映画「翔んで埼玉」感想。これって要は「ホット・ショット」だよな? 「口が埼玉」も「そこらへんの草」も同じパターン

映画「翔んで埼玉」感想。これって要は「ホット・ショット」だよな? 「口が埼玉」も「そこらへんの草」も同じパターン

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映画「翔んで埼玉」を観た。 

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「翔んで埼玉」(2019年) 

東京都の名門校・白鵬堂学院の新たな転入生である麻実麗は、容姿端麗で立ち居振る舞いも優雅。アメリカ帰りで見るからに都会的な物腰の麗に学院生たちは一目で魅了されていた。

だが、都知事の息子で生徒会長も務める白鵬堂百美は麗の存在が気に入らない。
麗の都会指数を試すために次々と難題を浴びせ、麗を失脚させようと目論む。ところが麗はそんな妨害をものともせず、逆に突然のキスによって百美を魅了してしまう。

 

一方、百美の家で働く阿久津翔は、東京都知事・壇ノ浦建造の執事としての日々を送っていた。忠実な部下として建造を支える裏で、建造の妻である恵子とは“不適切な関係”を続けている。

そして、突如として現れた麻実麗の正体にいち早く気づき、2人になった瞬間を見計らって「きさま、埼玉だな?」と詰め寄るのだった。

表向きは港区の東京都民を装う麗だが、その正体は埼玉県の大地主・西園寺家の子息。埼玉県の通行手形撤廃を志す「埼玉解放戦線」の主要メンバーの1人だったのである。

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「翔んで埼玉」は「ホット・ショット」だよね。同じパターンのギャグをひたすらやり続けるヤツ

2019年に大きな話題となった映画「翔んで埼玉」。
イタリアで開催された第21回ウディネ・ファーイースト映画祭でマイ・ムービーズ賞を獲得するなど、地域格差ネタを盛り込んだ今作は海外の人にも受け入れられたとのこと。

僕もこの作品には前から興味があったのだが、これまでなかなか観る機会がなく。
先日、WOWOWでO.A.されたものをようやく観たのでその感想を。

まず、率直な印象として思ったのが「あ、これホット・ショットだ」

チャーリー・シーン主演で1991年に公開された映画で、「トップガン」や「ロッキー」などの有名作品のパロディをふんだんに取り入れたコメディ作品である。

一応言っておくと、この「翔んで埼玉」は「ホット・ショット」のようなパロディ作品ではない。魔夜峰央による同名の原作が存在する実写映画である。

では何が「ホット・ショット」なのかと言うと、同じパターンのギャグをひたすらやり続ける部分がめちゃくちゃ共通している(と思う)から。

東京都から迫害される埼玉県が地位向上のために立ち上がる。そこのバカバカしさを強調した作品

この映画は出身地・居住地によって激しい地域格差が存在する日本において、東京都からもっとも迫害を受ける埼玉県が地位向上のために立ち上がる内容となっている。

「埼玉解放戦線」の主要メンバーでもある麻実麗が自らの出生を隠して白鵬堂学院に転入し、通行手形の撤廃を目指して奮闘する。

その過程で繰り返される埼玉県の文化水準や教養レベルの低さいじりを笑いに変える流れ。

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また、埼玉県をライバル視する千葉県は東京に迎合することで通行手形の撤廃を目指し、県内の名所に「東京」と名乗ることを許されている。埼玉県民の憧れである海があることも埼玉県を見下す大きな要因の一つとなっている。

だが突如としてヌーの群れが線路を塞ぎ、翌朝まで列車が運行不能になるなど、野生度では埼玉県を凌駕する部分もある。

その他、埼玉県よりもさらに格下として強制労働に駆り出される茨城県や、多くの野生動物が生息する秘境・群馬県。細かい部分で言えば、東京郊外の町田や狛江、田無など。

東京都知事を頂点とした階級社会のピラミッドを見せることにより、ひたすらバカバカしさが強調された作品となっている。

そして、それがめちゃくちゃクドいのである。

「埼玉=低俗」いじりばっかりで胃もたれする。ストーリーの流れも雑だしね

「ああいやだ! 埼玉なんて言ってるだけで口が埼玉になるわ!!」
「そこらへんの草でも食わせておけ! 埼玉県民ならそれで治る!」
「きさま、埼玉だな?」
「茨城というと埼玉のさらに奥地にあるといわれるあの日本の僻地!?」
「あなたが埼玉県民でもいい! あなたについて行きたい!」
「所沢へ?」→ビクッ

上記は今作の名言? と呼ばれる部分の抜粋だが、今作にはこういった埼玉県をはじめとした他県をいじり倒す言い回し、表現が山ほど登場する。というより、基本的にはそれだけしかない。

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ストーリー展開はかなり雑で、白鵬堂百美が麻実麗に対抗心を燃やすパートから2人の逃避行までがめちゃくちゃ駆け足で進む。

それ以降も唐突に伝説の埼玉県民・埼玉デュークが麗の父親だと明かされたり、都知事の悪巧みに気づいた百美がごく普通に県境を行き来していたり。
挙げ句の果てには、あれだけ反目しあっていた埼玉県と千葉県が何の脈絡もなく手を結び、いきなり東京都庁に攻め上がる事態に。

全編1時間47分の作品なのだが、他県いじりに力を入れ過ぎたせいで全体のストーリーがいまいち入ってこない。僕自身、この作品に対する知識がほぼゼロだったせいで、結局白鵬堂百美が男なのか女なのかもよくわかっていない。

そして肝心の他県いじりについてだが、申し上げたようにワンパターン過ぎてクドい

埼玉はダサい。
埼玉は生活水準が低い。
埼玉は文化レベルが低い。

いわゆる「埼玉=低俗」をフレーズを変えて何度も連呼しているだけ。たまに主語が千葉や茨城に変わるだけで、やっていることはすべて同じ。

各々のフレーズを切り取る分にはおもしろいのだが、あまりに何度もコスられるせいでだんだん胃もたれしてくるのである。

 
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おもしろいかどうかと聞かれれば「おもしろかった」。現代パートとの同時並行にしたのはよかったよね

最初に申し上げた「ホット・ショット」も同じで、「トップガン」や「ロッキー」「氷の微笑」などの有名シーンのパロディを次々放り込んでくるだけ。

最初は「おお、あのシーンをこんな使い方するのねw」と驚きと笑いが込み上げるのだが、新鮮さが持続するのもせいぜい最初の20分まで。それ以降はあっという間に不感症に陥り、パロディシーンに反応するのが面倒臭くなる。
というより、むしろストーリーにノイズが混じって邪魔になるくらい。

「ホット・ショット」は「翔んで埼玉」ほどの畳み掛けはなかったが、どちらにしてももう少しパターンに変化がほしかった。

埼玉県民のバストサイズとか、モヤっとした名産品とか。狙いはわかるんですけどね。いろいろと惜しかったなと。

 
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ただ、この映画がおもしろいかおもしろくないかと聞かれれば、僕は「おもしろかった」と答える。

GACKTや二階堂ふみ、伊勢谷友介など主要キャスト陣のがんばりは十分伝わってきたし、あれだけ大掛かりなロケや他県いじりをちゃちな作り物感を出さずに表現しきったのもお見事だったと思う。

また、ストーリーを埼玉県熊谷市に住む菅原家による現代パートとの同時進行で進めたのはなかなかよかった。
菅原好海と菅原真紀夫婦が娘の菅原愛海の結納に向かう道中、ラジオからたまたま「東京vs埼玉、千葉の歴史」のエピソードが流れてくるわけだが、そこで一喜一憂する好海と真紀夫妻がかなりいい味を出している。

僕自身もいわゆる“迫害される側”の地域に住んでいる人間だが、地元をいじられた際の彼らの反応はめちゃくちゃ理解できるww

ほどほどのネタなら自虐とともに笑い飛ばせるのだが、あまりに度が過ぎると「おいおい」となる。さすがにマジでブチ切れるようなことはしないが、下手くそ過ぎるいじりは笑えないどころか場を白けさせる危険もはらんでいる。

実際、そのあたりの加減ってかなり難しいしね。
冗談が通じない人って普通にいますからね。

 

ちなみに以前も申し上げましたが、僕は麻生久美子のことが大嫌いです。

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