映画「県庁の星」感想。王道ストーリーの安定感が心地よい。忘れていたものや知らなかったいろいろな“気づき”を得て成長する人たちのお話
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映画「県庁の星」を観た。
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「県庁の星」(2006年)
県庁に勤務する野村聡は将来有望な若手として一身に期待を集めていた。
書類作成、マニュアル作りを得意とし、何ごともそつなくこなす野村の評価は高く、本人も自らの資質に絶対の自信を持っていた。そして交際中の篠崎建設社長令嬢・篠崎貴子との結婚に成功すれば、このまま出世コースに乗れると信じて疑わない。
そんなある日、仕事中の野村に県議会議長の古賀が声をかける。
どうやら野村の提案した「保養施設建設プロジェクト案」に反対する市民団体があるらしい。古賀が言うには、提案書の出来はすばらしいが、巨額の費用を投じる必要があるため反対意見が巻き起こる可能性が高いとのこと。
野村はとっさに考えをめぐらせ、「民間からのアイデアを取り入れれば県民を納得させられる」と提案する。
これを聞いた古賀は野村の機転に大いに感心し、賛辞を述べてその場を去るのであった。
ところが、その数日後。
課長に呼び出された野村は、民間の視点を取り入れるために一般企業に人員を派遣する「民間人事交流企画」のメンバーに選ばれたことを聞かされる。突然の辞令に戸惑う野村だが、半年の期間を終えて県庁に戻った際は「保養施設建設プロジェクト」に加われると聞き気持ちを切り替える。
そして後日、派遣先であるスーパー「満天堂」に向かうのだが……。
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「県庁の星」はなかなかよかった。休みの日に鼻くそをほじりながら観るには最適
本作は桂望実の小説を原作として2005年にマンガ化、2006年に織田裕二主演、ヒロインに柴咲コウを配して映画化されたもの。
県庁勤務の野村聡がひょんなことから民間企業への派遣が決まり、派遣先であるスーパー「満天堂」でパートの二宮あきと出会う。
エリート意識が強くプライドの高い野村はスーパーの現場仕事にまったく対応できない。理屈を並べるばかりで役に立たない野村の姿に、教育係を任された二宮はあきれ果ててしまうのであった。
逆に「満天堂」の杜撰な営業状況を野村に指摘されるのだが、「今までそうやってきたから」「忙しいから」という理由で現実を直視しようとしない。
そんなこんながありつつ、鼻っ柱を折られた野村が心を入れ替え「満天堂」の再建に乗り出すお話。
いわゆる「世間知らずのエリートが挫折を経て成長する」という王道のストーリーだが、率直に申し上げてなかなかよかった。
僕はこの作品をAmazonの配信でたまたま見つけたのだが、休みの日に鼻くそをほじりながら観るには最適な1本と言えるのではないか。
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リアリティがある方ではない。あまりにご都合主義という批判もすげえわかる
一応言っておくと、本作はリアリティという意味ではあまり優れているとは言えない。
県庁の職員たちは県民を見下した態度や発言を繰り返し、税金の使いみちにはとことん無頓着。
庶民とのギャップを強調するためとはいえあまりにお役所仕事を悪く描き過ぎだし、民間が初めてだからといってもあそこまで世間知らずで頭でっかちな公務員なんかおるの? という話。
またスーパー「満天堂」の杜撰さも極端過ぎる。
食品を扱う人間がいっさい在庫管理をできずに商品を山積みにしておくのはマジで笑えない。調理場の人間が建物の中で当たり前のように喫煙するし、その状況を上司がしれっと放置しているのもキツい。
野村が心を入れ替えて以降、とんとん拍子でスーパーの客足が伸びるのだが、全体的に振れ幅が大き過ぎて感情移入がしにくいというのが本音である。
レビューサイトもいくつか読んだが、好意的な意見の中に「ご都合主義過ぎる」「ステレオタイプな内容で受け付けない」という感想もちょくちょく目についた。僕と似たような印象を持った方もそれなりにいたのだと想像する。
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「素直に謝れる」「素直に教われる」ことの大事さを思い出させてくれる。他人の意見を聞く耳は持っていたいよね
だが諸々のリアリティのなさ、予定調和な展開を気にしなければ概ね楽しめる作品であることは間違いない。
中でも立場の違う人間同士が協力しながら成長していく過程には大いに共感できる。
プライドが高く融通の利かないエリート野村が現場仕事に対応できずに苦しむ姿。
また、二宮を始めとする「満天堂」の面々は職場環境がよくないことを知りつつ現実から目をそらし続ける。
双方に共通しているのは、第三者に「ダメだ」と指摘されてもそれを素直に受け入れられないこと。
一つの場所に長く留まることで価値観が固まり、そこからなかなか動けない。本心ではよくないと気づいていても何かを変えることが億劫になる。そして、他人に図星を突かれた途端に冷静さを失い、「すみません」のひと言が言えなくなる。
これ、ホントにわかりみが深い。
仕事でもプライベートでもそうだが、ルーティン化した日々というのはめちゃくちゃ楽である。慣れた作業を淡々と“こなす”だけで生活が成り立つのであれば、こんなに楽なことはない。
ただ、現実問題として世の中はそこまで甘くない。トレンドの移り変わりは速く、油断しているとあっという間に置いてきぼりを食ってしまう。仕事関係では特にアンテナを高く張って情報収集を続けていないと、わずか2、3年で“使えない人材”に成り下がる業界もあるのではないか。
僕自身、たまに展示会や新製品説明会等のイベントに足を運ぶようにしているが、これは意外と大事なことだと思っている。情報収集に加え、業界内での自分の立ち位置を知る意味でも定期的に外に出るのはマジで悪くない。
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実際、自分のいる場所が世の中から取り残されていることに気づけないまま取り返しがつかなくなるケースは割と多い気がする。「自分の常識は他人の非常識」ではないが、どんな形でもいいから世間とのつながりは常に持っておくべきかなと。
などなど。
織田裕二演じる野村の「素直に謝る」「素直に教わる」というセリフを聞きながらそんなことを思った次第である。
いやもう、素直さって大事よね。
相手の立場、年齢や職種に関係なく、“他人の意見に耳を傾ける姿勢”は常に持っていたいものです。
全盛期の柴咲コウがクッソかわいい。はにかんだ笑顔が放っておけない
あとはまあ、アレだ。
柴咲コウがめちゃくちゃかわいい。
本作が公開された2006年当時で24、5歳くらい? だと思うが、恐らくこの時期が柴咲コウの全盛期と言えるのではないか。
2006年は「県庁の星」のほかにも「嫌われ松子の一生」や「日本沈没」、「ワイルド・スピードシリーズ」などのヒット作に出演し、ドラマ出演も並行してこなしながらCM4本、シングルCDを3枚発売。
翌年にはこれまた大ヒットドラマとなった「ガリレオ」でヒロインを務め、2008年公開の映画版「ガリレオ」にも出演。いずれも主題歌を担当するなど、まさにこの1、2年は“柴咲コウの年”と言っても過言ではない(知らんけど)。
そして、本作「県庁の星」の二宮あきや「ガリレオ」の内海薫、「信長協奏曲」の帰蝶といった「自分の気持ちを素直に表現するのが下手な女の子」を演じたときの柴咲コウの破壊力は文句なしに凄まじい。
感情が溢れそうになるのを懸命に抑え込みつつ、表情を崩さずに喋り続ける。
あの感じが何とも言えないほどクセになるのである。
本作のラスト、野村に“マーケティングなしの”デートに誘われた際の弾けるような笑顔はマジでたまらない。
な〜んかわからんけど放っておけない感じ。
イメージ的には「ザ・エージェント」でドロシー・ボイド役を演じたレネー・ゼルウィガーと少し近い気もする。
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てか、言いたいこと伝わってますかね?
とにかく、暇な時間にボーッと観る分には最適の映画「県庁の星」、文句なしにオススメである。
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