激シブだけど超オススメ試合3選。決して有名ではないし派手でもないけど感動的で内容も濃かった3試合を挙げてあれこれ言っていくぞ

激シブだけど超オススメ試合3選。決して有名ではないし派手でもないけど感動的で内容も濃かった3試合を挙げてあれこれ言っていくぞ

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新型コロナウイルスの変異株オミクロン株の発見により、村田諒太vsゲンナジー・ゴロフキン戦、井岡一翔vsジェルウィン・アンカハス戦といったビッグマッチの延期、中止が相次いで発表されたのが数日前。
 
年末のお祭り感が一気に吹き飛んだのはもちろんだが、僕が井岡vsアンカハス戦の現地観戦を検討していたこともあってまあまあガッカリしている。
 
 
また12月11日(日本時間12日)にドバイで予定されていたWBO世界バンタム級タイトルマッチは王者カシメロが体調不良を理由に出場を辞退、元王者ジョセフ・アグベコが代役としてポール・バトラーと対戦するとのこと。
 
僕自身、このカシメロvsバトラー戦はまあまあ楽しみにしていて、それこそ今後の展開を考えればバトラーが勝つのもありじゃないの? とすら思っていたところ。


それがまさか。
井岡vsアンカハス戦に続いてこの試合までもが中止に……。
 
せっかく戻りつつあったボクシング観戦の熱も再び冷めそうな勢いである。
 
 
なので、こういうときは気分を変えて久しぶりにランキング遊びをしてみたいと思う。
 
題して「激シブだけど超オススメ試合3選」
僕の中での「派手ではない&超有名でもないけど、クソほど濃くておもしろかった」3試合をピックアップして感想を言っていくことにする。
 
目を奪われる魅力、華のある選手5選。倒し方だけでなく、倒され方にも華があってこそのスター性。PFPとは別次元のランキング遊び
 

激シブだけど超オススメ試合3選:第3位

○小國以載vsジョナサン・グスマン×(判定3-0 ※115-112、115-112、115-112)
 
まずは第3位。
日本各地で計7試合の世界戦が行われた2016年末、その中でも一番のアップセットと言われたのがこの小國以載vsジョナサン・グスマン戦である。
 
ジョナサン・グスマンは前戦で和氣慎吾にTKOで勝利し初戴冠に成功、小國以載との対戦が発表された際も「とてもじゃないが小國では歯が立たない」と言われまくった経緯がある。
 
ところが実際の試合はまさかの? 小國の勝利。3Rにボディでダウンを奪うなど、完勝と言っていい内容だった。
 
 
この試合はもう、陣営のスカウティング能力と小國本人の勇気が素晴らしかったと思う。
 
左サイドから鋭角にプレスをかけ、グスマンの右にカウンター気味の左を被せる。
さらにそこから一歩前に出て接近戦に持ち込み、近場でボディを突き刺す。
 
的確なジャブで突進を寸断、自ら前に出て左ボディを打ち込み身体能力頼りのグスマンを抑え込む。
 
和氣慎吾は足を使ってグスマンの強打をかわそうとして失敗したが、小國以載は自ら危険地帯に踏み込みスペースを潰すことで活路を見出した。
 
グスマンはある程度スペースがなければ強いパンチが打てないこと、中間距離での差し合いなら自分に分があることをわかった上での作戦だったと想像するが、それを踏まえた上で。
 
ここまで全試合KOのグスマンの強打に飛び込む勇気は文句なしに素晴らしかったし、それを最後まで貫くメンタルも心を動かされるものがあった。
 
 
ちなみに先日カルロス・ジャクソンに判定負けを喫したグスマンだが、ちょろっと試合を眺めたところ、中間距離でカウンターを狙われまくって自分から手が出せなくなっていた。
 
要するにこの選手を攻略するには小國同様、カウンターが有効なのだろうと。
 
ボクシング歴代好きなKO3選。衝撃度+爽快感で選んでみたぞ。僕の好みだから異論は認めない
 

激シブだけど超オススメ試合3選:第2位

○エマヌエル・ロドリゲスvsジェイソン・モロニー×(判定2-1 ※115-113、115-113、113-115)
 
続いて第2位はコレ。
2018年10月にWBSSバンタム級トーナメント第1回戦、エマルエル・ロドリゲスがジェイソン・モロニーに2-1の僅差判定で勝利した試合である。

 
僕は以前からジェイソン・モロニーのことが好きなのだが、この試合はそれが決定的になった一戦と言っても過言ではない。
 
 
絶えず足を動かし、サイドに回りながら出入りを繰り返すモロニーに対し、ロドリゲスは踏み込みの瞬間や離れ際を狙ってカウンターを返す。
 
鋭いジャブにキレのあるカウンター、近場でのコンビネーションが持ち味のロドリゲスだが、決して追い足がある方ではない。
 
出入りのスピードがあり近い位置でも遠い位置でも勝負できるモロニーとの相性はいいとは言えず、案の定置いてきぼりを食うシーンが目に付く。
 
ただ、モロニーも完璧に捌き切れているわけではなく。動き出しにロドリゲスのジャブでそのつど顔面を揺らされる。
 
1発の威力、キレはロドリゲス。
出入りのスピードとバリエーションの豊富さはモロニー。
近場での打ち合いはまったくの互角。
 
拮抗した展開は12Rまで続き、両者決め手のないまま終了のゴングが鳴らされる。
 
 
結局2-1の僅差判定でロドリゲスが勝利したわけだが、一部ではモロニーが勝っていたという声も。
 
僕がモロニーを応援していたこともあるが、改めて観てもどちらが勝ったのかは微妙なところ。
特に11、12Rの打ち合いは感動的ですらあったし、あの局面で近場での打ち合いを選択したモロニーにはリスペクトしかない。
 
 
と同時に、井上尚弥に対抗できるとすればロドリゲスよりもモロニーの方じゃないの? とも思った次第である。
 
尚弥きゅん。井上尚弥がモロニー(マロニー)を7RKO。モロニーはいい選手だったし井上の試合で過去一番好きかもしれない
 

激シブだけど超オススメ試合3選:第1位

○アンドレ・ウォードvsセルゲイ・コバレフ×(判定3-0 ※114-113、114-113、114-113)
 
そしていよいよ第1位。
2016年11月に米・カリフォルニア州で行われた世界L・ヘビー級3団体統一戦、アンドレ・ウォードvsセルゲイ・コバレフ戦である。
 
この試合はもう、取り上げるのが当然というか。“激シブ”というフレーズがつく時点で触れないわけにはいかない一戦。
 
セルゲイ・コバレフ大好き人間の僕にとっての2016年のベストバウトでもある。
 
ボクシング闇深き絶望KO3選。圧倒的強者の暴力性は対戦相手をどん底まで突き落とす。キャリアだけでなくその後の人生まで一変させた悪魔のKOランキング
 
ただ、この試合でお見事だったのはやはりアンドレ・ウォードの方。
 
前半5Rに限ればPFP No.1と言えるほどの強さを発揮した当時のコバレフだが、ウォードはその時間帯を遠間での駆け引きでやり過ごす。
 
中間距離でジャブを見せつつ、身体を伸ばして左をボディに。
 
ジャブの差し合いではさすがのウォードもコバレフには歯が立たない。
サイズ差、リーチ差もあり、クリーンヒットを奪うにはもう一歩中に入る必要がある。
 
スペックの違いを踏み込みスピードでカバーしようと試みるが、やはり中間距離のコバレフを崩すのは至難の業。
 
案の定、2R後半には踏み込み際にカウンターの右を被弾しダウンを喫してしまう。
 
 
だが、それでもウォードが慌てることはなく。
カウント9までたっぷり休み、ガードとクリンチを駆使してそのラウンドを凌ぎきる。
 
それ以降も腰にしがみつくようなクリンチで時間を稼ぎつつ、後半勝負を見越して近場でのボディ打ちを重ねていく。
 
 
で、6Rから満を辞して反撃開始。
 
これまでよりもわずかに間合いを詰め、身体をぶつけるように飛びかかってもみ合いに持ち込む。
腕を絡めてコバレフの動きを封じ、反対の腕でボディを突き刺す。
 
コバレフが強引に押し込んでくれば、ロープに身体を預けて休憩。
失速癖のあるコバレフをダーティなファイトでイラつかせ、さらに体力を消耗させる。
 
この作戦が功を奏してウォードが逆転勝利を飾ったわけだが、本当にすごい試合だった。
 
僕のセルゲイ・コバレフの帰還。テレベル・プーレフに判定勝利。クルーザー級の耐久力とサイズに戸惑ってたな。相変わらずの前半型だし被弾するたびに動きが止まるのも…
 
特にコバレフが元気な前半に危険を承知でボディを狙ったウォードの覚悟、作戦遂行能力には感服させられる。
コバレフの後半の失速、接近戦での脆さ、ボディの弱さを見越していたのだとは思うが、それでも。
 
 
アンドレ・ウォードはその計算高さ、慎重な試合運びからフロイド・メイウェザーと比較されることが多いが、実際にはメイウェザーよりもよっぽど切った張ったの勝負をしてきた選手だと思っている。
 
メイウェザーベストバウト3選。プリティからマネーへ。金の亡者のL字ガードと左ジャブ
 
申し上げたように前半5Rまでのコバレフは世界最強。中間距離での差し合いではさすがのウォードもかなわない。
 
前半のリードを許容して後半以降の追い上げを想定したプランを立てるわけだが、それでも逆転を狙うには中盤までにある程度ダメージを与えておく必要がある。
 
その中で危険を承知でボディ打ちを重ね、ときにはタックルまがいのダーティファイトも辞さない。
やや短気で精神面にムラのあるコバレフの性格も利用する周到さである。
 
もしかしたら2Rのダウンも覚悟の上だったのかもしれないし、体力のある前半なら最悪KO負けは免れるという計算もあったと想像する。
 
 
仮想ウォードに見立てたアイザック・チレンバ戦で後半の失速癖を露呈したコバレフに対し、当のウォードはスリバン・バレラ戦でL・ヘビー級への適応を図り、次戦では格下のアレキサンダー・ブランド相手にイージーファイトを敢行。
試合前のコバレフとの会見イベントすら欠席するなど、とにかく自分の情報をひた隠しにしていた。
 
すべては最強コバレフに勝利するため。
照準を一点のみに絞った徹底っぷりはメイウェザーとは別種の計算高さを感じる。
 
 
大一番に向けての準備、研究を重ね、実際の試合では苦戦を織り込み済みでやるべきことをやる。その上で最後の最後にほんの少しだけ自分の“勝負運に賭ける”。
 
陳腐な言い回しだが、勝利の女神は微笑むべくしてウォードに微笑んだと言える。
絶対に勝たなければならない試合に勝つとは要するにそういうことなのだろうと。
 
セルゲイ・コバレフベストバウト3選。やっぱりコバレフ超カッコいい。圧倒的な“クラッシャー”っぷりと人間味溢れるコバレフが大好きですww
 
繰り返しになるが、このアンドレ・ウォードvsセルゲイ・コバレフVol.1は文句をつけるところがないくらい素晴らしかった。
 
試合前からのストーリー性、両者の対比。
12Rを通しての波打つような起伏、ラストの劇的な逆転。
試合後のコバレフのふて腐れた表情、その他。
 
何から何までパーフェクトな一戦だった。
 
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