ヘイニーがリマッチでもカンボソスを圧倒。ジャブとアウトボクシングだけじゃない、パンチ力とインテリジェンスも証明した試合だったな。PFP No.1がより盤石に【結果・感想】

ヘイニーがリマッチでもカンボソスを圧倒。ジャブとアウトボクシングだけじゃない、パンチ力とインテリジェンスも証明した試合だったな。PFP No.1がより盤石に【結果・感想】

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2022年10月16日、オーストラリアのメルボルンで行われた世界ライト級4団体統一戦。同級統一王者デビン・ヘイニーが前王者ジョージ・カンボソスと対戦し、3-0(119-109、118-110、118-110)の判定でヘイニーが勝利。前戦に続く大差判定勝利で王座防衛に成功した試合である。
 
 
今年6月の初戦から約4か月開けてのダイレクトリマッチとなった今回。
無風のまま12Rが経過した初戦の影響か、会場がキャパ50000人超のドックランズ・スタジアム→15000人弱のロッド・レーバー・アリーナに変更されるなど一気に小規模な興行となっている(それでもデカい会場だけど)。
 
前回、試合を中継したWOWOWも今回はまったくノータッチ。両者のリマッチが日本のボクシングファンにも期待されていないことがよくわかる状況である笑
 
 
ところが困ったことに僕はこの試合をかなり楽しんでしまった
 
下記の通り塩試合と言われまくった前回もおもしろかったし、何もさせてもらえなかったカンボソスがどう修正してくるかも興味深い。
 
ヘイニーがPFP1位で異論ないよな? “あの”カンボソスを塩漬けにしたんだぞ。井上尚弥、カネロがはるか彼方にふっ飛ぶ偉業。ジャブ、ダッキング、クリンチが最強。以上!!
 
そんな感じで、満足度の高かったリマッチの感想を言っていくことにする。
 

見どころはカンボソスの作戦。完封された前回を受けてどう対策してくるか

まず申し上げたように僕はこの試合をかなり楽しませていただいた。
 
初戦で何もさせてもらえなかったカンボソスがどう立て直してくるか、それにヘイニーが対応できるか。
もしくはあの無風状態が再び繰り返されるのか。
などなど。
 
いろいろと見どころが多い試合だと思っていたわけだが……。
 
 
まず僕が適当に考えた展望は下記。
 
PFP No.1デビン・ヘイニーがカンボソスと再戦決定。ウシク? 井上? クロフォード? ちげえよ。再びヘイニーがPFPに返り咲くんだろ()
 
カンボソスは基本的に腕を低く構えるカウンター使い。
 
初弾をスウェイでかわし、打ち終わりに踏み込むと同時にパンチを被せる。
この1発で相手を怯ませたところでさらに距離を詰めて連打に移行。
大金星を挙げたテオフィモ・ロペス戦でも初回にこのカウンターを当てていきなりダウンを奪っている。
 
なので、カンボソスがヘイニーに勝つには打ち終わりのカウンターが間に合うかどうかが重要になる。
 
リーチが長く懐も深いヘイニーのジャブにカウンターを被せられるか。
ヘイニーが腕を引くよりも先にパンチを当てられるか。
 
で、結論としてはまったく間に合わなかったという。
終始ジャブで顔を跳ね上げられ、前進を寸断されたままラウンドだけを積み重ねていった。
 
それを受けて今回の再戦でどうするかだが、僕は上述の通り遠間から「せーの」で飛び込んで1発を当てる→懐で暴れる→クリンチでブレークを待つorパッと離れる作戦がいいのではないかと思っていた。
一時期、元3階級制覇王者ユリオルキス・ガンボアがこのやり方でサイズ不足を補っていたが、それをうまく踏襲できれば。
 
飛び込む→クリンチの繰り返しばかりで退屈な試合になることは確実だが、カンボソスが勝機を見出すにはそれくらいの割り切りが必要かなと。
 
「ガードを上げて身体を振りながらプレスをかけて~」といったスタイルもアリだとは思うが、残念ながらカンボソスはそういうタイプではない。踏み込みの鋭さや見切りのよさといった持ち味が出せる作戦の方がいいのではないか。
 

身体を振って距離を詰める作戦のカンボソス。ヘイニーは右を駆使してすべて迎撃した

そして、実際にカンボソスが選択したのは後者。
身体を振りながらプレッシャーをかけて近場で勝負するスタイルである。
 
おお、なるほど。
そっちできたかカンボソス。
 
正直、このやり方はかなり難しいとは思うがそれはそれ。再戦に向けてしっかり準備してきているはずなので、ごちゃごちゃ言わずに期待させていただく。
 
 
対するデビン・ヘイニーは何かを変える必要はない。
前回同様、左を軸に懐の深さを活かしてスペースを確保、カンボソスをひたすら遠い間合いに釘付けにするだけでいい。
 
極論、カンボソスの出方を見てから作戦を決めても間に合うのではないか。
 
と気楽に眺めていたのだが……。
 
 
今回のヘイニーはワンツーを多用することでカンボソスの前進を潰してみせた。
 
得意の左リードはもちろん、追撃で打ち出す右もなかなかの鋭さ。
若干大振りにも見えるが、頭を振って中に入るカンボソスの側頭部を的確にとらえていく。
 
試合後にヘイニーが「右ブローが勝因だった」とコメントしていたが、マジでその通り。


上体を振るカンボソスを左リードで牽制、さらに“振り子運動”の終わりを狙って右を当てる。
この流れでカンボソスが1発目を出すよりも先にヘイニーの右が当たる展開が続く。
 
僕は「ヘイニーは前回と同じことをやればいいんじゃないの?」と軽く考えていたが、陣営は慢心せずにカンボソスの対策を見越してきたわけか。
 
ロマチェンコvsカンボソスは決定でいいんすよね? ロマチェンコ有利だと思うけどカンボソス応援かな。デビン・ヘイニーと対戦した同士の王座決定戦
 

カンボソスは攻略された際のセカンドプランが見当たらない。割と不器用なタイプなのかもしれんな

左右にステップしながらスイッチを繰り返すカンボソス。
踏み込みのタイミングを測って上体を振り続けるものの、ジャブを出しつつどっしりと構えるヘイニーをなかなか崩せない。
 
前回よりも被弾は減ったが、とてもじゃないが有効な攻めとは言い難い。
恐らくヘイニーが右を多用してくる展開は想定外だったと想像するが、本人もその状況に戸惑っている印象。早々にプランを潰されて大いにテンパったというか。
 
そして中盤5、6Rに入ると左右へのステップや身体を振る動きも目減りし、ひたすら真正面から突っ込んでいくだけの状態に。
 
うん、これは仕方ない。
慣れないことをやれば疲れは倍増するし、そのやり方が通用しないのであればなおさら。
 
2021年11月のテオフィモ・ロペス戦ではロペスに先に打たせてカウンターを被せる作戦がどハマりしたが、今回のようにカウンターが通用しない相手にはこれといった打開策もなくズルズルとドロ沼化してしまった。
 
テオフィモ・ロペス陥落。カンボソスの研究と覚悟に無策のロペス。あれだけ顔面丸出しで攻めればw スペックの高さは文句なしだから復活を期待するよ
 
何となくだが、カンボソスはあまり器用なタイプではないのかもしれない。
前回、今回と準備してきた作戦が機能しなかった際のセカンドプランが見当たらない、実行するだけの引き出しがないのが何とも厳しい……。
 

PFP No.1の座をより盤石にしたヘイニー。カンボソスは後半少し効いてた気がするよ

後半以降は完全にデビン・ヘイニーの独壇場。動きが落ちたカンボソスの顔面にワンツーを次々にヒットしていく。
 
動き始めの一瞬を狙って左をヒット、上体を振るカンボソスが起き上がる瞬間に追撃の右を当てる。
上述の通りカンボソスが1発目を出すより先にヘイニーの右が当たるせいでどうにもならない。
 
マジな話、10Rのカンボソスはかなり効いていたのではないか。
ヘイニーのパンチに見た目以上に威力があるのだと思うが、疲労とダメージの蓄積によってカンボソスの踏み込みがさらに鈍った印象である。
 
カンボソスvsヒューズは114-114かな。那須川天心vs与那覇勇気みたいな試合だった。カンボソスはヘイニー相手にこれをやれれば勝てたのかも?
 
“プエルトリコの至宝”と目されたフェリックス・ベルデホを激闘の末にKOした東洋で敵なしの中谷正義に手も足も出させず完勝した元P4P No.1のワシル・ロマチェンコを終盤までスピード&パワーで圧倒して判定勝ちを収めた“テイクオーバー”テオフィモ・ロペスから初回にダウンを奪いド根性で大金星を掴んだジョージ・カンボソスをアウェイの舞台で左手1本で完封し4団体統一を果たしたデビン・ヘイニーだが、約4か月後の再戦でも見事にカンボソスの作戦を打ち砕いてみせた。
 
しかも今回は1発の威力、相手に踏み込みを躊躇させる怖さも証明した。
 
“安全運転”と酷評されるが安定感は特筆もの。そこに怖さが上乗せされたことでPFP No.1の座はより盤石になったと言っていい()
 
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