尚弥きゅん。井上尚弥がモロニー(マロニー)を7RKO。モロニーはいい選手だったし井上の試合で過去一番好きかもしれない【結果・感想】

尚弥きゅん。井上尚弥がモロニー(マロニー)を7RKO。モロニーはいい選手だったし井上の試合で過去一番好きかもしれない【結果・感想】

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2020年10月31日(日本時間11月1日)、米・ネバダ州ラスベガスで行われたWBA/IBF世界バンタム級タイトルマッチ。同級統一王者井上尚弥が挑戦者ジェイソン・モロニー(マロニー)と対戦し、7R2分59秒KOで勝利した一戦である。
 
 
新型コロナウイルスの影響によりMGMグランド・カンファレンス・センターでの無観客興行となった今回。
 
序盤から左右に動きながら踏み込みのタイミングを測るモロニーに対し、井上はガードを高く上げてじっくりプレッシャーをかける。時おり左リードでモロニーのガードを揺らすものの、両者ともに決定機のないまま1、2Rが過ぎる。
 
だが3Rに入ると井上が自ら前進。
重い左リードでモロニーの身体を揺らし、モロニーが踏み込んでくればバックステップしながらのカウンターで出足を止める。
 
それ以降、積極的に前に出る井上の圧力をモロニーは抑えきれない。ボディ、顔面に被弾を重ねて徐々に疲弊させられていく。6Rには左リードにカウンターを合わせられてダウンを喫するなど、ダメージの蓄積で足取りも重い。
 
そして、7R終了間際に右ストレートにカウンターを合わせられてダウンを喫する。そのまま立ち上がれずに10カウントを聞いて試合終了。井上尚弥の7R2分59秒KO勝利が決定した。
 
井上尚弥がダスマリナスをボディで3RKO。でもダスマリナスよかったよね。左フック2発で萎縮しちゃったけど。また戻ってこいよオマイ
 

井上の試合では今回が過去一で好きかも。モロニー(マロニー)が負けたのは残念だったけどね

新型コロナウイルスの影響で無観客試合となった今回。
本来であれば4月にジョン・リエル・カシメロとの統一戦が行われていたはずだったことを考えると、井上ファンにとっては待ちに待った試合だったのではないか。
 
なお僕自身はそこまで井上尚弥をお気に入りなわけではなく、なおかつ以前から何度も申し上げているようにジェイソン・モロニー(マロニー)のファンである(自称日本で5指に入るほどの)。
なので、この試合も全力でモロニー(マロニー)を応援していた次第である。
 
モロニー(マロニー)がんがれ。井上尚弥相手にどこまで粘れるかの試合かなぁ。モロニー好きだし、井上の苦戦も観たいけど
 
と言ってもこの日は午前中から用事があってリアルタイムでは視聴できず。先ほど後追いで観終わったわけだが……。
 
 
うん、おもしろかったですね。
モロニー(マロニー)は思った通りの好選手だったし、井上の試合運びもよかった。表題の通りなのだが、井上のこれまでの試合の中では一番好きかもしれない。
 
感動したのはノニト・ドネア戦。
度肝を抜かれたのはファン・カルロス・パヤノ戦。
絶望を感じたのはジェイミー・マクドネル戦。
でも、試合として好きなのは今回のジェイソン・モロニー(マロニー)戦が一番である。
 

序盤は様子見の井上。モロニー(マロニー)のインファイトを警戒していた気がするよ

まず今回の試合、井上はモロニー(マロニー)の接近戦をかなり警戒していたと思う。
 
序盤はガードを高く上げて対峙し、モロニーのステップインに合わせてバックステップで距離を取る。単発気味ながらも突き放すようなリードを浴びせ、時おり腰を低くかがめてボディに左を突き刺す。
 
遠い位置での差し合いにも長けたモロニーだが、どちらかと言えばインファイトが得意。前回のレオナルド・バエズ戦でも、近場で左右に動きまくってバエズを置いてきぼりにした上でKO勝利を挙げている。
 
恐らく井上陣営も、懐に入られてちょこまか動かれるのを避けるために遠い位置をキープすることを心がけていたのではないか。
 
モロニーvsバエズ感想。僕はジェイソン・モロニーが好きなんですよね。井上尚弥とはロドリゲスではなくvsモロニーが観たかった
 
対するジェイソン・モロニーはいつも通り。
左右に大きく動きながら徐々に回転半径を狭め、左リードを連打しながら間合いを詰める。近場での連打に加えて足を動かしながらでも強いパンチが打てるのがこの選手の強みだが、この試合でもそれは十分発揮されていた。
 
左リードの戻り際に合わせてスルスルっと近づく動きは2018年10月のエマヌエル・ロドリゲス戦でも見せていたもの。似たような距離感を持つ井上にもそれなりに有効だったのではないか。
 
ただ、それでも今回のモロニーはなかなかインサイドに入れない。左リードを連打しながら懸命にステップインを繰り返すが、そのつど井上のバックステップでかわされてしまう。
 
そうそう、これなんですよね。
井上尚弥にあってエマヌエル・ロドリゲスにないものがこのバックステップ。前回のノニト・ドネア戦でもこれでドネアの猛攻をしのいでいたが、相手が嫌な間合いに入ってきた途端にさっと離れて距離をリセットしてしまうのが井上の持ち味の一つだったりする。
 
激しく動いてもいっさいバランスを崩さず、すぐさまリターンのカウンターにつなげる流れ。井上一族の特徴でもある足腰の強靭さを目いっぱい活かした動きである。
 

3Rから攻勢に転じる井上。出鼻を挫かれたモロニーも接近戦で対抗したけど…

そして3R。
このラウンドから攻勢に転じた井上が自ら前に出てプレッシャーをかける。
ガードを高く上げて距離を詰め、左右フックをガードの上から叩き込んでモロニーを後退させる。
 
前半2Rでモロニーの危険度をある程度把握したのだと思うが、この切り替えはめちゃくちゃうまかったと思う。
恐らくモロニーはこのラウンドあたりからインサイド勝負を仕掛けるつもりだったと想像するが、井上の圧力によって出鼻を思い切り挫かれた感じ。
 
基本スペックではモロニーは井上にはかなわない。
だが、サイドに動きながら間合いを詰め、得意のインファイト勝負に持ち込めればわずかに可能性はある。序盤2Rを様子見に使い、モロニーにとっては「さあ、ここから」というタイミングで。
 
逆に圧力をかけられ、一気にタジタジにされてしまうという。
 
 
それでも井上が前に出れば、必然的にインファイトが発生する。
3、4Rと懐での打ち合いで何度かモロニーが左フックをヒットするシーンがあったが、恐らくアレが陣営の作戦だったのだろうと。
 
井上の馬力に耐えて距離を詰め、近場での手数勝負に持ち込む。
で、井上のガードが開いた瞬間に左フックのカウンターを叩き込む。前回のノニト・ドネアを参考にしたのだと思うが、狙いとしてはマジで悪くなかった。実際、2発ほどいいパンチが入っていたしね。
 
ただまあ……。
やっぱりスペックが違ったよな……。
 
強引に距離を詰めたいのだが、井上のバックステップ+カウンターの鋭さに追いつけず。
井上の左リードをかいくぐってインファイトに持ち込んでも、近場でのショートアッパーやフックが強烈過ぎてその場に留まっていられない。
 
本来ならあの位置からさらに連打を浴びせて井上にロープを背負わせたかったのだろうが、なかなかリング中央から動けず。
井上がロープを背負うシーンなど、試合を通して2度あったかどうか。
 
首に手を回したり肘で押し込んだりと随所にダーティさも見せていたが、最後の最後まで井上を動揺させることはできなかった。
 
実は僕はリゴンドーのことが大嫌いなんですよ。僕のジェイソン・モロニー再起成功。ウォーレン、ロドリゲスvsラッセル、コンラン、前田稔輝振り返り
 

疲労困憊のモロニー。完全にタイミングを覚えられてのカウンターを被弾し、最後は追いかけ回されてにっちもさっちもいかず

5Rあたりからはさすがのモロニーも疲労困憊。
ボディを効かされ、テンプルに右を被弾しまくったせいでダメージの蓄積は明らかである。
 
頼みの綱だったインにも留まれず、中間距離での差し合いでは歯が立たない。できることと言えば、左右に動いて井上の正面を外すくらい。
 
前回の予想記事で「モロニー(マロニー)がどこまで粘れるかの試合かなぁ」と申し上げたが、マジでそんな感じ。ちょっと希望らしきものが見当たらない状態である。
 
で、6Rの序盤に左リードにカウンターのフックを合わせられてダウンを喫するわけだが、あの時点で井上に完全にタイミングを覚えられていたのだろうと。
 
左リードのダブルでスルスルっと近づく流れはこれまでに何度も見せていたヤツ。序盤こそインファイトを警戒してバックステップで距離を取っていた井上だが、さすがにアレだけ同じステップを見せれば狙われるのは仕方ない。
疲労とダメージで動きが鈍った上にタイミングもドンピシャ。にっちもさっちもいかずにがむしゃらに前に出たところに食ったカウンターだったのではないか。
 
まあモロニーにしてみればあんなタイミングでカウンターを打つ相手など、これまでに遭遇したこともないのだろうが。
 
 
逆に井上はある程度余裕が出たか、カウンターをチラつかせつつガードを下げて顔を突き出したままモロニーを追いかける。フィジカル差のある相手をゴリ押しでねじ伏せにかかる得意のパティーンである。
 
こうなると、モロニーとしてはどうにもならない。
2017年末のヨワン・ボワイヨ戦でも逃げ回るボワイヨをプレッシャーで押し潰した上で豪快に1発KOで沈めたが、流れ的にはそれとほぼ同じ。
左右に動いて正面を外すモロニーを追いかけ回し、最後はどん詰まりの状態から狙いすました右を「せーの」でぶち当ててのKO勝利。
 
申し上げたようにジェイソン・モロニー(マロニー)はいい選手だったし、現状ジョン・リエル・カシメロ以外ではベストな相手だったと思う。
ただ、全体的に怖さがないというか、3Rに井上が攻撃に転じたことを鑑みても基本スペックに差があり過ぎた。
 
もう少しインに留まれる身体の強さ、近場での左フックにドネア並みの威力、タイミングがあればまったく違う展開になっていたとも思うが……。
 
ノニト・ドネアの相手がロドリゲスに変更? ようやく興味が出てきたかな。ウーバーリは気の毒だけど、いまいちそそられなかったのよね
 

試合の組み立て、ペース配分を含め、井上の試合では一番楽しめた。Nextパッキャオもいいけど、なるべくバンタム級に留まった方がいいような…

序盤2Rはモロニー(マロニー)の力量を測るための様子見。
3Rから攻撃に転じ、ボディと左リード、右ストレートで徐々に疲弊させる。
モロニーが入ってくればショートアッパーやフックで突き放し、インファイトが得意なモロニーを近場でも圧倒。
そして、踏み込みのタイミングを覚えた6Rにカウンターでダウンを奪い、最後は余裕を見せつつ鮮やかなKO勝利。
 
圧倒的な馬力と強フィジカルで相手をなぎ倒したキャリア初期の暴力的なファイトではなく、対峙した瞬間に相手を飲み込んでしまうS・フライ級後期のファイトでもない。
また、一段スケールアップして序盤KOを量産したバンタム級初期とも、カウンターを被弾してピンチに陥る→大激戦の末に判定勝利を飾ったノニト・ドネア戦とも別物。
 
序盤からじっくり相手を観察し、徐々に相手を弱らせ最後は狙いすましたカウンターをぶち込んでのKO。
試合の組み立て、ペース配分等、最初に申し上げた通り井上尚弥の試合では今回が一番好きである。
 
信じる心が拳に宿る。ドネアが井上尚弥に敗れるも、12Rの大激闘。敗者なきリングに感動しました
 
と同時に、やはり井上尚弥は現在のバンタム級がもっとも強いように思える。
今後、◯階級制覇や××との一騎打ち等、“Nextパッキャオ”を期待される立場なのはわかるが、本人が言うようになるべくバンタム級に留まって防衛を重ねた方がいいのではないか。
 
もちろんやることがなくなれば階級アップせざるを得ないし、ゲンナジー・ゴロフキンのようにベルトをコレクションしたまま避けられまくって全盛期を過ぎてしまうのも考えものではあるが。
 
 
どちらにしろ今回はなかなかおもしろい試合だった。パヤノ戦やロドリゲス戦、ドネア戦に比べればインパクトは薄いかもしれないが、僕としてはかなり満足度は高い。
 
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