フェリックス・カラバロとかいう突然不相応なチャンスを得て強豪サウスポーの当て馬にされまくった男。倉庫でのフルタイムの仕事からわずか4週間でシャクールに挑んだけど…

フェリックス・カラバロとかいう突然不相応なチャンスを得て強豪サウスポーの当て馬にされまくった男。倉庫でのフルタイムの仕事からわずか4週間でシャクールに挑んだけど…

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先日「第2のファンマを探す旅。俺たちのプエルトリコ期待の5人」と題して、僕が(勝手に)期待するプエルトリコ出身選手をピックアップしてみたのだが、相変わらず僕はプエルトリカンが大好きである。
 
第2のファンマを探す旅。俺たちのプエルトリコ期待の5人。彼らの散り際の美学は瞬間芸術と言っても過言ではない()
 
スピーディでスタイリッシュなファイトスタイルに加え、ぱっちり二重で面長の整った容姿。
彼らの試合には問答無用で観客を惹きつける華があり、当然期待値も高くなる。
 
と同時に致命的な打たれ弱さも彼らの特徴。
相手のレベルが上がるにつれて持ち前のスピードが通用しなくなり、どこかの段階から豪快に倒される試合が増え始める。
 
倒すときも倒されるときもド派手。
これがプエルトリコ出身選手の最大の持ち味? だと思っている。
 

(僕の中での)プエルトリコ出身選手の特徴とはかけ離れたフェリックス・カラバロ。「選手の物語」とかクソ喰らえだけど、妙に印象に残ったんだよね

僕が思うプエルトリコ出身選手の特徴は、
・スタイリッシュでスピーディなファイトスタイル
・整った容姿で華もある
・顎が脆く致命的に打たれ弱い
 
パッと思いつくところではファンマ・ロペスやフェリックス・ベルデホ、エマヌエル・ロドリゲス、アンヘル・アコスタなどがそれに当たる。
 
目を奪われる魅力、華のある選手5選。倒し方だけでなく、倒され方にも華があってこそのスター性。PFPとは別次元のランキング遊び
 
ただその中でも例外はいて、今回のフェリックス・カラバロもその1人。
聞いた瞬間に「はい、プエルトリコ!!」とわかるくらいプエルトリコっぽい名前な反面、ファイトスタイルはプレスとガードが中心。スタイリッシュなコンビネーションで相手を圧倒する華麗さは微塵もない。
 
現在の戦績は13勝4敗2分とごく平凡なもので、正直ここからトップ戦線に絡んでくるような選手ではない。
 
 
じゃあなぜこの選手をピックアップしたかというと、妙に印象に残っているから
 
2020年6月のシャクール・スティーブンソン戦以降、2020年9月のロベイシ・ラミレス、2021年11月のレイモンド・フォードと3戦連続で技巧派サウスポーの当て馬としてリングに上がっているフェリックス・カラバロ。
 
中でもシャクール・スティーブンソン戦では4週間前のオファーながらもきっちり作り上げ、6Rまで粘ってみせた。
あの試合のおかげで次戦のロベイシ・ラミレス戦、レイモンド・フォード戦が転がり込んできたと言っても過言ではない(と思う)。
逆にシャクール戦で多少無理をしたせいで不相応なマッチメークが続いたとも言えるのだが。
 
普段は倉庫でフルタイムの仕事をしているという経歴を含め、何とも人間臭くて印象的だなと思った次第である。
 
 
もともと僕は「選手の物語」「負けた方にもストーリーがある」といった“過程にも目を向けろ”論などクソくらえだと思っている。
ところがフェリックス・カラバロに関してはなぜかスルーできないというか、謎の好感度の高さを感じている笑
 

×フェリックス・カラバロvsシャクール・スティーブンソン○(6R1分31秒KO)

新型コロナウイルスの影響で世界中のボクシングイベントがストップした2020年。約半年ぶりに復活したトップランク興行の第一弾、メインとして行われたのがこのフェリックス・カラバロvsシャクール・スティーブンソン戦である。
 
結果は6RKOでシャクールの勝利。
カラバロのプレスを前手のジャブだけでストップしたシャクールがガードの間からスパスパとヒットを重ね、ほぼ一方的に勝負を決めた一戦。
 
 
ただ、改めて試合を観直すとカラバロも相当がんばっていたことがわかる。
一定の距離をキープすることに長けたシャクールだが、カラバロはその危険地帯に踏み込むことにいっさいの躊躇がない。
 
ガードを固めて頭を振りながら前進を続け、何度サイドに回られても諦めることはない。
中盤にはいきなりの右やフック気味の左が何度かシャクールの顔面を揺らしてもいた。
 
こう言っちゃなんだか、2019年10月のジョエト・ゴンサレスよりもよかったんじゃないの? というくらいの健闘。
残念ながら6RKOで撃沈したものの、準備期間の短さやコロナ明けということを加味すれば役割は十分果たしたと言える。
 
観戦直後は「おもんなさすぎる」「でも、ブランク明けでここまで仕上げてきたシャクールはさすが」などと申し上げたが、今となってはフェリックス・カラバロのがんばりの方にこそ目がいく。シャクールの実験台として呼ばれた中でのあのパフォーマンスはもっと評価されていい。
 
シャクール・スティーブンソンvsフェリックス・カラバロおもんなさ過ぎワロタw 久しぶりのボクシング、うすうすな試合だったな
 

×フェリックス・カラバロvsロベイシ・ラミレス○(判定3-0 ※80-72、80-72、79-73)

上記のシャクール戦から約3か月後に再びトップランク興行に呼ばれたフェリックス・カラバロ。対戦相手はリオ五輪、ロンドン五輪で連覇を果たしたホープ、ロベイシ・ラミレスである。
 
 
この試合のカラバロは前回よりもさらにがんばったというのが率直な感想。
 
適性のフェザー級契約というのもあったと思うが、シャクール戦よりもうまく自分の距離に入ることができていた。
 
スピード、見切り、コンビネーションの多彩さなど。
見るからにハイレベルでセンス抜群のロベイシ・ラミレスだが、僕は今のところこの選手にあまりピンときていない。まだまだアマチュアっぽさが残っている印象である。
 
バランスのいいジャロン・エニスと器用なホセ・ペドラサ、五輪連覇のロベイシ・ラミレス。平岡アンディはこんなヤツらを相手にせないかんのか…
 
ジャブ、ボディ、アッパーを被弾しつつも微妙に芯を外して懐に潜り込むカラバロを序盤から持て余し、何度もロープを背負わされるラミレス。
本来はある程度スペースのある位置で腕を振りたいのだと思うが、その距離をなかなか作らせてもらえないままラウンドを重ねていく。
 
シャクール・スティーブンソンは突進を止めるためのパンチとサイドへのフットワークの使い分け、バランスが絶妙で、相手との間合いが達人レベル。それに比べるとやはりロベイシ・ラミレスには若干の物足りなさを感じる。
 
2021年10月のオーランド・ゴンサレス戦などを観ると、もしかしたらこの選手はサウスポーの方が得意なのかもしれませんね。

すげえ生き生きしてるわ笑
中間距離でスピード勝負をしているときはすこぶる見栄えがいい。
 
リオ五輪でもムロジョン・アフマダリエフ、シャクール・スティーブンソンに勝利して金メダルを獲得したとのことで、その辺もアマチュアっぽさが抜けきらない一つの要因なのかもしれない。
 
普段アマチュアボクシングをまったく観ない僕が初めてちゃんと観てみた。短いラウンドを全力で駆け抜けるには? 世界ユース選手権
 
逆にカラバロは前回に比べて相当やりやすかったと想像する。
 
ホープの当て馬として呼ばれたのは間違いないし、本人もそれを承知していたはず。
だが、絶対不利な状況でも本気で勝ちを狙いにいく姿勢は文句なしに好感度が高かった。
 

×フェリックス・カラバロvsレイモンド・フォード○(8R2分10秒TKO)

そしてラストは2021年11月に米・ニューヨーク州でのDAZN興行。テオフィモ・ロペスvsジョージ・カンボソス戦、尾川堅一vsアジンガ・フジレ戦のセミセミで行われた一戦である。
 
平岡アンディ、レイモンド・フォード、オースティン・ウィリアムズ他先週末振り返り。あと、何気に一番目を引いたのがノーマークのアイツ…
 
この試合は上記2試合よりもさらにフェリックス・カラバロのがんばりが目を引いた。
技巧派サウスポーに当てられまくったことで耐性がついたのだと思うが、前戦のロベイシ・ラミレス戦以上にアップセットの可能性を感じられたことを報告しておく。
 
 
ただ、残念ながら結果はレフェリーストップによる8RTKO負け。前のラウンドまでに打たせすぎたことが主な敗因だったなと。
 
レイモンド・フォードのパンチはやや手打ち気味で1発1発の威力はそこまでではない。
だがその分ハンドスピードと旺盛な手数は脅威で、ブロック&リターンのカラバロにとっては相性がいいとは言い難い。
 
ある程度の被弾はOK、強引に距離を詰めてロープ際まで押し込みラッシュを浴びせるカラバロ。
サイドにスルッと逃げられても諦めず、すぐに方向転換して中間距離からやり直す。
 
どこかでビッグパンチが1発当たればと考えていたのだと思うが、恐らくそれは正しい。スタイル的にもカラバロが勝つにはそれしかなかった。
 
とは言え、あれだけもらえば顔も腫れるし当然ダメージも溜まる。
後半には足が止まるシーンも見られた上に、逆転の1発が入る気配もない。本人は不満かもしれないが、あそこでのストップは仕方ないというのが僕の感想である。
 
 
そして、僕はロベイシ・ラミレス同様、レイモンド・フォードにもあまりピンときていない。
カラバロのプレスにタジタジにさせられていたことを考えると、王者クラスに対抗するにはもう一段階必要かなぁと。
 

フェリックス・カラバロの人間臭いキャリアがたまらないっす。実力的にも日本ランク上位くらいはありそうな…

急遽抜擢されたシャクール・スティーブンソン戦でのがんばりが認められ、当て馬としての起用が続いたフェリックス・カラバロ。
 
それまでは母国以外で試合をしたことがなく、普段はフルタイムの仕事とボクシングを両立する生活を続けていた(今も?)。
 
それが突然トップランク興行に呼ばれ、ついにはマッチルーム&DAZN興行でダブル世界線の前座を務めることに。
 
尾川堅一vsアジンガ・フジレ。2021年ベストバウト(僕の中で)出たか? 全盛期の動き、3度のダウンを奪っての判定勝利にクッソ感動しました
 
勝てば一気に世界が開ける&本人としてもラストチャンス(現在35歳)と捉えて挑んだ3連戦だったと思うが、結果は残念ながら3連敗。トップレベルの壁は高く戦績も13勝1敗2分→13勝4敗2分と一気に悪化してしまった。
 
とは言え、この選手のキャリアが(僕にとって)印象的であることには変わりない。
 
 
中でも技巧派サウスポーとの3連戦というのは……。
 
前進あるのみのファイトスタイルと絶対に諦めない姿勢がホープの踏み台にちょうどいいと判断されたのだと思うが、本人がその評価を本気で覆そうとしているのも十分伝わってきた。3戦目にはサウスポーへの適応も見られた。
 
 
この選手のパーソナルな部分など知ったこっちゃないが、最初に申し上げた通り人間臭さを感じさせるキャリアは何とも言えないものがある。舌の奥で鉄の味がするほどに。
 
 
てか、実際そこそこ強いと思うんですよねフェリックス・カラバロ。
単純比較は難しいけど、パッと見日本ランキング上位くらいの実力はあるんじゃないの?
 
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