アニメ映画「岬のマヨイガ」感想。ひよりの保護子猫感。震災をテーマにした作品と知って凹んだけど、登場人物が前向きでよかったよ(表向きは)

アニメ映画「岬のマヨイガ」感想。ひよりの保護子猫感。震災をテーマにした作品と知って凹んだけど、登場人物が前向きでよかったよ(表向きは)

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アニメ映画「岬のマヨイガ」を観た。
 
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「岬のマヨイガ」(2021年)
 
父親とうまくいかずに家を飛び出した17歳の少女ユイは、たまたま訪れた先で震災に合ってしまう。
雨の降る中、半壊した町をあてもなく歩いていたユイはとある神社を見つける。そこにいたのは狛犬の上に倒れた木をどかそうとしている少女。
 
少女の名はひより。年齢は8歳で、両親を失くしたショックから声が出せずにいるとのこと。
 
それぞれの事情で行き場所を失った2人はそのまま何となく一緒に避難所に戻ることに。
そして、避難所でキワと名乗る不思議なおばあちゃんに声をかけられ、岬に立つ古民家で3人で暮らすことを提案されるのだった。
 
流されるままキワについてきてしまったユイだったが、妙に面倒見のいいキワのことをいまいち信用できない。
 
しかも、その古民家はうなり声のような音が鳴り響く何とも怪しげな家。
ますます疑いを深めるユイだったが、幼いひよりはいち早くキワと古民家に馴染み始め……。
 
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震災をテーマにした作品だとは知らず「あちゃー」となった。できればあの震災のことは忘れたいんだよね

2011年3月11日に発生した東日本大震災から10年の節目を迎えるにあたり、フジテレビが震災を題材としたアニメ作品3本を制作する「ずっとおうえんプロジェクト 2011+10」。
その1つとして公開されたのが今作「岬のマヨイガ」である。
 
と言いつつ、例によって僕はこのプロジェクトのことも「岬のマヨイガ」がどんな内容なのかもまったく知らず。
 
「何か映画を観たいなぁ」と思って調べたところ、たまたま目に入ったのが今作。タイトルや絵柄、声優陣の名前などから“よくわからんけど平和で癒されそう”と思って映画館に足を運んだ次第である。
 
要するに完全に知識ゼロの状態での視聴だったわけだが……。
 
 
まず、震災を題材にした作品だと知った瞬間に思ったのが、
「あ〜、やっちまったわ」
 
以前にも申し上げたが、僕は東日本大震災の当日は都心で仕事をしており、巨大な揺れに心底ビビらされた。その上、帰宅難民として一晩を過ごしている。
 
さらに翌日以降、被害状況が明らかになるにつれて「日本がぶっ壊れる恐怖」を肌で感じた次第である。
 
2020年3月11日。東日本大震災から9年。“日本が壊れる恐怖”を知って以降、簡単に「日本は終わり」などとは言えなくなった
 
あれから10年。
各所でいろいろな震災イベントが開催され、そのたびに「決して忘れてはならない」「あの震災を教訓にすべき」という言葉が聞こえてくる。
 
ただ、僕はまったくそうは思わない。
忘れてはならないのはもちろんだし、あの震災を教訓とするべきなのもその通り。
とは言え、あの瞬間に味わった恐怖、そこから数週間続いた絶望ははっきり言って2度と思い出したくない。
 
東京住みの僕より大変な思いをした方は間違いなく多いはずだし、それでも「忘れない」と前を向いている方もいるのだと思う。
 
だがそれはそれ、これはこれ。
僕にとっての東日本大震災は忘れてはならないものではなく、できることなら「さっさと忘れてしまいたい」もの。
 
そういう意味でも、何気なく観に行った作品が震災を題材としていると知った瞬間の“やっちまった感”はそこそこなアレだった。
 

感想は「なかなかよかった」。登場人物が前向きで作品全体もあっけらかんとしていて重くない

そんな感じで壮絶な「やっちまった」から視聴をスタートした今作だが、率直に申し上げてなかなかよかった
 
震災を題材にしてはいるものの、そこまで深刻な作りではなく。
 
むしろ登場人物からは「大変な状況だけど、とりあえず進むしかないよね」という前向きさが感じられる。
 
 
物語のクライマックスで「今自分にできることを!!」というユイとひよりのセリフがあるのだが、今作の根幹をなすものはまさにこれ。
国語の授業で言うところの「作者の言いたかったこと」なのだろうと。
 
 
また、全体の雰囲気も適度にあっけらかんとしていて悪くない。
ふわっとした絵柄はもちろん、朴訥とした&やたらとお節介な地域住民たちとの交流によってユイの心がほどけていく様子は鉄板の展開。
 
いきなりタダで原付をくれたり、日々の様子をズケズケ聞いてきたり。
塞ぎがちなユイの心を無理やり開かせるという意味でも、ああいう力技でねじ伏せるやり方はアリだと思う。
 
実際には震災直後はギスギスしたり、地域住民同士のいざこざもあったのかもしれない。
ただ、こういう作品でそこまでリアリティを追求する必要はない。
町の住人を前向きな聖人だらけにしたのは完全に正解だったと言える。
 
もちろん“表向きは”という注意書きがつくのは理解できるし、最終的には彼らの抱えた悲しみが巨大な渦となって町全体を飲み込むのだが。
 
ユイがバイトすることになったコンビニ? の棚のスッカスカさ加減がね。震災の深刻さを思い出させましたよね。
 
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ひよりの“適度なペット感”。要するに保護直後の野良子猫ですよ

さらに親を亡くして声を出せなくなったひよりの“適度なペット感”もよかった。
 
これを言うのが正しいのかはわからないが、今作のひよりはいわゆる“保護された野良子猫”である。
 
ここ最近巷では猫ブームらしいが、同時に捨て猫も増えているとか。地域で保護活動をしている方も多いとのことで、YouTube動画などでも保護→里親探しの様子が公開されていたりする。
 
で、その中には当然子猫もいるわけだが、保護直後は警戒心丸出しで怯えていた子猫が数日後に喉をゴロゴロ鳴らしながら人間になつく姿は何とも言えない癒しと安堵感がある。
 
今作におけるひよりの立ち位置はまさにコレ。
最初は狛犬の上に倒れた大木をどかしてくれたユイの後ろをついていくだけだったが、キワの料理や優しい雰囲気、マヨイガの居心地のよさにすぐに適応。若干世間擦れしたユイとは違って純粋なので慣れるのも早い。
 
また、声が出せないことを気にしない友だちがいたのも大きい。
同級生の巻尾玲子がこれまで通り接してくれたのは心に傷を負ったひよりの助けになっただろうし、祭りの練習が「葬式に似ている」と逃げ出したシーンはズシッとくるものがあった。
 
声が出ない分、ひよりの気持ちは表情や行動で想像するしかない。
なかなか心を開かないユイを気遣いつつ、無邪気で健気な姿を見せるひよりはまさに“保護された野良子猫”そのものだった。
 
いや、たまらんですよね。
後半の重要なシーンでひよりの声が戻るのはわかったけど、僕はむしろひよりが幸せになっていく過程の方に癒しを感じましたよOK?
 
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残念ながら不満な点もいくつかありました

概ねいい感じだった「岬のマヨイガ」だが、不満な点もいくつかある。
 
というわけで、ここから先はその不満点についてあれこれ申し上げていこうと思う。
 

不満な点その1

「キワは結局何者だったの?」
 
ユイとひよりを引き取り、マヨイガで暮らし始めたキワ。
 
居場所を失った2人に再び笑顔を取り戻した優しいおばあちゃんなのだが、この人が何者かは結局最後までよくわからなかった。
 
飄々とした態度でユイの質問をはぐらかし、その割には世の中の摂理? 的なものにはめちゃくちゃ精通している。マヨイガに登場する妖怪(ふしぎっと)とやたらと仲がよく、2人の少女をうまくその世界に導いていく。
 
いや、いったい何者なのよアンタ?
 
 
やさぐれたユイと声が出せないひよりと3人暮らしのため、必然的にキワのセリフ量は膨大になる。
 
ことあるごとに昔話をおっ始めて世界の成り立ち? を説明するのだが、あの件は個人的にあまり好みではなかった。
 
何と言うか、ああいう理屈っぽいシーンが多いと興ざめするんですよね。
 
せっかくフィクションの世界に片足を踏み入れたところなのに、一気に現実に戻されるというか。
視聴者を置いてきぼりにしないための制作側の気遣い、意図だとは思うが、できれば流れの中で自然にやってほしかった。
 

不満な点その2

「妖怪と共存する世界をナチュラルに受け入れるユイとひより」
 
今作のユイとひよりは比較的簡単に妖怪(ふしぎっと)の存在を受け入れる。
マヨイガの不気味さにもあっさり順応したし、突然訪ねてきた河童たちともすぐに仲よくなった。
 
これは何度か申し上げているのだが、ごく普通の日常生活にいきなり飛び込んできた異物を主要キャラがあっさり受け入れる流れに僕はどうも違和感を覚えてしまう。
 
先日の「HELLO WORLD」もそうだが、主人公はもともと何の変哲もないただの人間。これまでに妖怪に会ったこともなければ未来から人が来るなどと考えたこともない。
 
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だが、いきなり目の前に現れた“未来の自分”の言うことをあっさり信じたり、初めて目にした河童に大した驚きもなく「そういうもん」だと納得する。
 
僕の頭が固いだけなのかもしれないが、とにかく“ごく普通の日常”から“不思議な世界”へ転換する際のスムーズさに毎回「ん?」となるのである。
 
 
これならむしろ、最初からタイムリープが可能な世界、妖怪と共存する世界であってほしい。
 
ブルース・ウィリス、ジョセフ・ゴードン=レヴィット主演、2012年「LOOPER/ルーパー」などはまさにそれ。
あの作品は過去と現在を自由に行き来するのが当たり前という舞台で物語がスタートする。
 
 
また、2019年「空の青さを知る人よ」は日常の中に紛れ込ませた小さな異物を最後の最後に大爆発させる流れだったが、やるとしたらそっちの方が全然マシ。
 
今作は現実世界とファンタジーの境界線をあまりに簡単に踏み越えすぎである。
 
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ちなみに1988年「となりのトトロ」は今作と同じ不思議な生き物との交流を描いた作品だが、現実とファンタジーのバランスが絶妙だった。
 
「子どもにしか見えない森の主」なんて、めちゃくちゃ夢があるじゃねえっすかww
 

不満な点その3

「河童の声優が突然クソ化」
 
河童の声優が突然クソ化したなぁと思ったら、ああ、サンドウィッチマンだったのね。
しかも、河童の中に岩手県知事もいたとか。
 
あ〜あ、やってくれたわ。
せっかくキワ役の大竹しのぶ、ユイ役の芦田愛菜はよかったのに。
 
僕が常々申し上げている「知名度重視で芸能人を起用するのは構わん。でも、最低ラインは超えていないと」の“最低ライン”を十分満たしていたのに。
 
河童の声のおかげで一気におかしくなっちゃった。
 
アニメ「オッドタクシー」が完全におもしろい。脚本の此元和津也が天才らしい
 
「ずっとおうえんプロジェクト 2011+10」の一環でその土地にまつわる人が起用されるのはわかるが、ど素人のクソ演技が作品全体の雰囲気を壊すことを制作側はもう少し理解した方がいい。
 
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