ジュリアン・ジャクソン←アホみたいなパンチ力で対戦相手を全員アミール・カーンにする男。攻撃にパラメータを振り切ったグラスジョー

ジュリアン・ジャクソン←アホみたいなパンチ力で対戦相手を全員アミール・カーンにする男。攻撃にパラメータを振り切ったグラスジョー

パンチイメージ
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僕の好きなボクサーにジュリアン・ジャクソンという選手がいる。
1960年生まれの2階級制覇王者で、S・ウェルター級で世界戦の経験もあるジョン・ジャクソンの父親である。
 
生涯戦績は61戦55勝6敗49KO。
凄まじいパンチ力で衝撃的なKOを量産する反面、ディフェンス面には甘さがあり、なおかつ顎が弱いという特徴を持つ。
全盛期は1986年~1993年前後。“黄金のミドル級”と呼ばれたレナード、ハーンズ、ハグラー、デュラン時代の少し後に活躍した選手である。
 
 
この選手の持ち味は何と言っても並外れたパンチの威力。
中間距離からやや近い位置でのフックを得意とし、被弾した相手は立ったまま身体を硬直させ、一瞬の間が開いた後に棒が倒れるようにダウンする。
また、1発効かせた後の畳みかけも鋭く、相手が根負けするまで手を出し続ける馬力もある。
 
その反面、申し上げたようにディフェンス面には甘さが目立ち、打たれ強いわけでもない。
パンチの射程も短く全体的にセンスに恵まれているとは言えず、スピーディなテクニシャンに翻弄されるケースも多い。はっきり言って運動神経がいい方ではないのだと思う。
 
だが、突出したパンチ力はそれらをすべてチャラにするほど凄まじい。インパクトの瞬間のフォームは素人目にもめちゃくちゃ綺麗で、パラメータを攻撃に全振りした選手と言えるのではないか。
 
 
・角刈りに髭という無骨な風貌
・その風貌通りの不器用さ
・試合を1発で終わらせる意味不明なパンチ力
 
上記の3つだけでも魅力たっぷりなのは一目瞭然だと思うが、マジでそのまんまの選手。ダウンシーンのインパクトではアミール・カーンの右に出るものはいないが、ジュリアン・ジャクソンは対戦相手を全員アミール・カーンにすると言っても過言ではない。
 
 
というわけで、今回はこのジュリアン・ジャクソンについて。
個人的なオススメ試合をご紹介してみようと思う。
 
「マイク・タイソンおすすめ4試合。ボクシングを観ない人に魅力を伝えるにはタイソンの試合を見せておけばいい」
 

ジュリアン・ジャクソン、オススメ試合その1

○ジュリアン・ジャクソンvsバスター・ドレイトン×
 
まずはコレ。
1988年7月にニュージャージー州で行われたWBA世界S・ウェルター級タイトルマッチ。同級王者ジュリアン・ジャクソンがバスター・ドレイトンと対戦し、3R2分57秒TKOで勝利した一戦である。
 
 
試合はグイグイ前に出て腕を振るジャクソンと、打ち終わりにカウンターを狙うドレイトンという流れ。
いつも通り馬力と攻撃力を活かして前に出るジャクソンに対し、ドレイトンもしっかりと足を踏ん張り真正面から受けて立つ。
 
申し上げたようにジャクソンの一番の持ち味はパンチ力。
至近距離でもお構いなしにフルスイングできる躊躇のなさがこの選手の長所だが、その分、打ち終わりのケアはヌルく顔面ががら空きになる。ドレイトンはそこを狙ってどんどんカウンターを打ち込むので、試合は近い位置で両者のパンチが飛び交うスリリングな展開に。
 
ただ、やはり攻撃力の差は歴然。
1R中盤のダウン以降、ドレイトンはジャクソンのパワーを抑えきれなくなり、徐々に防戦一方に追い込まれていく。
 
そして2R後半。リング中央でガードの外側からジャクソンの左をもらったドレイトンが空中で動きを止め、一瞬遅れて枯れ枝が折れるようにダウン。そのまま立ち上がれずに試合終了という結末を迎える。
 
とは言え、改めて観直すとドレイトンのカウンターも要所要所でジャクソンの顔面を捉えており、そのたびにジャクソンは動きを止める。
カンストした攻撃力と表裏一体の打たれ弱さ、ディフェンス面の甘さも見られるジュリアン・ジャクソンらしさ全開の試合と言える。
 

ジュリアン・ジャクソン、オススメ試合その2

×ジュリアン・ジャクソンvsマイク・マッカラム○
 
お次はコレ。
1986年8月にフロリダ州で行われたWBA世界S・ウェルター級タイトルマッチ。同級王者マイク・マッカラムと挑戦者ジュリアン・ジャクソンが対戦し、2RTKOでマッカラムが勝利。ジュリアン・ジャクソンが初黒星を喫した一戦である。
 
 
この試合はもう、めちゃくちゃわかりやすい(ジュリアン・ジャクソンの試合は全部わかりやすいけどw)。
豪打のファイター、ジュリアン・ジャクソンが開始直後からゴリゴリ前に出て腕を振り、マッカラムがリーチの長さを活かしたクリンチとカウンターで対抗する。
 
中間距離よりやや近い位置が得意な(そこしか射程がない)ジャクソンは何とかもう近づきたいが、マッカラムの左リードとカウンターに出足を阻まれなかなか中に入れない。強引に足を踏み出すものの、ダッキングとカウンターのボディ打ちによってすぐに追い出されてしまう。
 
1R中盤。テンプルをかすめた左でマッカラムが大きくバランスを崩し、それを見たジャクソンが一気にギアを入れる。だが、マッカラムは長い腕を絡めてジャクソンの動きを封じ、ロープ際で身体を入れ換えながらダメージの回復を図る。
 
左右に動きつつカウンターを合わせるマッカラムの動きにジャクソンはついていけず、決定打を打ち込めないまま1Rが終了する。
 
 
続く2R。
このラウンドもジャクソンがひたすら前進し、それをマッカラムが鋭いリードとカウンターで寸断する流れが続く。時おり右フックがマッカラムのテンプルをかすめるものの、ダッキングと左右ボディを駆使しながら射程の1歩外をキープしジャクソンを近づかせない。
 
そしてラウンド中盤。
ジャクソンの動き出しを狙ってマッカラムがカウンターの左をヒット!!
この1発でジャクソンが横倒しにダウンを喫する。
 
すぐに立ち上がったジャクソンだが、明らかにダメージは深い。このチャンスにマッカラムは一気にペースアップ。ロープ際で連打を浴びせ、ジャクソンの顎を大きく跳ね上げたところでレフェリーがストップを宣告する。
 
遠藤勝則vs荒谷龍人戦のKOが凄すぎてジュリアン・ジャクソンvsテリー・ノリスを思い出した。ボクシング観戦熱も復活
 
この試合はもう、最初から最後までクッソおもしろいww
ジャクソンの圧倒的攻撃力に加え、引き出しの少なさとディフェンスの甘さがすべて出た一戦。
 
恐らくジャクソンにとってマッカラムほどのテクニシャンと対峙するのはキャリアで初めてで、前に出る馬力とパンチ力だけでは越えられない壁があることを思い知った試合だったのではないか。
 
まあ、結局その後も前に出る馬力とパンチ力だけで2階級制覇を果たすんですけどww
 

ジュリアン・ジャクソン、オススメ試合その3

○ジュリアン・ジャクソンvsヘロール・グラハム×
 
続いてはコレ。
1990年7月にニュージャージー州で行われたWBC世界ミドル級王座決定戦。ジュリアン・ジャクソンとヘロール・グラハムが対戦し、ジャクソンが4RKOで勝利。ミドル級王座を獲得するとともに2階級制覇を果たした一戦である。
 
 
相手のヘロール・グラハムは1959年生まれのサウスポーで、ブレンダン・イングルに師事した選手。“悪魔王子”の異名で親しまれたナジーム・ハメドの元祖とも言えるアンタッチャブルなスタイルを持ち味とする。
 
試合は上記のマイク・マッカラム戦と同様、ひたすら前に出て腕を振る(それしかない)ジュリアン・ジャクソンに対し、グラハムが長いリーチを活かしてカウンターを狙う展開。
 
上体をクネクネと動かし、見えない位置からパンチを放つグラハムにジャクソンはそのつど置いてきぼりを食い、序盤から翻弄されまくる。
1発の威力こそマッカラムに劣るグラハムだが、連打の回転力や目のよさはマッカラムを上回る。ジャクソンはグラハムの動きについていけなずにことごとく打ち終わりを狙われ、あっという間に左目がふさがっていく。
 
攻め手が見つからないジャクソンは2、3Rとサウスポーにスイッチ。何とか距離を合わせようと試みるが、グラハムの軽快なフットワークに追いつけない。せっかくロープに追い詰めても逆にカウンターでグラつかされるなど、完全に試合のペースを握られてしまう。
 
だが、迎えた4R。
このラウンドからジャクソンは再び構えをオーソドックスに戻す。被弾を許しながらも前進を続け、右のフルスイングでグラハムを攻める。
これに対し、グラハムも自ら前に出て腕を振る。1発目の右をスウェーでかわし、得意の連打でジャクソンの顔面を次々に捉える。
そして、左のダブルでジャクソンを後退させ、ガードの上から左を打ち込み……。
 
ドシュッ!!
 
その瞬間、ジャクソンがノールックで放った右がグラハムの顎にヒット!!
 
返しの右を打ち込むフォームのまま停止したグラハムが、フレームアウトするように崩れ落ちる。
 
そしてマットに仰向けにダウンし、うつろな表情で天井を見上げたまま動かない。
眼前でレフェリーがカウントを数えるが、グラハムはいっさい反応を見せずにカウントアウト。
 
突然訪れた結末に場内は興奮が収まらない。
陣営もジャクソンを中心に全員で喜びを爆発させる。
 
4Rまではヘロール・グラハムのアンタッチャブルさに翻弄されまくったジャクソンだが、強引に近づいてきたところに“ドカン”で「はい、おしまい」。1発当てればOKというか、まさしくジュリアン・ジャクソンならではの結末というヤツ。
 
先日、ヘビー級のデオンティ・ワイルダーが「俺は2秒あれば試合を終わらせられる」と豪語して話題になっていたが、ジュリアン・ジャクソンの試合もそれとまったく同じ。
 
「世の中には二種類のボクサーがいる。ワイルダーとそれ以外である。天才ワイルダーがオルティスとの再戦を右1発で制する」
 
プロセスなどはいっさい関係ない。何度も申し上げているように、1発ですべてをチャラにできる理不尽バズーカこそがこの選手の唯一最大の持ち味である。
 
「アイク・クォーティのバズーカが朴政吾を粉砕。寒気がするほどの一方的なタコ殴りに絶望した話」
 

ジュリアン・ジャクソン、オススメ試合その4

○ジュリアン・ジャクソンvsテリー・ノリス×
 
ラストはコレ。
1989年7月にニュージャージー州で行われたWBA世界S・ウェルター級タイトルマッチ。同級王者ジュリアン・ジャクソンがテリー・ノリスの挑戦を受け、2RTKOで勝利し3度目の防衛に成功した一戦である。
 
 
テリー・ノリスはのちにS・ウェルター級タイトルを10度防衛する名選手だが、初の世界タイトルマッチとなったこの試合ではジュリアン・ジャクソンの強打に沈んでいる。
 
試合展開としては、ゴリゴリ前に出て腕を振る(だから、それしかないんだってww)ジュリアン・ジャクソンと、距離をとって左リードとフットワークで対抗するノリスという流れ。
 
この試合のノリスは全盛期のスタイリッシュな倒し屋ではなく、ひたすら足を使うアウトボクサースタイル。持ち前の貫通力の高いパンチに加え、絶妙な距離感でジャクソンのスイングにどんどんカウンターを合わせていく。まだまだ荒削りではあるが、センスのよさは一目瞭然である。
 
その上パンチの回転力、精度ともにヘロール・グラハムよりも明らかに上。ジャクソンはノリスのスピードと連打にまったくついていけず、ロープ際で打たれっぱなしになるなど序盤から完全にペースを奪われてしまう。
 
だが1R中盤以降、ジャクソンはガードを固めて前進するスタイルに切り替える。中間距離での差し合いを諦め、被弾前提で歩を進めていく。
 
なるほど。
自分から手を出さずにカウンターのタイミングを奪うわけね。
 
遠い位置から左リードでけん制し、左右に動き回るノリスを最短距離で追い詰める。そして、ロープを背負わせじっくりとボディで削る。
 
おかしいww
こんなのは僕の知ってるジュリアン・ジャクソンじゃないww
もっと不器用な猪突猛進さこそがコイツの持ち味だったはずなのにww
いつの間にそんなフットワーク使いのファイターっぽくなっちゃったんだよ。
 
要するにアレか。
散々カウンターとフットワークを駆使する相手に苦しめられたせいで、すでにこういう展開は慣れっこってことか。
 
そして、被弾を許しながらもノリスを追い続けた2R中盤。
中間距離からやや近い位置で、ジャクソンの右がノリスの顎にさく裂!!
 
もっとも得意な間合いでもっとも得意なパンチが抜群のタイミングで顎を捉え、ノリスが立ったまま冷温停止。追撃の左右フックをモロに浴び、マットに叩きつけられるようにダウンを喫する。
 
いや~、また出やがったよ。
「人間が空中で気絶→一瞬遅れて枝が折れるようにダウン」のパティーン。
 
そうそう。これがあるからジュリアン・ジャクソンの試合はおもしろいんだよなww


デオンティ・ワイルダーの右ストレート、三浦隆司の左、そしてジュリアン・ジャクソンの右フック。
ディフェンス面や組み立て等、総合力が高い選手もいいが、こういう一点集中型の持つ魅力はホントにクセになる。
 
「ワイルダー陥落! フューリーがヘビー級史上最強でいいよな。オラが町のごんたくれは“パーフェクトな2秒”を与えられず」
 
現役なんてそうそう長くできるもんでもない。
無理して苦手を克服するより、とことん長所を伸ばす方が効率的。下手に器用貧乏になるよりよっぽどいいんじゃないの?。
だって、結局腕は2本しかないし、パンチを打てばどうしても顔面は開く。それなら素直にパラメータを攻撃に全振りして、相手に反撃の余裕を与えない方向に舵を切っても結果は同じちゃいます?
 
諸々の得手不得手はあるが、タイプによってはこういう割り切りも必要なのかな? と思ったり。
 
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