RISE、GLORY、K-1。ルールの異なるキックボクシングに混乱。「対世界!!(キリッ」→どうしても噛み合わない試合が増えるよな。直樹、山田洸誓、海人、原口健飛、ゴンナパー 【感想】

RISE、GLORY、K-1。ルールの異なるキックボクシングに混乱。「対世界!!(キリッ」→どうしても噛み合わない試合が増えるよな。直樹、山田洸誓、海人、原口健飛、ゴンナパー 【感想】

以前に何度か申し上げたように僕は2022年6月19日の「Yogibo presents THE MATCH 2022」(東京ドーム)以降、キックボクシング観戦の情熱を完全に失っていた。
 
だが、それもようやく落ち着いてきたところである。
 
THE MATCHロスでキックに興味が向かない。改めて武尊は那須川天心に手も足も出ずに負けてる。ゴンナパー・ウィラサクレックvs白鳥大珠戦、原口健飛vs山崎秀晃戦が好きすぎて
 
なので、今回はこの何日間(何週間)のうちに行われたキックイベント(K-1、RISE、GLORY)の感想を適当に言っていきたいと思う。
 
 
表題の通りなのだが、異なるイベントをあれこれ観て回ったせいでプロモーションごとに違うキックボクシングのルールに大いに戸惑ったことを報告させていただく。
 
 
先日のTHE MATCH 2022では団体ごとの方針? ルール? の違いが勝敗にモロに直結することを山ほど見せられた。特に独占契約のK-1はガラパゴス化しやすく慣れないルールにうまく対応できずに苦戦を強いられたのが印象的。
 
K-1は最高だけど最強じゃなかった。K-1勢が苦戦した理由? よくも悪くもキックボクシングではなく“K-1”なんだろうな。RISE&SBとの対抗戦感想、雑感
 
それを踏まえた上で各団体の試合を(後追いで)観比べたところ、なるほどと思った次第である。
 
というわけで、試合の感想とともに団体ごとのルールの違いによる影響についても考えてみることにする。
 

〇デニス・ウォシクvs直樹×(判定5-0 ※30-26、30-26、30-26、30-26、30-26)

2022年8月20日(日本時間21日)にドイツのカステロ・デュッセルドルフで行われたGLORY 81。初参戦の直樹(現RISeライト級王者)がK-1にも出場経験のあるデニス・ウォシクとフェザー級ワンマッチで対戦、5-0(30-26、30-26、30-26、30-26、30-26)の判定で敗れた試合である。
 
 
堀口恭司のBellator参戦に伴って契約したU-NEXTだが、先日の亀田和毅vsウィリアム・エンカーナシオン戦や今回のGLORYと地味に格闘技中継が充実しつつある。
 
堀口恭司vsセルジオ・ペティス感想。堀口1発KO負け…。でも、いい試合だったし満足度は高い。堀口の鈍感力には感心するよね
 
この日も現RISE王者がGLORYに初参戦と聞いて楽しみにしていたわけだが、いや、キツかったなと。
 
相手のデニス・ウォシクは2018年3月にK-1の舞台で郷州征宜に判定負けを喫している選手。直樹としても十分勝機があったはずが……。
 
圧力と連打に押されまくる苦しい展開を強いられ、2Rにはバックハンドブローでダウンを奪われる。ほぼ何もできずに完敗したと言っても過言ではない。
 
僕は直樹の試合は2022年4月の山田洸誓戦しか知らないのだが、その際はもう少し動きがよかったような……。
これが不調によるものなのか単純にウォシクが強かったのかは不明だが、正直言い訳がいっさい利かない負け方だった(気がする)。
 
 
GLORYではRISEと違って3秒以内の首相撲が許されている。
また今回は直樹にとっては一階級上の-65kg契約。さらにウォシクの地元ドイツでの開催ということで、一見不利な条件が揃ったように思える。
 
だが、よく見ると実はそんなことはない。
デニス・ウォシクの主戦場はGLORYではなく中国の武林風。それ以外にもロシアやポーランド、オランダ、日本とさまざまな国で試合を重ねており、階級もK-1での-60kg級からドイツ国内での-70kg級など多岐にわたる。
しかも今回は試合自体が約2年半ぶりとのこと。一方的に直樹が不利だったとは言えない。
 
実際の試合もウォシクがゴンゴン前に出て腕を振りまくる展開で、首相撲の発生するシーンはほとんどなく。
直樹も慣れない舞台で調整が難しかったのかもしれないが、これはルールどうこう以前の問題ではないか。
 
今回のウォシクは郷州征宜戦とは別人レベルのパワフルさだったが、もしかしたらK-1での-60kg級は減量が相当キツかったのかもしれない。
 
 
ついでに言うと、この選手にぶつけるなら距離と角度で勝負できる山田洸誓の方が適任だったかもしれませんね。
 
クマンドーイが負けただと!? 田丸辰の力強さが段違い。過去の試合で感じた頼りなさは皆無だった。53~55kgはクマンドーイを中心に群雄割拠が進む?
 

〇山田洸誓vsヤン・カッファ×(3R1分23秒KO)

2022年8月21日にエディオンアリーナ大阪で開催された「Cygame presents RISE WORLD SERIES OSAKA 2022」。
THE MATCHでの安保瑠輝也戦で株を上げた山田洸誓がGLORYフェザー級5位ヤン・カッファと対戦し、3Rに右カウンター1発でKO勝利を挙げた試合である。
 
THE MATCH 2022結果一覧&ひと言感想(前半5試合)。KOが少ない軽量級はRISEが有利なのかもしれんね
 
お次はデニス・ウォシクと対戦するなら直樹ではなくこちらの方がよかったんじゃないの? と申し上げた山田洸誓のワンマッチについて。
 
 
序盤から近場で激しく打ち合う両者だが、たびたびヤン・カッファが組み付きからの膝で注意を受けるなど荒れ模様の展開に。
結局中盤からローでダメージを与えた山田が3Rに右カウンターで勝負をつけたわけだが……。
 
なかなか噛み合わない試合だったなぁと。
 
恐らくヤン・カッファは首相撲から流れを作るタイプ、もしくは山田のファイトスタイルから近場でのもみ合いが有効だと判断したのだと想像する。
そして、瞬間的な組み付きからの1発が許される? RISEルールに対応しきれずああいう糞詰まりな試合になってしまった。
 
山田の右カウンターはお見事だったし劇的な結末でもあったが、仮にあのまま判定まで行っていたら……。
メインの原口健飛vsペットパノムルン・キャットムーカオ戦以上の残尿感が残ったのではないか。
 
また試合後にヤン・カッファに対して「ダーティな選手」「観ていて不快になった」といった声をいくつか見かけたが、恐らくそれは違う。スタイル的にデニス・ウォシクよりもルールの影響を受けやすく誤解されてしまったのだろうと。
これは少々気の毒である。
 

〇ペットパノムルン・キャットムーカオvs原口健飛×(延長判定3-0 ※10-9、10-9、10-9)

そしてRISE大阪大会のメイン、原口健飛とペットパノムルン・キャットムーカオによる2021年11月以来の再戦。5R+延長1Rの末にペットパノムルンが判定勝利を飾った一戦について。
 
こちらも山田vsヤン・カッファ戦同様、噛み合わない試合だったというのが率直な感想である。
 
 
リング中央、やや遠い位置で対峙する両者。
 
アップライト気味の構えからペットパノムルンが打ち込むミドルは伸びが凄まじく、それこそ地面を滑っているのでは? と思うほど。この1発で原口との距離をあっという間に詰めていく。
 
対する原口はサイドキックやローでペットパノムルンの前進を止めつつ踏み込みの瞬間にカウンターを合わせる。ところがペットパノムルンがミドルの直後に首に腕を回してくるため毎回もみ合いが発生する。
 
原口は試合後にペットパノムルンの掴みや投げ? に対する不満を口にしていたが、この辺は僕にはよくわからない。
アレが“瞬間的な掴みからの1発のみ可”というRISEルールの範疇なのか、もしくはやり過ぎなのかはレフェリーの判断なので何とも言えない。本人は「首を絞められた」とも言っていたようだが、その瞬間は流れの中でのものと判断されたのだろうと。
 
要するにペットパノムルンもヤン・カッファも“GLORYの選手”なのだと思う。
首相撲からの展開が得意な選手が慣れないワンキャッチ・ワンアタックルールを強いられたせいで大いに戸惑った。特にムエタイ出身のペットパノムルンはミドルを警戒する原口を攻略するためにああいう試合を選択せざるを得なかったのではないか。
 
K-1 vs RISE対抗戦感想。キックの深みをより感じる6試合だった。メンバーはよく知らんけど。そしてなぜ安保瑠輝也はここに名前がねえんだよ笑
 

「対世界」のコンセプトで他団体から招聘する限りはルールの違いが発生する。対抗戦のメンバーも“それ用”の選出が必要になる

THE MATCHでの那須川天心vs武尊戦に対して「武尊が明らかにクリンチされ慣れてない」「天心とはインテリジェンスに差があり過ぎた」と申し上げたが、山田洸誓vsヤン・カッファ戦、ペットパノムルン・キャットムーカオvs原口健飛戦も大雑把に言えば似たような感じ。


他団体の選手が慣れないルールで試合をする場合、どうしても窮屈な展開になる。
 
RISEの「対世界」というコンセプトは素晴らしいが、団体ごとに微妙にルールが異なるキックボクシングで別のプロモーションから選手を招聘するというのはこういうことなのだろうと。
 
 
また仮に今後も団体同士の対抗戦を続けるのであれば、RISEもK-1も“異なるルールに対応できる”選手を選出する必要がある。THE MATCHのようにエースで四番をズラッと並べるのではなくいわゆる対抗戦用のメンバーというヤツ。
 
天心vs武尊や今回のペットパノムルンvs原口といった団体のトップ同士の激突はあくまでもオールスター戦であり、「対世界」と銘打って団体として勝利を目指すのなら“それ用”の作戦が必要になる。そのことを改めて感じさせられた次第である。
 
那須川天心vs武尊感想。衝撃的に強かった天心。この日の天心には誰も勝てないんじゃない? 武尊もあきらめずにがんばった感動的な試合
 

〇海人vsサモ・ペティ×(延長判定3-0 ※10-9、10-9、10-9)

そしてルールの違いやホーム、アウェイ関係なく安定した強さを見せたのがTHE MATCHで野杁正明を下した海人。
本戦ドロー、延長判定とギリギリの結果ではあるものの、前回の野杁戦同様さすがと思わせる動きは随所に見られた。
 
THE MATCH 2022結果一覧&ひと言感想(セミセミとセミの2試合)。原口がすごすぎたし野杁vs海人はハイレベルすぎて意味不明
 
先日のTHE MATCH(そればっかり言ってるけど笑)後に「団体ごとに微妙にルールが異なるキックボクシングで強さを発揮するのは雑食系かも?」と申し上げたが、その筆頭格が那須川天心とこの海人である。
 
自分の主戦場(天心はRISE、海人はシュートボクシング)で盤石の強さを見せつつ他団体の舞台にも積極的に上がる。それによって地肩の強さに対応力が上乗せされ、どんな状況、ルールの中でも落ち着いて動ける図太さが身につく。
器用さなどの本人の資質はもちろんだが、ルールの一貫性に欠けるキックボクシングにおいてはいい意味での“節操のなさ”がプラスに働くのかもしれない。
 
 
海人なんてアレですからね。
本来は肘あり、投げありルールの選手ですからね。
それがRISEでもTHE MATCHでも変わらぬ強さを見せるのだから、やはり雑食系の対応力は侮れない。
 
 
ただ、70kgの舞台ではどうしても海外選手のフィジカルに飲まれる局面は出てくる(と思う)。
今回のサモ・ペティ戦でも中間距離の差し合いでは上回ったものの、遠間からの踏み込みや強引な前進にタジタジになるシーンが目に付いた。
 
打ち終わりのカウンターやローからボディ、顔面へのつなぎ等、自分の間合いで勝負できるときはめっぽう強いが馬力で押し込まれた際にややしんどくなる。そこでどうするかが今後の見どころかなぁと。
 
Breaking Down 6のダイジェスト視聴感想。競技として洗練させていく気はないのかも? 乱闘云々には興味ないけど「ガキの未来ガー」とかの苦言()はうるせえよって思うよね
 

〇ゴンナパー・ウィラサクレックvs岩崎悠斗×(1R終了負傷TKO)

2022年8月11日に福岡国際センターで行われた「K-1 WORLD GP 2022 JAPAN ~K-1フェザー級世界最強決定トーナメント~」。
THE MATCHで白鳥大珠に1RKO勝利したゴンナパー・ウィラサクレックが2016年10月以来の参戦となった岩崎悠斗に1R負傷TKOで勝利した一戦である。
 
THE MATCH 2022結果一覧&ひと言感想(中盤4試合)。ゴンナパー最高かよ。僕はこの試合を一番楽しみにしてたんだよ笑
 
ラストは僕の大好きなゴンナパー・ウィラサクレック。
この日も白鳥戦同様、長身の岩崎悠斗をグイグイ攻めまくった上で鼻を折っての負傷TKO勝利。ローと前蹴りで態勢を崩し、ミドルから顔面へのコンビネーションにつなぐ流れで終始圧倒した。
 
 
いや~、やっぱりゴンナパーはいいっすねぇ笑
岩崎悠斗の試合を観たのは今回が初めてなのだが、この選手も普通に強いっすよね?

ジャブが鋭くローも的確。あそこで相手を怯ませてから打ち下ろしにつなぐ展開が得意なのかな? と思うが、頑丈なゴンナパーはまったく動じることがない。打ち終わりのカウンターで固い拳をゴツゴツ当て、白鳥をKOした左を顔面にぶち込んでダウンを奪ってみせた。
 
1R終了直後のゴンナパーの仕草を見ると、どうやら岩崎の鼻が折れたことに気づいたっぽい。
セコンドに「アレ、折れてるだろ」と笑顔混じりに話しかける姿がたまらないっす笑
 

クリンチ、掴みを全面的に禁じたK-1ルールの清々しさ。対抗戦では絶対に負けちゃダメだったんだよ

さらに言うと、K-1ではRISEとGLORYのようなルールの違いによる混乱、戸惑いもない。
 
K-1ルールに慣れた同士の試合で展開も打ち合いのみと非常にわかりやすい。
RISEやGLORYと違ってK-1は掴みやクリンチを全面禁止している&倒しに行く姿勢を評価するために必然的にこういう試合が多発する。
 
他団体との対抗戦ではインテリジェンスの足りなさ、競技としての深みのなさを露呈したK-1だが、単純明快さ、華やかさに関しては他の追随を許さない。清々しいまでにテレビ的、大衆的である。
 
格闘技ファンは今度から「那須川天心と武尊の試合あったじゃん」と言える。THE MATCHにより天心と武尊はジャンルを超えたスターに。でもフジテレビの判断は正しかったよ
 
首相撲ありき&階級下のヨーキッサダー・ユッタチョンブリーを“サイキョーのシカク”として招聘→k-1ルールでボコった武尊が「K-1サイコー!!」と絶叫するなどなかなかのガラパゴスっぷりを発揮する側面もあるが、仮にこのルールがスタンダードになれば誇張抜きで「K-1は最強で最高」と言い切れる。
 
そういう意味でもTHE MATCHでの負けは絶対に許されなかったのだが……。
 
 
できることならゴンナパーにこそ-65kg級でGLORYとの対抗戦に出てもらいたいですけどね。
絶対に無理だろうけど。
 

Advertisement

 

 

 

 

【個人出版支援のFrentopia オンライン書店】送料無料で絶賛営業中!!