スポーツにおける地域格差、経済格差の不平等是正を目指すのは大事だけど、それありきで観るのも楽しい。身体能力抜群の地味強黒人ファイター3人出場のPBC興行おもしろかった
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2020年8月1日(日本時間2日)、米・コネチカット州で行われたボクシングのPBC興行。
メインのアンジェロ・レオとトラメイン・ウイリアムズによる世界S・バンタム級王座決定戦を含む計3試合がFITE.tvで中継されたわけだが、僕的にはなかなか楽しいイベントだった。
応援していたトラメイン・ウイリアムズが負けてしまったのは残念だが、3試合ともそれぞれに見応えがあって充実度は高い。
アンジェロ・レオがトラメイン・ウイリアムズを攻略して勝利。アンジェロ・レオは田中恒成っぽかったな
中でもメインとセミファイナルに出場したS・バンタム級の4選手のうち、地味強な黒人選手が3人を占めていたのは興味深い。
既出のトラメイン・ウイリアムズに加えて、セミファイナルを戦ったレイセ・アリームとマーカス・ベイツ。新型コロナウイルス陽性により欠場したステファン・フルトンを入れれば、都合4人が地味強黒人選手という状況。
エマヌエル・ナバレッテの王座返上後、ランキング上位の黒人選手に一気に道が開けたというのはいろいろな意味でなるほどと思う。
セミファイナルもおもしろかった。レイセ・アリームはジョナサン・グスマンくらいの強さはあるんじゃない?
まず今回の興行、メインに関しては先日申し上げた通りだが、セミファイナルのレイセ・アリームvsマーカス・ベイツ戦もちゃんとおもしろかった。
試合自体は序盤からグイグイ前に出たレイセ・アリームがマーカス・ベイツを終始圧倒して10R2分18秒TKO勝利を挙げたわけだが、両者とも普通にいい選手だったように思う。
特に勝利したレイセ・アリームは思った以上に馬力とスピードがあり、欠場したステファン・フルトンともいい試合になるのではないか。何となくだが、2016年7月に日本の和氣慎吾を血だるまにしたジョナサン・グスマンくらいの実力はある気がする。
2011年のデビュー以来、アダム・ロペス戦以外に目立った戦績もいないまま燻っていたのが意外なほどの選手である。
まあ指名挑戦権を得たと言っても、WBAは現在、
スーパー王者:ムロジョン・アフマダリエフ
正規王者:ブランドン・フィゲロア
ゴールド王者:ロニー・リオス
というカオス状態。
誰が誰を指名してどの王座を賭けて試合するんですか? という話なのだがw
WBAが暫定王座廃止? いや、暫定王座はいるだろw ここまでビジネスが肥大化すれば王座乱立も仕方ない? L・フライ級の上位ランカーに注目してみた
身体能力の高い地味強な黒人選手がたくさん登場するのを見ると、地域格差、経済格差の大きさを感じさせられる
そして、こういう地味強な黒人選手がわらわら登場するところを見ると、スポーツ(ボクシング)における地域格差、経済格差を改めて感じさせられる。
前王者のエマヌエル・ナバレッテは2018年12月の戴冠以来、5度の防衛を経ての返上なので、そこに文句をつける気はない。
フルトンvsレオ、アリームvsパリシャス、ティム・チューvsモーガン、マーク・ハントvsガレン振り返り。やっぱり打撃のハントはロマンあるよなw
ただ防衛戦の相手を振り返ると、再戦のドグボエ以外は米国出身1人、フィリピン出身2人、メキシコ出身1人。今回の興行に登場したような身体能力系の地味強黒人選手は見当たらない。
開催地も1戦を除いて米国ではあるが、対戦相手には多少の偏りが見られる。
これはナバレッテに限ったことではなく、ボクシングでは普通にあり得るケース。
あまり言いたくはないが、内山高志が2015年にWBA王座を失って以降、S・フェザー級が一気に風通しがよくなった記憶がある。
ジェスレル・コラレス→アルベルト・マチャド→アンドリュー・カンシオ→レネ・アルバラード、クリス・コルバートその他諸々。
「え? こんなヤツがおったん?」と思うくらい、バラエティに富んだ選手が続々登場した印象である。
クリス・コルバート、コイツ何でスーパースターの態度なんだよw 地味強のくせに。ハイメ・アルボレダを地味にKOして地味に防衛成功
米国ではどうしても中量級以下の選手が注目を集めるのが難しく、S・バンタム級あたりの不人気選手にはなかなかチャンスが回ってこない。WBC世界フェザー級王者ゲイリー・ラッセルJr.もそうだが、いくら防衛を重ねてもビッグマッチを組むのは困難を極める。
逆に経済力と注目度さえ伴えば、ある程度相手を選定しながら自国にこもっての防衛が可能になる。
曲がりなりにも経済大国と言われる日本なら、バンタム級までならどうにか自国開催をねじ込むこともできる。
軽量級なら日本やメキシコ、タイ、英国(最近は中国も)。
中量級以上なら断然米国or英国。
この辺ははっきりとした棲み分けができているが、恐らくS・バンタム~S・フェザー級くらいが一番中途半端なのかなと。
内山高志や三浦隆司、長谷川穂積、伊藤雅雪、亀田和毅、岩佐亮佑などが活躍してはいるが、その反面ジェスレル・コラレスやジャメル・ヘリング、クリス・コルバート、レイセ・アリーム、トラメイン・ウイリアムズといった身体能力系の黒人選手が一気に増える階級でもある。
一度戴冠を果たせば自国での防衛路線に乗れるが、今回のように王座返上が発生した途端にタイトルが手の届かない場所に行ってしまう。そういう意味では、アイザック・ドグボエvs大竹秀典戦が実現したのはかなりのレアケースだったのかもしれない。
クリス・コルバートvsハイメ・アルボレダとかいう地味な一戦を地味に予想する。地味すぎて話題になってないけど僕は地味に好き()
スポーツにおける不平等感を見るのは案外楽しい。ボクシングの軽量級はやっぱり日本だよね
で、個人的にはこういう地域格差、経済格差による不平等を目の当たりにするのは案外楽しい。
もちろん生まれた場所や境遇、人種による格差などないに越したことはない。どの選手にも平等にチャンスが与えられてこそ健全性が保たれるわけで、格差是正を訴えることは絶対的に正しい。
だが、現実問題として地域や経済、人種による格差は存在する。間違いなく存在する。
軽量級の世界王者の多くが日本人で埋め尽くされる反面、ヘビー級の藤本京太郎やS・ウェルター級の井上岳志がワンチャンスに賭けて海外のリングに上がったりする。
京太郎、デュボアの右に沈む。覚悟を決めてカウンターを狙いにいった京太郎に感動しました。日本ヘビー級の歴史が動いた
2017年2月にミニマム級の福原辰弥が熊本のジムで初めて世界王座戴冠を果たしたことが話題になっていたが、あれも裏を返せば日本ならではの快挙とも言える。
地方のジムから世界を制したことは文句なしにすごいが、日本の経済力がなければ相手を呼べなかったこともまた事実なのだろうと。
「○○をやりたければ××に行くべき」の法則は絶対にある。格差是正を訴えるのは大事だけど、現実的には難しいかな
もちろんこれはボクシングに限った話ではない。
野球の最高峰の舞台は間違いなく米国だし、サッカーで頂点を極めようと思えば欧州のビッグクラブに行く必要がある。卓球は中国やドイツに日本が追随する状況で、スキーなどの冬の競技が強いのは北国のノルウェー。
余談だが、元プロ野球選手でクリケットに挑戦中の木村省吾は、今年3月までスリランカのクラブチームに所属していたとのこと。
残念ながらコロナ禍によって帰国を余儀なくされたらしいが、この人が目指すインドのクリケットリーグ「インディアン・プレミアリーグ」は選手の平均年俸が4億円(!!)というとてつもない舞台である。
また、スポーツにおける地域格差、経済格差は日本国内にも明確にある。
下記の資料によると、
北海道→スキー
東北→バスケ
関東→スイミング
近畿→空手
中部→野球、サッカー
四国→バレーボール
中国→陸上
九州→バドミントン
と、地域によって盛んなスポーツが分かれている。
「北海道はスキー、関東はスイミング。 スポーツにも地域性」
つまり、「○○をやりたければ××に行くべき」という法則? 慣例? は絶対に避けては通れない。
「すべての選手に平等にチャンスを」
「恵まれない中でがんばっている人たちにスポットを」
という主張はめちゃくちゃ理解できるが、現実的にはなかなか難しい。
それならむしろ、地域格差、経済格差に翻弄されながら少ないチャンスに賭けたり、“本場”と呼ばれる場所に自ら飛び込む方が成功を掴む可能性は広がる。
もちろん 「○○をやりたければ××に行くべき」の言葉に抗う姿勢を否定しているわけではない。
甲子園出場を目指して15、6歳で親元を離れて強豪校に入学するのも“挑戦”だし、決して恵まれているとは言えない地元の高校でアップセットを狙うのも“挑戦”。どちらも等しく尊いに決まっている。
てか、こういう地域、経済、人種等の格差を実力で跳ね返す爽快感というのもスポーツの醍醐味の一つですからね。
イチロー「2006年、2007年に日本に戻ることを真剣に考えた」
当たり前だが、行き過ぎた身内贔屓やルール違反を見過ごすような無法地帯までをも受け入れろなどと言っているわけではない。
とりとめのない文章になったが、何かを批判や否定したりするつもりはないのでお願いします。
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