吉成名高vsプレーオプラーオ感想。キック界の至宝、ボクシングの井上尚弥と並ぶ才能等、賞賛が止まらない吉成も数年前まではトイレタイム要員だった
2024年2月12日に東京・後楽園ホールで行われたラジャダムナンスタジアム認定スーパーフライ級統一王座決定戦。正規王者プレーオプラーオ・ペップラオファーと暫定王者吉成名高が対戦し、3-0(50-44、50-44、50-44)の判定で吉成が勝利。王座統一を果たした一戦である。
ムエタイPFPランキング1位の吉成名高が挑んだ3階級王座戦。
と言いつつ僕はこの選手の試合をあまり観たことがない上にムエタイそのものをよく知らない。
そんな中、ビッグマッチが日本で開催される+U-NEXTが中継すると聞いたので視聴してみた次第である(見逃し配信だけど)。
ちなみに吉成名高は2024年2月現在23歳ながらも戦績は56勝6敗とかなりの試合数をこなしている。
約20日前(1月21日)に堀口恭司主催の「TOP BRIGHTS.1」にも出場しており、このハイペースはすごいなぁと。
というわけで試合の感想、吉成名高の印象を適当に言っていくことにする。
ブアカーオが木村ミノルを粉砕。性格の悪さ、いじめっ子ファイトが強さの秘訣。エキシビジョンを2連続でぶっ壊すヤツの性格がいいわけないだろw
吉成名高の完勝。でも楽な試合ではなかったよね
まず試合についてだが、多くの方がおっしゃるように吉成名高の完勝だった。
5ラウンドすべてを取ったのは間違いない&終始攻撃を当てていたのも吉成の方。ジャッジ3者が50-44としたのもその通りだと思う。
ただ、楽な試合だったかというとそこまでではない。
4、5Rは明らかにしんどそうだったしプレーオプラーオの圧力を嫌がる素振りも見られた。
プレーオプラーオとしても小林雅人が言うほど「どうにもなれへん」わけではなかったと想像する。
魔裟斗、吉成名高の3階級制覇に「もう無双状態」実現しなかった夢のカード嘆く#魔裟斗 #吉成名高 #ムエタイhttps://t.co/CyzDWzTBE4
— eFight(イーファイト)格闘技&フィットネス情報 (@efight_twit) February 14, 2024
実際、本人も「弱気になりそうな場面があった」と言っている。
完勝には違いないが楽勝ではなかった。
プレーオプラーオも王者の強さを十分発揮したと思う。
RENAvsシン・ユリ、井上直樹vs佐藤将光、久保優太vs高橋遼伍再視聴。金原正徳と矢地祐介の感想動画を受けて振り返ってみる
前に出て勝負したプレーオプラーオ。中間距離での駆け引きでは歯が立たない
先日もちょろっと申し上げたが、プレーオプラーオはひたすら前に出て勝負したのがよかった。
ONE165でのスーパーレックもコンビネーションがめちゃくちゃ速かったが、吉成名高はそのスーパーレックをはるかに超える。僕の勝手な印象ではだいたい1.5倍速くらい。
ルール、階級が違うので単純比較はできないが、僕が一番驚いたのがこの吉成名高のスピードである。
武尊vsスーパーレック戦現地観戦。いい試合だったけど内容は完敗かな。K-1以外のリングで1勝2敗、トップ選手に2敗は結構重い気がする
プレーオプラーオも最初のダウンで中間距離では歯が立たないとわかった。
リング中央でまともに対峙してもスピードで煽られてロープを背負わされる→つるべ打ちを浴びるパターンに持ち込まれる。
チンタラ駆け引きをやっていては間に合わないと判断したのだろうと。
で、ダウン後は意を決してグイグイ距離を詰めて“前”で勝負した。
強引に距離を詰めてパンチを出す→身体ごとぶつかりにいってスペースを潰す。
さらにもみ合いからの離れ際に相手よりも先に手を出すことを意識する。
打倒吉成名高の可能性をわずかに見せた? ポイント勝負を捨てて攻めまくったプレーオプラーオ
中間距離ではどうやってもかなわない。
距離を詰める際にも前手のジャブやロー、ミドルをもらう。
そこからもう一歩近づくと今度は縦肘が飛んでくる。
すべての間合いで上を行かれる中、唯一のチャンスと言えたのが飛び込む瞬間と離れ際。
もみ合いでの先手、スウェイの“その先”を狙うことで後ろ重心になった吉成の顔面を捉えかけた(捉えたとは言ってない)。
もちろんフルスロットルを5R継続などできるわけがない。どこかで「見る時間」は必ず生まれる。
また飛び込むにしてもタイミングを測る“間”は必須。
何をどうがんばっても無防備な状態をゼロにすることは不可能である。
だがポイント勝負を捨て、ダメージを我慢して距離を詰めまくったプレーオプラーオの開き直り、気合いは文句なしにすごかった。
吉成の「気弱になりそうだった」というコメント通り、ある程度戦術は機能していたと思う。
吉成を前に出させない。
駆け引きをしない。
腕が伸びる位置で勝負しない。
わずかながらも打倒吉成名高の可能性を見せたと言えるのではないか。
吉成名高vsプレーオプラーオ視聴。
この前のスーパーレックの蹴り→パンチのコンビネーションがクソ速えと思ったけど、吉成名高はその1.5倍くらい速いw
階級の違いもあるんだろうけど。これはもう、チマチマ駆け引きせずに“行く”しかないんだろうな。
ダウン食った後のプレーオプラーオみたいに。— 俺に出版とかマジ無理じゃね? (@Info_Frentopia) February 13, 2024
吉成名高を初めて観たのはRIZIN。当時の吉成は完全にトイレタイム要員だった
僕がこの選手を初めて観たのは2020年8月のRIZIN22、現地観戦で言えば同年大晦日のRIZIN26である。
吉成名高、井上直樹、クレベル・コイケ、倉本一真。RIZIN26で衝撃を受けた試合振り返り。やっぱり2週間の隔離は影響デカいよな
このときの吉成名高の立ち位置はあくまで“ポッと出の人”。メインの引き立て役にすらなっていない。
これは僕個人の意見や印象ではなく、現地にいた人間だからわかる客観的事実である笑
RIZIN26での吉成の出番(第6試合)は一度目の休憩前。“裏メイン”と呼ばれた平本蓮vs萩原京平戦が控えていたこともあり完全にトイレタイムと化していた。
はっきり言ってあの弛緩した空気は「キック界の至宝」とはほど遠い。
どれだけムエタイの実績があろうがあの場では地味な転校生でしかなかった。
もともとRIZINはMMA目当ての人が多い上にバンタム級でも61.2kgの選手たちが鎬を削る場所である。
その中で50.0kg+肘ありキックの吉成名高が初見で注目を集めるのは困難を極める。
ダラけきった雰囲気の中で謎のタイ人を圧倒する吉成名高に戦慄しつつ、漂う場違い感を気の毒に思ったことを覚えている。
そして、この試合のあまりのすごさにRIZIN22の優心戦を観直し「おいおい、とんでもないことが起きとるぞ」となった次第である笑
正直、吉成名高vs優心戦はリアルタイムではあまりおもしろくなかったんですよね。
片方が何度もコケてそのつど試合が止まるし。
「もう少し立って勝負しろよ」と思いながら眺めていた記憶がある。
だが、RIZIN26の現地観戦を受けて振り返ると……。
何じゃこりゃ。
シャレになってねえぞ笑
立って勝負していないのではなく、できない。
実力差がありすぎて試合にならない。
時間が経つごとに優心の顔面がどんどん崩壊していくのがその証拠。
吉成名高のすごさをようやく把握したことをお伝えする。
やっちまったベイノアvs井上雄策。最高すぎたキム・スーチョル。ノジモフ、コレスニック、神龍誠クッソ強い。日環対抗戦もおもしろかった
「俺は前から知ってた」感を出してるけど、嘘つけw 吉成vsクマンドーイはいいよね
申し上げたように吉成名高は最初から知られていたわけではなくきっかけは2020年のRIZIN出場。
今でこそ「キック界の至宝」「ボクシングの井上尚弥、キックの吉成名高」等、多くの賞賛を集めるが、もともとはポッと出のトイレタイム要員である(誇張抜きで)。
それこそ先日のプレーオプラーオ戦後は「これだけの逸材が一般に知られていないのはおかしい」「普段格闘技を観ない人にも観てもらいたい」「大谷翔平、井上尚弥に並ぶ才能」等、観戦玄人(笑)たちが「俺は前から知っていた」感を出していたが、いや嘘つけと笑
少なくとも2020年大晦日のRIZIN26では脇役ですらない。休憩時間のおまけ扱いだったわけで。
僕を含めて思いっきり“知る人ぞ知る”状態だったじゃねえかと笑
ちなみにRIZIN26のセミファイナルで那須川天心と対戦したのが現ムエタイPFP2位のクマンドーイ・ペッティンディーアカデミー。
先日のRISEでの田丸辰戦が記憶に新しいが、近い将来ムエタイルールで吉成名高との頂上対決が期待されているとのこと。
クマンドーイが負けただと!? 田丸辰の力強さが段違い。過去の試合で感じた頼りなさは皆無だった。53~55kgはクマンドーイを中心に群雄割拠が進む?
RIZINで名前を売った&那須川天心との対戦が期待された吉成名高が、天心を苦しめたクマンドーイとムエタイルールで対戦する。
さらに吉成は近い将来ONE進出も視野に入れているとか。
武尊が出鼻を挫かれた舞台に吉成名高が満を持して挑戦する。
この巡り巡っている感じはなかなかいい笑
ぜひとも実現してもらいたい。
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