平岡アンディvs佐々木尽、栗原慶太vs中嶋一輝。数日遅れで視聴したので感想を。さすがの平岡アンディと栗原慶太の圧勝っぷり【結果・感想】
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2021年10月19日に東京・後楽園ホールで開催された「フェニックスバトル81」。
日本&WBOアジアパシフィックS・ライト級王座決定戦とOPBFバンタム級タイトルマッチが行われ、平岡アンディと栗原慶太がそれぞれ勝利したわけだが。
→「平岡アンディが11回TKO勝ち 粘る佐々木尽を仕留めてS・ライト級2冠獲得」
→「栗原慶太が豪快TKOでOPBFバンタム級戦王座返り咲き 中嶋一輝は王座陥落」
このイベントはひかりTVとdTVチャンネルで生中継され、多くの人が視聴したとのこと。
だが、僕自身はもともとリアルタイムで観るのが難しかったのとメインに出場する佐々木尽の体重超過があったことで一気に興味を失い、購入をやめた経緯がある。
で、先日試合のアーカイブがアップされたと知りようやく視聴してみた次第である。
というわけで、今回はこの「フェニックスバトル81」のセミとメインの2試合についての感想を適当に言っていくことにする。
あくまで結果がわかった状態での視聴なので、新鮮味に欠けることを了承いただければと思いつつ。
佐々木尽vs関根幸太朗、レイ・バルガスvsマーク・マグサヨ。大味なヤツらがゴリゴリ打ち合う激闘な週末。パワーでねじ伏せる佐々木尽と連打とクリンチで誤魔化すレイ・バルガス
- 1. ○栗原慶太vs中嶋一輝×(3R52秒TKO)
- 2. サウスポー対策がどハマりした栗原慶太。中嶋一輝はパニックのまま撃沈した気がするよ
- 3. ○平岡アンディvs佐々木尽×(11R1分58秒TKO)
- 4. 佐々木尽はどこかで頭打ちになると言われていた“どこか”がきちゃったかな
- 5. 出だしはまあまあよかった。でも、1Rで早くもネタ切れ感が…
- 6. 平岡アンディは離れ際の強振にだけ注意して遠い位置から削っていればいい。佐々木尽の挑発は苦し紛れだろうな
- 7. 佐々木尽の魅力はやっぱり凄まじい。タイトルマッチの前にもう1試合挟んでいれば、もしかしたら…
- 8. 体重超過を別のものに例えると「おおう…」ってなるよね笑
○栗原慶太vs中嶋一輝×(3R52秒TKO)
まずはこの試合。
2021年1月に井上拓真に敗れてOPBF王座を失った栗原慶太の復帰戦。対戦相手は井上拓真と同じ大橋ジム所属で現王座の中嶋一輝である。
試合の感想としては、栗原慶太の左がよかったなぁと。
相手の中嶋一輝の過去の試合を観ると、どうやら強打の左を武器としている選手っぽい。
右で相手との距離を調整し、遠い位置から鋭く踏み込み左をぶち当てる。
1発効かせたあとは一気にペースアップ。近場で連打を浴びせて押し切る流れ。
そして、改めて観てみると外側からの右が結構目立つ。
外旋回の右でガードをあけ、得意の左を打ち込むスペースを作る。
もしくは右フックを引っ掛けてサイドに回り込み、角度をつけて左をねじ込む。
特にvsオーソドックスの試合で前手の右を効果的に使っている印象である。
で、今回の栗原慶太はこの右を前手の左でうまく封じていた。
中島が小刻みに動かす右に合わせて自分も左を動かし、外側から押さえ込むように被せる。
これによって中島のサイドへの動きを封じつつ、中に入るチャンスをうかがう。
横への動きを制限された中島は前後のみで勝負せざるを得なくなり、攻撃も単調になる。
逆に前手の差し合いで外側を取ることに成功した栗原はこの左で中島を正面におびき出し、圧力をかけて後退させる。そのままロープを背負わせ連打につなぐ。
井上拓真は打倒井上尚弥筆頭? 和氣慎吾戦での圧勝がお見事すぎた。その他、ムンギアvsロサド、キコマルvsガラハド振り返り
サウスポー対策がどハマりした栗原慶太。中嶋一輝はパニックのまま撃沈した気がするよ
栗原慶太は強打の右が武器の選手だが、射程自体はそこまで長くない(と思う)。
右を機能させるには腕を思い切り振れる位置まで近く必要があり、前回の井上拓真戦ではどうしてもその間合いに入ることができなかった。
栗原慶太vs井上拓真感想。井上拓真がめちゃくちゃ上手かったな。はじめの一歩方式で言えば栗原がKOで勝つ流れだったけど
だが、この試合では狙い通りに? 中島の動く範囲を前後のみに限定し、それによって無遠慮に踏み込むことが可能になった。
中嶋一輝の射程の長さを考えるとある程度の被弾は仕方ない。
これまでよりも後ろ重心を何割か多めに意識しつつ、深刻なダメージを負う前に得意な距離での打ち合いに持ち込めば。KOで勝つ可能性は高いと考えていたのだと想像する。
実際、1Rに比べて2Rには両者の距離がグイッと縮まり、栗原の圧力に中島の足が止まるシーンが増えた。
中島はロープを背負ったままガードを固めるのみで、なかなか自分の間合いで対峙させてもらえない。
袋小路に追い込まれた状態で3R開始のゴングが鳴り、ロープを背にしたまま左に回らされる。で、プレッシャーで足が止まったところに右フックを被弾してジ・エンド。
1Rで距離を支配され、
2Rで無遠慮に追い回され、
3Rでとどめを刺される。
最初から最後まで栗原陣営の作戦通りというか、中嶋一輝はパニックのままなすすべなく撃沈させられた気がする。
いや、すごかったですね栗原慶太。
3RTKOという結果しか知らずに観たので、ここまで圧倒していたことにめちゃくちゃ驚かされた。
井上拓真戦での敗戦直後は「もしかしたら引退しちゃうかも?」と勝手に心配したが、まったくそんなことはなく。引退どころか「調整試合の相手でもいいから井上尚弥と対戦したい」とコメントするまで闘志を戻してきたのは文句なしにイケてる。
勝った直後にバク宙する勢いで飛び跳ねたと思ったら普通のジャンプだったのもよかったよね()
千葉開が栗原慶太にTKO勝利。千葉は完全にゾーンに入ったな。ゴングとともにコーナーから飛び出して前のめりで栗原を待ち構える姿が印象的だった
○平岡アンディvs佐々木尽×(11R1分58秒TKO)
続いてはいよいよメインイベント。
平岡アンディと佐々木尽による日本&WBOアジアパシフィックS・ライト級王座決定戦である。
この試合は佐々木尽の前日計量失敗によりケチがついた(僕も興味を失った)がそれはそれとして。
試合を観た感想だが、ちょっと力の差があったなと。
この試合を現地or配信でリアルタイム観戦した方の感想を漁ると、両者には相当な実力差があった旨のコメントが目立つ。
技術レベルが違いすぎたとか、一方的な試合だったとか。
佐々木尽のパンチ力は魅力的だし、体重超過直後にあそこまでオラつくメンタルも目を見張るものがある。だが、残念ながら平岡アンディは一枚も二枚も上だった。
などなど。
当初から言われていたように、平岡アンディの技術力が佐々木尽の馬力を寄せ付けなかった試合だったとのこと。
そして、数日遅れで視聴を終えた僕の感想もそのまんま。
「力の差が大きかった」である。
武居由樹vs河村真吾、佐々木尽vsマーカス・スミス感想。メインの谷口将隆vs石澤開戦が想像以上の地獄だった。計量失敗が起きるのは仕方ないから代替案を用意せいよ笑
佐々木尽はどこかで頭打ちになると言われていた“どこか”がきちゃったかな
佐々木尽の魅力は何と言っても躊躇のないフルスイングとすべてをなぎ倒すパンチ力。
前回の湯場海樹戦でも2度のダウンを奪われながらも1発で形勢を逆転。9割がた負けていた試合を劇的なKOで勝利している。
どんな状況からでも1発当てればすべてをひっくり返せる危険度は文句のつけようがない。
佐々木尽vs湯場海樹、一道宏vs谷口彪賀感想。ゾンビのような一道宏。佐々木尽のロマンは続く
その勢いのまま日本&アジアパシフィック王座戦になだれ込み、同じサウスポーの平岡アンディすらも打ち倒すのでは? と期待させたのだが……。
現実はそこまで甘くなかったというか。
「このボクシングだとどこかで頭打ちになる」と言われていた“どこか”がきてしまった試合と言えそうである。
出だしはまあまあよかった。でも、1Rで早くもネタ切れ感が…
と言いつつ、佐々木尽の出だしはまあまあよかったと思う。
意識的に増やした左リードで距離を測り、上体を振りながらジグザグに距離を詰める。
前後のステップも入れながら前進する動きは足の速い平岡アンディに追いつくための対策をうかがわせた。
だが、1R2分すぎには早くもネタ切れ感が……。
前手の差し合いでは歯が立たないと感じたのか、前戦と同様、ガードを上げてグリグリ前に出るだけの動きに戻ってしまう。
サイズ差、スピード差のある平岡アンディに強打をぶち当てるには自分の間合いに入る必要がある。
ところが、佐々木尽にはその部分を埋める追い足がない。
これまでは比較的距離の噛み合う相手との対戦が多く、自慢の強打を打ち込める位置からスタートできる試合が続いていた。
それが前回の湯場海樹戦、もっと言うと今年2月の岡澤セオン戦でサウスポーの技巧派に苦労させられることを露呈した。
追い足がないので初弾はまず届かない。
遠間から踏み込んでのぶん回しもこのレベルになると簡単には当たらない。
当然対策はしてきたが、1Rの序盤にあっさり攻略されてしまった。
マジな話、今回の佐々木尽は4Rの時点でほぼ手詰まりだった気がする。
平岡アンディがラガンベイを圧倒して2RTKO勝利。タコ踊り反省ワロタw ふざけてたとは思わないけどガッカリしたよね。次も観たい要素が皆無だったし
平岡アンディは離れ際の強振にだけ注意して遠い位置から削っていればいい。佐々木尽の挑発は苦し紛れだろうな
平岡アンディとしては、遠い位置でじっとしている相手にガードの間からスパスパ狙い打ちするだけでいい。
頭を下げて強引に向かってくればサッと正面を外し、カウンターをねじ込みつつ覆いかぶさるようなクリンチで動きを封じる。
唯一注意するのは離れ際の強振だが、それも中盤にはタイミングを覚えて対処。試合後半にはあのぶん回しにすらカウンターを合わせていた。
佐々木尽が疲れを見せれば一気にペースアップ。
逆に腹を決めて向かってくるときは足を使って極力付き合わず。
開始前のメンチ切りやラウンド中盤の挑発その他。
「体重超過の直後にあれだけオラつける佐々木尽のメンタルはすごい」などと言われていたが、実際には違うと思う。
むしろアレは手詰まりでやれることがなくなったゆえの苦し紛れ。挑発を繰り返すことで何とか打ち合いに来させようとしていたのだと想像する。
挑発にいっさい乗らず、最後まで淡々と自分の“作業”をこなした平岡アンディこそ「メンタルがすごい」と言えるのではないか。
平岡アンディいいね~w エドワーズを4RTKOで沈めてラスベガス2連勝。今のところ変なしがらみがないのがいいよな。今後もこの調子でがんがってね
佐々木尽の魅力はやっぱり凄まじい。タイトルマッチの前にもう1試合挟んでいれば、もしかしたら…
それでも佐々木尽の魅力は凄まじい(と思う)。
この試合も最後まで捌かれはしたが、何発かは得意のフックが平岡アンディの顔面を捉えていた。
クリンチ際のぶん回しに賭ける以外にできることがないと申し上げたが、何だかんだで最後までそれをやり続けたスタミナもすごい。
強引に前に来られるとタジタジになって無防備に後退するのが平岡アンディの悪癖だと思っているが、実際あと一歩まで追い詰めるシーンも何度かあったわけで。
荒削りで洗練さのカケラもないが、若さと自分の幻想に全乗りした突貫ファイトはとんでもない。
と同時に、前進しながら相手を追い詰める作業とジャブを両立できる村田諒太の技術力はやはり高いんだろうなと思わされる。
タラレバを言っても仕方ないのだが、もしかしたらタイトルマッチの前にもう1試合挟んでいれば違ったのかもしれない。
圧倒的フィジカルとパンチ力で新人王戦をぶち抜き、強打のベテランを撃破。ホープ対決を制してユース王座を獲得し、最強の挑戦者との無敗対決に勝利して今回のタイトルマッチへGO。
佐々木尽の王道キャリアたまらんな。10/19平岡アンディと日本王座決定戦。“これが主役のボクシング”をまんま体現しとるよね
キャリアの進め方としてはごく真っ当に見えるが、例えば湯場海樹戦のあとに元王者のベテランとのテストマッチ的なものでもあれば。
多少なりとも苦戦の経験を重ねておけば、今回のような一方的な試合にはならなかった可能性も?
まあ、湯場海樹を撃破した勢いそのままにってのもあったしね。
必ずしもどちらがいいとは言えないですよね。
そして、体重超過をやらかした上にあれだけコテンパンにやられた佐々木尽をいまだに主語で語っている僕もまあまあイワされてる側の人間っぽいw
体重超過を別のものに例えると「おおう…」ってなるよね笑
ちなみに試合後の平岡アンディのコメント記事が下記。
「計量失格の佐々木尽11回TKO負け「いい子、責めないで」平岡アンディ」
例えばレストランでコース料理を予約したら、前日に
「食材発注をミスったのでメインディッシュは不完全なものしか出せません」
「でも、ウチの料理長は性格もいいしめちゃくちゃ一生懸命やってるんです」
「だから責めないでやってください」
「値段は満額でお願いします」
と連絡がきて「はい、わかりました」と言えますか? という話。
僕は現地観戦もしていないし配信もリアルタイムで観ていないので実害は少ない。
今さら体重超過にガタガタ言う気もないのだが、こうして別のものに例えてみるとなかなかの言い分だなぁと思った次第である。
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