「るろうに剣心 京都大火編」感想。イタいストーカーの四乃森蒼紫につかみは任せろな斎藤一。ド派手なバトルと映像のチープさに日本映画の現在地を知る

「るろうに剣心 京都大火編」感想。イタいストーカーの四乃森蒼紫につかみは任せろな斎藤一。ド派手なバトルと映像のチープさに日本映画の現在地を知る

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映画「るろうに剣心 京都大火編」を観た。
 
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「るろうに剣心 京都大火編」(2014年)
 
伝説の人斬りとして幕末の京都で暗躍した「人斬り抜刀斎」。
新時代を迎えた今では一人の侍・緋村剣心として「不殺(ころさず)の誓い」を立て、神谷活心流師範代の神谷薫や弟子の明神弥彦、喧嘩屋・相楽左之助らと穏やかな日々を送っている。
 
 
そんなある日、剣心は旧知の仲である大久保利通からの呼び出しを受ける。
 
大久保は現在新政府の要職に就き、日本の未来を切り開くべく奮闘中の身。やつれた表情から剣心は彼の苦労を感じ取るのだった。
 
その大久保が口にした名前は「志々雄真実」。
「人斬り」として剣心の後を引き継ぎ、口封じのために新政府の手によって焼殺された男である。
 
ところが志々雄は業火の中で生き残り、今では戦闘集団を形成して日本転覆を企てる超危険人物になっているとのこと。
 
“幕末の亡霊”志々雄真実の始末を依頼された剣心は一度は依頼を断るものの、志々雄の手下に大久保が暗殺されたことを知り……。
 
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「1作目で人物を掘り下げる→2作目からド派手なドンパチに移行する」流れを“エイリアンの法則”と呼ぶことにする

勢いあまって実写版「るろうに剣心」シリーズのDVDをすべて購入してしまったのは先日申し上げた通り。
 
映画「るろうに剣心(2012)」が“惜しい”理由。詰め込んだなぁ。斎藤一は必要でしたかね? 100点満点のアクションも“フワッと牙突”で台無しに笑【感想】
 

 
今回はその2作目「京都大火編」についての感想である。
 
 
まずシリーズ2作目というのは僕の中ではド派手なドンパチに振り切る傾向が強いと思っている。
 
白石和彌監督「虎狼の血」でもそうだが、人物描写に比重を置いた初回作に比べて2作目は登場キャラの増加、火力全開のバトルシーンの増加が顕著になる。
 
 
典型的な例が1979年の「エイリアン」。リプリーを含めたクルーたちが1匹のエイリアンに追い詰めらる初回作から、重火器フル装備の特殊部隊がエイリアンの群れと戦うド派手なバトル中心の2作目という流れ。
 
個人的に「人物描写中心の1作目からド派手なバトル満載の2作目へ移行する」パターンを“エイリアンの法則”と呼んでいるのだが、今作「るろうに剣心」シリーズでもこの法則は踏襲されている。
 
映画「孤狼の血 LEVEL2」はエイリアンだよな。バトルに寄せつつギャグパートも挟みながら。実は一番おいしかったのは音尾琢真
 
しかも今回は完全に“初回作を観た人”向けの内容。
前回は説明不足な部分が散見されたものの、今作はここに関してはまったく問題ない。数日前に初回作を視聴したばかりの僕にとってはあまりにタイムリーだった笑
 

バトルシーンはよかったよね。前作もがんばってたけど、今回はさらにパワーアップ。影のMVPはアイツ

表題の通りだが、今作で僕がいいと思った部分は何と言ってもバトルシーン。
前作でも佐藤健を始め出演者のがんばりが光ったが、今作はそれをさらに上回る。特に大幅に増加した剣心の多人数相手の立ち回りは体力的にも相当キツかったと想像する。
 
 
もちろん1対1のバトルも素晴らしい。
新月村での瀬田宗次郎(神木隆之介)と剣心のバトルは今作のメインと言っても過言ではないし、逆刃刀を失った剣心が刀狩の張と神社で戦うパートは尺も含めて見どころ満載。鞘を駆使した技術戦から投げ技とカウンターによる肉弾戦へと移行する流れは前作の武田観柳亭での外印vs剣心戦にも匹敵する。
 
洗練度では宗次郎vs剣心戦に軍配が上がるものの、鬼気迫るハラハラや視聴後の高揚感は完全に張vs剣心戦が上回る。
欲を言えば張には薄刃乃太刀による我流「大蛇(おろち)」を出してもらいたかったが、さすがにあのペラペラな刀を実写で再現するのは難しかったか。
 
薄刃乃太刀のモデルはたぶんこれですよね。
カラリパヤットの武器術「ウルミ」。

うん、こりゃあダメだわ笑
軽い気持ちで素人が手を出すと大怪我(物理)する。
 
 
あと、何気に忘れてはいけないのが巻町操を演じた土屋太鳳
 
隠密御庭番衆の一員である巻町操は徒手空拳での戦いを得意とする少女だが、このキャラは土屋太鳳の身体能力の高さに見事にマッチしていた。足はよく上がるし1発1発のパンチも腰が入って鋭さがある。
アクションが得意な運動神経抜群の女優といえば綾瀬はるかが思いつくのだが、今作の土屋太鳳は僕が知る限り綾瀬はるかを超えていた気がする。
 
まったく期待していなかった分インパクトが強かったというか、バトルシーンに限っていえば相楽左之助役の青木崇高以上。
正直、今作における影のMVPまである。
 

実写版「るろうに剣心」のつかみは斎藤一に任せろOK? 今回も安心と安定の江口洋介

そして、もう一つよかったのがオープニングの斎藤一。
 
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大勢のお坊さんたちが何かに憑かれたようにお経を唱える中、縄で吊るされた警察官が1人、また1人と殺されていく。
それを止めるべく刀を振るう斎藤だが、手下たちに囲まれて身動きが取れない。
 
歯噛みする斎藤の視線の先には仁王立ちの志々雄真実。
そのまま背中を向けた志々雄は高笑いとともに炎の中に姿を消す……。
 
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ピンと伸びた背筋に怒り肩、ややダミ声のハイテンションなボイス。目と口しか見えない衣装にも関わらず志々雄真実役が藤原竜也であることは一瞬でわかる。
 
と同時に今作における“つかみ”担当、斎藤一の安定感、安心感を知る。
 
うん、やっぱり江口洋介が出ると画面が締まりますよね。
バトルシーンも佐藤健や神木隆之介のようなスピード感はないが、とにかく場が持つ。コイツに任せておけばOK的な“ベテランの味”というヤツ。
 
まあ、ワイヤーアクション丸出しの“フワッと牙突”だけはマジでいただけないけど笑
 
極主夫道 ザ・シネマ感想。2時間ずーっとくだらない。内容云々ではなく誰が一番爪痕を残したか? の映画。MVPはやっぱりMEGUMIだろうな
 

イタいストーカーでしかなかった四乃森蒼紫。実は伊勢谷友介って殺陣下手くそじゃね?

逆にダメだった部分は完全に四乃森蒼紫。
隠密御庭番衆最後の御頭として“最強という名の華”を手に入れるために剣心の命を狙うキャラだが、登場からバトルシーンまで本当に酷かった。
 
原作では武田観柳亭で剣心に敗れ、仲間である般若、式尉、ひょっとこ、癋見が武田観柳に殺されたことによって絶望。“最強という名の華”を彼らの墓前に添えるために修羅に堕ちる&剣心に勝利することを誓うわけだが、実写版「るろうに剣心」ではこの部分が丸々カットされている。
 
武田観柳に雇われたのは鵜堂刃衛、外印、戌亥番神ほかチンピラ士族たちという設定で、肝心の四乃森蒼紫は剣心との絡みがないまま今作に登場する。そのおかげで唐突感が尋常じゃないのである。
 
何の脈絡もなく神谷道場に現れ、左之助をフルボッコにして京都へGo。仲間であるはずの翁を容赦なく切り捨て「抜刀斎はどこだ」と去っていく。
こんなもんは修羅に落ちた天才どころの話ではない。単なるイタいストーカーである。
 
マジな話、これなら前作のラスボスを原作通り四乃森蒼紫にしておけばよかったんじゃないの?
吉川晃司の鵜堂刃衛も捨てがたいけど、少なくとも四乃森蒼紫を意味不明なストーカーにしちゃうよりは数億倍マシでしょ。
 
 
ついでに言うと伊勢谷友介って殺陣下手くそじゃないっすか?
翁役の田中泯が高齢であること、両手武器ということで利き手と逆側で刀を扱わなければならないといった理由もあったとは思うが、それでも。
 
必殺技の回転剣舞六連もエフェクトでだいぶ誤魔化してたしね。
 
映画「孤狼の血」感想。8割役所広司で成り立つ作品。雰囲気重視の真木よう子も悪くないw 白石和彌監督っぽいなと思ったけどやっぱりそうだよね
 

散見されたチープさに日本映画の現在地を思い知る。「制作費30億超」の触れ込みが虚しく響く

そして、これはダメだったと言うより残念だなぁと思った部分。
 
各所に散見されたチープさにより、日本映画の現在地を思い知らされた次第である。
 
具体的にはセット丸出しの街並みとプール丸出しのラスト。
今作では志々雄一派の企てを阻止するために剣心が東京→新月村→京都と渡り歩くわけだが、それぞれのシーンで風景が代わり映えのしないことに「ああ、そうか……」となってしまった。
 
中でも京都の街並みは顕著だった。
剣心が巻町操と再会する場所も薫と弥彦が歩く場所も志々雄一派が襲う場所も全部同じ。バトルシーンに関しても引きの映像は皆無で、素人の僕でもセットの使い回しは丸分かりだった。
 
本来であれば大規模な街並みを豪快に爆破→それを空撮するのが理想なのだと思うが、そんな場面は欠片もない。経済的な理由か規制の問題か、もしくは両方なのかはわからないが、とにかく映像がチープだったなと。
 
海に落ちた薫を追って剣心が海に飛び込むシーンもそう。
ここでも引きの映像はいっさいなく、プールの中で溺れながら叫ぶ佐藤健のアップが続くだけ。
 
前作は武田観柳亭や林の中でのバトルが中心だったためにそこまで目立たなかったが、行動範囲が大幅に広がった今作では限界値がモロに可視化してしまったなぁと。
 
「るろうに剣心 伝説の最期編」これは酷い。オリジナル脚本以前にやりたいこととやるべきことのサイズが合ってなくて十本刀がコスプレ軍団化。詰め込みまくって薄々のカオス
 
メイド・イン・ジャパンの映画の限界値を突きつけられるとともに「前作をはるかに超えるスケール」「制作費30億超」といった触れ込みが何とも虚しく感じられる。
 
映像のチープさを出演陣が身体を張ってカバーする現実を知った。
 
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