フルトンvsローマン、モロニーvsパリクテ、ベナビデスvsレミュー。ある程度勝敗予想がしやすかった。気合い十分のモロニーが印象的だったね【結果・感想】
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先日現地観戦したノニト・ドネアvs井上尚弥戦の余韻が残っているというか、ネットのスポーツニュースを開けば必ず井上の記事が目に入る状況が続いている。
井上尚弥のリアル鷹村守化完了。さすがのドネアもこの日の井上には勝つのは難しい。悔しすぎてインタビューも聞かずに会場を出ちゃったけど
だが僕はそろそろ「もういいかな」と思い始めており、井上が米リング誌のPFP No.1に選出されたと聞いてもあまりテンションが上がらず。
強いて言うならライト級4団体統一を果たしたデビン・ヘイニーが激怒していたのがおもしろかったくらい笑
Fuck the pound 4 pound list… its a opinionated list all y’all could leave me off it! Thanks
— Devin Haney (@Realdevinhaney) June 10, 2022
ヘイニーがPFP1位で異論ないよな? “あの”カンボソスを塩漬けにしたんだぞ。井上尚弥、カネロがはるか彼方にふっ飛ぶ偉業。ジャブ、ダッキング、クリンチが最強。以上!!
なので、今回はドネアvs井上戦の話題は封印しつつそれ以外の気になった試合を振り返っていくことにする。
具体的には
・スティーブン・フルトンvsダニエル・ローマン
・ジェイソン・モロニーvsアストン・パリクテ
・デビッド・ベナビデスvsデビッド・レミュー
の3試合。
正直、これらはある程度結果が想像できたせいで「予想するぜ!!」とはならなかった。
と言いつつ少し前に行われたタイソン・フューリーvsディリアン・ホワイト戦、シャクール・スティーブンソンvsオスカル・バルデス戦のように「100回やっても100回同じ結果が出るだろ」というほどではなく。
シャクール・スティーブンソンvsオスカル・バルデス。バルデスじゃシャクールに勝てへんよ。でも、シャクールも万能じゃなさそう。チャンスがあるとすれば尾川堅一一択
心のどこかで「まさか」を期待しつつ、割と冷静に眺めていた次第である。
◯スティーブン・フルトンvsダニエル・ローマン×(判定3-0 ※120-108、120-108、119-109)
まずはこの試合。
2022年6月4日(日本時間5日)に米・ミネソタ州で行われたWBC/WBO世界S・バンタム級タイトルマッチ。同級王者スティーブン・フルトンが元IBF/WBAスーパー王者ダニエル・ローマンと対戦し、3-0(120-108、120-108、119-109)の判定勝利を収めた試合である。
前回のブランドン・フィゲロアとの激闘を制して2団体統一を果たしたフルトンが迎えた初防衛戦。
相手のダニエル・ローマンは元IBF/WBAスーパー王者。来日経験もあり日本のファンにおなじみの選手である。
ただ、今回はダニエル・ローマンが勝つ絵が浮かばず。
ローマンは僕も好きな選手ではあるが、残念ながら今回は厳しいのではないか。
フルトンはフィゲロアの馬力を真正面から受けても最後まで出力を落とさず打ち合った選手。
ローマンもフィゲロアと同じ連打型だが、正直フィゲロア以上の馬力を出せるとは思えない。
フルトンのカウンターとスピードで空転させられる可能性が高いのではないか。
ジョー小泉を避けることをズミヨケと呼ぶことにする。フィゲロアvsフルトン、ヘイニーvsディアス、アリーム、モンタナ・ラブ振り返り
そして、思った以上にフルトンがうまかったなと。
申し上げたようにローマンは連打型の選手で、もっとも強いパンチを打てるのは中間距離。接近戦が得意なフィゲロアと違い遠すぎても近すぎても空回りさせられる。
しかもフルトンはローマンよりも一回り大きくリーチも長い。
自分の距離で腕を振るにはある程度近づく必要があるのだが、その出足をフルトンのジャブでことごとく止められる。
3Rあたりでいったんタイミングを覚えたようだが、続く4Rにはあっさり対応されてしまった。
それ以降はフルトンの独壇場というか、ひたすら動き出しに1発目を当てられ連打の発動を抑え込まれる展開。
ミゲール・コットやローマン・ゴンサレスと同様、一度打ち出すと止まらない波状攻撃が持ち味のダニエル・ローマンだが、ことごとく動き出しを狙われるせいで持ち味をまったく出せず。
それこそロープ際で連打を浴びせるシーンは都合4、5回あったかどうか。
終盤11、12Rなどはローマンの動きを見切ったフルトンが前に出て打ち合う流れに。
すべてのパンチにカウンターを合わせまくり、逆にローマンを後退させたまま終了のゴングを聞いた。
うん、改めてスティーブン・フルトンはいい選手ですね。
ローマンとはある程度差がつくとは思ったが、ここまで圧倒するとは。
一部では階級アップ後の井上尚弥の標的と目されているようだが、なるほど。確かにこういう身体能力系のクネクネタイプに井上がどう対抗するかは興味がある。
それも自分よりもふた回りほど大きな相手に。
トップランク所属の井上とPBC系列のフルトンがどう絡むかは不明だが、諸々の大人の事情を抜きにしてぜひとも実現してもらいたい組み合わせである。
井上尚弥vsスティーブン・フルトン正式決定! フルトンのジャブとクリンチが通用するかが見どころ。がんがれフルトン、僕に井上の苦戦を見せれ笑
◯ジェイソン・モロニーvsアストン・パリクテ ×(3R2分35秒TKO)
続いては2022年6月5日にオーストラリア・メルボルンで行われたWBCバンタム級シルバー王座戦。王者ジェイソン・モロニーがIBF6位のアストン・パリクテと対戦し、3R2分35秒TKOで勝利した試合である。
メインのデビン・ヘイニーvsジョージ・カンボソス戦のアンダーで組まれたこの一戦。
井上尚弥に敗れたモロニーと井岡一翔に敗れたパリクテの対戦ということで注目を集めたわけだが……。
尚弥きゅん。井上尚弥がモロニー(マロニー)を7RKO。モロニーはいい選手だったし井上の試合で過去一番好きかもしれない
いや〜、モロニー気合い入ってましたね〜。
この選手は絶えずサイドに動きながら連打を浴びせるのが得意で、KO率こそ高いがもともと1発で決めるタイプではない。
ところが今回は左右への動きを抑え気味にして長身のパリクテの懐にずんずん入っていく。
最初の1Rを使って中に入るタイミングを測り、ある程度把握した2R目はボディ中心に切り替え。
そしてボディ攻撃によってパリクテの身体が丸まってきたところで攻撃を顔面に。最後はパリクテの踏み込みに合わせてショートの右カウンターをズドン。
完璧すぎるくらい完璧な勝利に会場も大盛り上がりである。メインのヘイニーvsカンボソス戦で凍りつくとも知らずに笑
試合後に井上やドネアに向けて「戦う準備はできている」と言い放ったそうだが、いや、わかるぞモロニー。
間違いなくそれを言える内容だったし、王座挑戦をアピールするために勝ち方にもこだわっていたのだろうと。
一方のアストン・パリクテだが、こちらはちょっと厳しかった。
この選手は身長170cm、リーチ176cmと軽量級としては大柄で、S・フライ級時代は圧倒的な体格とスケール感で相手をねじ伏せるスタイルを得意としていた。
ところが今回はバンタム級ということもあってか、そこまでの馬力は感じられず。
中間距離で打ち負け、モロニーの出入りになかなかついていけずにあっさり懐への侵入を許してしまう。
さらに2019年6月の井岡一翔戦同様、ボディを効かされ身体が丸まったところで顔面にビッグパンチをもらって撃沈。
あの井岡戦を観て一定以上の技巧の持ち主には歯が立たなくなる印象を受けたが、マジでそんな感じだった。
でも、モロニーは相変わらずいい選手ですよね。
割と冗談抜きで井上尚弥が階級をアップした後はジェイソン・モロニーvs井上 拓真戦実現に期待しております。
ノニト・ドネアvsジェイソン・モロニー戦の指令!! 早くも2023年MAXきちゃったよ笑 どっちが勝つかわからん組み合わせ。僕はこの試合のために健康でいることを誓うよw
◯デビッド・ベナビデスvsデビッド・レミュー ×(3R1分31秒TKO)
最後はこの試合。
2022年5月21日(日本時間22日)に米・アリゾナ州で行われたWBC世界S・ミドル級暫定王座決定戦。同級1位デビッド・ベナビデスと2位デビッド・レミューによる一戦。正規王座を保持するサウル・“カネロ”・アルバレスが複数階級に挑戦中なことを考慮して設けられた王座である。
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この対戦も勝敗にはそこまで興味がわかなかったというか、レミューがベナビデスに勝つのは難しいと思っていたところ。
そもそもレミューは体格的にミドルでも小柄な方で、S・ミドル級で規格外の巨漢を誇るベナビデスとはかなり体格差がある。純粋なパワーだけでねじ伏せられる可能性が高いのではないか。
そして実際の試合だが、思った以上にベナビデスが“ちゃんとしていた”なと。
この選手の試合をちゃんと観たのは2019年月のアンソニー・ディレル戦くらいなのだが、その際は馬力とサイズでディレルの技巧を押し潰していた記憶がある。
だが今回は中間距離でのジャブ、タイミングを測ってワンツー、近場でのコンビネーション等、やるべきことをきっちりやった印象。
確かに両者のパンチ力、体格差は大きかったが、そこに頼りっきりだったわけではなく。
禁止薬物陽性や体重超過による王座剥奪などだらしなさも目立つベナビデスだが、階級離れした巨体に加えて試合の組み立てもしっかりできる。この試合でそういう一面を見せたことは大きいのではないか。
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一方の敗れたデビッド・レミューだが、こちらは相変わらずだった。
1発の威力、近場での連打は確かに凄まじいが、ディフェンスの緩さと中間距離でのジャブの少なさに改善は見られない。
1R開始直後からゴリゴリ前に出て腕を振るものの、ベナビデスのジャブもレミューの次々に顔面を揺らす。
で、ラウンド後半には早くもダメージが表面化。2R以降はいつ止められてもおかしくない状態が続いた。
何となくだが、ジャブとワンツーだけで血だるまにされた2015年10月のゲンナジー・ゴロフキン戦を思い出させる流れだった気がする。
・近場での躊躇のないぶん回し
・前に出る馬力
・中間距離でのジャブの少なさ
・ディフェンスの緩さ
・動きが直線的でサイドのフットワークに弱い
圧力で飲み込めるうちはめっぽう強いが、相手の力量が一定以上になるとあっという間に頭打ちになる。特にジャブの鋭さとサイドへのフットワーク等を兼ね備えた相手との相性は最悪。
以前デビッド・レミューと日本の赤穂亮が被ると申し上げたが、何だかんだで身体に染み付いた喧嘩ファイトを改善するのは困難なのかもしれない。
なぜならそれである程度のところまでいけちゃうから。
倒すときの爽快感、成功体験がこびりついて離れなくなるとか、そんな感じかなぁ。
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