映画「THE FIRST SLAM DUNK」が最高すぎた。何回泣きそうになったかわからん。特定の人にはとことん刺さる。主人公宮城リョータの視点ですべてを回想シーンに【感想】
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映画「THE FIRST SLAM DUNK」を観た。
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「THE FIRST SLAM DUNK」(2022年)
IH真っ最中の湘北高校は最強王者・秋田県代表「山王工業」との大一番を迎えていた。
キャプテン赤木剛憲、中学MVPシューター三井寿、PG宮城リョータ、エース流川楓、自称・天才桜木花道。メンバー5人がそれぞれの思いを秘め、打倒山王を果たすべくコートに立つ。
その中の1人、PGを務める宮城リョータはいつものようにロッカーから二つのリストバンドを取り出す。
一つは自身のもの、そしてもう一つは……。
今から7年前。
小学生のリョータは3歳上の兄ソータと毎日のように1on1に明け暮れている。
中学1年ですでに県内屈指のプレイヤーであるソータはリョータにとっての自慢の兄。父親を失った宮城家を支える頼もしい兄貴であるとともに、常に背中を追いかける目標でもあった。
そんなある日、いつものように兄を相手に1on1に精を出すリョータ。
ところが突然コートの外からソータを呼ぶ声が。
友達との約束を忘れていたと1on1を切り上げるソータだが、リョータは納得がいかない。
ソータの背中に思わず「二度と戻ってくるな!!」と叫んでしまうのだった……。
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- 1. プロモーション段階から不穏な空気が流れた「THE FIRST SLAM DUNK」。でも、行かない選択肢はなかったな
- 2. とんでもなく素晴らしかった。生涯初の「映画館で2度観た作品」になるかもしれん
- 3. めちゃくちゃ人を選ぶ。主なターゲットは「昔からの原作ファン」。旧アニメに思い入れのある人はもしかしたら…
- 4. 初見の人は難しい。当時原作を読んでいた人間だからこそ味わえるノスタルジックなゾクゾク感
- 5. たぶん“すべてが回想シーン”なんだろうな。宮城リョータの俯瞰的な視点、観察力で原作ファンの思い出を刺激する
- 6. 宮城リョータの過去編で緩急をつける。名シーン、名セリフはサラッと触れる程度。でも、それがこちらの想像力を掻き立てるんだよね
- 7. アニメならではの効果もありつつ、ラストの逆転シーンのカッコよさは尋常じゃない。あそこだけを切り取っても商品化できるくらいに
- 8. 特定の人にはマジでオススメ。鑑賞後に身体を動かしたくなるから。改めて何であのプロモーションだったんだろうな
プロモーション段階から不穏な空気が流れた「THE FIRST SLAM DUNK」。でも、行かない選択肢はなかったな
2021年1月に映画化が発表され、2022年12月3日についに公開となった「THE FIRST SLAM DUNK」。
ところがプロモーション段階からあらすじ等の情報は一切明かされずに出されるのは抽象的なPVばかり。
さらにチケットを先行販売しながら後出しで声優陣の刷新を発表したことがファンの逆鱗に触れ、公式がSNSで声明を出す異例の事態に。
公開直前でかなり不穏な空気が充満していた。
僕も映画化発表の際にはテンションが爆上がりしたが、やたらともったいぶったプロモーションに「おいおい」となっていたところ。
で、旧アニメの再放送が佳境を迎えたタイミングで声優陣が刷新されると知って「うわあ、マジかよ……」と。
カッコつけて情報を小出しにするのは結構だが、さすがにこの段階でその発表はあまりに誠意がなさすぎる。
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ずっと楽しみにしてきたスラムダンクの映画だが、当初に比べてだいぶテンションは下がっていた。これはガチで歴代屈指のやらかしもあるんじゃねえか?
まあ、それでも観に行かないという選択肢はない。
どちらに転ぶか? という怖いもの見たさも含めて映画館には足を運ぶつもり。
そんな感じで、先日ようやく観てきた次第である。
とんでもなく素晴らしかった。生涯初の「映画館で2度観た作品」になるかもしれん
映画の率直な感想だが、めちゃくちゃよかった。
うん。
すごかった
とんでもなくすごかった。
マジですごかった。
諸々のプロモーションのマズさもあって最初は「どれどれ」「いっちょ評価してやんよ」と穿った思いがあったことも確か。
だが、そんな邪念はすぐに吹き飛びスクリーンに釘付けに。
全編124分。
誇張抜きで何回泣きそうになったかわからない。
僕はこれまで映画館で同じ作品を2度観たことはないのだが、これはもしかしたら……。
生涯初の「僕が映画館で2度観た作品」になるかもしれない。
映画「THE FIRST SLAM DUNK」を人生で初めて映画館リピートした。ダークヒロインの宮城カオル(母親)に感情移入。バスケだけが生きる支え
それくらい「THE FIRST SLAM DUNK」は(僕にとっては)素晴らしい作品だった。
めちゃくちゃ人を選ぶ。主なターゲットは「昔からの原作ファン」。旧アニメに思い入れのある人はもしかしたら…
一応言っておくと、今作はめちゃくちゃ人を選ぶと思う。
主なターゲットは「昔からの原作ファン」。
少年ジャンプの連載をリアルタイムで読んでいた人、夢中でコミックスを全巻読破した人(←僕がこれ)。
付け加えると、旧アニメにそこまで思い入れがない人も含まれるのではないか。
もっと言うと、旧アニメに思い入れはないけどアニメの続きには興味がある。宙ぶらりんのまま終わったものをしっかりと着地させてほしいと思っていた人。
要するに僕である笑
前回も申し上げたように僕は原作を夢中で読んだし旧アニメも観ているが、アニメの方にはあまり思い入れがない。
ただあの終わり方は納得いかなかったというか、若干モヤモヤが残っていたことも確か。
長年にわたるモヤモヤを解消してくれる&今の技術でスラムダンクを再現してくれるなら最高じゃね?
まさに僕こそが今作のターゲットとしか言いようがない笑
逆に旧アニメに強い思い入れがある人、原作の続きではなく「アニメの続き」を求めていた人には今作は合わないかもしれない。
それこそ声(特に桜木花道)の違和感に慣れる作業に追われて集中しきれない可能性すらある。
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初見の人は難しい。当時原作を読んでいた人間だからこそ味わえるノスタルジックなゾクゾク感
そして今作のターゲットから完全に外れているのがスラムダンク初見の人。
原作は未読、アニメも未視聴、話の流れをフワッと知っている程度でははっきり言ってお話にならない。
今作は原作の名シーン(山王戦)がこれでもかというくらいに出てくるのだが、原作を知らない人にとっては何のこっちゃわかれへん。まったく響かない可能性すらあるのではないか。
「あのとき」「アイツが」「あれをやったから」「ああ言ったから」こその一言、ワンプレー。
当時夢中になって読んだ名作がスクリーンに映し出され、各キャラの重厚な背景と目の前のアニメーションが点と点がつながるように一致する。
脳内でフラッシュバックが起きるゾクゾク感、思い出の扉をノックされるようなこっ恥ずかしい感動は初見では絶対に味わえない。
「映像がすごい」「CGで表現するバスケはここまで進化してるのか」といった部分に感嘆するのは大いに結構だが、今作を全力で堪能するにはやはり原作を知っている必要がある。
それも“思い出の扉をノックされる”というのがミソ。「当時」「昔の」といったノスタルジックさが上乗せされるごとにゾクゾクは倍々ゲームで増していく。
今作のターゲットは「昔からの原作ファン」と申し上げたのはそういう意味である。
たぶん“すべてが回想シーン”なんだろうな。宮城リョータの俯瞰的な視点、観察力で原作ファンの思い出を刺激する
そして主人公(主眼)を宮城リョータにしたのもなるほどと思った。
今作はリョータの生い立ち、回想シーンとIHでの山王戦が交互に進んでいくのだが、全体を通してどこか俯瞰的な印象を受ける。
湘北メンバー5人の見せ場、ドラマを追いかけつつ名シーン、名セリフをぶっこんでくるのだが、どことなく当事者感がないというか。観客目線で進行するのである。
これは僕の勝手なイメージだが、恐らく今作はすべてが回想シーンなのだと思う。
申し上げたように主なターゲットは「昔からの原作ファン」。
僕を含めて当時の思い出と目の前の映像がリンクすることに喜ぶ人たちで、制作側は彼ら(僕も)と同じ目線の作品にすることを意識したのではないか。
要するにリアルタイムなのはラストの宮城リョータと沢北がアメリカの大学でマッチアップするところだけ。
それ以外は全編通して“過去の振り返り”なのだろうと。
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宮城リョータをストーリーの真ん中に置いたのもそれにつながる。
PGはポジション柄、俯瞰的な視点が求められる。
しかもリョータの家庭環境はかなり複雑で、早くに父親を亡くして憧れだった兄も他界している。母親はいまだに過去に縛られたままリョータと向き合ってくれない。
そういった生い立ちからリョータの尻込みする性格が形成され、逆に観察力や洞察力は研ぎ澄まされていった。
物ごとに冷めたタイプを主人公に据えることですべてが回想シーンであることを強調するというか。「昔からの原作ファン」の思い出を刺激する狙いがあったと想像する。
宮城リョータの過去編で緩急をつける。名シーン、名セリフはサラッと触れる程度。でも、それがこちらの想像力を掻き立てるんだよね
また、構成に関してもなるほどと思うことばかり。
スピード感満載の山王戦に宮城リョータの回想シーンを織り交ぜることで作品に緩急をつける。
こういうのは本来、タイムアウト中のやり取りやチームメイトに恵まれずに苦労した赤木の回想、流川の覚醒、三井の復活等、精神の揺らぎみたいなもので賄うわけだが、今作はそういう部分は比較的サラッと通過していく。
その代わりリョータの過去をかなり重く描くことで試合に臨む背景をより濃密なものに。
正直、あの生い立ちは賛否分かれると思う。
親父を亡くした設定は桜木花道とモロ被り(真偽は不明)だし、それなら安西先生が倒れた際にもっと動揺していたのでは? というツッコミも出る。
「アンタ、沖縄出身だったんかい」
「昔、三井サンと会ってたんかい」
「実は喧嘩したことなかったんかい」
などなど。
蛇足と感じる部分が多々見られたことも確かである。
だが、それはそれとして。
あのゆったりとした時間があったからこその試合のスピード感、臨場感だったしワンパターンに陥ることなく最後まで走り抜けることできた。
申し上げたように今作では原作の名シーン、名セリフはそれぞれサラッと触れる程度なのだが、各キャラの背景を知っている原作ファンはそれが出てくるたびに当時の思い出がフラッシュバックする。
いわゆる行間を読むというか、モノクロ化しかかったノスタルジックな思い出に鮮やかな色付けがなされてブワーッと脳内に広がる。この瞬間のゾクゾクが容赦なく涙腺を崩壊させにくるのである。
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アニメならではの効果もありつつ、ラストの逆転シーンのカッコよさは尋常じゃない。あそこだけを切り取っても商品化できるくらいに
もちろんアニメならではの表現力、想像の隙間を埋める作業も忘れない。
リョータが巨漢の相手にグイッと押し込まれて顔を歪ませたり、ボールキャリア以外の選手がポジション争いをしながらひと言、ふた言言葉を交わしたり。
恐らくバスケの試合はいたるところでああいうことが起きてるんだろうなと思わせるシーンがちょくちょく挟み込まれていたのはなかなかの好感度。
湘北が怒涛の追い上げを見せている最中にリョータの母親が会場に到着、ベンチのアヤコさんと同時に叫ぶシーンなどはたまらない。マジでたまらない。
夫と長男を失った悲しみを引きずり、なかなかリョータと向き合おうとしなかった母親が初めて“バスケに本気のリョータ”を目の当たりにした。
両者の長年の溝が埋まった瞬間である。
繰り返しになるが、リョータの過去編自体は蛇足だが効果は絶大。
原作ではやや間延びしていた山王戦をよりコンパクトに、単調になりがちな試合シーンに絶妙な緩急を。
で、ラストの「流川からのパス→花道の逆転シュート→2人のタッチ」までの尋常じゃないカッコよさである。
セリフなし、あの無音シーンを今の技術でアニメ化するとこうなるのかという。
極論、あそこだけを切り取って商品化しても売れるんじゃねえか? くらいの出来。
プロモーション段階では「とりあえずカッコつけ過ぎ」「自信があるなら普通に宣伝すればいいじゃねえか」と思っていたが、ここまでカッコいいなら仕方ない。
「すごかったです。最高でした」「恐れ入りました」と全力で謝罪させていただく笑
まあ、作者自身がああいう設定が好きなんでしょうね。
自分の力ではどうにもならないトラブルや障害を抱えて、いったん挫折したところから這い上がるみたいなヤツ。
花道の怪我も一時期バスケから離れた三井も周囲と噛み合わずに苦労した赤木もそうだし、不定期連載中の「リアル」などはまさにそれ。
最初はギャグ寄りだったスラムダンクが徐々にそっち寄りになっていったのも、作者の中で微妙な変化が起きたのだと想像する。
特定の人にはマジでオススメ。鑑賞後に身体を動かしたくなるから。改めて何であのプロモーションだったんだろうな
そんな感じで映画「THE FIRST SLAM DUNK」はマジでオススメ。
僕のように「アニメにはそこまで思い入れがないが、原作は好き」という方にはゴリッゴリに刺さる作品だと思う。
と同時に鑑賞後は身体を動かしたくなること請け合いである笑
一応言っておくと、僕は帰宅後にどうにも収まらずに極寒の中、深夜のランニングに行きました笑
映画「るろうに剣心(2012)」が“惜しい”理由。詰め込んだなぁ。斎藤一は必要でしたかね? 100点満点のアクションも“フワッと牙突”で台無しに笑
ちなみに、なぜこの内容であのプロモーションだったのかはいまだに不明である。
どう考えても特定のターゲットに向けた内容なのに、やっていることは万人を取り込もうとするプロモーション。このチグハグさが今作における唯一最大の失敗だったと思っている。
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