吉野修一郎vs中谷正義現地観戦。凄みを感じさせた中谷、割り切りとタフネスの吉野。めちゃくちゃ感動したけど中谷敗北のショックも大きい【結果・感想】

吉野修一郎vs中谷正義現地観戦。凄みを感じさせた中谷、割り切りとタフネスの吉野。めちゃくちゃ感動したけど中谷敗北のショックも大きい【結果・感想】

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2022年11月1日にさいたまスーパーアリーナで開催されたPrime Video Presents Live Boxing 第3弾「WBC/WBA世界L・フライ級王座統一戦 寺地拳四朗vs京口紘人戦」を現地観戦してきた。

 
お目当ては第3試合のWBOアジアパシフィックライト級タイトルマッチ。同級王者吉野修一郎と元OPBF王者中谷正義の一戦である。
 
結果は吉野修一郎が6R1分14秒TKOと下馬評を覆す豪快KOで3度目の防衛に成功している。
 
全編視聴は下記より↓

 
実を言うと今回、現地観戦するかは相当迷っていた。
メインの寺地拳四朗vs京口紘人戦はいまいち興味がわかない、セミに出場する岩田翔吉は試合そのものを観たことがない。
さらにさいたまスーパーアリーナのような大会場で軽量級3連続はどうなの? 判定続きだったら相当厳しいんじゃねえか? といった懸念もある。
 
ただ、吉野修一郎vs中谷正義戦はめちゃくちゃ観たい。
吉野の試合は何度か現地観戦したことがあるが、中谷の試合はまだ一度もない。しかも今回はどちらが勝つかがまったくわからない一戦。この機会を逃すともうチャンスはないかもしれない。
 
シャクール・スティーブンソンがジーマーでバイヤーすぎる件。吉野修一郎に6Rストップ勝ち。すでにエドウィン・バレロなら? パッキャオなら? の領域に見える
 
そんな感じで迷いに迷った結果、思い切って足を運ぶことにした次第である。
 

試合の展望は吉野がどれだけ早く接近戦に持ち込めるかどうか。勝敗予想はできねえっす笑

まず試合前の展望は下記。
 
吉野修一郎vs中谷正義迫る。後半勝負? 接近戦で吉野が攻め落とすか、中谷が支配するか。吉野はなるべく早い段階でボディが当たる位置までいきたい
 
・中谷はいつも通りジャブを起点に組み立てるのでは?
・吉野は接近戦が鬼強い
・後半になっても動きが落ちないスタミナもある
・遠い間合い、ジャブの差し合いでは中谷の方が上か?
・吉野が勝機を見出すにはいかに早く接近戦に巻き込むかが重要
・逆に中谷は中間距離の時間をなるべく長くキープしたい
・中谷有利の声が多いけど、吉野は強いぞ?
・勝敗予想は判定ドロー
・どちらの選手にも思い入れが強すぎて勝敗予想ができん笑
 
中谷はいつも通りジャブ中心の組み立てでいく(はず)。
なので、吉野が勝つにはまずはそこを突破する必要がある。
 
吉野修一郎は接近戦がめちゃくちゃ強い&無尽蔵のスタミナも兼ね備える選手。これを活かすためになるべく早い段階で接近戦に持ち込みたい。
 
逆に中谷はいかにそれをさせないかが重要になる。
 
吉野「中盤から後半のKO」
中谷「吉野の接近戦を警戒」
 
これは両選手ともマジでその通りで、勝負は中盤以降に発生する(と思われる)接近戦での打ち合い。ここでどちらが上回るかにかかっているのではないか。
 
ただ、僕はどちらにも負けてほしくないので勝敗予想はできないっす笑
 
2022年僕のベストバウトTOP5。「あの試合がない」「これが入るの?」ってなるかもしれないけど“僕のベストバウト”だから許してね。1位はどう考えてもアレしかないでしょ
 

ジャブの差し合いに付き合わずに徹底してプレスをかける吉野。中谷も凄みのある強さだった

試合の感想だが、今回は吉野が徹底してたなぁと。
 
開始直後からガードを高く掲げ、頭を低くして中に入るタイミングを探る。
これまでは序盤は中間距離での差し合いを展開、不利だとわかった時点で接近戦に切り替えるのが基本パターンだったが、今回に限ってはそれをせず。
懐の深い中谷を攻略するために完全に割り切っていた印象である。
 
 
対する中谷だが、こちらはいつも通り。打ち下ろし気味のジャブで吉野の顔面を削り、距離が近くなればボディから顔面へつなぐコンビネーションで迎撃する。
 
しかもそれがめちゃくちゃ鋭い。
申し上げたように僕は中谷の試合を生で観たのは初めてだったのだが、いや、すごいね。映像で観るよりはるかにシャープというか、中谷ってこんなにすげえんだとビックリしてしまった。
 
吉野の固いガードの間をやすやすと通し、下から横から顔面を揺らしまくる。
それこそ開始直後の中谷には凄みすら感じたほど。力強さと切れ味を両立したパフォーマンスに「う~わ……。やっぱり強えわ中谷正義」「これが日本一のライト級か」となってしまった。
 
中谷正義が復帰戦でハルモニート・デラ・トーレを1RKO。左ジャブ→右打ち下ろし→左ボディでフィニッシュ。短い時間で持ち味が全部出た完璧な勝利っすね
 

中谷のジャブにカウンターを返す吉野。「おお、それをやりますか」ってなったよね

ただ、吉野修一郎に動じた様子は微塵もない。
 
中谷のパンチは普通に当たっていたと思うが、効いた素振りはいっさい見せず。
上述の展望記事で「吉野がKO負けする姿は想像がつかない」と申し上げているが、このタフさ、身体の強さは冗談抜きで日本一なのではないか。
 
そして、2Rに入ると吉野は早くも中谷のジャブへの対応を見せ始める。
左リードの戻り際に大きく踏み込み、伸び上がるようにクロス気味の左をヒット。
中谷も上体反らしで回避するが、吉野のカウンターの方が一瞬早く届く。
 
おお、マジか。
吉野がそれをやるか。
 
中谷は長身+懐の深さを活かしたジャブが持ち味の選手だが、復元力? はそこまで高くない。
国内やアジア圏ではサイズのアドバンテージで大きな問題にはならなかったが、フェリックス・ベルデホやテオフィモ・ロペスはこのジャブにカウンターを被せてきた。
 
スピードもパワーもセンスもベルデホの方が上だけど、勝ったのは中谷正義なんですよ。やっぱり中量級以上の日本人には気持ちが入るよね
 
要するに一段上のレベルの相手にはこの左を攻略された経緯があり、いわゆる“世界”と呼ばれる場所でもう一度勝負するにはそこが重要になると思っていた。
 
だが、それはあくまでトップ選手との対戦に限った話。国内やアジア圏にはベルデホやテオフィモほどバネのある相手は見当たらない。今回の吉野修一郎も踏み込みの鋭さで勝負するタイプではなく、そこに関してはあまり心配しなくていいはずだったのだが……。
 
いや~、合わせてきましたね~。
身長182cmの中谷のジャブに吉野修一郎はカウンターを合わせちゃいましたね~。
 
フェリックス・ベルデホほどの威力はないがしっかりと体重の乗った1発。
バネのなさ? を歩幅でカバーしつつ、中谷の左を着実に潰していく。
 

連打で応戦する中谷、プレスをかけ続ける吉野。凄まじい緊張感の中、両者の頭が…

攻撃の起点となる左を狙われた中谷だったが、もちろんそのままやられっぱなしではない。
距離が近くなるたびに力強いコンビネーションで吉野の突進を退け、再び腕が伸びる位置まで後退させる。
 
ガードの上を打たせながらチャンスをうかがう吉野と、足を使いながら迎撃のタイミングを探す中谷。
凄まじい緊張感の中、じりじりと時間が経過していく。
 
と思っていたら……。
 
3R序盤に両者のもみ合いが発生。次の瞬間、中谷が顔を抑えてパッと離れる。
 
「あ、頭が当たったか……」
 
前回の伊藤雅雪戦もそうだが、吉野は顔を下げて腕を振るスタイルなのでどうしてもバッティングは起こりやすくなる。
 
吉野修一郎vs伊藤雅雪はこの日のベストバウト。日本のてっぺんってすげえんだよな。剛腕吉野にロマンチスト伊藤が真っ向勝負。伊藤は自分の役回りをよく理解してた
 
本人は伊藤戦後のインタビューで「バッティングが課題ですね」と言っていたが、アレを止めてしまうと持ち味の思い切りのよさまで損なわれる可能性がある。頭の低さと接近戦の強さはトレードオフと言えるのではないか。
 
 
だが、中谷の方は左目の下に大きな傷ができて見るからに痛そう。しかもあの傷は時間が経てば経つほど腫れていくヤツ……。
 
おおう……。
偶然とはいえこれは厳しい。マジで厳しい。
 
立ち上がりがよかっただけに非常に残念である。
 

バッティング直後に中谷の距離が近くなる。吉野に容易に中に入られ、ロープを背にして連打を浴びる

そして、ドクターチェックののちに試合再開。
 
ところがリング中央で対峙した両者を観て「おや?」と。
これまでよりも距離がやや近くなったような……。
 
今まで通り上体を振りながらタイミングをうかがう吉野に対し、中谷は開始当初よりも姿勢が低い(気がする)。
1Rに感じた懐の深さ、間合いの遠さはなく吉野のパンチがそのまま当たりそうな印象である。
 
で、案の定簡単に侵入を許し近場での打ち合いを強いられる。
 
こうなると流れは一気に吉野に傾く。
懐でゴツゴツと腕を振り回し、さらにもう一歩前へ。
 
中谷も連打で対抗するが、やはり接近戦では吉野の方が一枚上手。上体を起こされロープを背負わされたところで側頭部に右を被弾、ガックリと膝をつく。
 
 
続く6R。
開始早々、猛然とラッシュをかける中谷。
だが吉野は固いガードでこれをしのぎ、中谷が失速したタイミングで反撃に転ずる。5R同様中谷にロープを背負わせ強烈な左右フックを浴びせていく。
 
吉野の猛攻を浴びた中谷はたまらず膝をついて2度目のダウン。レフェリーが状態を確認するが、それを見た陣営が棄権を申し出る。
 
6R1分14秒、吉野修一郎の大逆転勝利である。
 


 
吉野修一郎がシャクール・スティーブンソンに勝つ姿しか想像できない。未来のレジェンドの一番勢いのある時期に日本人選手との対戦が組まれたことってこれまであったっけ?
 

中谷はあのバッティングでトラブルがあったのかもしれないね。吉野の逆転劇には感動したけど、中谷陥落のショックも大きい

いや、すごかった。
ホントにすごい試合だった。
 
開始直後は中谷の凄みに震えがくるほどだったが、ジャブの差し合いに付き合わずに初っ端からプレスに全振りした吉野も素晴らしい。
上述の通りかなりパンチを食っていたとは思うが、ガードの固さと持ち前のタフさでピンチらしいピンチは皆無。予定通り(予定よりも早く)接近戦に持ち込み下からの連打で見事に仕留めてみせた。
 
逆に中谷正義はあのバッティング以降、流れがガラッと変わってしまったのが……。
 
というより、もしかしたらあの1発で何かしらのトラブルを抱えたのかもしれない。
 
再開直後に距離が近くなったことや6R開始早々のゴリ押しラッシュ、2度目のダウンを喫したところで陣営が即棄権を申し出る、などなど。
諸々を前倒ししていたことを考えると、あのバッティングで深刻な何かが起きていた可能性も?
実際のところはわからないが、とにかく残念である。
 
 
吉野のパフォーマンス、前評判を覆す逆転劇にはめちゃくちゃ感動したが、それと同じくらい中谷敗北のショックが大きい。
 
勝った側の総取りが絶対のルールなのは理解しているが、今回に関してはコントラストの鮮やかさが少々残酷すぎる。
散々喚き散らしてきたようにこの両者の対戦はもう少し上の舞台で観たかったというのが僕のファイナルアンサーである。
 
吉野修一郎vs中谷正義ホントにやるんだな…。もう一段上の舞台で観たい対戦だった(マッチアップとしてはおもしろい)。どっちもがんばれどっちも負けんな
 
言っても仕方ないんですけどね笑
 
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