ケル・ブルックvsゲンナジー・ゴロフキン再視聴。ブルックがかなりやれてた。フルボッコにされた印象だったけど。僕はいまだにブルックがウェルター級最強(当時)だったと思ってる【結果・感想】

ケル・ブルックvsゲンナジー・ゴロフキン再視聴。ブルックがかなりやれてた。フルボッコにされた印象だったけど。僕はいまだにブルックがウェルター級最強(当時)だったと思ってる【結果・感想】

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ボーっとニュースを漁っていたところ、下記が目に入ってきた。


元ウェルター級王者のケル・ブルックが同郷のアミール・カーンにご立腹であると。
 
記事によると2022年2月に行われたケル・ブルックvsアミール・カーン戦後にカーンから禁止薬物のオスタリンが検出され、カーンに2年間の出場停止処分が下されたとのこと。
 
それを受けてブルックが「彼は薬物の力を使って私を傷つける可能性があった」旨のコメントを発したといった内容である。
 
てか、1年以上前の試合の処分が今?
そもそもカーンは引退してるんですが、それは。
 
詳細を知らないためにポカンとさせられているのだが、とにかくそんな感じらしい。
 
ケル・ブルックに関しては少し前に精神的に不安定な状態というニュースを聞いた気もするが、名前を目にしたのもそれ以来。カーン戦後に引退を表明したと知って「ああ、残念だなぁ」と思ったことを覚えている。
 
 
で、表題の件。
この選手のキャリアが大きく動いたのはやはり2016年9月のゲンナジー・ゴロフキン戦
IBF世界ウェルター級王者のブルックとミドル級3団体統一王者ゲンナジー・ゴロフキンの対戦が唐突に発表され、多くの方を仰天させた試合である。
 
結果は大方の予想通りゴロフキンが5R1分52秒TKOで勝利したわけだが、ミドル級で敵なしだったゴロフキンに挑んだブルックをたたえる声も多く聞かれた。
 
 
たまたま“Kell Brook”の文字を目にして一連の流れを思い出したわけだが、今回はこの試合の感想を。改めて眺めてみると当時と印象が違ったので。
 
ケル・ブルックのキャリアを振り返ってみた。クロフォードvsスペンス戦を受けてブルックの試合を漁る。ウェルター級最強(当時)が喫した3敗はすべて強豪
 

思った以上にケル・ブルックがやれてた。ゴロフキンのジャブにカウンターを合わせまくる

まず試合の全編は下記である。

上述の通り結果は5R1分52秒でゴロフキンのTKO勝ち。ブルック陣営のタオル投入によって試合がストップされている。
 
 
率直な感想だが、思った以上にケル・ブルックがやれていたなと。
 
当時はゴロフキンの圧力、パンチ力にメタメタにされたイメージだったが、久しぶりに観るとそうでもない。
4Rまでの採点も38-38、38-38、37-39とジャッジ1人がブルックを支持している。コレに関してもホームタウンデシジョン発動か? などと思った記憶があるが、再視聴した今はぼちぼち納得している。
 
 
具体的には、ブルックがゴロフキンのジャブにカウンターを合わせまくっていたことに驚いた。
 
ゴロフキンは中間距離のジャブでスペースを確保、相手を下がらせながらワンツー→怒涛のコンビネーションにつなぐのが得意のパターンだが、このジャブが強力でとにかくめんどくさい。
 
全盛期などはジャブだけで相手が委縮し、その時点で9割方勝敗が決していた印象。あの圧力はフライ級時代のローマン・ゴンサレスと並んで歴代最強と言っていい(気がする)。
 
そのゴロフキンのジャブにケル・ブルックは臆することなくカウンターを合わせていく。
1Rこそ馬力の違いに面食らったものの、ラウンド後半から徐々に対応。ガードの外側から右をヒットして場内を沸かせるシーンすらも。
 
カネロvsゴロフキン2戦目を久しぶりに視聴。両者が憎悪とプライドをバッチバチにぶつけ合った白熱の試合。全3戦に流れがあっておもしろいよね
 

手を出しにくそうにするゴロフキン。あのジャブにここまでカウンターを合わせるって、カネロでもできなかったヤツじゃない?

さらに2Rに入ると動き出しのタイミングも掴み、警戒を高めたゴロフキンが手を出しにくそうにするという。
 
初弾のジャブに抜群のタイミングで左を合わせ、距離が近づいた際は腕を抱えて連打を封じる。
で、ゴロフキンが一休みしたところを見計らってガードの外から右、下から左アッパー、離れ際に左と3連打を浴びせる。
 
常に左右に動く、極力ゴロフキンの正面に立たないことを意識していたのだと思うが、それもあのカウンターがあってこそ。
2016年4月に対戦したドミニク・ウェイドなどはファーストコンタクトで“きゅう~”っと委縮→ひたすら逃げ回るだけだったが、ブルックは強いパンチを出しながら“自らの意思で”動くことが可能。
 
これまでのゴロフキンの相手とはひと味違う。突貫ファイトでけちょんけちょんにされたデビッド・レミューよりもはるかにうまく立ち回っていた(と思う)。
 
 
いや、すげえなケル・ブルック。
ゴロフキンの連打にこれだけカウンターを合わせるなど、カネロでもできなかったわけで。
 
日本の村田諒太も善戦したが、アレはあくまで2022年のゴロフキン。階級最強だった2016年当時のゴロフキン相手にぶっつけ本番でここまでやれるのはちょっととんでもない。
 
村田諒太以外にゴロフキンをここまで追い詰められるヤツがどれだけおるの? でも引き出しの多さ、経験値の違いが顕著だった。改めてブランクが…
 
さすがは僕が「ウェルター級最強はケル・ブルック(当時)」だと絶叫し続けただけある(それは関係ない笑)。
 

階級差を埋めることはできず。上体反らしが間に合わず連打も続かない

ただ、階級差によるフィジカルの違いは歴然。
避けたはずのジャブが顔面を捉え、1発かすっただけ(に見える)でもガクッと腰が落ちる。
 
申し上げたようにケル・ブルックの持ち味は打ち終わりに被せるカウンターだが、その際の上体反らしがどうしても間に合わない。
ゴロフキンのジャブをスウェイで避ける→左を被せるのだが、思った以上にジャブが伸びる&威力があるせいでそのつど動きを止められてしまう。
 
被弾直後のカウンターには体重が乗らず、のけぞったまま打ち出すせいで連打も続かない。
単純な馬力に差があるのはもちろん、それ以上にパンチの伸びや1発の威力が別世界だった。
 
ショーン・ポーターの突進を平然と受け止めたケル・ブルックが手に負えないのだから、そりゃ階級は大事ですよね。
もしかしたら階級差よりも“ゴロフキンが単体でヤバかった”だけかもしれないが。
 
3R中盤からブルックが右頬付近を気にし始める→みるみる腫れていった(右目の眼窩骨折)が、あそこがぶっ壊れるというのはそれだけゴロフキンのジャブが強烈だったのだろうと。
 

ケル・ブルックはウェルター級最強(当時)。ナジーム・ハメドのスタイルを完成させた人でもある

上述の通り僕はウェルター級最強(当時)はケル・ブルックだと思っていて、その考えは今でも変わらない。
 
エロール・スペンスJr.にも当たり負けしないフィジカルと柔軟性の両立。
上体反らしからのカウンターや要所で見せるアッパーなど、堅実さと野性味のバランスがちょうどいい。
 
デビン・ヘイニーvsワシル・ロマチェンコは案外ロマチェンコ有利かも? でも応援するのはヘイニー。「ヘイニーよ、お前がNo.1だ…」って言いたい笑
 
それこそ同郷のアミール・カーンとはレベルが違う。デボン・アレクサンダーとの無敗対決を制し、ポール・マリナッジをボロ雑巾にしたショーン・ポーターを文句なしの判定で下した試合はマジで衝撃的だった。
 
 
これも何度も言っているのだが、僕の中でのケル・ブルックはナジーム・ハメドの完成バージョン
 
ノーガードと上体反らし、信じられない角度から打ち込むパンチでKOを量産したハメドだが、全盛期と呼べる期間はあまり長くない。
 
特にキャリア後半は相手のレベルが上がったことで上体反らしが間に合わなくなり被弾が増えた。試合ごとにガードを上げてみたり、どっしり構えたりと迷走していた印象。
階級アップの影響で柔軟性とスピードが失われたのもあると思うが、初期のインパクトはどんどん薄れていった。
 
見切りと勘のよさは抜群だが、上体の動きだけで攻撃を避け切るのはほぼ不可能。
一つ一つのアクションはド派手で見栄えもいい、鮮やかなKOシーンには目を奪われるが、実際にはあそこまで大げさに動く必要はない。
 
ナジーム・ハメドvsマルコ・アントニオ・バレラ戦感想。バレラがハメドを完全に攻略した試合。これがポテンシャル頼りのスタイルの限界かなぁ
 
そういったハメドの欠点(長所でもある)を解消し、無駄を削ぎ落して洗練させたのがケル・ブルック。
 
上体反らしからのカウンターというパターンは残しつつ、適度にガードを上げて被弾を少なく。
ハメドのようなダッキングはせず、距離の調整は左右のフットワークを中心に。
伸び上がるようなアッパーやいきなりのスイッチからの右といった野性的なアクションは要所のみに限定する。
 
ライアン・バーネットやジョシュ・ケリー、キッド・ガラハド、その他。英国にはハメドの影響を受けていると思われる選手が多数いるが、その中でもケル・ブルックはNo.1の完成度だと思っている。
 
ハメドのよさを受け継ぎつつ、より実践的? なスタイルに昇華させた(と思う)ケル・ブルックはやはり僕好みである笑
 

ブルックがゴロフキン戦をやらなかった世界戦には興味がある。両者にとって微妙なマッチメークだった

表題の通りだが、個人的にケル・ブルックがゴロフキン戦をやらなかった世界戦には非常に興味がある。
 
たとえばゴロフキン戦ではなく締結間近と言われていたジェシー・バルガスとのIBF/WBO統一戦に進んでいれば。
もしくは先にエロール・スペンスJr.戦、準備に2年ほどかけてミドル級に挑戦する等のルートがあれば。
 
4RでKOされたテレンス・クロフォード戦ももう少し早い時期&万全な状態で実現できたんじゃないの? と思ったり。
 
クロフォードよ、お前がNo.1だ…。ケル・ブルックを4RTKOで沈める。見えない右キター♪───O(≧∇≦)O────♪
 
ビッグマッチが決まらず(クリス・ユーバンクJr.戦が直前で飛んだ)イライラしていたゴロフキンのストレス解消に飛びついたせいで大幅にキャリアが狂った感が……。
 
 
当のゴロフキンもあの試合ではめちゃくちゃ雑にタコ殴りしてるしね。
次のダニエル・ジェイコブス戦で「おや? ちょっと落ちたか?」となったし、とにかく両者にとって微妙なマッチメークだったなぁと。
 
まあ、報酬はべらぼうによかったのだと思うが。
 
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