リナレスがロマチェンコにKO陥落。あ〜惜しい。もう少しだったけどな。これがスピード&パワーの偉大さですよ【結果・感想】

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2018年5月12日(日本時間13日)、米・ニューヨーク州で行われたWBA世界ライト級タイトルマッチ。同級王者ホルヘ・リナレスとWBO世界S・フェザー級王者ワシル・ロマチェンコが対戦し、ロマチェンコが10R2分8秒KO勝利。世界最速12戦目で3階級制覇を達成した。
 
 
階級アップ初戦がいきなりの世界戦となったロマチェンコは、序盤から鋭い動きでリナレスを攻める。“ハイテク”の異名通りの立ち上がりで会場を沸かせる。
 
対するリナレスも、ロマチェンコのスピーディな動きに得意の連打で対抗。一進一退の攻防を見せる。
 
中盤以降、ややロマチェンコに翻弄されたリナレスだが、6R後半に右ストレートをヒット。ロマチェンコからプロ初のダウンを奪う。
 
これで一気に形勢逆転かと思われたが、ロマチェンコは冷静に距離を取り、体制を立て直す。
 
そして10R。
至近距離での打ち合いからロマチェンコの放った左ボディで、リナレスががっくりと膝をつくダウン。そのまま立ち上がれずに10カウントを聞き、試合終了。
 
劇的な幕切れに、会場からは大歓声が沸き起こった。
 
「リナレスまさかの1RTKO負け。セサール・カノがデカくて長くて強かった。これをやられるとリナレスは厳しい」
 

マジでよくやったわリナレス。な〜んも言うことないっす。本当にナイスファイト

大注目のロマチェンコvsリナレス戦。
本日はリアルタイムで観られず、ようやく視聴したので感想を。
 
「気になった試合ざっと振り返り。ディアスvsロハス、ホセ・ペドラザvs アントニオ・モラン、高橋悠斗vs平井亮輝」
 
まあ、すごかったなと。
もちろんリナレスが。
 
ロマチェンコの必勝パターンにハマりかかったところから、本当によく持ち直した。
階級初戦のロマチェンコとはフィジカルに差があったとは思うが、それを加味してもすごかった。
スピード&パワーの偉大さを改めて見せつけられたというか。
 
いや、もうよくやったよ。
マジでよくやった。
 
今回はそれでいいんちゃいますか?
この試合のリナレスにあれこれ文句を言う必要性は感じませんよ。ええ。
 
「ロマチェンコvsペドラザ。オラつけペドラザ。そうすりゃ意外とおもしろくなる(勝てるとは言ってない)から」
 

ロマチェンコの試合運びはだいたい予想通りかな。リナレスの攻略法を忠実に実行していた

勝利したロマチェンコについてだが、こちらはだいたい予想と近い試合運びだったと思う。
6Rのダウンは想定外だったが。
 
遠い位置から凄まじいスピードで距離を詰め、そのままの勢いで連打を浴びせる。
相手の反応速度を凌駕するほどの高速コンビネーションで、一気にペースを掴む。
これがリナレスの基本的なパターンである。
 
そのリナレスに対する攻略法は、予想記事でも申し上げた通り。
 
「決まっちゃったよw ロマチェンコvsリナレス。相性は悪くないけど、実際は難しいかな。階級の壁を見たいよね」
 
相手より先に前に出て距離を潰すことで、得意の連打を打たせない。
リナレスの腕が伸びない位置で対峙し、糞詰まりを起こさせる。
 
前戦のメルシト・ヘスタもやっていたように、至近距離での打ち合いに持ち込むのがリナレス攻略には手っ取り早い。
 
「どん詰まりのリナレスvsヘスタ。お互いに相手の持ち味を打ち消し合った結果、大差判定でリナレス勝利。ヘスタやっぱりいい選手だった」
 
そして、今回のロマチェンコがやっていたのも基本的にはそれ。
 
ガードを上げて距離を詰め、踏み込みのスペースを先に潰す。
お互いの前の足が触れるくらいの位置で対峙し、正面を外さないようにプレッシャーをかける。
さらにもう一歩近づき、サイドに回りながら空いた場所にパンチを通す。
 
以前にも申し上げた記憶があるが、この選手がやっていることは実は村田諒太に近い。
 

ロマチェンコの必勝パターンに合わせてリナレスもペースアップ。ダウンを奪った右はとんでもなかった

ガードを上げて近づき、先に手を出す。
相手の連打はガードとボディワークで芯を外し、打ち終わりに連打を返す。
 
手を出せば倍になってパンチの雨が返ってくる。
サイドに逃げようにも、スルスルと進路を塞がれる。
 
そのせいで徐々に手が出せなくなり、防御一辺倒に追い込まれる。
最終的にはコーナーで亀になり、ラウンド終わりにノーマス。
 
「ロマチェンコがクローラに圧勝! って、さすがにそうなるでしょとしか…。今さらジョー小泉復活とか古すぎる。時間止まってんのか」
 
これがこれまでのロマチェンコの勝ちパターンであり、実際リナレスもそのパターンにハマりかかっていた。
開始直後は攻防の割合が4-6くらいだったのが、4、5Rあたりは3-7、2-8くらいになっていたのではないか。
 
序盤3Rで相手と自分の力量差を確認し、4Rから徐々にギアを上げる。
そして、中盤から後半にかけてトップギアを入れ、ひたすら蹂躙して相手の気持ちを折る。
途中までのスコアでも、3〜5Rまではロマチェンコのポイントだったはず。
 
だが、リナレスが今までの相手と違ったのが、その局面でも気持ちが折れず、逆にギアを入れ直したこと。
ペースを上げたロマチェンコに呼応して、それを超えるほどのペースアップで反撃に出る。
 
そして、例のダウンシーン。
それまでフック気味の右を全力で振っていたのが、いきなり力みのないストレートが最短距離を通り抜ける。
 
いや、あれは見えないですよね。
ロマチェンコが油断したとか調子に乗ったとかではなく、とにかくあの1発はお見事過ぎた。
 

階級アップによる影響はあったよね。ロマチェンコの連打を受けても亀にならず、逆に打ち返してきたのがリナレス

なお今回の試合、リナレスがすごかったのはもちろんだが、階級的な影響もあった気がする。
 
特にそれを感じたのが、ロマチェンコが必勝パターンに入った5、6R。
これまでの相手はひたすらガードを固めて亀になるだけで、手を出すのはロマチェンコが一休みしたときのみ。
ゲイリー・ラッセルJr.でさえ、ロマチェンコの連打が止むのを待つしかない状況だった。
 
だがこの試合では、ロマチェンコの連打の最中にリナレスが打ち返すシーンが目立った。
 
ロマチェンコの連打の最中に平然と打ち返すリナレス。
これ、僕には割と衝撃的な光景だったのだが、どうだろうか。
 
リナレスのハンドスピードあってこそかもしれないが、階級によるパワー面の優位性もかなり影響したように思える。
 
「ロマチェンコ階級の壁? ペドラザに粘られ、久しぶりの判定で王座統一。てか、サイズ差に苦労してるよな」
 
また、リナレスはフルスイングで連打を出した際に、ほとんど身体が流れないのもいい。
ロマチェンコの連打をストップできるハンドスピードとパワーを両立し、なおかつ両足のバランスを崩さない。
これによって、サイドに回るロマチェンコの動きにも置いていかれず持ちこたえられた。
 
左ボディを増やして進行方向を塞いだのも含め、やはりスピード&パワーは偉大だとしか言いようがない。
 

プロ初のダウンのロマチェンコ。いつもの予定調和の流れが崩れたせいで、測定作業を最初からやり直し

もう一つ思ったのが、ロマチェンコがピンチ慣れしていないんだなぁということ。
 
・相手の力量を測る前半
・徐々にペースアップする中盤
・相手を蹂躙する後半
 
何度も言うように、これがロマチェンコの必勝パターン。
だが、今回は6Rのダウンによって、いろいろなものが狂った感が強い。
 
徐々にペースアップし、「さて、ここから相手を蹂躙してやろう」という過程でダウンを喫したせいで、力量を測るために費やした前半がリセットされた感じ。
 
「最強クロフォードがホーンに圧勝で3階級制覇。ん? 最強? いやいや、クロフォードに勝てそうなヤツが1人いるんだが」
 
7Rから改めてリナレスの状態を見極め、自分のエネルギー残量と相談する。
要は、ポイントが行ったり来たりする前半の作業をもう一度強いられたというヤツ。
 
何とも言えないところだが、もう少し早いラウンドでダウンを喫していたらマジでわからなかったのではないか。
 
唯一最強のパターンが崩れた際の対応力というか、ロマチェンコの経験値の少なさが垣間見えた試合でもあった気がする。
 
まあ、プロ13戦目だから当たり前っちゃあ当たり前なのだが。
 

誰がロマチェンコに勝てるって? いや、この試合じゃわからないですよね。あえて言うならアミール・カーンさんとしか……

ただ今回の試合を受けて、じゃあ誰がロマチェンコに勝てるの? と聞かれても、僕にはよくわからない。
 
ロマチェンコの先読みにも置いてきぼりを食わないスピード。
ロマチェンコの連打を寸断できるほどのハンドスピードとパワー。
常に正面に立たれ、逃げ場を塞がれて連打を浴びても折れない心。
 
正直リナレスだったからと思える要素が大きく、他にそれを実行できる選手がいるかは疑問である。
 
てか、今回のリナレスを踏襲するならアミール・カーンさんと答えるしかないわけだが、さすがに階級差があり過ぎて……。
 
「まんまだったなウシクvsガシエフ。無策のガシエフが12R空転させられ大差判定負け。WBSS優勝のウシクはヘビー級?」
 
先日、異様にビルドアップした身体と「るろうに剣心」の縮地のような連打で電光石火の勝利を挙げていたが、ちょっと、ねえ。
 
ミドル級にも手が届きそうなカーンさんと、ライト級で第一歩を踏み出したばかりのロマチェンコのマッチメークが成立するとは思えないのが……。
 
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