エストラーダvsコルテス。エストラーダは調子悪そうだったな。コルテスもよく研究してた。でも、勝負強さと二番底を見せつけての勝利はさすが【結果・感想】

エストラーダvsコルテス。エストラーダは調子悪そうだったな。コルテスもよく研究してた。でも、勝負強さと二番底を見せつけての勝利はさすが【結果・感想】

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2022年9月3日(日本時間4日)にメキシコ・エルモシージョで世界2階級制覇王者ファン・フランシスコ・エストラーダがアルヒ・コルテスと対戦、大苦戦の末に3-0(115-112、115-112、114-113)の判定で勝利した一戦である。
 
 
最近どうもボクシング観戦の熱が落ちているというか、個人的にテンションの上がる試合が少ない。
微妙に忙しいのもあってか「◯◯と××の対戦が決定!!」と聞いても「ふ〜ん、そうなんだ」と流してしまうことばかりである。
 
寺地拳四朗と京口紘人のL・フライ級統一戦が11月に予定されていると聞いても似たような感じで、この1ヶ月では先日の武居由樹vsペテ・アポリナル戦がMAXだったくらい。
 
武居由樹がペテ・アポリナルを“片付ける”。もはや国内を飛び越えてPBC系のクネクネサウスポー相手にどうなるか? のレベルかもな。井上バトラーのアンダーで防衛戦やろう
 
現状、僕が楽しみにしているのは今月17日(現地時間)に米・ネバダ州で行われるサウル・“カネロ”・アルバレスvsゲンナジー・ゴロフキンVol.3のみという状況である。
 
 
ただ、今回は日本の井岡一翔や現役続行を明言したノニト・ドネア(僕の大好きな)が標的に挙げているファン・フランシスコ・エストラーダが約1年半ぶりの復帰戦を迎える。
2021年3月のローマン・ゴンサレス戦以来の試合ということで、それなりに興味が湧いた次第である。
 

エストラーダの調子がいまいちだったか? 逆にアルヒ・コルテスはめちゃくちゃがんばった

まず今回、エストラーダはあまり調子がよくなかったように見えた。
ブランクの影響か年齢的なものかは不明だが、前回のロマゴン戦に比べて身体が重そうな気がした。
 
ロマゴンvsエストラーダ114-114かな。ロマゴンはやっぱりフライまでの選手。軽量級で重量級っぽい試合をするのが井上尚弥
 
と同時に対戦相手のアルヒ・コルテスのがんばりがめちゃくちゃ印象的だった。
 
この選手の試合を観たのは今回が初めてだったのだが、戦績を見ると23勝2敗2分とかなりの強豪っぽい。しかもキャリアでの2敗は4回戦時代の2014年。年齢も27歳と一番いい時期で、恐らく相当自信もあったのだと想像する。
 

コルテス陣営がエストラーダを研究していた。カウンターと右フックのぶん回し

とりあえずコルテス陣営はエストラーダをだいぶ研究していたと思う。
 
いつも通りガードを高く上げて対峙し左ジャブを伸ばすエストラーダに対し、コルテスはワンテンポ遅らせたカウンターで対抗。エストラーダが手を出すたびに強めのカウンターを被せて追撃のタイミングを奪っていく。
 
基本、エストラーダは中間距離でのコンビネーションが得意なタイプ。
ジャブを起点に自分の間合いを作り、相手の攻撃をガードしながらボディ、顔面への打ち分けでペースを掴む。
 
ところが今回のコルテスは1発目のジャブに強打のカウンターを合わせてくるためそこから先がなかなか続かない。得意の展開に持ち込めずに手数が減り、その隙を狙われる流れ。
 
 
また、エストラーダの動きとコルテスのパンチの角度、距離がドンピシャで合っていたのも大きかった。
 
パンチを避ける際、エストラーダは左腕を下げて右側に身体を倒すことが多い。
ショルダーロールというか、若干L字気味に相手の攻撃をいなす印象。
 
だが、今回はこの動きとコルテスのフック気味の右がバッチリ合ってしまった。
身体を目いっぱい伸ばして打ち込むコルテスの右は腕が伸びきったところからもう一段飛距離が出るイメージで、エストラーダの回避をあっさり超えて顔面に到達する。
 
カネロvsゴロフキン3展望。ゴロフキンが案外がんばると思うねんな。技巧満載の初戦、両者の意地がぶつかり合った2戦目を受けてどんな試合展開になるかが楽しみっす
 
序盤は強打のカウンターでエストラーダの攻め手を封じ、手数が減ったところでガードの真ん中からジャブを通しまくる。
で、エストラーダを後手に回らせもう一歩前進、右フックのぶん回しを顔面にヒットして一気にペースを引き寄せる。
 
申し上げたようにこの試合のアルヒ・コルテスはエストラーダをたっぷり研究していたし、そのチャンスも作り出してみせた。
 
実際4、5Rはこのままコルテスが押し切るのでは? と思ったほど。
それこそコルテスが大金星を挙げる→エストラーダvsロマゴンVol.3の計画がめちゃくちゃになるパターンもそれはそれでおもしろそうだったのだが……。
 
ワシル・ロマチェンコ復帰戦。ジャーメイン・オルティス意外とがんばるんじゃないの? この際だから勝っちまえよ。足を止めないことが重要になりそう
 

ギリギリの局面で差があったな。ペース配分と1発の精度でエストラーダが上回った

ただ、上述の通りペース配分や勝負強さ等、ギリギリの局面でコルテスはエストラーダに一歩及ばなかった。
 
4、5Rの時点ではこのままコルテスが押し切るかも? とまで思わせたものの、6Rからの失速は顕著すぎるくらい顕著だった上に7Rにはダウンも喫した。
本人にとっての過去最強の相手だったのはもちろん、初の12回戦というのも大きかったのではないか。
 
終盤にかけて何度かギアを入れようとしていたのもわかったが、結局最後まで動きが戻ることはなく。何だかんだで5R後半のラッシュが最大の見せ場となってしまった。
 
 
あとはまあ、力を込めるとパンチが雑になるのも痛かったかな。
ガードの真ん中を通過するジャブや身体を伸ばして打ち込む右フックはめちゃくちゃシャープなのだが、チャンスの場面では力みまくってそのつど大振りになってしまうのが……。
 
5Rのラッシュでも合間に何発かカウンターをもらっていたし、その瞬間は気合いで持ちこたえたがそれ以降はガクッとペースが落ちた。7Rのダウンや後半の失速を考えると実は相当ダメージがあったのだろうと。
 
井岡一翔vsドニー・ニエテス再戦。井岡のニエテス対策が素晴らしかった。ニエテスも相当落ちてたね。最後かも? と思って現地観戦したけど勝ってよかった
 

エストラーダの勝負強さ、経験値、引き出しの多さ、二番底。調子が悪かろうが最終的に勝つのがマジもんの王者

逆にエストラーダの勝負強さ、経験値はさすがとしか言いようがない。
 
コルテスの連打にカウンターを合わせたシーンはもちろん、次のラウンドからプレッシャーをかける作戦に切り替えたのもよかった。
 
前半はコルテスの左リードと右フックに苦しめられたものの、その中でコルテスが前に出てナンボということにも気づいたのではないか。
 
スペースのある位置ではコルテスの伸びるパンチが最も機能しやすい。
エストラーダも中間距離でのコンビネーションを得意とする選手だが、この日のコルテスとまともに打ち合うのは少々分が悪いことも確か。
 
 
以前、僕はエストラーダのことを「器用貧乏」(クソ失礼)と呼んだことがあるが、実際この選手はその気になればアウトボクシングにも接近戦にも対応できる。
過去、足を使うカルロス・クアドラスに追いつき、接近戦を持ち味とするミラン・メリンドを見事なアウトボクシングで完封している。
 
 
今回のコルテスは腕の伸びる間合いではめっぽう強いが、近場の打ち合いはそこまで得意ではない。
また1発1発の精度、カウンターの鋭さも自分の方が上。
 
5R終了時点でそう判断したのだと思うが、ああいう切り替えの早さや引き出しの多さはエストラーダの強みである。
 
エストラーダがロマゴンの追い上げを振り切りラバーマッチを制す。コイツラは何度やってもこんな感じだよな笑 でも初めて井岡の名前を出したし井岡も中谷戦を回避しちゃえよ
 
そして、終盤の勝負強さはやはりとんでもない。
 
疲労困憊でギアが上がらないコルテスに対し、エストラーダは淡々と前に出て腕を振り続ける。
ただ、エストラーダも同じくらい疲れていたはずで、最終12Rにコルテスのフックに引っかかってロープ際まで吹っ飛んだのを見ればそれは明らか。少しでも油断すれば逆転される状態が続いていた(と思う)。
 
ところがそこで引かないのが百戦錬磨のエストラーダ。コルテスの反撃を浴びても表情に出さずにいいパンチが入っても深追いを自重する。
 
しんどい局面での押し引き、勝負どころでの二番底。
ブランクが影響しようが研究されようが関係ない。最後にはきっちりと勝利する勝負強さと経験値の高さ。
 
マジもんの王者とそうではない選手の差を山ほど見せられた試合だった。
 
 
でも、改めて今回のエストラーダはイマイチだったと思ふ。
 
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