アーノルド・バルボサvsアレックス・サウセドとかいうセミファイナル感満載の好試合。地味強バルボサはバドゥ・ジャックっぽくて好き【結果・感想】

アーノルド・バルボサvsアレックス・サウセドとかいうセミファイナル感満載の好試合。地味強バルボサはバドゥ・ジャックっぽくて好き【結果・感想】

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2020年10月17日(日本時間18日)、米・ネバダ州ラスベガスで行われたS・ライト級10回戦。WBO同級7位アーノルド・バルボサJr.と同6位アレックス・サウセドの一戦は3-0(97-92、97-92、96-96)の判定でバルボサが勝利。戦績を25勝無敗10KOとした試合である。
 
 
激戦区のS・ライト級におけるサバイバル戦、無敗のアーノルド・バルボサJr.と世界戦経験もあるアレックス・サウセドの一戦は、序盤から両者が技巧とパワーを総動員する好試合となる。
 
大柄な身体と高いガードで前に出るサウセドに対し、バルボサはサイドへの動きと的確なジャブで応戦。時おりスイッチしてサウセドの距離を狂わせつつ確実にポイントを重ねていく。
 
パワーでは上回るサウセドだったが、バルボサの出入りと連打になかなか対応できず。7Rにダウンを奪ったものの、各ラウンドでわずかに上回られる展開が続く。
 
最終回にサウセドが猛ラッシュで逆転を狙ったが、最後までバルボサの足に追いつけずに試合終了。文句なしの判定でバルボサが勝利を飾った。
 
 
なお、この試合はWBOインターナショナル王座戦として行われている。
 
カシメロvsミカー、ローマンvsパヤノ、フィゲロアvsバスケス、テイラーvsコーンソーン振り返り。いい試合が多かったですね。え? チャーロに弟なんていたの?
 

こっそり楽しみにしていたバルボサvsサウセド戦。地味強同士のサバイバルマッチ。バルボサは僕のお気に入りかも?

僕がこっそり楽しみにしていたアーノルド・バルボサJr.とアレックス・サウセドによるS・ライト級10回戦。どちらも地味ながらも文句なしのいい選手で、激戦区のS・ライト級でどちらが抜け出すかの一戦でもある。


実際の試合もなかなか見応えのある内容だった。
もともと地味強な両者に加え、メインのワシル・ロマチェンコvsテオフィモ・ロペス戦の判定が微妙だったおかげで完全に話題を持っていかれた感があるが、僕としてはかなり楽しめた一戦。
特に勝利したアーノルド・バルボサJr.は僕のお気に入りの選手になりつつあることを報告しておく。
 
うん、やっぱりアーノルド・バルボサJr.はいいね。
2019年11月のウィリアム・シルバ戦の際も思ったが、突き抜けた特徴はないが高次元でまとまった好選手。タイミングと相手によっては王座戴冠のポテンシャルも十分にあると思う。現在28歳であることを考えると、恐らく向こう1、2年が勝負になりそうだなと。
 

バドゥ・ジャックっぽさがあるアーノルド・バルボサの今後に期待。アレックス・サウセドは強化版ウーゴ・ルイスかな

申し上げたように僕はアーノルド・バルボサJr.のことを割と気に入っているのだが、理由としては「バドゥ・ジャックにちょっと似ている」から。
 
距離と角度の調整が得意で左リードの的確さもある。
常に相手と一定の距離を保ちつつ、自分は射程の内と外のギリギリのところで出入りを繰り返す。
12R動き続けるスタミナもあり、局面によってはインファイトでの打ち合いもいとわない。
 
突出したものがあるわけではないが、大崩れしにくくどんな相手でも接戦に持ち込める勤勉なスタイル。
 
しかもこの選手の大きな特徴はスイッチがめちゃくちゃスムーズなこと。流れの中でスルッと左右を切り替えるというか、足の踏み出し位置によっていつの間にかスイッチが完了しているイメージ。
これはバドゥ・ジャックにはない部分で、そういう意味でもバルボサの方が総合力は上かもしれない。
 
また、KO率やファイトスタイル的に怖さが感じられないことを考えると、今後は強敵との対戦が増える可能性が高い。
 
バドゥ・ジャックの対戦相手なんて、振り返ってみるとどエラいことになってますからね。
 
・アンソニー・ディレル
・ジョージ・グローブス
・ルシアン・ビュテ
・ジェームズ・デゲール
・ネイサン・クレバリー
・アドニス・スティーブンソン
・マーカス・ブラウン
・ジャン・パスカル
 
2015年4月のアンソニー・ディレル戦から冗談抜きで1人も楽な相手がおらへん。
何とも言えないところだが、ぶっ壊される危険がなく一見勝てそうに思える地味強マンというのは強敵ホイホイの条件なのかもしれない。
 
そして、アーノルド・バルボサJr.も今後はバドゥ・ジャックのような修羅道をまい進する運命にある? のかも?
 
遠藤勝則vs荒谷龍人戦のKOが凄すぎてジュリアン・ジャクソンvsテリー・ノリスを思い出した。ボクシング観戦熱も復活
 
一方敗れたアレックス・サウセドについてだが、僕の中でのこの選手のイメージは強化版ウーゴ・ルイス。
 
上背があって身体も強くパンチも強力。
だがその反面、スピードがある方ではなく追い足もないため射程自体は短い。動きもやや直線的で、サイドへ動く相手を攻めあぐねる傾向が見られる。
ウーゴ・ルイスに比べれば手数は出るが、距離を外された際の対応はいまいち。恐らくスピードのあるカウンター使いを苦手とする選手なのだろうと。
 
今回の試合もバルボサのサイドへの動きにどこまでついていけるかに注目していたわけだが……。
 

バルボサのパンチの精度とフットワークがサウセドを寄せ付けず。バルボサのセミファイナリスト感はダニエル・ローマンにも通ずるよねw

結果としては、バルボサのサイドへの動きと左の的確さがサウセドの馬力を上回った試合だった。
 
射程の半歩外で対峙するバルボサに対し、サウセドは被弾を警戒してなかなか自分からは手が出せない。
タイミングを計って踏み込むものの、高いガードに阻まれヒットを奪えず。逆にガードと同時にカウンターをかぶせるバルボサの右を被弾し、さらに追撃の左も顔面にもらってしまう。
 
慌てて前に出れば横に回られ、無理やり距離を詰めればクリンチで動きを止められる。
そして、中間距離で間合いを支配された上で左ジャブで顔を跳ね上げられる流れ。
 
お互いに有効なヒットもあって動きの多い展開でもあったが、精度の差は明白。
サウセドが流れを変えるために懸命にエンジンを吹かしていたのも伝わったが、最後までバルボサのペースを崩すことはできず。全体を通して盛り上がりに欠ける試合ではあったが、バルボサの地味強っぷりが大いに発揮された一戦だったのではないか。
 
いや、やっぱりいいっすねアーノルド・バルボサJr.。
中間距離だけでなくインファイトでもそれなりの強さを証明したというか。しっかりと腰を回転させて強いパンチを打つ印象。若干窮屈そうに長い腕を振っていたサウセドとは一味違う。
 
7Rにバランスを崩したところに左をもらってダウンを喫したが、スタイル的にもああいう被弾は十分あり得る。むしろあれを引っ張らずにきっちりペースを守り切ったのが素晴らしかったということで。
 
 
まあでも、この手のタイプはセミファイナルに特化した選手ではあると思う。
S・バンタム級のダニエル・ローマンもそうだが、一定のペースを12Rにわたって維持できる選手というのはずば抜けた安定感を示す反面、インパクトには欠ける。
 
テオフィモ・ロペスのようなド派手なKOが期待できない分、どうしてもスター候補とはなりにくい。メインには使いづらいが、セミファイナルあたりで勤勉さとハイレベルさをアピールするには“ちょうどいい”選手と言える。
 
119-109ロペス! 118-110カネロ!←これってホントに陰謀なの? あからさま過ぎる気が…。採点方法を変えるなら加点方式だろうな
 

7Rと8Rの間に行われたビデオ判定は最悪中の最悪だった。メインの判定結果なんか比じゃないくらいの大問題だと思ったよ

ちなみにだが、今回は8Rの開始前にビデオ判定で試合が中断され、7Rでのスリップがダウンに訂正される一幕があった。
あれ、個人的な意見を言うなら最悪だったと思っている。
 
もともと僕はどんなスポーツであれ試合中に行われるビデオ判定が大嫌いな人間である。
理由はいろいろあるが、一番は「試合の流れが止まる」から。
時間制にしろ点数制にしろスポーツには流れというものが存在し、それが勝敗を決めるケースは非常に多い。
 
調子が上がってきたところでブツ切りにされたら確実に流れは止まるし、観ている側としてもあの空白の時間は拷問以外の何物でもない。
 
 
そしてもっとも害悪だと思うのが、無駄な休憩時間が与えられること
 
特に格闘技はダメージを与え合う競技であり、試合中の強制的なストップは致命傷にもなりかねない。“前半を捨てて相手の体力を削り、後半に勝負をかける”的な作戦も十分あり得るわけで、ああいう中断のされかたをすると作戦がすべて吹っ飛ぶ可能性すら生まれてしまう。
 
ましてや今回はダウン直後のラウンドである。たまたまダメージが浅かったからよかった? ものの、仮にバルボサが7Rのダウンで甚大なダメージを負っていたとしたら?
サウセドは千載一遇のチャンスをビデオ判定によって奪われたことになる。
 
もちろんバンテージが剥がれたり出血のチェックなど、試合を中断せざるを得ないケースは存在する。
 
ただ、ビデオ判定でそれをやるのは違うんじゃないの? もしやるならラウンド中に済ませておくべきなんじゃないの? という話。
試合の流れをブツ切りにする中断は極力少なくなるよう努力するのが健全な運営だと思うのだが。
 
モロニー弟vsジョシュア・フランコ戦のビデオ検証が思った以上に酷かった件。僕がビデオ検証が嫌いな理由が凝縮されたクソさだったな
 
今回のビデオ判定を誰が言い出したのかは不明だが、申し上げたようにタイミングとしては最悪中の最悪だった。正直、物議を呼んだメインイベントの判定よりもはるかに大きな問題だと思っている……。
 
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