八村塁が代表復帰した日本が韓国に勝利。桶谷大HCの目指すバスケは選手個々に高いインテリジェンスが求められる。トム・ホーバスの3ポイントガチャとは全然違う。でも結局ホーキンソン次第だよね【2026.8.15感想】

八村塁が代表復帰した日本が韓国に勝利。桶谷大HCの目指すバスケは選手個々に高いインテリジェンスが求められる。トム・ホーバスの3ポイントガチャとは全然違う。でも結局ホーキンソン次第だよね【2026.8.15感想】

2026年8月15日に東京・有明アリーナで行われた男子バスケットボール日本代表vs韓国代表戦。88-68で日本代表が勝利したわけだが。

 
LAクリッパーズへの移籍が決まった八村塁が約2年ぶりの代表復帰ということで注目を集めた今回。
僕は普段あまりバスケを観ない人間だが、八村の動向は嫌でも目に入ってくる。
なので、韓国との試合は大いに楽しみにしていた。
 
予定があったためリアルタイム視聴はできなかったが、先日Tverでの視聴を終えたところである。
 

桶谷HCと八村が目指す流動性の高いバスケ。選手個々にインテリジェンスが要求される

まず八村塁の代表復帰を後押しした(らしい)“今の日本バスケ”について。


桶谷大HCが目指すのはいわゆる流動性の高いポジションレスのバスケ。
「中で崩して外を開ける」を基本軸に、司令塔を1人に固定せずにどこからでも起点を作れる、好不調やミスマッチ等を試合の中で判断し、そのつど戦術を選択するNBA的なスタイルだと想像する。
 
トム・ホーバスが提唱した「5秒以内のリングへのアタック」「3ポイント偏重」のシステマティックなバスケとはまったく違う。選手個々に高いインテリジェンスが要求される戦術である。
 

今の日本バスケは2000年代前後の日本サッカーと似ている。八村塁は中田英寿なんだよな

以前にも言ったが、今の日本バスケは2000年代前後の日本サッカーと少し似ている(と思う)。
 
八村塁とトム・ホーバスの確執がおもしれえ。公の場でここまで反旗を翻した日本人選手を見たのは初めて。ホーバスのボス気質に八村がカチンときたんだろうな
 


方向性が定まらない未成熟なチームをまとめるには、剛腕系の指揮官(トム・ホーバス、フィリップ・トルシエ)が「100%俺の言うことを聞け」と1から10まで指示を出すやり方が有効。
選手に思考停止を強いる方法が正しいとは言わないが、全体のスタンダードを引き上げる初期フェーズでは一定の効果を発揮する。
崩壊したヤンキー集団のクラスを力技で更生させる熱血教師のようなもの。
 
ただ、それはトップレベルを知る飛び抜けた存在(八村塁、中田英寿)にとっては物足りなく映る。とてもじゃないが、プロフェッショナルの仕事ではないように見えてしまう。
進学校からきた転校生がヤンキークラスの惨状に愕然とするようなものである。
 
 
中田英寿は早い段階で“大人の汚い部分”に触れたことで「世の中は公平ではない」「マスコミを始め世間は世知辛い」と達観したこともあり、合わない人間との関係をビジネスとして割り切る、自分をコントロールする術を知っていた。
 
一方の八村は完全に“言っちゃう”側の人
本人も普段から「もっと自分を出すべき」「他人をおもんばかる日本人のスタンスは美徳だが、コート上では邪魔になる」と繰り返し口にしている。
 
平成と令和の違いもあるのかもしれないが、とにかくプロとして譲れない部分は絶対に曲げない。“群れのボスは俺”的な序列を大事にするホーバスとは根本的に相入れなかったのだろうと。
 

3ポイントガチャでジャイキリを狙ったホーバス。がっぷり四つで組み合い、試合の中で最適解を見つける桶谷

戦術面もそう。
ホーバスのバスケは「3ポイントガチャを引きまくる」「極力コンタクトを少なくしてフィジカル差が表面化する前に勝負を決める」「3試合中2試合で当たり(上振れ)が出れば御の字」の、いわゆる弱者の兵法
 
・3Pポイントくじに当たれば予選を通過できる?かも?
・メダルなどとんでもない、目標はあくまで強豪国に歴史的1勝を挙げること
日本の現在地を受け入れ、目先の1勝を目指す割り切ったやり方である。
 
 
一方、八村塁の言う「やりたいバスケ」は相手が強豪だろうが格下だろうががっぷり四つで組み合うスタイル。
 
「3ポイントの成功率次第」というギャンブルに頼らず、どんな相手にも真っ向からぶつかる、試合の中で最適解を見つける。
上述の通り流動性の高さゆえにインテリジェンスと能力の両立が求められる。


 

いいか悪いかではない。ゴールをどこに設定するか、何を重視するかの問題

これはもう、どちらがいいか悪いかではない。
4年で結果を出せと言われれた代表監督が現戦力での最大化を目指すのはある程度仕方ない。
 
日本バスケの現在地が強烈なカリスマに引っ張り上げてもらうことが最適というフェーズだったこと。
また4年に一度しかないオリンピックに主力として出場できるのは2回、多くても3回。
これらを加味すれば、ホーバスの剛腕が日本バスケのレベルアップを促したことは間違いないと思う。
 
ただ、八村塁や桶谷HCの目指すバスケは「今、結果を出すこと」と同時に10年後を見据えたものでもある(と思う)。
NBAに近い戦術やプロフェッショナルなコーチ陣、高水準のミーティング、スカウティング(知らんけど)、その他。
 
代表のバスケを目にした若い選手が将来ここでプレーしたいと思うか、日本のバスケがちゃんと世界のトレンドに追いついているか(追いつく可能性を感じるか)。
 
目先の1勝、結果はもちろん大事。
だが、「代表ってカッコいいんだぜ」「日本バスケってすげえだろ?」を見せることも同じくらい重要でしょ? と。
 
八村が主宰する「BLACK SAMURAI」プロジェクトも、「頂上の高さ」を若い世代に体験させることが目的となっている(らしい)。

 
ちなみに2006年のW杯後に現役を引退した中田英寿は、当時のインタビューで「今の日本にジーコは早かった」とコメントしている。


 

本調子ではなかった八村塁。悪く言えば格下相手に遊んでた

試合についてだが、とりあえず八村塁はまだまだ本調子ではない。はっきり言って出来はよくなかったと思う。
 
しなやかさ、力強さはレベチ。
周りとは明らかに動きが違う。
 
だが全体的にもっさりしていて攻守の切り替え、判断も早くない。何よりリングに向かう姿に殺気を感じない
まだまだ調整段階というか、悪く言えば格下相手に遊んでいた印象である。
 
それでもチームトップの22得点なので、凄まじい実力なのは間違いないが。
 
あとはマッチアップしたエディ・ダニエルがバッチバチに勝負しにきたのもありそう。
あの選手は流し気味の八村とは真逆で、格上を食ってやろうという気迫が全身からみなぎっていた。
 
立川ダイスvs金沢武士団現地観戦。久しぶりのバスケ観戦楽しかった。B3で観客1900人はすごくない? 地域を上げてバックアップする感じが好印象
 

日本は結局ホーキンソン次第だよね。この人のダブルダブルがすべての大前提

そして、日本代表は結局ジョシュ・ホーキンソン次第とも思った。
 
この試合のホーキンソンは18得点、14リバウンド。得点は八村に次ぐ2位、プレータイム24:59は八村の23:40を超えるチーム1位となっている。
 
つまり、主役は八村だが、あくまで土台を支えるのはホーキンソン。
この人が相手のビッグマンとある程度やり合えることが最低条件になる(と思う)。
 
実際、一世代前の代表でもニック・ファジーカスがチームを支えていたわけで。
苦戦続きだった日本がファジーカスの合流とともに息を吹き返し、相手の強度が上がってファジーカスが通用しなくなるにつれて厳しくなった印象である。
 
オールラウンダー寄りのホーキンソンはファジーカスと違ってゴール下で歯が立たなくてもやりようはある。
ただ、ゴリラ同士の殴り合いはどれだけポジションレスが進もうが避けては通ることはできない。
 
ホーキンソンのダブルダブルが日本にとっての最低ライン、今回のように20得点、15リバウンド前後を叩き出せばぼちぼちいける。
相乗効果で自由度が増した八村が相手エースとのマッチアップを8:2くらいで圧倒すれば……。
 
つまり、ホーキンソンが一定以上のパフォーマンス(相手のゴリラに最悪4:6で対抗できること)でチームに貢献することがすべての前提になる。
 

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PG陣は潤沢、外のシューターも絶対的エースもいる。でも、相手のゴリラと正面から殴り合えるヤツが…

ぶっちゃけ日本にはPG勢は潤沢にいる。
河村勇輝は確かに速いしうまい、視野も広いが、それ以外にも試合を作れる選手はいる(と思う)。高さを犠牲にしたWガードも短時間のオプションとして悪くない(と思う)。
 
ガード陣がかき回し、外にスペースをこじ開けて富永啓生や渡邊雄太が3ポイントを狙う。裁量を認められた八村が状況によってエゴを全開にする。
 
だが、ビッグマンに関してはホーキンソンとセカンドユニットの間に明確な差を感じた。
シェーファーアヴィ幸樹、川島悠翔、狩野富成と2m級の選手が何人か入れ替わったが、正直どの選手もホーキンソンに比べて見劣りしたことをお伝えする。
 
すべての試合、時間帯でホーキンソンが絶好調を維持するなどまず不可能。
なので、この選手が出ていない時間帯をどうしのぐか。たとえば得点はダメでもDFリバウンドだけは支配するとか。
本人だけでなく、冗談抜きでバックアップメンバーの出来が勝敗を左右するのではないか。
 
サンロッカーズ渋谷vs信州ブレイブウォリアーズ現地観戦。久々のB1観戦でレベルの高さ、観客の熱狂に驚いたw オイオイ、B3とは全然ちげえな
 
申し上げた通り日本代表が勝負の土俵に上がるにはホーキンソンのダブルダブルが最低ライン。
20得点、15リバウンドくらいやれればまあ、いける。
逆に8得点、6リバウンド程度に抑えられたらその時点で終わる。
 
ちなみにパリ五輪の第3戦、ブラジル戦でのホーキンソンは26得点(3ポイント5本)、10リバウンドと八村不在の中で爆発している。
ところが相手Cのカボクロは33得点(3ポイント4本、成功率100%)、17リバウンドとさらに上をいった。
 
この試合のように相手ゴリラとの殴り合いで圧倒されたときは素直にあきらめるしかない。
もしくは八村塁の大爆発に期待しようぜOK?
 

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