映画「孤狼の血 LEVEL2」はエイリアンだよな。バトルに寄せつつギャグパートも挟みながら。実は一番おいしかったのは音尾琢真【感想】

映画「孤狼の血 LEVEL2」はエイリアンだよな。バトルに寄せつつギャグパートも挟みながら。実は一番おいしかったのは音尾琢真【感想】

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映画「孤狼の血 LEVEL2」を観た。
 
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「孤狼の血 LEVEL2」(2021年)
 
伝説の刑事・大上章吾の死から3年。
大上の意思を受け継ぎ「尾谷組」と「広島仁正会」の抗争に終止符を打った日岡秀一は、今では警察組織、暴力団双方から恐れられる存在となっていた。
 
だが、広島仁正会傘下「五十子会」の組員たちの間では、汚い策略で会長・五十子正平を殺した日岡への恨みが今でも燻っている。
 
 
そんな中、故五十子正平に執心していた五十子会上林組組長・上林成浩の出所が決まる。
 
上林は出所後、服役中に因縁のあった刑務官・神原憲一宅に押し入り、妹の神原千晶を殺害。
さらに五十子正平の仇を討つべく、持ち前の度胸と腕力で尾谷組との抗争を避けようとする上層部に次々と牙を剥いていくのであった。
 
 
一方の日岡は要注意人物と目される上林成浩の出所と神原千晶殺害事件の関連を疑い、弟分の近田幸太をSとして上林組に送り込むことに……。
 
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「孤狼の血 LEVEL2」は予想の範疇だったかな。前作「孤狼の血」があまりによかっただけに

「孤狼の血 LEVEL2」。
 
2018年公開「孤狼の血」(役所広司主演)の続編で、2021年8月20日から劇場上映がスタートしている作品である。
 
僕もつい先日、前作「孤狼の血」を視聴したばかりなのだが、その毒々しさと骨太な雰囲気にめちゃくちゃハマった次第である。
 
映画「孤狼の血」感想。8割役所広司で成り立つ作品。雰囲気重視の真木よう子も悪くないw 白石和彌監督っぽいなと思ったけどやっぱりそうだよね
 
で、続編「孤狼の血 LEVEL2」が劇場公開されたのでさっそく映画館に足を運んできたわけだが……。

 
感想としては、だいたい予想の範疇の出来
脚本の稚拙さを出演陣の熱量と声量でねじ伏せた作品だったなと。
 

「孤狼の血 LEVEL2」は要するに「エイリアン」。人物描写中心の一作目からバトルに振り切った二作目

表題の通りなのだが、今作「孤狼の血 LEVEL2」は要するに「エイリアン」である。
 
「エイリアン」は1979年に公開されたSFホラー作品だが、それ以降2、3、4と続き、2000年代に入ってからは「エイリアンvsプレデター」「プロメテウス」「コヴェナント」と3つのスピンオフ作品が製作・公開されている。

 
ファンの間でも好き嫌いは分かれると思うが、一般的にもっとも有名なのは間違いなく1と2。
 
主人公の人生を深く描きつつ、謎に包まれたエイリアンの情報を小出しにしながら視聴者の恐怖心を煽りまくった一作目。
敵の正体が判明した二作目では武闘派の若手メンバーを多数招き入れ、重火器をふんだんに使用したバトルに振り切ってみせた。
 
エイリアン2が神映画である理由。映画史に残る「戦う幸薄女」リプリーさんの無双から目を離すな
 
そして、今回の「孤狼の血 LEVEL2」もまさにコレ。
凄まじい重厚感と謎めいた雰囲気を両立した一作目から、武闘派の若手によるバトルを中心にポップな作風への転換を図る。序盤はベテラン勢のギャグパートも入れつつ、比較的わかりやすい内容で幅広い支持を狙うというか。
 
人間味溢れる一作目→ドンパチだらけのポップな二作目というのはシリーズものの定番なのだと思うが、今作「孤狼の血 LEVEL2」もその流れを見事に踏襲していた。
 

オリジナル脚本と聞いてなるほどと思ったよね。脚本の稚拙さを出演陣の熱量でねじ伏せた

視聴後に知ったのだが、今作「孤狼の血 LEVEL2」はオリジナル脚本とのこと。
 
なるほど確かに。
小説が原作となった前作は細部まで緻密に練られていた印象で、2時間の中でちゃんと説明しきれているの? と思わせる部分も少なからず見られた。原作を未読なので何とも言えないのだが、作者の周到さが全面に出た内容だった気がする。
 
だが、今作に関しては完全に真逆。
ストーリーに稚拙なところが多く、「さすがにそれは……」というシーンも目についた。
 
上層部を次々とねじ伏せていく上林の武闘派っぷりは見応え十分だが、それでも振り切りすぎだろと。
あれだけやりたい放題やれば組そのものがぶっ壊れるし、それ以前に最高幹部たちを片っ端からコケにしまくっておいてタダで済むはずがない。
 
時代錯誤なゴリゴリの武闘派なのは大いに結構だが、もう少しビジネス寄りの思考を持ち合わせていてもよかったのではないか。
 
上林の暴走を止めにきた五十子会長の奥さんを瞬殺したのはいくら何でもやり過ぎだったんじゃねえの? みたいな。
 
その他、弟分のチンタや相棒・瀬島孝之の登場も唐突感が否めなかった上に、日岡につきまとう新聞記者・高坂隆文の立ち位置が最後まで定まらなかったのも微妙。
 
前作から3年という時間経過は理解できるが、脚本の強引さによる違和感が最後まで消えなかったことをお伝えしておく。
 
映画「ヤクザと家族 The Family」感想。脚本が「龍が如く」過ぎんだろ。オリジナル(?)の登場人物に魅力がなくて薄っぺらい作品だった…
 
ただ、そういった諸々を熱量と声量でねじ伏せた出演陣のがんばりは本当に大きい。
 
鈴木亮平のサイコパスとも言えるモンスターっぷり。
序盤のコメディリリーフ役として爪痕を残した宇梶剛士、寺島進、吉田鋼太郎の強面ベテラン勢。
相変わらずのハイテンション+適度にムカつく演技が秀逸な滝藤賢一。
声優としてはゴミだが、映像ありきの作品では一気に存在感を増す村上虹郎。
セリフの少なさ、表情の乏しさで内に秘めた怒りを表現してみせた早乙女太一。
前作に比べて登場シーンも増え、小回りのきくやり手感がアップした中村獅童。
 
などなど。
 
前作からの続投組と新メンバーが高い熱量で融合し、作品に圧倒的なパワーを吹き込むことに成功した。
 
マジな話、あの熱量があればストーリーが少々稚拙でもまったく問題はない。
 
とにかくデカい声を出せ。
そして細部へのツッコミをかき消すんだ!!
 
 
あ、でも一応言っておくと、斎藤工は暴力団役には向いてなかったと思いますよ。
前作の竹野内豊も絶望的に向いていないと申し上げたが、今作の斎藤工も同じ。役どころも似たような雰囲気、立ち位置だったしね。
 

松坂桃李はやっぱり物足りなかった。役所広司の深み、渋さを出すには若すぎる。間違いなく狼ではなかったよね

これは完全に予想通りだったのだが、日岡秀一役の松坂桃李はやはり物足りなさが残った。
 
僕は前作の感想記事で「この作品は8割役所広司で成り立っている」と申し上げているのだが、その思いは今でも変わっていない。
 
大上章吾が全身から発する渋さや深み、切り札を隠し持っていそうな謎めいた雰囲気は役所広司の演技力あってのもの。
ヨレヨレのスーツにくわえタバコの役所広司が画面に映るたびに喉の奥に感じた血と汗の味は今でも忘れられない。
それくらい、前作の役所広司の存在感は圧倒的だった。
 
 
で、今作「孤狼の血 LEVEL2」で主役を務める松坂桃李にあそこまでの空気感が出せるのか。
 
やたらと大上のライターをアピールしまくっていたことからも、日岡が今作における“孤独な狼”なのは明白すぎるくらい明白。
大上の意思を継ぐ者という立ち位置なのであれば、役所広司との比較は当然覚悟しなくてはならない。
 
 
まあ、ダメだったなと。
 
無精髭に短髪、極端な減量と入念な役作りで撮影に臨んだことは理解できるが、それでも物足りない。まったく物足りない。
残念ながら大上章吾の域に達するには松坂桃李はあまりに若すぎた。
 
そもそも論として、日岡をあそこまでキャラ変させる必要があったのか。純朴な世間知らずのキャリアという“童貞感”こそが持ち味だったのに。
 
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というか、日岡秀一は間違いなく狼ではなかったですよね。
 
作中のセリフにもあったが、大上章吾は自らが泥をかぶっていることを自覚した上でやりたい放題やっていた人間。それが何とも言えない人情味、色気を醸し出していたのだが、今作の日岡秀一は少し違う。薄汚い行為に手を染めてはいるものの、「俺は正義の使徒」という心情がいまいち抜けきっていない。開き直りが足りないというか、どことなく他人事なせいで感情移入できないのである。
 
 
日岡秀一をキャラ変させるなら、方向性としては“コウモリ”が正解だったと思うのだが。
 
例えば馳星周著「不夜城」の主人公劉健一のようなイメージ。

 
悪党の幹部たちにうまく取り入りながらフワフワと生き延びつつ、日陰からおこぼれを狙う男。
変に武闘派に昇華させるよりも、小狡く立ち回る戦略家タイプに振り切った方が収まりがよかったように思える。
 
まあ、馳星周は「不夜城」の主人公を暴力ダメダメなヒョロガリにしたのがうまかったわけだが、今作「孤狼の血」でそれをやると完全にタイトル詐欺になってしまうという噂も笑
 

もっともおいしい役どころだったのが吉田滋役の音尾琢真。もはやこの人抜きでは本シリーズは成り立たない

そして、今作でもっともおいしい役どころだったのが吉田滋役の音尾琢真。
 
凄まじい迫力で上林成浩を演じきった鈴木亮平、適度なチンピラ感に加えて当時の時代背景も感じさせたチンタ役の村上虹郎、その他。
上述の通り今作の出演陣は総じて熱量が高く、脚本の稚拙さを見事にカバーしてみせた。
 
 
だが、作中で一番おいしかったのが誰か? と聞かれれば、僕は迷いなく音尾琢真と答える。
 
この人が演じた吉田滋は国の公共事業も手がける大手建設会社「パールエンタープライズ」の社長。
前作の吉田は加古村組の単なる構成員の1人にすぎなかったが、時代の流れとともに大出世を果たしているのである。
 
と言いつつ、立ち位置的には大した違いはない。
前作では大上にナイフで股間を抉られて泣き叫ぶなど、どぎつい描写ながらもコミカルな演技が印象的だった音尾琢真。
恐らく監督があのキャラを気に入ったのだと思うが、今作では少々恰幅もよくなり髪型も七三分け。コミカルで小心者な部分がさらに強調されている。
 
で、組が崩壊してもちゃっかり生き残るという。
漫画「ONE PIECE」の名言で「戦場で生き残るのは強者と臆病者」というものがあったが、音尾琢真演じる吉田滋はまさにコレ。
 
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ストーリーが進むにつれて指が減っていく様子などは「うわぁ」と感じるものの、流れ的に次回作の出演も間違いなさそう。今度はどんな腰巾着っぷりを発揮してくれるかが楽しみで仕方ないww
 
 
つまり、本シリーズはもはや音尾琢真抜きでは成り立たないのである()
 
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