拳四朗の接近戦で矢吹正道陥落。そりゃ序盤から倒しにくるよ。ガードを上げた拳四朗を初めて観た。不必要な再戦を強いられた矢吹の不憫さ【結果・感想】

拳四朗の接近戦で矢吹正道陥落。そりゃ序盤から倒しにくるよ。ガードを上げた拳四朗を初めて観た。不必要な再戦を強いられた矢吹の不憫さ【結果・感想】

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2022年3月19日に京都で行われたWBC世界L・フライ級タイトルマッチ。同級王者矢吹正道にランキング1位で前王者の寺地拳四朗が挑んだ試合は3R1分11秒TKOで拳四朗が勝利。2021年9月以来のダイレクトリマッチを制し、王座返り咲きを果たした一戦である。
 
 
と言いつつ、僕はこの試合が行われたことにいまだに納得していない。
前回は矢吹の明確な勝利と言っていい内容で、防衛戦も挟まず再戦する理由はどこにも見当たらない。
 
問題となったバッティング騒動もそう。
僕は9Rの矢吹のバッティングがなければあのまま拳四朗がKOしていた可能性が高い&矢吹側に「頭が当たれば儲けもん」的な考えもあったと思っているが、だから何? という話。あの頭突きがわざとだったとして、それの何がいかんの? みたいな。
 
しかも拳四朗陣営の抗議を受けてJBCが検証した結果、「故意とまでは言えない」という結論が出たのだからそれで終わりでしょと。
ラフファイトも誤審も偶然のバッティングも全部ひっくるめて勝負なんだよ。
 
あの頭突きをヒッティングとした誤審は反省しつつ「次回からは気をつけましょうね」でよかったのに。
 
 
また、周囲も「ここまでの経緯はともかく決まったからには純粋に楽しむだけ」みたいな風潮だったのもよくわからない。
 
普段は1mmも興味のわかない内輪ネタを500倍くらいに拡大して押し付けてくる割に、今回は何でそんな大人の対応なんだよ笑
 
「負けた側にもモノギャタリがある」
「試合までの経緯、選手1人1人のモノギャタリを深く知ればもっとボクシングを楽しめる」
だっけ?
 
だったらこういうときこそ経緯を語れよ。
大事なんだろ? センシュのモノギャタリ。
などなど。
 
当日も結果を知った状態で後追い視聴したのだが、拳四朗の圧勝を見せられて「あ〜あ、しょーもな」となった次第である。
 
前のめり過ぎる拳四朗。粘りと誤魔化しのカニサレス。長谷川穂積っぽさがさらに増した気が…。京口戦が一番バランスがよかった
 

僕の展望は拳四朗有利。矢吹が勝つには前回からのプラスアルファが必須

まず今回の再戦における僕の展望は下記。
 
矢吹正道vs拳四朗再戦。不毛な再戦に駆り出される矢吹を応援せざるを得ない。拳四朗は実はデカくて動ける人
 
・拳四朗は実はデカくて動ける人
・ところが前回は矢吹の長いリーチと踏み込みに対応できなかった
・逆に矢吹は拳四朗をよく研究し、ジャブにカウンターを合わせまくった
・5Rから前に出た拳四朗が矢吹をダウン寸前まで追い詰めた
・矢吹は何とか勝利したが、すべてを出し切った?
 
何だかんだでお互いの腕が届く距離では拳四朗の方が一枚上手。
矢吹陣営のスカウティングはどハマりしたし、最後の力を振り絞った矢吹のラッシュも素晴らしかった。だが、拳四朗が接近戦に切り替えてからは相当厳しい内容だったことも確か。
 
そう考えると、今回の再戦では拳四朗が序盤から前に出てくる可能性が高い。
 
 
しかも前回の矢吹は用意していたネタをすべて吐き出してしまった感が……。
試合後に引退を真剣に考えていたようだし、あの試合に人生をかけてきたというのもあながち大げさではないのだろうと。
 
正直、純粋な能力、各パラメータの合計値は拳四朗の方が上なのだと思う。
だが矢吹は拳四朗のアウトボクシングに絞って攻略法を練り、それを見事に実行してみせた。
と同時に中盤から後半にかけては拳四朗の圧力にタジタジにされた。
なので、両者の情報が出揃った今回は矢吹にとってはかなり難しい試合になりそう。
 
 
要するにこの試合で矢吹が勝つにはもう一段底を見せる必要がある
一点突破の戦略が成功した&すべてを出し切ってギリギリ勝利した前回からさらなる上積みがあるかどうか。
そこが一番の見どころになると予想する。
 
 
ただ、矢吹に前回以上のプラスアルファがあるかは甚だ疑問。
初戦と同じことをしていては確実に潰されるが、そこから先があるかどうかは……。
 
試合の経緯を考えると応援するのは断然矢吹だが、どちらが有利か? と聞かれればやっぱり拳四朗と答えざるを得ない。
なぜ再戦させられているのかに関してはちっとも納得できないけど。
 
だいたいこんな感じである。
 

ガードを上げて圧力をかける拳四朗。接近戦はある程度想定してたけど、ここまでインファイトに特化するとは

実際の試合だが、ガチでその通りになってしまった。
 
開始直後からガードを上げ、しっかりと足場を決めて前進する拳四朗。
これまでのように軽快なフットワークを駆使することなく、上体を振りながら距離を詰めつつ左リードを放つ。
 
矢吹も鋭い左で応戦するが、距離の近さと拳四朗の圧力でパンチにいまいち体重が乗らない。
逆にその左に右を被せられ、弾かれるように後退させられる。
 
結局ブロック&リターンのゴリ押しで3Rにダウンを奪った拳四朗が勝利したわけだが、これはちょっと驚かされた。
 
拳四朗が接近戦で倒しにいくというのはある程度想像できたが、まさかここまでインファイトに特化するとは。
 
僕はこれまで“ガードを上げて相手と対峙する拳四朗”というのを一度も観たことがない。
この選手はもともとフットワークと左リードを駆使したアウトボクシングを持ち味とする。その分腕の位置は低く、ディフェンス面も距離と見切りに特化している。今回のような開始直後からパンチを両腕でガードする試合運びはまったく記憶にない。
 
前回も接近戦に切り替えてから流れをつかんだと申し上げたが、それでも再三矢吹のジャブを被弾していた。
近い距離ではスウェイが間に合わず、9Rにはラッシュの最中に頭がゴッツンしてKOチャンスを逃している。
 
この試合でも近場で勝負する可能性は高いと思ったが、あのガードの低さを考えると仕留めるまでには時間がかかるのではないか。むしろ矢吹のカウンターで返り討ちにあう可能性すらも……。
 
諸々の理由から勝敗予想は拳四朗の9RKOとしたのだが、いや、すげえな。この短期間でここまでスタイルチェンジしてくるとはね。
 
選び放題のカネロが渦中のビボルとの対戦を選択。ビボルのジャブがカネロの圧力にどこまで対抗できるかかだろうな
 

アウトボクシングもインファイトもできるヤツなんだろうな。失うものがない分、接近戦に吹っ切るのも容易だった?

・近場での正面衝突なら自分に分があることは前回でわかった
・得意のジャブがポイントになりにくいことも判明した
・スペースを作ると矢吹の長いジャブ、カウンターの餌食になる
 
諸々の情報を踏まえた上で拳四朗陣営は接近戦が最善策だと判断した。
 
しかも今回は挑戦者の立場。失うものがない上に防衛回数も気にする必要がなくなった。
ガードを上げてバッティングに備えつつ、腹を決めて接近戦に特化するには十分な理由と言える。


まあ、恐らく拳四朗はアウトボクシングもインファイトもできる選手なのだと思う。
 
長期防衛のためには極力パンチをもらわない方がいいのはもちろん、もともと痛いことが嫌いなのかもしれない。どちらか一方を選択しろと言われれば断然アウトボクシングなのだろうと。
 
ところが前回はそのアウトボクシングが攻略された&ジャブがポイントにならないことが判明した。それを受けて今回は引き出しを開ける必要に迫られた。
 
 
てか、今までガードを上げたことがないヤツがいきなりインファイターにチェンジしてあそこまで馴染むなんて絶対おかしいでしょ笑
ラストの「左のフェイント→ワンテンポ遅らせた右」は確かにすごかったが、あれも“インファイトに慣れっこなカウンターパンチャー”の副産物に過ぎない(と思っている)。
 
アウトボクシングもインファイトも高次元で兼ね備える万能型。
ヘビー級のタイソン・フューリーがデオンティ・ワイルダーを物量押しでねじ伏せたことを考えると、拳四朗もフューリー同様、典型的な“デカくて動ける人”と断言してよさそうである。
 
フューリーvsワイルダー3。ポイント計算すら無粋な規格外バトル。ヘビー級だけは別枠であるべき。神々のお戯れに不純物はいらない()
 

矢吹は残念だった。拳四朗のインファイトをまったく想定してなかったのはいただけないけど

一方敗れた矢吹だが、こちらは本当に残念だった。
前回の勝利ですべて出し切ってしまったのでは? と思っていたが、実際その通りだったのではないか。
今回も拳四朗のアウトボクシングに照準を絞っていたみたいだしね。
 
とは言え、拳四朗が序盤から圧力をかけてくることをまったく想定していなかったというのはちょっといただけない。


初戦の中盤以降を踏まえればある程度選択肢に入れるべきだと思ったのだが。
 
恐らく矢吹正道は研究と準備を経てリングに上がるタイプなのだろうと。
風貌やファイトスタイルから勘のよさや野性味で勝負するタイプに感じるが、実際には準備と計画性の選手。相手を研究して山ほどシミュレーションを重ねた上で当日を迎えていると想像する。
 
そして、それがどハマりしたのが前回だった。
 
 
ところがこういうタイプはアドリブが効かないというか、想定外の事態が起きると対応がワンテンポ遅れる。プランが崩れた際の立て直しができずにガタガタになり、そのまま押し切られるパターン。
 
腹を決めてインファイトに特化した拳四朗に対し、まさかの想定外に面食らった矢吹正道。あたふたと慌てているうちに煽られまくって致命的な一撃をもらってしまった。
 
矢吹正道がタノンサックに7RTKOで勝利。でも攻略法がバレた感があるな。タノンサックはめちゃくちゃ応援してたし実際強かったけど、残念だった
 

改めて再戦の必要はなかった。一期一会の勝負を制した矢吹のがんばりがノーカンにされているようで納得できん

だからアレなんだよな。
何度も喚き散らしているようにこの両者は再戦の必要なんてなかったんですよ。
 
・拳四朗が矢吹の異様に長いリーチと思い切りのよさを未体験だった
・矢吹陣営が拳四朗をよく研究していた
ことが初戦の結果につながったのであって。
 
一期一会というか、“1戦目だからこそ”あの勝利が生まれたと思っている。


申し上げたように根本的なスペックは拳四朗が上。それなら矢吹の射程の長さ、思い切りのよさを拳四朗陣営が把握した2戦目はどうしても矢吹が不利になる。
 
しかも例のバッティング騒動で散々こねくり回された上での再戦。精神面でも失うもののなくなった拳四朗にアドバンテージがあるのは明らかである。
 
一世一代の大勝負での大金星がノーカンにされ、理不尽な再戦を強いられた矢吹があまりにも不憫。拳四朗の豪快なKOは間違いなくすごかったが、それまでの経緯がアレすぎてどうにもこうにも納得できずにいる。
 
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