ウシクのド根性と巧さがアンソニー・ジョシュアを振り切る。効かされてタジタジになったジョシュアと疲労困憊の中で打ち合ったウシク。勝負どころでの覚悟の差かなぁ【結果・感想】

ウシクのド根性と巧さがアンソニー・ジョシュアを振り切る。効かされてタジタジになったジョシュアと疲労困憊の中で打ち合ったウシク。勝負どころでの覚悟の差かなぁ【結果・感想】

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2022年8月21日にサウジアラビアのジッダで行われたWBA/WBO/IBF世界ヘビー級王座統一戦。同級3団体統一王者オレクサンドル・ウシクと前王者アンソニー・ジョシュアの再戦は2-1(113-115、115-113、116-112)の判定でウシクが勝利。昨年9月に続いてジョシュアを下したウシクが王座防衛に成功した試合である。
 
また勝利したウシクは試合後のインタビューで現WBC王者タイソン・フューリーとの試合を希望。4団体統一を目指す意向を示している。
ところがタイソン・フューリーは今年4月のディリアン・ホワイト戦後に引退を表明しており、一度は現役続行を示唆したものの動向が不透明な状態が続く。
 
3団体統一王者オレクサンドル・ウシクと最強のヘビー級王者タイソン・フューリーのビッグマッチ実現に期待がかかるが、あくまでフューリーの決断次第となりそうである。
 
タイソン・フューリーにディリアン・ホワイトが勝てるわけねえだろ。誰が興味あんねんこの試合→き、9万人!? 実況の絶叫が聞こえて気づいたらホワイトが大の字で寝てた
 

相当な準備を経てリングに上がったジョシュアのがんばり。興味がなくてリアルタイム視聴はしてないけど笑

アンソニー・ジョシュアとオレクサンドル・ウシクの再戦。
 
この日は例によって外出していたためリアルタイム視聴はできず、昼間に帰宅してからのんびり眺めた次第である。
ちなみに結果を知った状態で観たのであまり新鮮さはなく、ギリギリ勝利したウシクに対しても「まあ、そうだよな」と淡々と受け入れている。
 
もともと両者に興味がない(以前からウシクにはまったく魅力を感じない、ジョシュアはアンディ・ルイスVol.2以降食指が動かなくなった)こともあるが、そもそもダイレクトリマッチが必要だったか? という思いもあったり、なかったり。
初戦であれだけ明確に決着がついた試合をリピートすることに(お金以外に)何の意味があるの?
みたいな。
 
エストラーダvsコルテス。エストラーダは調子悪そうだったな。コルテスもよく研究してた。でも、勝負強さと二番底を見せつけての勝利はさすが
 
とは言え、この日のアンソニー・ジョシュアは相当な準備をしてリングに上がったのだと思う。
 
序盤2Rはボディを中心に攻め、それをフェイントにして顔面にジャブをヒットしていく。
ジョシュアのこの試合運びにウシクは明らかに面食らっていたし、それが影響してか前回よりも左右への動きが少なくなっていた(気がする)。
 
また8Rからは再びボディ攻撃に転じて試合を動かすジョシュア。
それも序盤のように遠間から腕を伸ばすのではなく強引に近づき足場を決めてからボディを打ち込むスタイル。
これでウシクの意識を下に向けさせ、さらにもう一歩前に出て顔面に連打を浴びせる。
 
ウシクにとってもあそこは2試合を通じて最大のピンチと言っても過言ではなく、あのままジョシュアが一気にKOしてもおかしくなかった。
判定2-1と肉薄したのもジョシュアのボディ攻撃が成功していた証左である。
 
正直、僕は前回の負け方を見る限り再戦してもジョシュアの勝機は薄いと思っていたが、まったくそんなことはなく。持てるネタを総動員した上での陣営の作戦、それを忠実に実行したジョシュアの勤勉さはさすがだった。
 
ウシクがジョシュアを翻弄して偉業達成。凄まじい勝利なのはもちろんだけど、ウシクがちっとも僕の視界に入ってこない…。ヘビー級の不純物
 

事前準備とシミュレーションのアンソニー・ジョシュア。ウシクの戦力を把握した今回はかなり有利だった?

恐らくアンソニー・ジョシュアは事前準備とシミュレーションの選手なのだと思う。
相手を山ほど研究し、じっくり対策を立ててその通りに動く。綿密に練った作戦を忠実に遂行することで自らのペースを作っていくタイプ。
逆に瞬間瞬間のアドリブ力、想定外の事態への対応力は低いのだろうと。
 
なので、前回はウシクが
・想定以上のフットワーク
・想定以上の前手のリード
・想定以上のリーチの長さ
・想定以上のパンチ力
・想定以上のスタミナ
・想定以上の出入り
を兼ね備えていたおかげでうまく修正できなかった。
 
だが今回は“ウシクの能力が想定以上に高いことがわかった”状態で(1年近く)準備することができた。
ウシクが戦地から帰還直後の試合だったことを含め、ジョシュア側に有利な条件が揃ったと言えるのではないか。
 

準備万端のジョシュアをさらに上回ったウシク。前回ほどのキレは感じなかったが、メリハリと根気強さは群を抜いていた

そして、そのジョシュアをさらに上回ったウシクはやはりとんでもない選手である(興味ないけど)。
 
序盤こそジョシュアのボディに戸惑ったものの、3、4R以降はしっかりとアジャスト。
前回も圧倒した中間距離での差し合いでジョシュアの顔面を揺らし、遠間でのボディを封じる。
さらに持ち前の運動量を活かした出入りで正面を外しまくり、何だかんだでジョシュアにペースを掴ませない。
 
申し上げたように8R以降はジョシュアの強引な前進+ボディ攻撃に追い詰められたものの、覚悟を決めて打ち合いを選択した10Rは逆にジョシュアをタジタジにさせた。
 
いや、マジでここなんですよね。
ヘビー級離れした機動力と出入り、絶妙のポジショニング、相手の呼吸を読む洞察力やコーナーから脱出する際の体さばき、その他。オレクサンドル・ウシクのすごさはいくらでも列挙できるのだが、実は一番すごいんじゃねえか? と思わせるのがこの勝負強さ。
前回の7R、今回の10Rと2m級のジョシュアの前進に怯むことなく近場で打ち合い、ピンチを脱するどころか逆にチャンスを引き寄せてしまうという。
このメリハリ、勝負勘はウシクの最大の持ち味と言えるのかもしれない。
 
 
これは僕の勝手な印象だが、今回のウシクは前回ほどのキレはなかったと思っている。
ジョシュアのボディ攻撃の影響か、国内情勢によるブランクかは不明だが、全体的に足運びがバタバタしていたというか。約1年かけて準備したジョシュアに比べて絶好調とまでは言えなかった(気がする)。
 
ただ、そんな状況でも(確実に分がある)中間距離でしっかりペースを掴み、終盤のピンチもこの日一番の覚悟で乗り切ってみせた。
 
間違いなくボディは効いていたはずだが、ウィービングだけは最後まで途絶えることがなく。
試合を通して「打ったら動く、常に頭の位置を変える」を徹底するスタミナ、根気強さで勝利を掴み取った。
 
3150FIGHT vol.3感想完結編。力石政法、但馬ミツロ、皇治vsヒロキング戦、などなど。あの頭突きを肯定する気はないけど気持ちはわからんでもない笑
 

ジョシュアもすべてを出し切った。でも、ここぞの局面で躊躇してしまうのが…。スタミナのなさと打たれ弱さを自覚しているからこそ

一方敗れたアンソニー・ジョシュアだが、こちらも今できるすべてを出し切ったのではないか。
 
恐らくジョシュア陣営の狙いはボディで弱らせてからのKO狙い。
前回申し上げたようにオレクサンドル・ウシクという選手はずば抜けた機動力とタイミングの持ち主だが、どちらかと言えばカウンター使いの“待ち”のタイプ。
過去、リング中央でどっしり構える相手を持て余したことを考えると、能動的に試合を動かすことはあまり得意ではない。
 
アンソニー・ジョシュアがオレクサンドル・ウシクとの再戦に勝つには? 中盤〜後半のKO狙いくらいしかなさそう。でもウシクのコンディション次第では…
 
それを踏まえた上でジョシュア陣営は「ボディで足を止める→前に出ながらカウンターをぶち当てる→後半KO」の流れを考えていたと想像する。
 
そして、実際作戦はそこそこ機能していた(と思う)。
上述の通り序盤のボディ攻撃でウシクは明らかに面食らっていたし、8、9Rのボディを中心とした強引な攻めもよかった。
できれば中盤にもう少しポイントを取っておきたかったところだが、ウシクの体力を削るために必要な時間でもあったのだろうと。
 
で、ウシクが明確に失速した9R後半、一気に決めにいって……。
逆に盛大に効かされて足が止まるという。
 
 
これねぇ……。
マジで難しいんでしょうね。
 
ヘビー級離れしたスピード、コンビネーションを兼ね備えるアンソニージョシュアだが、その反面打たれ弱くスタミナ面にも不安を抱える。
 
序盤からコツコツ重ねて迎えた9R。
目の前にはいっぱいいっぱいのウシク。
 
間違いなく勝負の局面で、多少効かされようがお構いなしで腕を振りたいところ。
だが、仮に仕留めきれなかった場合は確実に悲惨な結末が待ち受けている。
 
この日のベストラウンドとも言える8、9R→別人のように消極的な終盤という変貌っぷりも諸々の要因を考えると仕方なかったのかもしれない。
 
体力のある序盤で勝負をかける手もあったと思うが、12Rを想定するとそれも躊躇せざるを得ない。
ボディ打ちが有効なのも一目瞭然だが、自身の打たれ弱さを自覚しているせいで顔面を打たれるとあっという間にガードを下げられなくなってしまう。
 
理想は中盤~後半のKO、もしくは先行逃げ切りでの判定勝ち、そこまでの道筋も見えている。
なのにスペックとメンタルが追いついてこない。
 
これが2019年6月にアンディ・ルイスにKO負けを喫して以降、思い切りのよさが失われたアンソニー・ジョシュアの現在地なのかもしれない。
 
PFP No.1デビン・ヘイニーがカンボソスと再戦決定。ウシク? 井上? クロフォード? ちげえよ。再びヘイニーがPFPに返り咲くんだろ()
 

クリチコ戦での主人公感は凄まじかったけど。ピンチの局面で感情ダダ洩れなのがね笑

以前にも申し上げたが、2017年4月のウラジミール・クリチコ戦での「ダウンを奪われた直後にクソ意地を張ってペースアップ→劇的な11RTKO勝利」という絵にかいたような主人公属性はマジでお見事だった。
 
ところが今回の試合ではしんどそうな表情を浮かべながら後退するジョシュアの姿が……。
 
 
いや、あんな顔してたらバレるだろと笑
「ボクシグンは究極のメンタルスポルチだから(キリッ」とかいう薄っぺらい話ではなく、ウシクも同じくらいしんどいのに「まだまだいける」と思われちゃうだろと。


スポーツなんて結局相手との化かし合いなんだから、勝負どころでいかに隙を見せないか、奥の手があると思わせられるかが重要なんだよ笑
 
 
ギリギリの場面で踏みとどまったウシクとズルズルいってしまったジョシュア。最終的にここの部分での差が結果に表れたのかな? という気がする。
 
 
実はラスト2Rのもたれかかるように組み付くやり方がめちゃくちゃ有効だったというね。
足がガクガクで打ち終わりに態勢が崩れただけだとは思うが、アレがウラジミール・クリチコばりのクリンチになっていたのが……。
 
ああいうダーティさ、勝利のために手段を選ばない狡猾さはクリチコやタイソン・フューリーにあってジョシュアにはないもの。
フューリーの腹黒さ、アドリブ力の1、2割でもジョシュアに備わっていればまた違う結果が出た? のかな?
 
知らんけど。
 
ワイルダー、ジョシュア、フューリー、クリチコ。2010年代後半ヘビー級名勝負振り返り。コイツらの直接対決はさぞかし盛り上がったんだろうなぁ()
 

アンソニー・ジョシュアの今後? 現役最後の一儲けとしてアイツとやれば…

てか、アンソニー・ジョシュアは今後どうするんでしょうね。
今回は誇張抜きでキャリアにとどめを刺されるレベルの負けだったと思うが。
 
もう一度ウシクと対戦すれば勝てるかもしれないが、さすがにそれはお腹いっぱい過ぎるわけで。
 
 
だからアレだ。
この際、思い出マッチとしてデオンティ・ワイルダーとやればいいのではないか。
 
フューリーvsワイルダー3。ポイント計算すら無粋な規格外バトル。ヘビー級だけは別枠であるべき。神々のお戯れに不純物はいらない()
 
現役最後の一儲けとしてどちらもハッピー、どっちが勝っても恨みっこなしでチャンチャンでええんちゃうの? と思うのだが、どうだろうか。
 
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