井上拓真は打倒井上尚弥筆頭? 和氣慎吾戦での圧勝がお見事すぎた。その他、ムンギアvsロサド、キコマルvsガラハド振り返り【結果・感想】

井上拓真は打倒井上尚弥筆頭? 和氣慎吾戦での圧勝がお見事すぎた。その他、ムンギアvsロサド、キコマルvsガラハド振り返り【結果・感想】

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先日、正式発表された村田諒太vsゲンナジー・ゴロフキン戦、井上尚弥の約2年ぶりの国内凱旋試合などなど。2021年末は新型コロナウイルスの影響で開催できずにいた多くの試合が一気に解放されている印象で、久しぶりに日本ボクシング界のお祭り感が高まりそうである。
 
村田諒太vsゴロフキン正式発表。予想云々はともかく勝つしかねえよ。厳しい試合になると思うけど、最初から攻めるしかないんじゃない?
 
そんな中、今回は先週末までに行われた注目試合(個別に取り上げるまでにはいかないけど、スルーするにはもったいない)について振り返っていくことにする。
 
具体的には、
・ハイメ・ムンギアvsガブリエル・ロサド(2021年11月13日、米)
・キコ・マルティネスvsキッド・ガラハド(2021年11月13日、英)
・井上拓真vs和氣慎吾(2021年11月11日、東京)
の3試合。
 
前置きが長くなってもアレなのでさっそくいってみたいと思う。
 

○ハイメ・ムンギアvsガブリエル・ロサド×(判定3-0 ※119-109、118-110、117-111)

まずはこの試合。
 
37戦無敗のハイメ・ムンギアのミドル級4戦目。
対戦相手のガブリエル・ロサドはゲンナジー・ゴロフキンやジャーメル・チャーロ、デビッド・レミュー、ダニエル・ジェイコブスといった強豪と対戦した選手で、ボクシング映画「クリード(CREED)」にも出演した経験を持つ。
 
 
感想としては、ハイメ・ムンギアってホントに変わらねえなぁと。
 
ムンギアは現在25歳、今回で38戦目となる。31歳で60戦のキャリアを持つカネロ同様、メキシコ出身選手の試合数には毎回驚かされる。
 
そして、相変わらずムンギアがムンギアしとったなというのが率直な印象である。
 
 
この選手を始めて観たのは2018年5月のサダム・アリ戦だが、そのときの倒しっぷり、怪物感は凄まじいものがあった。
 
S・ウェルター級に留まれることが不思議なほどの巨体、その巨体に見合わないスピードと多彩なコンビネーションその他。
 
足を使ってポイントアウトを狙うサダム・アリにあっさり追いつき、長いリーチと強烈なパンチで何度もダウンを奪った上での4RTKO勝利。初挑戦で見事戴冠を果たしてみせた。
しかも当時は22、23歳。とんでもないヤツが出てきたとな驚いた記憶がある。
 
それ以降も快進撃を続けるも、ところどころで物足りない姿も見せることに。
中でも2019年1月の井上岳志戦、2019年4月のデニス・ホーガン戦は身体能力任せのごり押しファイトの限界を感じさせた。
 
 
で、それから約2年半後の今回……。
ほとんど変わってねえじゃねえかと。
 
パンチに強弱もなく打ち終わりにカウンターを狙われてタジタジになる。
1発もらうと一気に余裕がなくなるのもこれまで通り。
 
ミドル級もすでに4戦目だが、やっぱりムンギアがムンギアやっとるなぁと。
 
もともとこの選手は左のガードが低く、上述の井上岳志戦でもロープ際で右クロスを側頭部に被弾するシーンが目に付いた。
それを受けてか、今回の試合では左ガードを常に上げる意識が見られたが、変わったところと言えばそれくらい。
 
ガブリエル・ロサド程度ならフルスロットルの喧嘩ファイトでねじ伏せられるというのも理解できるが、それでももう少しやりようがあった気も……。
 
 
基本スペックの高さ、身体能力の高さは文句のつけようがない。
脳筋ファイトから脱却するきっかけになりそうな試合もいくつか経験している。
 
何かコツを掴めば一気にハネそうな気もするが、今のところその気配は微塵も感じない。
 
リー・ウッドがマイケル・コンランを場外KO。空中で失神する衝撃のラスト。やることをやり続けたウッドと1発狙いの出たとこ勝負のコンラン
 
38戦のキャリアを積みながらもほとんどファイトスタイルが変わらないというのもそれはそれでおもしろい。
むしろこのファイトでどこまでいけるか? という方に興味を引かれるくらい。
 
現状、狙えるタイトルはWBOのデメトリアス・アンドラーデくらいだが、アンドラーデ相手にあの脳筋ファイトが通用するかどうか。
 
まあ、実際にはGBP所属のムンギアとマッチルーム所属のアンドラーデが対戦するには超えなくてはならないハードルが多そうだが。
 

○キコ・マルティネスvsキッド・ガラハド×(6R6秒TKO)

続いては英国で行われたIBF世界フェザー級タイトルマッチ。王者キッド・ガラハドと元S・バンタム級王者キコ・マルチネスが対戦、キコ・マルチネスが6R6秒TKOで勝利し約7年ぶりの王座戴冠を果たした一戦である。
 
 
この試合はもう、キコマルがお見事でしたとしか言いようがない。
 
7年ぶりということは日本で長谷川穂積を下して防衛に成功して以来の戴冠か。
僕自身、当日DAZNのラインアップを見てこの試合の存在を知ったくらいのクソニワカなのだが、それでもキコマルの勝利にはめちゃくちゃ驚かされた。
 
長谷川穂積のことは好きじゃないけど“世界”を見せてくれた選手だった。興味がなくてあまり観てなかったけど
 
と言いつつ、序盤からかなり際どい試合だったことも確か。
 
王者キッド・ガラハドは広いスタンスに腕を低く下げた構えで対峙。スイッチを繰り返しつつ見切りのよさと距離感を活かして遠い位置から顔面にパンチをヒットしていく。
 
対するキコマルはいつも通りガードを高く上げて上体を振り、左リードやいきなりの右など様々な方法で懐への侵入を試みる。
 
細かいパンチを顔面に被弾し、出足を止められるキコマル。
その一方、伸び上がるように打ち込むストレート、フック系のパンチが再三ガラハドの顔面をかすめる。
 
試合の流れはガラハドだが、キコマルのパンチもどこかで当たりそう。
 
ガラハドが右構えの際は左フック、サウスポーにスイッチすれば右ストレート。ガラハドもバックステップとスウェイでしのいでいるが、あまり余裕は感じられない。
「これは案外わからないんじゃないの? あと少し踏み込めば当たりそうだし」というのが序盤2Rまでの印象である。
 
 
そう思っていると、4Rから劣勢のキコマルが一気に圧力を強める。
 
ガラハドのリードを額で受け、パンチの戻り際に膝を曲げて伸び上がるように距離を詰める。と同時に左右のパンチを顔面に。
距離が詰まれば肘と身体で逃げ場をふさぎ、ダッキングで急所を隠すガラハドの上から連打を浴びせる。
 
対するガラハドはキコマルの圧力で棒立ちにさせられ、やむを得ず後退する状況に。
 
 
続く5R。
このラウンドも開始直後からキコマルが圧力をかけ、何度もガラハドがロープを背負う流れが続く。
 
そして、残り20秒を切ったところで左のフェイントから大きく踏み出すと同時に打ち込んだ右フックがガラハドの顔面にヒット!!
この1発でガラハドが崩れるように仰向けにダウンを喫する。
 
いや、すげえなオイ。
もう少しで当たりそう、あと半歩踏み込めば当たるんじゃねえかと思っていたら、本当にそれをやりやがった。
 
 
相性的にも能力的にもキコマルがガラハドに判定で勝つのは難しい。
勝機を見出すにはどこかで勝負をかける必要があるが、それには体力のある&ダメージの少ない前半がいい。
 
一方、やり方次第では自分のパンチが届くというのも序盤3Rでわかった。
どの道判定では勝てないのだから、やるなら体力が残っているうちにさっさとGo! しちまえよ。
 
キコマル陣営の考えとしては大体こんな感じだろうか。
 
とは言え、この大一番であの決断ができる勇気は本当に素晴らしい。
これも通算55戦のキャリア、常に敵地で戦ってきた経験値ゆえのものかもしれない。
 
 
あとはまあ、キコマルが単純にサウスポーが得意というのもありそう。
長谷川穂積戦でも初回からガツガツ圧力をかけていたし、この試合で奪った2度のダウンも両方ガラハドが左構えだったときのもの。
 
逆に6Rのガラハドはダメージが深すぎてスイッチする余裕が残っていなかったか。
 
 
申し上げたように最初は存在すら知らなかった一戦だが、何だかんだでこの週末で一番エキサイティングで感動的な試合だった。
 
要注目プロスペクト!! でもないけど僕の目に付いた選手を取り上げていく。目玉カードのアンダーに出場予定のコイツらをメモしておこう
 

○井上拓真vs和氣慎吾×(判定3-0 ※117-110、117-110、117-110)

ラストはこの試合。
元バンタム級暫定王者井上拓真と元OPBF S・バンタム級王者和氣慎吾による一戦。WBOアジア・パシフィックS・バンタム級王座決定戦である。
 
 
僕はもともと和氣慎吾をあまりいいと思ったことがなく、井上拓真と対戦すると聞いてもいまいちそそられなかったのが本音である。
なので、当然リアルタイム視聴はしていない。
 
で、後日井上拓真が圧勝したと聞いて「へえ、そうなんだ~」と。せっかくなのでTVerで公開されたものを視聴してみた次第である。
 
 
僕の思う和氣慎吾の印象はスピード差でぶち抜く人
ハンドスピード、足の速さは国内屈指。なおかつ前後のステップから打ち出す左は文句なしに強烈である。
 
その反面リズムが一定で動きが読みやすく、あまり強弱も感じられない。
また、動き出しの溜めが大きく、そのせいでバックステップからのリターンがほとんど出ない。
強引に圧力をかけられるとタジタジになり、頭を下げて後退する悪癖も目立つ。
 
要するにこれ系のタイプとしてはバネが足りないのだと思うが、スピード差で圧倒できない場合にあっという間に苦しくなるというのがこの選手の特徴な気がしている。
 
 
そして、今回の井上拓真がまさにそれ。
トントントントンという前後のステップ、一定のリズムからの踏み込みは読みやすい上に動き出しの溜めが大きいせいでカウンターを狙われやすい。
なおかつ、バックステップからのリターンがこないことがわかっているので相手は思い切り攻められる。
 
正直、この試合の拓真は2Rの時点で和氣の動きをほぼ見切っていた(と思う)。
 
 
4Rのダウンなどは典型的で、動きを読まれた和氣が“もっと速く、もっと強く”を意識した結果だろうと。
 
はっきり言って単純なスピード、運動量だけなら和氣は拓真より上だった(と思う)。
だが、攻撃パターンの少なさと動き出しのタイムラグにより逆に隙を作ってしまう結果に。
 
国内や東洋レベルなら持ち前のハンドスピードと足の速さでどうにでもなる。
ところが、それが通用しない相手への打開策が“もっと速く動いてもっと強く打つ”しかないのはちょっと厳しい。
 
僕も会場で何度か和氣慎吾の試合を観たことがあるが、動きは確かに速いがいまいちピンとこないというのが正直なところ。
 
上述のハイメ・ムンギア同様、スペック差でねじ伏せられない試合を経験しても脳筋ファイトから脱却できなかったタイプなのかもしれない。
 
違うかもしれない。
 
 
この試合を踏まえて2019年11月の井上拓真vsノルディ・ウーバーリ戦を観直すと、ウーバーリの引き出しの多さが際立つ。
 
絶えず左右に動いてアングルを変え、スルスルと近づいてボディを打ったり右フックから入ってみたり。
前手の右で拓真のジャブをはたき落とし、右を振ると見せかけていきなりの左をヒットしたり。
 
ワシル・ロマチェンコ的な要素を含みつつ、12Rにわたって拓真を翻弄したウーバーリは同じサウスポーでも和氣慎吾とは明らかに一段違った(クソ眠たい試合だったけど)。
 
 
一方、勝利した井上拓真はさすがだったというか、この数戦で力強さが増している気がする。
 
前回は強打者の栗原慶太を射程に入らせることなくさばき切り、今回は和氣慎吾を中間距離で完全に上回った。
井上一族の特徴でもある下半身の強さ、バランスのよさに加え、強敵との対戦を経て持ち前の対応力が成熟しつつある印象。
 
栗原慶太vs井上拓真感想。井上拓真がめちゃくちゃ上手かったな。はじめの一歩方式で言えば栗原がKOで勝つ流れだったけど
 
以前、ちょろっと「打倒井上尚弥筆頭は実は井上拓真なんじゃねえか」と言ったことがあるが、ウーバーリ戦での負けと井上パパに兄弟スパーリングを禁止されているという話を聞いて自分の中でその説を取り下げた経緯がある。
 
だが、この2試合の出来を見せられると、再び「打倒井上尚弥筆頭は井上拓真」説を復活させたくなってくる。
 
妄想にすぎないのはわかっているが、妄想だから別にいいじゃないっすかとも思ったり、思わなかったり。
 
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