を随所で感じた。日本は堂安律を下げてから得点の匂いが消えた。森保監督は勝負師としては少し足りなかった?
 
それを踏まえて予選でのゴール集を観ると、ノルウェーとブラジルの違いがより顕著になる。
 
・ノルウェーゴール集

 
・ブラジルゴール集

 
ノルウェーはチャンスが発生してからゴールまでがめちゃくちゃ早い。
縦パスに対して「よーいドン」で走り込み、相手を引きずりながらシュート、ゴール前での高さ勝負で圧倒→ヘディングでゴール、などなど。
「これは!」と思ってから数秒後にはネットを揺らしている。
 
一方のブラジルはしっかり崩してからシュートまで持っていくのが基本。
1対1でずらす、スペースにパスを出す、フォロワーが走り込む。
個人の閃きと判断力、視野の広さが際立つ。
 
ノルウェーが技術を兼ね備えた巨大冷蔵庫軍団なら、ブラジルはネコ科の猛獣(豹やチーター)というイメージ。
 
要するに過去の対戦ではノルウェーのフィジカルがブラジルの触らせない技術、しなやかさをぶっ壊してきた。
ブラジルにとってノルウェーは天敵なのだろうと。
 

両国がお互いの特徴、強みを発揮し合った&消し合った試合。引いて守るブラジルとパス回しで様子を見るノルウェー

実際の試合だが、はっきり言っておもしろかった。
両国が自分たちの特徴、強みを発揮し合った&消し合った末の2-1。見ごたえ抜群、期待以上の内容だったことをお伝えする。
 
 
展開としては、ノルウェーが最後列でパスを回しながらタイミングをうかがう。対するブラジルは引いて守る流れ。
 
ただブラジルの最前列がタイトにくるため、ノルウェーはジリジリ下げられキーパーまで戻すシーンも目につく。
あの陣形はアーリング・ハーランドをゴールから遠ざける意図もあったのではないか。
 
だが最前列がガツガツいく分、どうしても2列目との間にスペースができる。
ここにノルウェーの選手が侵入→得意のフィジカル勝負がスタートするパターンも。
 
1列目と2列目の間にスペースができるということは、すなわち前線に味方が残ることを意味する。
低い位置でボールを奪った際にすぐにカウンターを仕掛けられる状態である。
 
実際、ボールを保持する時間はノルウェーの方が長いが、マイボールになった瞬間に攻めに転じる切り替えはブラジルが上回っていた。
 
フランス相手に健闘したパラグアイは完全に引くことでスペースを消したが、セカンドボールを回収してからの攻め手がない。結局縦パスと猛ダッシュによる一発勝負に頼り切りになった。
 
ブラジルvsノルウェーが楽しみすぎて脳汁が止まらない。最強フランスは1988年から改革に着手した。ブラジルがネコ科の猛獣(豹、チーター)ならフランスは百獣の王だね
 
またノルウェーの守備は外のスペースを犠牲にして中央を固めるやり方。
サイドからヴィニシウス・ジュニオールが何度も入ってきたが、それを1対1、もしくは2人目のカバーで封じ最後のシュートまでいかせない。
仮に打たれてもGKエルヤン・ニーランのスーパーセーブが炸裂する。
対人での強さ、高さ勝負に自信があってこその陣形だったと想像する。
 
 
引いて守りつつ、カウンターの速攻からの崩しでチャンスを演出するブラジル。
最後列でU字にパスを回しながら走り込むスペースを探すノルウェー。
両国の意図、得意/不得意がよくわかる展開である。
 

ノルウェーがブラジルにベストな体勢でプレーをさせない。1対1のコンタクトでコカされるのはブラジルの方

この試合ですごいと思ったのが、ノルウェーの選手がブラジルにベストな体勢でプレーをさせなかったこと。
 
両国を比較すると足元の技巧やしなやかさはブラジルの方が上。
ノルウェーのDF陣はゴール前で翻弄されるのだが、最後の最後で抵抗を見せる。
 
裏に出られる瞬間に身体を当てる、正面をズラされても足を出す、シュートのアクションに入る前に肩を入れる、などなど。
タイミングをワンテンポ遅らせる、姿勢を崩させることでクリーンなプレーを許さない。
どんな状況になっても決定機だけは作らせない強靭さ、したたかさがあった。
 
また1対1のコンタクトでコカされるのはたいていブラジルの方。
「おいおい大丈夫か?」というラフなプレーもあったが、それを含めてフィジカルの違いが顕著だった。
 
何よりおもしろいのが、ゴール前の密集での体格差。
コーナーキックを蹴る選手の背後からのアングルで赤いユニフォームばかりが目立つ。
黄色いユニフォームは軒並み埋もれていて、キッカーにとっては「これ、どこに蹴ればいいの?」状態。
 
 
後半のハーランドの2点もノルウェーの長所がモロに出ていた。
クロスからのヘディング(高さ勝負)と、サイドからのワンパス→左足を振り抜いてのゴール。
前半開始直後のオフサイドもそうだが、とにかくチャンスが発生してからゴールまでが一瞬である。
 
 
幻冬舎の箕輪厚介氏が「日本は技術はあるのにボール持つのを怖がってたように見える」とコメントしていたが、1対1のデュエルで分が悪いとどうしてもそうなるのだと思う。
 
「箕輪厚介氏、ブラジル撃破ノルウェーと日本をガチ比較「技術はあるのに…」元日本代表DFも同意」
 
センターサークル付近でゆったりとパスを回すノルウェーに対し、ブラジルは日本戦とは違い早めにボールを離すシーンが目についた。
詰められるとフィジカルで持っていかれる、巨大冷蔵庫による圧迫が大きかったと想像する。
 

この試合がどれだけ(いい意味で)イカれていたか。数値上でも両国の特徴、狙いがはっきり伝わる

ここから先は両国のスタッツを比較しつつ、この試合がどれだけ(いい意味で)イカれていたかを示していく笑
なおスタッツはサイトごとにブレがあるので、そこは大目に見ていただければ。
 
・ボール支配率
ブラジル:約34%
ノルウェー:約66%
 
・総パス本数
ブラジル:329本
ノルウェー:680本
 
・相手陣内でのタッチ数
ブラジル:約150回
ノルウェー:約450回
 
これは「確かにそうなるよね」という数値。
 
パスを回しながら攻めるタイミングを探すノルウェーに対し、ブラジルは引いて守りつつカウンターを狙う。
申し上げた通りブラジルはエースのハーランドや10番のマルティン・ウーデゴールをゴールから遠ざけるべく前線がタイトにボールを奪いに行っていた。
 
 
・地上デュエル勝率(全体)
ブラジル:46%
ノルウェー:54%
 
・被ファウル数
ブラジル:16回
ノルウェー:9回
 
ここも「なるほど」と思わせる数値。
両国には明確にフィジカル差があり、1対1のコンタクトでコカされていたのはたいていブラジルの方。
被ファウルの多さがぶつかり合い、競り合いで押されていた証明である。
 
上記を見るだけでも両国の特徴、強み/弱みが伝わってくる。
 
日本vsスウェーデン、1-1で引き分けで2位通過決定。出来はよくなかったよね? 「ブラジル戦大丈夫?」って思っちゃった。チュニジア戦後のセルジオ越後さんの記事が身に沁みるw
 

敵陣でいくらパスを回しても点が取れないブラジル。少ないチャンス、少ないタッチで一気に決めたノルウェー

そして僕がおもしろいと思ったのが下記。
 
・敵陣PA(ペナルティエリア)内タッチ数
ブラジル:41回
ノルウェー:11回
 
敵陣ペナルティエリア内でのタッチ数がブラジルの41回に対してノルウェーが11回。
 
通常はポゼッションで上回っている側のタッチ数が増える(らしい)ので、これはかなり珍しいケース。
しかもブラジルの41回は異常値、ノルウェーの11回もだいぶ少ない(フランス戦のパラグアイは4回)とのこと。
 
ボールを66%支配し、680本のパスをつないだノルウェーがPA内ではほとんどボールに触れていない。
ところがその中で2得点を挙げている。
 
一方、ボール支配率34%(カウンター狙い)のブラジルはPA内で41回もボールに触るなどチャンスを量産した。ところが得点はアディショナルタイムの1点のみ。
 
上述した
「ノルウェーはチャンスが発生してからゴールまでがめちゃくちゃ早い」
「ブラジルは相手をしっかり崩してシュートまで持っていく」
をはっきり示した数値である。
 
堂安律の「エゴを出したいヤツは大会が終わってからにして」が漫画「ブルーロック」への強烈なアンサーらしい。連載開始当初エゴの塊だった堂安が8年後に10番を背負ってチームプレーに邁進するエモさ
 

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PA内でのデュエル、タックルで圧勝したノルウェー。一見ブラジルが圧倒してる感じだけど…

さらに両国の特徴、試合内容を如実に表しているのが下記。
 
・敵陣PA内デュエル勝率
ブラジル:24%
ノルウェー:71%
 
・自陣PA内タックル成功率
ブラジル:14%
ノルウェー:82%
 
ブラジルはPA内での1対1のデュエルで24%しか勝てず、ノルウェーのタックルを82%の確率で食らっている。
つまりチャンス自体は何度も作るが、そのつどノルウェーの守備に阻まれたことを意味する。
 
ノルウェーのDF陣がピンチの局面で
・裏に出られる瞬間に身体を当てる
・正面をズラされても足を出す
・シュートに入る前に肩を入れる
等のアクションでブラジルの攻撃を防いだ、ワンテンポ遅らせたと申し上げた通りの数値である。
 
逆にノルウェーはPA内でのデュエルで圧勝(71%)、タックルの暇さえ与えず(14%)駆け抜けたと言えるのではないか。
 
日本vsチュニジア感想。“個の力”で圧倒する日本、改めて強い。チュニジアは日本の圧が強すぎて糞詰まりに。1対1で歯が立たず、苦し紛れのバックパスでピンチを広げる
 
・クリア総数
ブラジル:28回
ノルウェー:28回
 
クリア数は見た目の数字こそ同じだが、ブラジルのPA内でのタッチ数が41回ということを考えると、ノルウェーは“しっかりボールを奪ってパスを出していた”ことがわかる。
やみくもに遠くに蹴るのではなくちゃんと味方にパスを供給した、それができる体勢でプレーした。
 
・ゴール期待値 (xG)
ブラジル:2.61
ノルウェー:1.05
 
一見ブラジルが圧倒しているように思えるが、実際は違う。
ブラジルは決定機を量産するも、GKニーランの神セーブとフィジカルモンスターたちのブロックに阻まれた。
ネコ科の猛獣のしなやかさ、虚をつく巧みさを巨大冷蔵庫軍団が粉砕した結果の数値である。


繰り返しになるが、この試合は両国がお互いに持ち味を発揮し、お互いに持ち味を消し合った。
それが(いい意味で)イカれていたと申し上げている。
 

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