下町俊貴がジョー・サンティシマを危なげなく完封。危なかったのは接近戦に巻き込まれた5Rだけかな。もしかしたら下町はホームで力を発揮するタイプ?【結果・感想】

下町俊貴がジョー・サンティシマを危なげなく完封。危なかったのは接近戦に巻き込まれた5Rだけかな。もしかしたら下町はホームで力を発揮するタイプ?【結果・感想】

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2022年12月11日にエディオンアリーナ大阪で行われたフェザー級10回戦。
日本S・バンタム級7位下町俊貴がWBO世界フェザー級13位のジョー・サンティシマと対戦し、3-0(99-91、99-91、99-91)の判定で勝利。世界ランキング入りに大きく前進している。


実はここ最近、ボクシング観戦の熱が本格的に冷めつつある。
後楽園ホールで現地観戦した阿部麗也vs前田稔輝戦はイベントとしてのしょーもなさにウンザリさせられ、注目を集めたジョン・リエル・カシメロvs赤穂亮戦は試合発表時のプロモーターの謎の喧嘩腰コメントから実際の試合、後日の陣営のリアクションまですべてがおサムい内容。
 
カシメロvs赤穂亮が2Rノーコンテスト。内容はカシメロのワンサイドゲームだけど、それ以上に情けない試合過ぎて吐き気が…。何で格下が横綱相撲取ってんだよ
 
北米ではウェルター級の頂上決戦、テレンス・クロフォードvsエロール・スペンスJr.戦が決裂→クロフォードがダビド・アバネシャンとの防衛戦を選択するざんない流れに。
しかもエロール・スペンスがプライベートでまた事故を起こした(事故にあった)とか何とか……。
 
ボクシングの悪い部分というか、“いつものボクシング”をごった煮で詰め合わせたものを目の前に並べられて「さあ、どうぞ!!」と。
味付けをちょっとずつ間違ったゴチソウ()を無理やり咀嚼しているうちに食事自体が嫌になっちゃった。みたいな状態である(我ながらよくわからん)。
 
そんな感じで、しばらく有名選手の試合や世界戦以外はスルーした方がいいかな? と本気で考えている。
 
 
ただ、その中でも僕の興味を引いたのが今回の下町俊貴vsジョー・サンティシマ戦
 
下町俊貴は国内S・バンタム級、フェザー級で近い将来王座に絡んでくる(はずの)選手で、僕も動向に注目している。
 
対するジョー・サンティシマは前戦で世界戦の経験もある大沢宏晋を5RKOで下して波に乗る。
この相手に下町がどういうパフォーマンスを見せるかにめちゃくちゃ興味があった。
 
3150FIGHT vol.3感想。いい試合ばっかりでしたね。出場選手すら知らなかったけど。皇治vsヒロキングとJBCのゴタゴタで全容をまったく把握してなかった
 
で、例によってYouTubeライブでメインのみを視聴した次第である。

 

思った以上に下町の完勝だった。どこかで苦戦するかな? と思ったけど

率直な感想としては、思った以上に下町の完勝だったなぁと。
3-0(99-91、99-91、99-91)のスコアが示すように各ラウンドごとに明確な差をつけての判定勝利。危なげないというより危なげなさ過ぎてビックリしたくらいである笑
 
前回の大沢戦を観る限りジョー・サンティシマは間違いなく強敵。
下町は得意のアウトボクシングで対抗するだろうとは思っていたが、同時にどこかでピンチを迎えるのではないか。
サンティシマに懐に入られた際の対応力、粘りが見どころかなと漠然と考えていた分、ほぼ何も起こらなかったことに驚いている。
 
まあ、もしかしたらサンティシマはサウスポーが苦手なのかもしれませんね。
というより、どちらかと言えば相手の進路をふさいで距離を詰める作業が苦手な感じ?
 
何とも言えないところだが、どちらにしろ前手の差し合い、フットワーク、左ストレート、見切り等、あらゆる局面で圧倒した試合だった。
 
下町俊貴vs石井渡士也戦すごい試合だった。全体の流れは石井。でも下町はよく踏みとどまった。よし、次は武居由樹と(しつこい)
 

前手のリードと動き出しを察知する能力の高さがビクトル・ポストルっぽい?

この選手は恐らく動き出しを察知する能力に長けているのだと思う。
サンティシマが踏み込む瞬間、ジャブのモーションに入る瞬間の硬直を逃さずスパッと右リードを打ち出す。
常時小さなカウンターが発生しているというか、距離を詰めたいサンティシマとしては毎回1発目のジャブで出鼻を挫かれるイメージ。
 
常に左右に動きつつ角度を変えながらの右リード。
サンティシマが怯んだ瞬間を狙ってガードの間から左ストレートを通す。
時おりボディに散らしつつ、自分のパンチだけが当たる距離をキープする。
 
“デカくて動けるサウスポー”の理想というか、これはやりにくいだろうなぁと思わせる動きである。
 
正直、この選手は目を見張るスピードや1発の威力、前後左右のバネはそこまでではない(気がする)。
いわゆる身体能力自体は高くないと想像する。
 
ただ、一瞬の硬直を捉えるタイミング、足を止めずに動き回るスタミナ、安全圏をキープする危機回避能力がそれを凌駕する。
 
何となく元S・ライト級王者のビクトル・ポストルっぽかったり、そうでもなかったり。
右と左の違いはあるものの、動き出しを捉えるジャブが得意&動ける長身選手など共通点は多いような……。
 
ラッセルvsポストル感想。伊藤雅雪vs三代大訓戦みたいだった。伊藤は三代にさばき切られたけど、ラッセルはスピードと馬力でポストルをねじ伏せた
 

唯一危なかったのは5R。接近戦での対応がミソなのかも。クリチコみたいに上からのしかかっちゃえば…

そして、唯一「お?」と思わされたのが5R。
ロープに詰まった下町がサンティシマのボディの連打を浴びたり左フックを側頭部にもらったり。
 
一番は1分過ぎに大振りの右にカウンターを合わせられて顔が跳ね上がった瞬間。
さらに残り1分15秒辺りでも右カウンターで豪快に顔が浮くシーンが見られた。
 
どちらもケロッとして打ち返していたのでそこまで効いていなかったとは思うが、タイミング的には相当危ない。前回の大沢宏晋のダウンがよぎった瞬間でもあった。
 
 
要するにこの選手の課題は接近戦での対応力、相手が狙う場所もそこなのだと思う。
ディフェンスが距離中心な分、強引に近づかれるとワタワタしやすい。
サンティシマも4Rからガードを上げてすり足で前に出るやり方に変えていたし、前手のジャブを突破されたあとにどうするか? が今後の課題なのかなと。
 
ちなみに“長身で動けるジャブ使い”というプロフィールでパッと思いつくのはヘビー級のウラジミール・クリチコだが、あの選手は距離が近くなるたびに上からのしかかるようなクリンチで相手の動きを封じていた。
 
上からのしかかって動きを止めると同時に体重を預けることで相手の体力を奪う。
 
サイズ差を最大限に活かした安全運転っぷりは長年“つまらない”と酷評されたが、長身選手が手っ取り早く勝つにはアレが最適なのもまた事実なのだろうと。
 
なので、下町にクリチコのような割り切り、局面によってクリンチを選択する柔軟さが身につけば盤石さはさらに増しそう。
それが興行的にどうなの? ただでさえ同僚の前田稔輝とは真逆のスタイルなのに……という懸念は置いておいて。
 
下町俊貴vs大湾硫斗。下町の試合運びが思ったよりヒヤヒヤした。見切りと上体のみのディフェンスと危険地帯に留まる時間が長いのが…。vs武居由樹は実現なしかなぁ
 

このタイミングで武居由樹、井上拓真、清水聡に絡まなかったのが残念。もしかしたらホームでこそ力を発揮するタイプ?

しかし、改めて下町俊貴はいいですね。
 
ジョー・サンティシマの圧力を浴びながらも最後まで集中を切らさず淡々と勝利に徹するファイト。
機会があればぜひ現地観戦してみたい選手である。
 
と同時にやはりこのタイミングで王座に絡まなかったのが残念過ぎる。
 
以前から何度も絶叫しているように僕は下町俊貴vs武居由樹戦が観たい人間である。
それも試合間隔を考えれば2022年末が最適だったわけで。
 
井上尚弥vsポール・バトラー戦のアンダーで下町vs武居戦を組めば注目度も上がるでしょとずーっと思っていたのだが……。
 
 
仮に武居由樹がダメでも大橋ジムには同じS・バンタム級のWBOアジア、日本王者の井上拓真、フェザー級にはOPBF王者の清水聡がいる。


所属ジムの会長も「アジアでも日本でも、いつでもどこでも狙えるところでやらせたい」とコメントしているし、どう考えても大橋興行にねじ込むべきだったのに。


拓真の相手のジェイク・ボルネアさん、清水の相手のランディ・クリス・レオンさんがともに計量失敗しちゃったみたいだしね。
相手探しが難航したのかは知らんが、モチベーションの低い選手を無理やり引っ張ってきた結果がこのあり様なんじゃないの?
 
エスネス・ドミンゴが富岡浩介を1発KO。ドミンゴすげえな。前回の飯村戦も素晴らしかったし。富岡は完全に勝ち試合だったけどな。ちょっと富岡樹コースに乗った感が…
 
なおこれは僕の勝手な想像だが、下町俊貴はホームでこそ力を発揮するタイプなのかもしれない。
キャリアを振り返ると2017年12月の新人王決勝戦(後楽園ホール)以外はすべて関西。アウェイをいとわない前田稔輝に比べてひたすら“ホームにこもっている”感が強い。
 
本人の性格なのか陣営の方針かは不明だが、タイトルマッチを組むにしても関西で組める相手、タイミングを探しているとか?
 
もちろん僕の想像なので実際のところはわかりませんが。
 
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