怪物ロマゴンも人間だった? クアドラスを判定で下して4階級制覇達成!! キャリア最大の苦戦で階級の壁をもっとも感じた試合【結果・感想】

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ニカラグアのビーチイメージ
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2016年9月10日(日本時間11日)、米・カリフォルニア州にあるザ・フォーラムで行われたWBC世界S・フライ級タイトルマッチ。
同級王座カルロス・クアドラスと、挑戦者でPFP No.1の強さを誇るローマン・ゴンサレスが激突。3-0(117-111、116-112、115-113)の判定でゴンサレスがクアドラスを敗り見事王座獲得に成功、4階級制覇を達成した。
 
「シーサケット勝利!! PFP No.1 ロマゴンに判定で大金星を挙げる!! すっばらしいねシーサケット。僕は感動しちゃいました」
 
クアドラスのスピードと手数、距離感に終始手を焼いたゴンサレス。顔は腫れ出血も見られ、いまだかつてない苦戦を強いられたものの、有効打とリング支配では終始クアドラスをリードし勝利をたぐりよせる。
だが、試合後のインタビューでは「頬が痛いです」とコメントするなど、素直に苦戦を認めている。

王座を獲得したローマン・ゴンサレスは、ニカラグア出身のボクサーとしては初の4階級制覇を達成。母国の英雄アレックス・アルゲリョを超える快挙を成し遂げた。

こんなに体格差があったのか。ロマゴンがあんなバランスの崩し方をするとは……

ローマン・ゴンサレス4階級制覇!!
ニカラグア出身のボクサーではアレックス・アルゲリョを超え、初めての快挙を達成!!

ロマゴンがクアドラスとの全勝対決を制し、見事に4階級制覇を達成したこの試合。だが本人も認めている通り、ロマゴンのこれまでのキャリアの中では間違いなくもっとも苦労した試合である。

クアドラスの調子のよさやペース配分がうまく機能し、PFP No.1の怪物ボクサーを最後まで苦しめた。まさかの番狂わせの可能性に会場を熱狂の渦に巻き込んだ。軽量級トップの2人による大激戦に多くの方が大満足できた試合だったのではないだろうか。
 
「井上vsリカルド・ロドリゲス感想。だーめだ、ムリムリ無理無理。無謀な挑戦お疲れロドリゲス。井上はさっさと階級上げなさい」
 
まず試合開始直後に驚いたのが両者の体格差
BoxRecによると、ロマゴン160cmに対しクアドラスが163cmで、数値上は3cmの差しかないことになっている。
だがリング上で対峙した両者を比較すると、クアドラスの身体はロマゴンよりもかなり大きい。上背はともかく、身体の厚みがふた回りほど違う。
試合前の記者会見やプロモーション活動では目立たなかったが、両者の差がこれほど大きいことに開始早々驚いてしまった。

「井上vs河野感想。モンスター井上がタフボーイ河野に勝利。これが井上尚弥。ロマゴンだろうが関係ない」

そして、僕が「雲行きが怪しいぞ」とはっきり感じたのが1R開始1分30秒過ぎ。ロマゴンが踏み込んで放った左がクアドラスにまったく届かない。楽々とバックステップで回避され、打ち終わりにたたらを踏むように大きく身体が流れたのである。

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さらに2Rの1分過ぎ。
ロマゴンが打ち込んだ左のボディをスピーディなバックステップで回避するクアドラス。その瞬間、ロマゴンがバランスを崩して前のめりに倒れそうになる。ギリギリのところで持ちこたえたものの、バランスと理詰めの鬼であるロマゴンのあんな姿を僕はこれまで見たことがなかった。いつもよりも強めに圧力をかけているにもかかわらず、ロマゴンのパンチがクアドラスにまるで届かないのである。

「ロマゴンvsクアドラス? クアドラスに勝ち目あるか? 判定までいけば上出来でしょ」

ヤバい。
これはもしかしたらかなり厳しい試合になるかもしれない。
見たことのないロマゴンの姿にショックを受けるとともに、階級差による壁を思い知らされた瞬間でもあった。
 
「井上尚弥が米国デビュー。アローヨ兄弟よりマシじゃないの? アントニオ・ニエベス全然知らないけど」
 
ただ、それでも3、4Rには徐々にロマゴンがクアドラスの動きに対応し、いいタイミングでボディにパンチをヒットさせ始めたのを観て、安心したのも確かである。

ああ、これならそのうち捕まえるだろう。
だいたい試合後半にはKOか、それに近い状態にまで追い込むんじゃないか?

そんな感じで「やっぱりロマゴン有利は動かない」と確信した。

だが5R。
クアドラスの反撃により、不穏な空気が流れ始める。

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足を踏ん張ってロマゴンの前進を受け止めたクアドラスが試合の流れを一変させる

5R開始早々、リング中央で対峙した両者。
ロマゴンが得意のコンビネーションのモーションに入った瞬間、クアドラスが高速の連打で動きを寸断する。スピード重視の手打ちパンチなので威力はないが、ロマゴンの連打発動を止めるには十分な効果を発揮する。

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さらに、これまではロマゴンの前進をバックステップでいなすことに集中していたクアドラスが足を踏ん張っての打ち合いに応じる。
ロマゴンの踏み込みに対し、自ら前に出て身体を密着させて動きを止める。大きくバックステップしてロマゴンの連打をかわし、すぐさま打ち終わりをリターンで狙う。これまでのラウンドとは明らかに違うクアドラスの作戦である。

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恐らくクアドラスは、前半4Rを終えたところで「パワーはそこまでではない。これならある程度被弾しても耐えられる」と感じたのだろう。このままではジリ貧になると判断したセコンドから指示が飛んだのかもしれないが、とにかくフィジカル差を活かしたスピード&パワーの勝負に切り替えたのである。

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結果的にはこれが功を奏する。
クアドラスの右を後頭部にもらったロマゴンが大きくバランスを崩してよろけるなど、両者のパワー差が如実に表れるシーンが目立ち始める。

ここから先は観ての通り、ロマゴンにとってのキャリア最大の試練のスタートである。

ガードの上を打たせ、相手が打ち終わるとともに無限のコンビネーションを発動する。反撃の隙を与えず連打地獄に巻き込み、問答無用で自らに流れを引き寄せる。
これがお決まりのロマゴンの必勝パターン。相手が諦めるまで連打を打ち続け、最後はギブアップに追い込むスタイルである。

だが、今回は少々勝手が違った。これまで無敵を誇ってきたロマゴンの必勝パターンが、純粋なパワーの差によって機能を停止させられるのである。

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クアドラスの連打でガードごと身体全体が揺らされ、コンビネーションの打ち出しにワンテンポ遅れが生じる。攻防に一瞬の間が生まれるためにクアドラスに回避の時間を与えてしまうのである。

さらに、身体の芯がブレた状態から大急ぎでコンビネーションを打ち出すために、パンチにまるで体重が乗らない。

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攻防の間に一瞬のタイムラグが生まれ、クアドラスに距離をとる時間を与えてしまう。それに無理やり追いつこうとするためにどうしても追撃が大振りになりやすい。
身体を目いっぱい伸ばして飛び込むように放つ左フックは外旋回の軌道で避けやすく、なおかつ打ち終わりに大きくバランスが崩れる。結果的にクアドラスの左フックの絶好の的になるという悪循環である。

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歴然とした両者のパワー差が残酷な階級の壁を感じさせた

そして、もっともキツかったのはロマゴンの攻撃がクアドラスに効かなかったことである。

まずロマゴンの防御のすごさは、最小限の動きで攻撃を回避する能力にある。小さなシフトウェイトでパンチの芯を外す身体の使い方やバランス感覚。
さらに攻防の切り替えを最も重視するため、すべてのパンチを避ける必要もない。体重の乗らないパンチならある程度の被弾はOKという割り切りもある。

「ロマゴンvsシーサケット予想。これシーサケット勝利あるぞ? 最強ロマゴンがパワフルな挑戦者に敗れる?」

つまり無駄なアクションを徹底的に排除し、攻防に極力間を作らないことに重点を置いたスタイル。これによって、腕が6本あるのではないかという無限のコンビネーションを実現するのである。

だが申し上げたように、今回のクアドラス戦では階級アップによるパワー差の影響で、攻防兼備のロマゴンスタイルが機能していたとは言い難い。
ガードの上から身体全体を揺らされてしまうために次のアクションまでに一瞬のタイムラグができる。また、これまでの相手とはパンチの威力がワンランク違うために、芯を外しているにもかかわらず顔が腫れてしまう。スピードを重視した手打ちのパンチなのに、である。
 
「ロマゴンの手詰まり感ぱねえっす…。シーサケットのカウンターで大の字KO負け。PFP No.1の伝説に終止符?」
 
そして、ロマゴンの攻撃がことごとく効かない。あれだけ力を入れて腕を振っているのに、クアドラスをたじろがせることができないのである。
もちろん身体が流れるパンチのせいで体重が十分に乗らなかったというのもある。だが、試合後の両者の顔を見てもわかるように、両者のパワーの違いは一目瞭然である。

「江藤、クアドラスの牙城を崩せず大差判定負け!! クアドラスのスピードについていけず」

あれだけ激しく動いていれば、クアドラスは試合後半に絶対失速すると思っていたのだが、そんなこともなかった。要は、これまでの相手と比べてロマゴンの攻撃がヌルかった。パワーが足りないために、クアドラスを消耗させることができなかったのだ。

ロマゴン勝利は文句なし。だけど、ここまで苦戦するとは

正直、3-0という判定結果についてはそこまでおかしいとは思わない。クアドラスは憮然としていたが、何だかんだで試合を支配していたのはロマゴンである。

「井上vs河野予想!! ペッチバンボーン最強説を覆せ。モンスター井上の実力を証明する試合」

ペースは掴ませなかったとは思うが、あのペチペチコンビネーションとピョンピョンはね回る動きだけでポイントを奪取するのは難しい。
苦戦はしたが、地道にやることをやり続けたロマゴンが勝利を掴んだ試合というヤツである。

ただ、それでも階級スポーツにおける残酷なフィジカル差を見せつけられたことも確かで、「やっぱりな」という思いと「まさかあのロマゴンが」という思いが入り混じる複雑な気分にさせられてしまった。

「ロマゴン、アローヨを大差判定で退ける!! 半病人のゴンサレスにアローヨは歯が立たず」

僕は先日の井上尚弥vsペッチバンボーン戦の感想記事で、

「井上がロマゴンに勝つには前半」
「フィジカル差で一気にねじ伏せるしかない」
「ガス欠なんか気にするな」
「勝負は2Rまで」
「拳を痛めない方法を考えるのではなく、拳を痛める前に倒せ」

と申し上げている。

井上のあまりの出来の悪さにヤケクソ気味に考えた作戦だったが、今回の試合を観る限り、案外正解なのかもしれないと思い始めているww

「井上尚弥がペッチバンボーンに10RKO勝ち!! 井上が何者なのかがいまだに謎…。すごいのはわかるんだが」

小物どもよ、レジェンドのお言葉に震撼するがいい。これが本物のスーパースターだ

ゴロフキンvsケル・ブルック戦、そして今回のロマゴンvsクアドラス戦。
どちらもボクシング界大注目の試合だったわけだが、結果的には階級性のスポーツにおけるウェイトの壁を痛いほど感じさせられた2試合だったのではないだろうか。

「無謀にもほどがあるケル・ブルックがゴロフキンに5RTKO負け!! 止めてくれてホントによかった」

どれだけいい選手でも、適正階級を超えて力を発揮することがいかに難しいか。同時に、ボクシングの階級がどれだけうまくできているか。そのことを痛感させられた2試合だったと思う。

そして、階級の壁を次々に超えていったマニー・パッキャオはやっぱりすごかったという感想も多く聞かれた次第である。

「マックジョー・アローヨ、アンカハスにまさかの敗北。フィリピンにおけるパッキャオの影響はマジで甚大」

だが、根っからのひねくれ者である僕の意見はちょっと違う。今回の2試合を観て、改めてすごいと感じたのはパッキャオではなくフロイド・メイウェザーの方である

ゴロフキンに敗れたケル・ブルックは試合後のインタビューで「まだまだできた」と高らかに宣言し、今後もミドル級に参戦することを示唆した。

クアドラスとの試合を終えたロマゴンは苦戦を認めながらも、井上尚弥との一騎打ちについては「ぜひやりたい」と答えている。さらに、控え室で井上尚弥とのツーショット写真を公開するなど、世紀の一戦へ向けての心意気を見せている。

うん、甘い。
全っ然甘い。

やっぱり彼らは小物だ。
とてもじゃないが、本物のスーパースターになれる器ではない。

いいか。
よく聞きたまえ。
そして震撼するがいい。

これがレジェンドのお言葉であり、御心だ。

「ゴロフキン戦? どうやったらミドル級でできるっていうんだ?(半笑い)」

スーパースターというのはなるもんじゃない。作るもんだww

「模造テクニシャンを大量に生み出したメイウェザーの功罪を許すな」

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