エマヌエル・ロドリゲスvsアントニオ・ラッセル。ロドリゲスうますぎた。ラッセルの高速ジャブを攻略。改めてルイス・ネリvsロドリゲス戦がポシャったのが…【結果・感想】

エマヌエル・ロドリゲスvsアントニオ・ラッセル。ロドリゲスうますぎた。ラッセルの高速ジャブを攻略。改めてルイス・ネリvsロドリゲス戦がポシャったのが…【結果・感想】

「ボクシング記事一覧リンク集」へ戻る
 
2022年10月15日(日本時間16日)に米・ニューヨーク州で行われたIBF世界バンタム級挑戦者決定戦。同級6位エマヌエル・ロドリゲスと同級4位ゲイリー・アントニオ・ラッセルの一戦はロドリゲスが10回2秒負傷判定勝利(100-90、99-91、99-93)。開始16秒でノーコンテストに終わった2021年8月以来の再戦を制した試合である。
 
 
序盤から右リードで試合を組み立てるラッセルに対し、ロドリゲスは右カウンターで迎撃。ラッセルの打ち終わりを狙って次々に顔面を揺らしていく。
早い段階で右リードを封じられたラッセルは中盤から攻撃に変化をつけるものの、左フックとフットワークを駆使するロドリゲスの防御を崩せない。5Rには飛び込み際にカウンターの右をもらい、豪快にグラつかされる。
 
中盤以降、ダメージの蓄積により足運びが怪しくなるラッセル。
8R後半に前に出た瞬間を狙われ右ショートをモロに被弾。大きく後ろにふっ飛ばされてのダウンを喫する。
 
カウント10寸前でどうにか立ち上がったものの、すでにラッセルに反撃の力は残っておらず。
そのままロドリゲスのペースで試合は進み、9R終了間際に発生したバッティングによりロドリゲスが続行不可能と判断され試合終了。9Rまでの判定の結果、大差をつけてロドリゲスの勝利が決定した。
 
エマヌエル・ロドリゲスがメルビン・ロペスを圧倒、約4年ぶりのIBF王者に。やっぱり差があったよな。できればKOして欲しかったけど
 

ラッセルはいまいちパッとしない。ロドリゲス有利かな? とは思ったけど、vsサウスポーの対応力が不明

エマヌエル・ロドリゲスvsゲイリー・アントニオ・ラッセル。
 
昨年8月に行われた第1戦では開始直後のバッティングによりロドリゲスが負傷、そのままノーコンテストに。そこから両者ともに1試合挟み、満を持して再戦を迎えている。
 
ただ、ロベルト・サンチェス・カントゥを1RでKOしたロドリゲスに対してラッセルはアレッサンドロ・サンティアゴに大苦戦の末に2-0の判定勝利。2020年12月のファン・カルロス・パヤノ戦の内容もいまいちだったこともあり、正直この選手にバンタム級トップの実力があるかは微妙だと思っていた。
 
とは言えエマヌエル・ロドリゲスはこれまでのキャリアで主要なサウスポーとの対戦はない。また体重超過したルイス・ネリとの対戦を拒否したことを踏まえると、実はサウスポーを苦手としている可能性も?
左ジャブを駆使して流れを掴むスタイルなだけにサウスポーへの対応力がどの程度かによって展開は大きく変わると思われる。
 
ルイス・ネリが代役カルモナから3度ダウンを奪ってTKO勝利。久しぶりのネリらしい試合。打倒フルトンにはまったくつながらないけど笑
 
もっと言うと、初戦で豪快に頭がゴッツンしたことを考えると今回も同じ結末を迎えるパティーンもありそう。試合の成立自体が怪しいんじゃねえか? とすら思っていた次第である。
 

エマヌエル・ロドリゲスがうまかった。改めてルイス・ネリ戦を観たかったよ

試合の感想だが、エマヌエル・ロドリゲスがめちゃくちゃうまかったなぁと。
 
どちらかと言えばロドリゲスが有利かな? と漠然と思ってはいたが、まさかここまで圧倒するとは。
(僕が勝手に)懸念していたvsサウスポーの対応もまったく問題なし。ほぼパーフェクトと言っていいほどの完勝だった。
 
マジな話、この試合ができるならルイス・ネリともやっておけばよかったんじゃないの? というくらい。
体重超過のネリを相手にするのは危険だと判断したのだと思うが、これだけサウスポーを苦にしないのであれば十分勝機はある。
個人的にロドリゲスvsルイス・ネリ戦はめちゃくちゃ楽しみにしていたので、寸前でポシャったことはいまだに残念に思っている。
 

ラッセルの右リードに右カウンターを合わせまくるロドリゲス。あの高速ジャブには間に合わないだろうと思っていたら…

特にすごいと思ったのが、ラッセルの右リードにロドリゲスがそのつどカウンターを合わせていたこと。
 
もともとロドリゲスはカウンターが得意な選手で左右まんべんなくナチュラルに合わせるタイミングの持ち主。2018年10月のポール・バトラー戦、2020年12月のレイマート・ガバリョ戦、その他。どんな状況、どの角度からでも打ち出せるカウンターは階級屈指の精度を誇る(と思う)。
 
ガバリョの勝ちもなくはない? かな? ロドリゲスはトレーナーが井上パパを恫喝してから運が一気に離れていったよな
 
対するアントニオ・ラッセルはハンドスピードを活かした高速のジャブが持ち味。
中間距離で対峙し速射砲のようなジャブを起点にワンツーを顔面にヒット。そこからもう一歩近づいて連打を浴びせる流れでペースを掴む。
 
ただ、長男アレンや三男アントワンのように距離を一瞬でゼロにするダッシュ力はなく、ジャブから連打へのつなぎにも多少のタイムラグがある。
 
・右リードでペースを掴む
・ハンドスピードを活かしたワンツー、カウンターが得意
大まかな特徴は三兄弟とも似通っているものの、次男のアントニオは他2人に比べて一段落ちる。
 
と言いつつ、ラッセルのジャブが脅威であることには変わりない。
なので、今回は前手の差し合いでロドリゲスがどこまで対抗できるか、ラッセルのスピーディな右リードをどうさばくかが見どころになる。
さすがのロドリゲスもあの右には苦労させられるのではないか。
 
などと思っていた時期が僕にもありました。
 
ワイルダーが稲妻のような右でヘレニウスを1RKO。やっぱりワイルダーは動けてナンボの規格外マンだった。それだけにフューリーの人外っぷりが際立つ
 

ラッセル兄弟の中では若干スペックが落ちるアントニオ。いきなり攻め手を失い、ガードを固めて耐えるだけに…

いや、すごかったですねエマヌエル・ロドリゲス。
 
ラッセルの高速ジャブにことごとく右を被せ、そこからの追撃をまったく許さない。
 
上述の通りラッセルは基本的に右リードが起点の選手で、なおかつ追撃に入るまでにわずかな間ができる。
長男ラッセルはモーター式のようなハンドスピードでカウンターを合わせる暇すら与えないが、次男のアントニオはそこまでではない。
 
ラッセルvsバルテレミー、こりゃブチ切れるわw 「早すぎるストップは存在しない(キリッ」じゃねえんだよ笑 消耗戦の末に6RTKOでラッセルが勝利
 
いきなり出鼻を挫かれ早々に攻め手を失ったラッセルはガードを上げて耐えるだけの状況に。
 
逆に前手のリードを封じることに成功したロドリゲスはそこから外旋回気味の左を織り交ぜてさらにペースを引き寄せる。
 
ラッセルの右を左フックで叩き落とし、空いた顔面に右ストレートをスパン。
手詰まりになったラッセルが強引に前に出てくればさっさと腕を絡めて動きを封じる。
時おりラッセルのジャブがロドリゲスの顔を捉えるものの、有効打にはほど遠い。
 
 
レイマート・ガバリョ戦ではガバリョの前進をジャブとフットワークでいなし、この試合ではラッセルの生命線である右リードを徹底的に潰してみせた。
 
なるほど。
もしかしたらロドリゲス陣営にはめちゃくちゃ優秀な参謀がいるのかもしれませんね。
と同時に、相手によってさまざまなファイトスタイルを選択できるロドリゲスは相当器用なのだろうと。
 
2019年5月の井上尚弥戦ではスピーディなカウンター合戦の末に撃沈させられたが、実力は間違いなくバンタム級トップクラス。ジェイソン・モロニーとともに井上、ノニト・ドネアに次ぐ第2グループに位置する(と思う)。
 
繰り返しになるが、エマヌエル・ロドリゲスvsルイス・ネリ戦がポシャったのは本当に残念である笑
 

ラッセルは攻撃パターンが少なすぎたよね。インファイトに明らかに慣れてない、ヘッドハンター気味でボディ打ちも微妙

敗れたアントニオ・ラッセルだが、こちらはやや攻撃パターンが少なすぎた印象。
 
高速の右リードからワンツーにつなぐ流れを得意するものの、それ以外にこれといった攻め手がないのが……。
3、4Rあたりから左ストレートから入ったりガードを上げて突進したりとあれこれ変化をつけてはいたが、突破口を見出せる雰囲気はまったくなく。
 
5Rは序盤からゴリゴリ前に出て腕を振っていたが、アレは恐らく陣営からの指示があったのだろうと。
あの前進で一時はロドリゲスをタジタジにさせたがすぐに失速。出足が鈍ったところに右カウンターを被弾、逆に膝をガクガクにさせられるという。
 
中間距離が得意なロドリゲス相手に強引に前に出る作戦自体はいいと思うが、肝心のラッセルが明らかに接近戦慣れしていない(ように見えた)のが……。あそこまで露骨にガス欠を起こすというのは要するにそういうことなのだろうと。
 
またラッセル兄弟は全員ヘッドハンターの傾向が強い。井上戦やガバリョ戦を観る限りロドリゲス攻略にはボディが有効&この試合も途中からボディを嫌がっていたが、困ったことにラッセルのボディ打ちにはいまいちスムーズさがない。
 
何となくだが、今までのキャリアでこれだけ右リードを封じられた経験がない、そういう展開を想定したことすらないのかもしれない。
 
いや、そうなんですよね。
2020年12月の中谷正義vsフェリックス・ベルデホ戦での中谷もだが、前手のジャブを起点とする選手がそのジャブにカウンターを合わせられるとあっという間に攻め手を失う。
 
中谷もラッセル同様、ジャブの打ち終わり→追撃までに若干の間ができるタイプ。そこのタイムラグをベルデホに狙われ豪快にダウンを喫している。
恐らくあのジャブにカウンターを合わせてくる相手は東洋圏には存在せず、中谷にとっては完全に未経験の1発だったのではないか。
 
吉野修一郎vs中谷正義ホントにやるんだな…。もう一段上の舞台で観たい対戦だった(マッチアップとしてはおもしろい)。どっちもがんばれどっちも負けんな
 
そしてアントニオ・ラッセルにとってもエマヌエル・ロドリゲスは初めて遭遇する“一段上の強敵”だった(のかもしれない)。
 

バッティングは仕方ない。いつ起きてもおかしくなかった。ロドリゲスも次戦までには時間があるしね

なお、最後のバッティング→負傷判定に関しては「まあ、しゃーないよね」としか言いようがない。
 
前傾姿勢+右リードを打つと同時に前に出るラッセルに対し、ロドリゲスもやや前重心+同時打ちのタイミングでカウンターを狙う。
上述の通り距離が近くなるたびにゴッツンしそうになっていたし、ロドリゲスの顔面は頭を下げて踏み込むラッセルの額の位置にちょうど合致する。
 
前回はそれが初回に起きてしまったが、今回はたまたま9Rまで起きずに済んだだけの話。
どちらに責任があるとかではなく、この両者のファイトスタイル、角度的にいつアクシデントが起きても仕方ないのだろうと。
 
だからアレだ。
試合の大勢が決まった段階で発生したことを不幸中の幸いだと思えばいいのではないか。
無駄なダメージを負ったロドリゲスは気の毒だが、井上vsポール・バトラー戦が12月予定なのでしばらく時間はある。どんな結果が出るにせよ指名戦or決定戦までには全快するはず?
 
「ボクシング記事一覧リンク集」へ戻る
 

Advertisement

 


 

 
【個人出版支援のFrentopia オンライン書店】送料無料で絶賛営業中!!