カネロが8年7ヶ月ぶりの敗戦。ビボルのジャブとガードを崩せず。“ロッキー・フィールディングの呪い”を解いたビボルに神の祝福を【結果・感想】

カネロが8年7ヶ月ぶりの敗戦。ビボルのジャブとガードを崩せず。“ロッキー・フィールディングの呪い”を解いたビボルに神の祝福を【結果・感想】

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2022年5月7日(日本時間8日)、米・ネバダ州ラスベガスで行われたWBA世界L・ヘビー級タイトルマッチ。同級スーパー王者ディミトリー・ビボルにS・ミドル級4団体統一王者サウル・“カネロ”・アルバレスが挑んだ一戦は、3-0(115-1113、115-113、115-113)の判定でビボルが勝利。階級を上げて挑んだカネロだったが、残念ながら最後までビボルのガードを崩せず。2013年9月のフロイド・メイウェザー戦以来、約8年7か月ぶりの敗戦となった。
 
 
PFP No.1に君臨するカネロが無敗のL・ヘビー級王者ディミトリー・ビボルに挑んだ今回。
これは僕も以前から楽しみにしていた試合で、身長173cmのカネロが183cmのビボルをどう攻めるかに注目していた。
 
だがこの日は人生初の大相撲観戦に出かけていたためリアルタイム視聴はできず。
 
初めての大相撲観戦感想。入場は中入後がおススメ。フラッと入って飽きたら帰るスタンス。力士の大型化による怪我の多さと取組の単調化。土俵に上がった瞬間満身創痍の照ノ富士
 
帰りにボーっとネットニュースを眺めていたところ、「おい!! カネロ負けたんかい!!」と。
 
 
ビボルは間違いなくいい選手だが、今のカネロの充実っぷりは凄まじいものがある。
いい勝負にはなるとは思うが、どちらかが勝つかと聞かれればやはりカネロかなぁ。
 
正直、カネロのラスボスはWBC/IBF世界L・ヘビー王者のアルツール・ベテルビエフだと思っていたので今回の敗戦にはまあまあ驚いている。
 
カネロvsゴロフキン3。金ヅル同士の3度目の遭遇。「割り切って儲けようぜ」的な乾いた同意があった気がした。ゴロフキンの追い上げに感動したよ
 

試合前の展望は「ビボルのジャブがどこまで通用するか」。それでもカネロが勝つと思ってたけど

まず、だいぶ前に考えた展望を見返してみたところ……。
 
選び放題のカネロが渦中のビボルとの対戦を選択。ビボルのジャブがカネロの圧力にどこまで対抗できるかかだろうな
 
・ビボルのジャブがどれだけカネロの前進を止められるかが見どころ
・ビボルはカウンター使いが苦手っぽい?
・カネロの圧力にビボルが12R耐えきるのは難しいのでは?
・流れとしては、2019年11月のカネロvsコバレフ戦と同じ感じ?
・でも、ポイントはまあまあ競ると思う
・ビボルがカネロのプレスに耐え切れば鼻差で逃げ切るパターンもある
・勝敗予想はカネロの12RKO。逆にビボルが勝つなら僅差判定
 
ほほう、何となくそれっぽいことを言っているような、そうでもないような。
自分でもどんな予想をしたのかをすっかり忘れているのだが、例によって多方面に予防線を張った上でコケたわけか笑
 
まあ、
「ビボルのジャブがカネロの前進を止められるかが見どころ」
「ビボルが勝つなら僅差判定」
この辺りはぼちぼち合っていたのでよしとしますか(何様だよww)。
 
 
というか、これで9月に予定されていたカネロvsゲンナジー・ゴロフキンVol.3は白紙に戻ったんでしょうか。
カネロ陣営はビボルとの早期の再戦を望んでいるみたいですが。
 
個人的にカネロがゴロフキンをKOするシーンを観たかったので、この流れは少々残念だったりする。
 

最後まで粘ったビボルがすごかった。ポイントは僅差だったけど流れはずっとビボルな気が…

具体的な感想だが、ビボルが最後までよく粘ったなぁと。
 
申し上げたようにこの試合はビボルのジャブがどこまで機能するか、カネロの圧力をどれだけ回避できるかが見どころだと思っていた。
と同時にいかにディミトリー・ビボルと言えどもカネロの圧力を1試合受けきるのは厳しい。どこかの段階で耐えきれずにガードが決壊するのではないかとも思っていた次第である。
 
ところが実際にはディミトリー・ビボルは12Rにわたってカネロの圧力に耐え続け、出力を落とすことなく反撃してみせた。
それこそラスト2Rはカネロの方が疲労とダメージで失速させられていたくらい。ポイントこそ僅差だったものの、試合を通して観れば終始ビボルの流れだった。
 
現代版石の拳・ベテルビエフさんがカラム・スミスをKO。一方的って聞いたけどカラム・スミスが意外とがんばってた。ベテルビエフvsビボルは絶対にやれよな笑
 

鋭い左リードと固いガードにフットワーク。これまで誰もできなかったカネロ対策を実行してみせた

中でも印象に残ったのはやはりビボルの左リード。
攻撃の起点になるとともにこの選手の生命線とも言えるパンチだが、この左がカネロの前進をそのつど鈍らせていた。
 
 
2018年9月のゲンナジー・ゴロフキンVol.2以降、カネロの圧力を真正面から受け止めた選手は皆無である。
 
正面衝突で勝負を挑んだロッキー・フィールディングやアブニ・イルディリムはカネロのボディで早々に沈み、期待感のあったカラム・スミスは2Rの時点で二回り小さいカネロの馬力にブルっていた。
 
アウトボクシングで逃げ切りを図ったビリー・ジョー・サンダースやカレブ・プラントも中盤~後半にかけて追いつかれ、かつてL・ヘビー級で凶悪な強さを誇ったセルゲイ・コバレフもカネロの馬力を抑えきれずにKO負けを喫している。
 
カネロvsサンダース感想。カネロの凄さと大観衆の熱気に目を奪われた。同時にボクシングのしょーもなさも山ほど目の当たりにしたよね
 
L・ヘビー級としては大柄とは言えないビボルもカネロの餌食になるのではないかと思っていたところ……。
 
いや~、すごいっすねぇディミトリー・ビボル。
鋭いジャブで前進を寸断し、高く上げたガードは最後まで崩れることがなく。
カラム・スミスがわずか2Rで死に体になったのに対し、ビボルの足取りは12Rを通してしっかりしていた。
 
・ジャブで突き放す
・足を使って正面を外す
・近づかれた際は連打とガードで対処
 
“左リードとフットワークを駆使して遠間で勝負”という、誰もがわかっていたけど誰も実行できずにいたカネロ対策を初めて遂行してみせた。
 
L・ヘビー級という魔境で全勝をキープしつつも地味強マンのまま燻っていたビボルだが、今回の勝利で一気に脚光を浴びることに成功した。ひょっとしたらPFPランキングに顔を出すのでは? というくらい。
 
 
そう考えると、同じく階級アップ後にコバレフに勝利→ディミトリー・ビボルとアルツール・ベテルビエフには目もくれずにさっさと引退したアンドレ・ウォードはガチでクレバーでしたね。
 

外旋回のカネロのフックと最短距離を真っすぐ通るビボルのジャブ。攻防のメリハリもよかったけど、やっぱりジャブだよね

高いガードと鋭いジャブでカネロのプレスを寸断するビボル。
やや外旋回の軌道で大振り気味にガードの上を叩くカネロに対し、ビボルのパンチは最短距離を真っすぐ通過する。
 
中間距離ではジャブの連打でカネロの身体を揺らし、踏み込みに合わせてバックステップ。距離が詰まりそうになればサイドに動いて正面を外し、アングルを変えた位置からさらにジャブを打ち込む。
 
カネロが強引に近づいてくればロープ際でガードを固めて耐え、カネロがフッと力を抜いた瞬間を狙って連打を浴びせて脱出、すぐさま距離をリセットする。
 
中間距離ではジャブとフットワーク。
距離が近くなればガードに徹する。
そして、カネロが休んだ瞬間を狙って連打。
 
攻撃と防御のメリハリをつけ、体格差とスピード差でひたすら翻弄。二の腕が赤く変色しようがガードだけは意地でも高く上げたまま。
同じくジャブが得意なカレブ・プラントはスピーディな出入りで勝負したが、あそこまで激しく動くわけではないので体力の消耗も少なくて済む。
 
カネロvsプラント、モグラ叩きみたいな試合。あっちを隠せばこっちを打たれ、こっちを隠せばあっちを打たれ。プラントもがんばったけど最後に決壊してアディオス
 
お互いにクリーンヒットは少なく各ラウンドで大きな差はない。
要所で見せるヘッドスリップや上体反らしはさすがのカネロとしか言いようがない。
 
ただ、申し上げたように試合の流れを掴んでいたのは完全にビボルの方。
これまで突き破れていたはずのガードを崩せず、なかなか自分の距離で勝負できないカネロから徐々に余裕が失われていく様子が何とも印象的だった。
 
繰り返しになるが、それもこれも生命線である左リードが機能したのが大きかったなと。
 

カネロは得意のプレスで思ったよりもビボルを削れず。終盤勝負をかけるも逆に反撃を受けて失速する

もちろんカネロも動き自体はよかったと思う。
中盤、終盤にそれぞれギアを上げて流れを変えようとしていたのはわかったし、あそこでねじ伏せるのがいつもの勝ちパターンでもあったわけで。
 
ところが今回は階級差も影響してか、フルスロットルで攻めてもいまいちビボルを削れない。
それどころか連打の切れ目に反撃を浴びて後退、ポイントと引き換えに貴重な体力をごっそり持っていかれるという。
 
特に勝負をかけた9、10Rは厳しい。全力のプレスでビボルを焦らせるどころか、ある程度余裕を持ってしのがれてしまったのが……。
あの9、10Rで実質勝負あった印象である。
 
いや、冗談抜きでラスト2Rのカネロはちょっと効いてたと思うんですよね。
ゼーハーゼーハーしてるところにまあまあのクリーンヒットをもらってたし。
 
 
(僕に)大きな期待感を持たせて登場したものの、手も足も出せずに沈んだロッキー・フィールディング。あの試合を受けて階級屈指のビッグマンがカネロに蹂躙される様を“ロッキー・フィールディングの呪い”と呼んできたわけだが、脈々と続く負の連鎖をようやく断ち切ったディミトリー・ビボルには心からの賞賛を送りたい笑
 
カネロがカラム・スミスに完勝。階級屈指のビッグマンがカネロに蹂躙される現象を“ロッキー・フィールディングの呪い”と名付けよう
 

再戦はアリじゃないの? ポイントも僅差だし、カネロとしてもまだやりようがありそう。序盤4Rがすべてカネロのポイントになったのは驚いたけど

なお敗れたカネロは早期の再戦を希望しているとのこと。
 
普段ダイレクトリマッチにはいまいちそそられない僕だが、これに関してはアリだと思っている。
 
3-0の判定ながらもポイントは三者ともに115-113。
カネロ陣営としても、得意のプレスがあまり機能しなかったことを受けて今度はカウンター中心でいくなどの対策を取ることも可能。
“完全決着”とまでは言えない内容だった分、多少は支持できる。
 
何となくだが、2021年9月の井岡一翔vsフランシスコ・ロドリゲス戦の再戦が行われるイメージに近い。
フランシスコ・ロドリゲスはもう一度日本に呼ぶほどファンの関心が高い選手ではないが、カネロとビボルの再戦は別。この両者ならたとえ二番煎じでも十分ビジネスになると思われる。
 
逆にここ最近で理解に苦しんだダイレクトリマッチは2021年10月のタイソン・フューリーvsデオンティ・ワイルダーVol.3と2022年3月の寺地拳四朗vs矢吹正道戦の2試合。
どちらも明確な決着がついたにも関わらず意味不明なリマッチが開催され、脳内の「?」が最後まで止まらなかった。
 
拳四朗の接近戦で矢吹正道陥落。そりゃ序盤から倒しにくるよ。ガードを上げた拳四朗を初めて観た。不必要な再戦を強いられた矢吹の不憫さ
 
まあ、今回も序盤4Rがすべてカネロのポイントになっていたのには少々驚いたが。
僕としては2-2、もしくは贔屓目に見てもカネロ3-1ビボルかなぁと思っていたので。
 
リングサイドに退屈そうに座っていた年齢不詳のセクスィお姉さんのインパクトが強すぎて集中力を欠いたという噂もありますがww


 
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