ウシクがジョシュアを翻弄して偉業達成。凄まじい勝利なのはもちろんだけど、ウシクがちっとも僕の視界に入ってこない…。ヘビー級の不純物【結果・感想】

ウシクがジョシュアを翻弄して偉業達成。凄まじい勝利なのはもちろんだけど、ウシクがちっとも僕の視界に入ってこない…。ヘビー級の不純物【結果・感想】

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2021年9月25日(日本時間26日)、英・ロンドンで行われた世界ヘビー級3団体統一戦。WABスーパー/IBF/WBO同級王者アンソニー・ジョシュアとWBO1位で元クルーザー級統一王者のオレクサンドル・ウシクが対戦し3-0(117-111、116-112、115-113)の判定でウシクが勝利。4団体統一を目指すジョシュアが敗れる波乱となった。
 
 
ヘビー級3団体統一王者アンソニー・ジョシュアに元クルーザー級統一王者オレクサンドル・ウシクが挑んだ今回。ロンドン五輪金メダリスト同士の激突とあり、6万人以上が収容可能なトッテナム・ホットスパー・スタジアムは超満員。試合開始から終了のゴングまで歓声が鳴り止まない中での一戦となり……。
 
 
などと言っているが、僕自身はこの試合にあまり興味がわかず。
以前から何度も言っているが、ここ数年のヘビー級戦線の停滞っぷりには完全に愛想が尽きている。
 
2018年に一度デオンティ・ワイルダーとアンソニー・ジョシュアによる頂上決戦の機運が高まったものの、締結寸前でジョシュア側が謎の方向転換。これまで通りの防衛路線に戻るという。
それ以降も「やってやる!!」と威勢のいい掛け声ばかりでちっともビッグマッチが決まらず。
 
今年初旬にもジョシュアとタイソン・フューリーが通算n度目の合意に達したとの報道があったものの、そこから約2ヶ月後にはワイルダーとフューリーのラバーマッチにすり替わる事態に。


で、当のジョシュアはクルーザー級からヘビー級に進出したオレクサンドル・ウシクとの対戦が正式発表される。
 
 
もう、心底しょーもない。
ウシクは確かにいい選手だし、クルーザー級の王者がヘビー級最強の一角であるジョシュアに挑むというのもロマンがある。
 
だが、そうじゃない。
そういうことじゃない。
 
僕が求めていたのはもっとこう、ビッグマン同士の異次元のぶつかり合い。
2m級の長身+機動力を兼ね備えた人外同士が無敗のまま激突する光景を観たかったのである。
 
しかも、それを実現できる3人が同時期に全盛期を迎えるという、歴史上でも類を見ない奇跡が起きていたのに。
 
大人たちのくだらない駆け引きでみすみすチャンスをフイにしやがって。
 
 
申し上げたようにオレクサンドル・ウシクがスーパーな存在であることに異論はない。
ただ、アンソニー・ジョシュア、デオンティ・ワイルダー、タイソン・フューリーという3人の前では完全に不純物。非常に申し訳ないのだが、最後の最後まで「ここはお前じゃない」感が消えなかったことをお伝えしておく。
 
フューリーvsワイルダー3。ポイント計算すら無粋な規格外バトル。ヘビー級だけは別枠であるべき。神々のお戯れに不純物はいらない()
 

さすがにジョシュアには勝てないでしょ。ウシクが勝機を見出すには…

まず、この試合に対する僕の展望としては、
「ウシクがジョシュアに勝てるわけねえじゃん」
「体格的にヘビー級は厳しいでしょ」
「あのスタイルだと物量で押し潰されて終わりじゃないの?」
 
さすがのウシクでもヘビー級の王者クラスに挑むのは無謀。
体格差、1発の威力でジョシュアにねじ伏せられてしまうと思っていた。
 
 
逆にウシクが勝機を見出すとすれば、
・フィジカル面でそこそこ対抗できる
・ジョシュアをビビらせるパンチの威力
この2つを満たしていた場合。
 
体格面、フィジカル面で当たり負けしない、なおかつ無理に近づかなくても顔面にパンチが届きさえすれば、とりあえずの土俵には立てる。さらに1発の威力でジョシュアに踏み込みを躊躇させることができれば一気に希望が広がる。
 
スピードと中間距離の技術勝負では恐らくウシクの方が上。
純粋な馬力差、耐久力の差に絶望的な開きがなければ、もしかしたら……。
 
 
そして、試合前のフェイスオフを見たところ、おや、ウシクって案外デケえんだなと。


クルーザー級時代に比べて身体もゴツくなっているみたいだし、何よりこの上背には期待感がある。
これなら普通に手を伸ばすだけでジョシュアの顔面に手が届くだろうし、得意の出入りが機能するかもしれん。
 
 
まあ、どっちでもいいけどね。
そもそも論として、僕がオレクサンドル・ウシクという選手にいまいちテンションが上がらないので。
 
繰り返しになるが、ウシクがスーパーな選手なのは間違いない。
ところが、困ったことに視界にちっとも入ってこないんですよねこの人……。
 
ワイルダー陥落! フューリーがヘビー級史上最強でいいよな。オラが町のごんたくれは“パーフェクトな2秒”を与えられず
 

ウシクのパフォーマンスは素晴らしかった。ジョシュアの身体能力の低さを把握していた感じがするよ

実際の試合についてだが、はっきり言ってオレクサンドル・ウシクは素晴らしかった。
 
前手の差し合いでジョシュアを圧倒し、絶えず左右に動いて正面を外しまくる。
微妙にアングルを変えて射程の外をキープし、激しい出入りでジョシュアを置いてきぼりにする。
 
身体つきや動きを観る限り、アンソニー・ジョシュアはあまり身体能力が高い方ではない。加えて想定外の事態が発生した際のアドリブも利かないタイプに思える。
この試合でもウシクのスピードにわちゃわちゃするシーンが目についたし、ウシク側にはフットワークでは負けないという自信があったのだと想像する。
 
 
さらにウシク陣営はアンソニー・ジョシュアにリターンがないことを把握していたのだと思う。
 
申し上げたようにジョシュアは身体能力自体はそれほど高くない。
バックステップからリターンでカウンターを打ち込むバネはなく、そのままガードを固めて亀になるのが常。
 
深く踏み込んでもカウンターが飛んでくる心配がないので、ウシクとしてはある程度パンチを振り切ることが可能になる。
 
鋭い踏み込みで懐に侵入→連打を浴びせてスルッと下がる。
前手の差し合いで圧倒していた分、比較的簡単に中に入れた印象である。
 

ジョシュアに流れを渡した直後の強引なペースアップもよかった。最後は完全にリズムに乗ってたね

また、12Rを通してのペース配分もよかった。
 
序盤3Rは前手の右と前後左右への動きでジョシュアを翻弄し、ペースを完全に掌握。
だが4R以降、スピードと出入りに慣れたジョシュアが圧力を強め、逆に流れを引き戻しにかかる。
 
恐らくだが、6R後半あたりにヒットしたジョシュアの右は結構効いていたはず。直後に腰がガクッと落ちていたし、ウシクにとってはこの試合の中でも最大のピンチだったと言っても過言ではない。
 
 
だが、直後の7Rのペースアップによって強引に流れを引き戻したのが素晴らしかった。
 
前のラウンドまではどちらかと言えば軽打気味だったのを1発1発に力を込め、ジョシュアの警戒心を煽る。
さらにこれまであまり見せていなかった外旋回の左を多用したのもうまかった。
 
中盤にはジョシュアが大きくバランスを崩すほどの左をヒットするなど、あのラウンドで傾きかけた流れを一気に戻してみせた。
 
 
序盤3Rはウシクのペース。
中盤4〜6Rはジョシュアのペース。
7R以降、ジョシュアの時間が続くかと思われたところで強引にペースアップし、後半3Rを一気に駆け抜けた。
 
特に最終11、12Rは完全にリズムに乗ってましたからね。
本来はリードされているジョシュアががんばらなくてはいけないのに、逆に圧倒してダウン寸前まで追い詰めてしまうという。
 
最初に申し上げた通り、
・当たり負けしないフィジカル
・顔面に手が届くサイズ
・踏み込みを躊躇させるパンチ力
をウシクが兼ね備えていたことがめちゃくちゃ大きかったなと。
 
カネロvsプラント4団体統一戦キター。プラント健闘もあり得る? かも? カネロの圧力にビビらずどこまで左が機能するかかな
 

無理やり技術力勝負の土俵に引きずり出されたジョシュア。そもそもウシク対策なんてどうやるのよ?

一方、敗れたアンソニー・ジョシュアだが、こちらは体格差をいまいち発揮できなかったことが一番の敗因かなと思う。
 
 
繰り返しになるが、オレクサンドル・ウシクはフィジカル面、サイズ、パンチの威力といった基本スペックで思った以上にヘビー級に適応していた。
 
重量級離れしたフットワークやスピード、パンチを当てる技術に疑いの余地はなく、とにかく体格差さえ埋めれば何かが起きるのでは? と思っていた次第である。
 
で、実際にそこの部分で絶望的な差がなかったおかげで、アンソニー・ジョシュアを技術力勝負の土俵に引きずり出すことに成功した。
 
もちろんジョシュアも中間距離での差し合いは抜群にうまい。
これまでも「ヘビー級の選手が中量級のボクシングをやっている」と言われてきたし、カルロス・タカムやジョセフ・パーカーなどのトップクラスに手も足も出させないほどの実力を発揮している。
 
ただ、ここまで縦横無尽なフットワークと前手の精度、1発の威力を兼ね備えたサウスポーが相手となると……。
 
そもそも有力なサウスポーとの対戦が2016年4月のチャールズ・マーティン戦だけですからね。
 
ここ最近、スピードアップとサイズアップが著しいヘビー級だが、さすがにウシクほど突出した選手は見当たらない。
 
こんなヤツをどう対策すればいいの?
誰を練習パートナーに呼べばいいの?
という話で。
 
ジョシュアがルイスJr.を再戦で塩漬け。ジョシュアの安全策とルイスの動きの悪さが…。そっくりさん同士の試合か?
 

ウシクの成し遂げた偉業の凄まじさに驚く。そして、相変わらず視界に入ってこないw

以前、過去2回のオリンピック金メダリストを調べてみたところ、男子の全10階級、金メダリスト20人のうち14人がサウスポーだったと申し上げている。
 
普段アマチュアボクシングをまったく観ない僕が初めてちゃんと観てみた。短いラウンドを全力で駆け抜けるには? 世界ユース選手権inポーランド
 
・ライトフライ級
2012年ロンドン:鄒市明(右)
2016年リオ:ハサンボイ・ドゥスマトフ(左)
 
・フライ級
2012年ロンドン:ロベイシ・ラミレス(左)
2016年リオ:シャホビディン・ゾイロフ(左)
 
・バンタム級
2012年ロンドン:ルーク・キャンベル(左)
2016年リオ:ロベイシ・ラミレス(左)
 
・ライト級
2012年ロンドン:ワシル・ロマチェンコ(左)
2016年リオ:ロブソン・コンセイソン(右)
 
・ライトウェルター級
2012年ロンドン:ロニエル・イグレシアス(左)
2016年リオ:ファズリディン・ガイブナザロフ(左)
 
・ウェルター級
2012年ロンドン:セリク・サピエフ(左)
2016年リオ:ダニヤル・イエレウシノフ(左)
 
・ミドル級
2012年ロンドン:村田諒太(右)
2016年リオ:アーレン・ロペス(左)
 
・ライトヘビー級
2012年ロンドン:エゴー・メコンチェフ(左)
2016年リオ:フリオ・セサール・ラ・クルス(右)
 
・ヘビー級
2012年ロンドン:オレクサンデル・ウシク(左)
2016年リオ:エフゲニー・ティシチェンコ(左)
 
・スーパーヘビー級
2012年ロンドン:アンソニー・ジョシュア(右)
2016年リオ:トニー・ヨカ(右)
 
 
要するにアマチュアの短いラウンドを全力で駆け抜けるには「打たせずに打つ」を実践しやすいサウスポーが有利なのだろうと結論づけたのだが、今回のオレクサンドル・ウシクはそれを12Rを通してやり切ってみせた。
 
トップアマの実力にプロでの経験値を上乗せし、ヘビー級で通用するフィジカルを身につけ12Rにわたってスタミナ切れを起こさないペース配分で3団体統一王者に勝利。
 
改めて活字にすると、オレクサンドル・ウシクがやり遂げたことの凄まじさに驚かされる。
 
そして、相変わらずちっとも視界に入ってこないw
 
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