木村悠が1ヶ月休職の覚悟で挑んだ世界戦で逆転勝利!! ゲバラに判定勝ちで世界王座奪取!!【結果】

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2015年11月28日に宮城・ゼビオアリーナ仙台で行われたWBC世界ライトフライ級タイトルマッチ。挑戦者の木村悠が王者ペドロ・ゲバラに2-1の判定(111-117、115-113、115-113)で王座を奪還した。

戦前の下馬評を覆し、初の世界挑戦で見事に勝利した木村。商社マンボクサーとして話題の32歳が一躍時の人となった。

「江藤、クアドラスの牙城を崩せず大差判定負け!!」

・諦めない木村に感動した。
・今年最高のアップセット。いい試合だった。
・ゲバラもがんばったし、再戦あるかも

試合自体は微妙な判定での勝利だったせいか、賞賛や疑問などさまざまな声が聞かれ、物議を醸す結果となっている。

とはいえ、これまで山中や村田の影に隠れて地味な印象だった木村が、この勝利によって一晩で人生を変えたといっても過言ではないだろう。

「八重樫がハビエル・メンドサに勝てる気がまったくしないんだが」

木村すまん!! まさか勝つとは思っていなかった!!

この試合の個人的な予想は、
・木村が勝つのは難しい
・パワーがなさ過ぎる
・足を使ってフットワークでいなそうとするのは止めた方がいい
・序盤は優勢でも中盤以降に必ずつかまる
・ゲバラの伸びるパンチを木村は避けきれない
・奇跡を起こすには思い切って接近戦
・至近距離でカウンターを狙え
・1、2Rまでは足を使う。それ以降は接近戦
・やっぱり勝つのは難しい
・勝敗予想は8、9RでゲバラのKO勝ち
だった。

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まず最初に、僕は木村に全僕をかけて謝罪したいww
「木村は勝てない。ゲバラとはパワーが違い過ぎる」と言ったことを光の速さで訂正したいと思う。それだけでなく、タイトルマッチに出場するレベルにあるのかどうかも怪しいとまで言ったボンクラである。

もう、何から何まで撤回させていただきたい所存である。
木村すばらしい。ナイスファイトだった。本当にがんばった。

今回の試合、正直に言って木村が勝つとは思わなかった
ここ最近のゲバラの試合と木村のスタイルを比べて、どうしても木村が勝つ姿が想像できなかった。それどころか、むしろゲバラに圧倒されて負ける可能性の方が高いと思っていた。

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それがまさか、ここまでいい試合をするとは。
そして勝ってしまうとは。

木村が勝つには接近戦で打ち合って僅差判定に持ち込むしかない。際どい試合展開でのホームタウンデシジョンを狙え。

これを前回の記事で申し上げたのだが、よもやその通りになってしまうとは。
木村が勝つには奇跡に近い何かを起こす必要があると申し上げたが、本当に奇跡を起こしてしまうとは。

びっくりした。
そして、果敢に前に出た木村に感服である。

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木村は絶望的にノーパーワーだと申し上げていたが、実際はそこまででもなかった。決してパワフルだとはいえないが、話にならないというレベルではなかった。

パンチのコンパクトさがそのままパンチ力に直結するタイプではあるものの、力を入れて打ち抜いたパンチにはそれなりに威力がある。現にゲバラは木村のボディで著しい失速を見せていた。

ここ最近の木村は相当たくましくなったと聞いていたが、身体全体のフィジカルも上がっているのだろう。

接近戦に切り替えた木村。でもこの時点では負けたと思っていた

序盤4Rまでを見た限りでは「これは木村が勝つのは難しいだろうな」という印象だった。
木村の動きは悪くないように見えたが、このペースでいけば中盤以降必ずゲバラにつかまる。そうとしか思えない内容だった。

「フットワークでポイントアウトを狙っても、どこかで絶対につかまるから止めた方がいい」と予想していたが、まさしくそのパターンに陥りかけていたのである。

足を使った戦術を4Rまで続けていた木村。
「ああ、これは厳しいな」
そう思わざるを得ない序盤戦だった。

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流れが変わり始めたのは5R。
6Rにゲバラが木村のボディを嫌がって流れが変わったように見えるが、実は木村が前に出始めたのは5Rである。
大きく踏み込み、力を込めたワンツーを打ち抜いていた木村。ラウンド中盤にガードの外から右フックをもらってピンチに陥りかけたせいで目立たなかったが、木村が意を決して接近戦に切り替えたのは5Rなのだ。

そして想像通り、ゲバラは至近距離になると自分のリーチをやや持て余す。逆に木村は近い距離での細かいパンチの交換が得意だ。木村がダメージから回復した6R以降、ゲバラが木村の接近を嫌がって下がるシーンが目立ったが、これは必然の流れである。

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ただ、この時点でも僕は木村が勝つとは思っていなかった。接近して打ち合い始めた木村を見ても、あまり期待は持てなかった。

率直な感想を言うと、
「前に出るのおせえよ」

5Rから接近戦を挑んでも手遅れ。ポイントで逃げ切られる。
僕としては、奇跡を起こすためにもっと早いラウンドから開き直って前に出て欲しかったのである。

これまでの自分を捨てる勇気

試合前の木村のコメントを聞く限り、僕は嫌な予感しかしていなかった。

「テクニック勝負になる」
「頭を使ったボクシングで勝ちたい」

ああ、コイツ完全にイキってるなと。
自分の技術でどうにかできる相手に見えるなら、木村はまず勝てない。
ゲバラ相手に普通に試合をしても不利なのは一目瞭然。自分のスタイルを捨てて勝負に出ない限り、木村に勝ち目はない。そう思っていたところでこのコメントである。
思い切って勝負を賭ける勇気のない木村は勝てない。ゲバラ勝利でほぼ間違いないと確信していたのだ。

なので、5Rに接近戦に切り替えた木村を見て「お、これは」とは思ったものの、今さら手遅れだろうという思いの方が強かったのである。

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確かに自分のスタイルを捨てて勝負するというのは勇気のいる決断だろう。これまで自分がやってきたことへのプライドもあるだろうし、自分のスタイルを捨てるというのはすなわち現時点での負けを認めることに他ならない。

そう考えれば、木村が序盤は自分のスタイルで勝負を挑んだことも十分理解できるし、作戦を切り替える決断が5Rになってしまったのも致し方ないと言えるのかもしれない。

木村タイム突入。やはり奇跡は接近戦にあり?

6R以降、流れが変わってからの木村は非常によかったと思う。まさしく木村タイムである。

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ボディに連打を打ち込み、ゲバラのフックに合わせて顔面へのカウンター。
やはりゲバラは接近戦になると脆さが出る。パンチが外旋回の軌道を通るために、同じタイミングで打ってもコンパクトな木村の方が先に当たるのだ。
7Rにワンツーの右をガードの外側から打ち下しでヒットさせたが、あれこそまさに両者の距離感とパンチの軌道がもたらしたクリーンヒットではないだろうか。

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コンパクトなパンチといっても、前に出ると決めた木村のパンチには体重が乗る。威力を増したパンチはゲバラをたじろがせ、下がらせる。しかも回転の速さは断然木村。パワーでもある程度対抗できることがわかれば、接近戦でのコンビネーションには完全に分があったのだ。

8R開始早々、ゲバラの左に合わせてダッキングしてからの左フック。相打ち気味ではあるが、ゲバラよりも後に出しても自分のパンチが先に当たることが証明された瞬間だ。接近戦が苦手なゲバラと得意な木村の差が如実に出たパンチの交錯である。

ゲバラの左ボディへの対策が万全だったのも大きい。自分が右を出した後に必ずボディをガードして一歩前に出て距離を詰める。これによってゲバラは腕を思いきり伸ばすことができなくなり、ボディの威力が半減するのである。

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だが、ゲバラも随所でそのポテンシャルを発揮する動きを見せていた。
距離が開くと見るや、鋭く踏み込んでからのワンツー。このパンチで木村に流れかけたペースを寸断していたのである。
失速してはいたものの、自分の距離では間違いなく木村を圧倒していたのだ。

終盤4Rで逆転の木村。気持ちの面でもゲバラを上回る

スペースが開いた瞬間、ゲバラが大きく踏み込んでワンツーをヒットする。ガードの外側からゲバラのストレートが木村を捉える。

何とか前に出てスペースを潰したい木村。
ゲバラの左に合わせて大きく踏み込み、左フックをヒット。さらに身体を密着させて左右のボディ。
ゲバラもボディから顔面へパンチを返す。だが、下がりながら出すパンチには力感がない。

10R。
足を使ってリングを回るゲバラ。
追う木村。

ゲバラが一歩下がり、そこから踏み込んでの右。

これを被弾しながら、それでも前に出る木村。ゲバラを押し込みロープを背負わせる。
「肉を切らせて骨を断つ」である。

そしてオーバーハンドの右をガードの外からヒット!!
ゲバラの動きが止まる。
木村が攻める。

身体を密着させて木村の動きを止めようとするゲバラ。
木村が押し込む。ゲバラをロープに押し付ける。

木村が押し、ゲバラが下がる。すごい光景だ。

ラウンド終盤。
ロープ際でのパンチの交換。
木村の顔面が小さく弾ける。
ゲバラが身体を入れ替え、距離をとったころでゴング。
すばらしい。
大激戦だ。

ゲバラの左をダッキングでかわしてからの右のクロス。この日の木村はこのパンチが本当に効果的だった。恐らく終盤逆転の決め手となったのはこのパンチではないかと思う。
ゲバラのこめかみを再三捉えたストレート。それもやはり、覚悟を決めて前に出た木村がたぐり寄せたものに他ならない。

最終ラウンド。
ゲバラが前に出て打ち合う。
木村が身体を密着させてボディにパンチを集める。

距離が開いたところでゲバラのパンチが木村の顔面を捉える。
木村の前進がやや弱まる。
さらにゲバラのパンチが木村にヒット。強烈な左が木村を捉える。

木村も諦めない。
前に出て連打。
回転力はやはり木村。
木村の細かいパンチがヒット。
ワンツーからのボディ。
ゲバラが身体をよじるようにして下がる。

リング中央で最後の一発を狙う両者。
ここでゴング。
試合終了。

健闘を称え合う両者。いい光景だ。

判定結果が読み上げられる。
111-117、115-113、115-113の2-1で木村勝利!!

すごい試合だった。
すごい勝利だった。
おつかれ木村。

確かに微妙な判定だった。
ホームタウンデシジョンがあったと言われても不思議じゃない。
だが、それを差し引いても間違いなくいい試合だった

繰り返しになるが、木村が奇跡を起こすには接近戦だと思っていた。ただ、まさか勝つとは思わなかった。

下馬評を見事に覆してみせた木村。
最高だ。

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