ナジーム・ハメドvsマルコ・アントニオ・バレラ戦感想。バレラがハメドを完全に攻略した試合。これがポテンシャル頼りのスタイルの限界かなぁ

ナジーム・ハメドvsマルコ・アントニオ・バレラ戦感想。バレラがハメドを完全に攻略した試合。これがポテンシャル頼りのスタイルの限界かなぁ

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2020年6月1日にO.A.されたWOWOWエキサイトマッチ「「プリンス」ナジーム・ハメド特集!」。
 
「プリンス」ナジーム・ハメド特集!
 
先日のエドウィン・バレロ特集と同じくらい楽しみにしていた回だったのだが、思った通りめちゃくちゃおもしろかった
 
エドウィン・バレロの化け物感。本能と勢いで戴冠を果たし、ピタルア戦での2階級制覇とともに一気に成熟した
 
内容としては、視聴者からの投票によって選ばれたベストバウトを10位から発表していく形式。
メインの5位以降はこんな感じでございます(間違ってたらすみません)。
 
5位:vsマルコ・アントニオ・バレラ(2001年4月)
4位:vsトム・ジョンソン(1997年2月)
3位:vsブヤニ・ブング(2000年3月)
2位:vsオーギー・サンチェス(2000年8月)
1位:vsケビン・ケリー(1997年12月)
 
1位のケビン・ケリー戦は予想通りだったのだが、それよりも今回僕の印象に強く残ったのが2001年4月のマルコ・アントニオ・バレラ戦。米・ネバダ州ラスベガスのMGMグランドにハメドが初降臨するとともに、3-0(115-112、116-111、115-112)の判定で敗れた一戦である。
 
この試合は昔一度観たことがあるのだが、正直内容はよく覚えていない。
 
理由は「ハメドが負けたから」
 
もともとナジーム・ハメドを応援していた僕はこの敗戦がどうしても受け入れられず、これまでしっかりと観ずにここまできていた。
 
ところが今回のハメド特集で久しぶりにハイライトを観たところ、「何だこりゃ、すげえぞ」と。マルコ・アントニオ・バレラの試合巧者っぷりに驚き、慌てて最初から観直した次第である。
 
なるほど、バレラの作戦がここまで機能した試合だったのね。
これだけ攻略されたらハメドもショックが大きかっただろうなぁ。
みたいな。


というわけで、今回はこの2001年4月のナジーム・ハメドvsマルコ・アントニオ・バレラ戦についての感想を適当に述べてみたいと思う。
 

全身バネのような身体能力と当て勘でKOを量産したハメド。あまりのアンタッチャブルさに度肝を抜かれた

ナジーム・ハメドという選手は身長164cm、リーチ163cmと、フェザー級としてはあまり大きな方ではないが、凄まじい身体能力を活かした踏み込みと当て勘のよさでKOを量産した選手。
 
遠い位置からリードのジャブでけん制し、一足飛びで間合いを詰める。
と同時にそのまま全体重を浴びせるほどの勢いでアッパーともストレートともつかない角度のパンチをねじ込む。
 
また、構えは基本的にノーガード。上半身の柔軟性と復元力がとんでもなく高く、相手のパンチを上体反らしでかわして戻り際に放つカウンターを得意とする。
 
顎を突き出して攻撃を誘い、目にも止まらぬ速さでカウンターを返す。
たまらず相手が身体を寄せてくれば、サイドへのステップと上体反らしでスペースを作って左右フックをドカン。
 
全身を目いっぱい伸ばしたフォームはリーチの短さをいっさい感じさせない。
 
ナジーム・ハメドvsケビン・ケリー。伝説と言っても過言ではないハメドのベストバウト
 
遠い間合いからは野性味溢れる一撃必殺のKOパンチ。
至近距離ではサイドへの動きと上体反らしによるフック。
 
WOWOWエキサイトマッチの解説者が再三「すべての基本を無視した選手」「あらゆる角度からKOパンチが打てる」と言っていたが、マジでその通り。
初めて観たときはあまりのアンタッチャブルさと全身バネのような動きに度肝を抜かれた記憶がある。
 

バレラがハメドを完全に封じ込めた。高いガードと近場でのカウンター。サイズ差も大きかったよね

そして、そのハメドをマルコ・アントニオ・バレラは見事に封じてみせた。
 
サウスポーで斜に構えるハメドに対し、ガードを上げてどっしりと対峙するバレラ。
右を小刻みに動かしながらジリジリと前に出るハメドのフェイントにいっさい付き合わず、左回りで確実に外側をとる。
 
自分からは極力手を出さず、小さいジャブでハメドの攻撃を誘う。
痺れを切らしたハメドが強引に飛び込んできた瞬間、自らも前に出て左フックをカウンターで合わせる。
このフックを上体反らしで避けたハメドにさらに連打を浴びせ、腰砕けの状態にさせる流れ。
 
絶えずハメドの右側に回り込むことで初弾を右のみに限定し、自分から手を出させて打ち終わりに左フックのカウンターを狙う。
 
あらゆる角度からKOパンチを放ち、復元力の高さによる上体反らしで相手を空転させてきたハメドだが、あれだけポジションを支配されればどうしても攻撃の幅は狭まる。
 
しかもバレラは身長168cm、リーチ178cmとハメドよりも15cmも腕が長い。
ハメドのダイナミックな踏み込み→上体反らしは文句なしに凄まじいが、次に打つパンチを読まれた上に至近距離でカウンターを狙われればさすがに被弾は避けられない。
 
その上、上体を反らしたところにもらうパンチは見栄えがすこぶる悪いという。
 
ローマン・ゴンサレス、マイク・タイソン、内山高志。最強の勝ちパターンさえあれば構成はシンプルでいい。シンプル・イズ・ゴールデンベスト()
 
中間距離でも射程の半歩外から動けないハメドに対し、バレラの左は危険地帯をあっさり飛び越えてハメドの顔面を揺らす。
 
この試合のハメドは12Rを通してバレラの左を被弾し続けたわけだが、自分のリーチを活かす方法を含めて本当によく研究してきたのだと思う。
 

バレラはブヤニ・ブング戦を参考にしたのかな? ここがポテンシャル頼りのアンタッチャブルの限界か

恐らくだが、この試合のバレラは2000年3月のハメドvsブヤニ・ブング戦を参考にしていた気がする。
 
今回のハメド特集でもこのブヤニ・ブング戦がランクインしていたのだが、「おお、なるほど」と思うことが多かった。
 
ガードを高く構えて身体を振り、ハメドのリードが届かない位置で対峙。
遠い間合いから飛んでくるハメドのアッパーをダッキングでかわし、打ち終わりにカウンターのフックを返す。
1Rこそ自ら前に出て打ち合おうとしていたものの、2Rの中盤以降はブヤニ・ブングの“待ち”がそこそこ機能していた。
 
まあ、ブヤニ・ブングにはバレラほどの左ジャブもサイドに回り込むフットワークもなく、根本的にスピードが違い過ぎてどうにもならなかったのだが。
 
 
そして、改めて観るとハメドは基本的にはカウンター使いなのだと思う。
 
射程の外から一瞬で距離をゼロにする飛び込みと復元力の高い上体反らしというド派手な動きに目が行きがちになるが、どちらかと言えば先に手を出させてカウンターを合わせるタイプ。
 
なので、バレラ戦のように左リードで距離を支配された上で“待ち”に徹されると案外手詰まりになりやすい。
 
また、対戦相手のレベルが上がるにつれて上体反らしが間に合わないシーンが目立ち始めていた時期でもあり、今までのように圧勝ばかりというわけにもいかない。
これまで重視していなかったガードを意識したりと、試合ごとのブレも大きくなっていた。
 
 
自分が実はカウンターパンチャーであること。
サイドへ回られた際の対処法を用意していなかったこと。
上体反らしが間に合わない場合の次の一手。
などなど。
 
ケビン・ケリー戦やオーギー・サンチェス戦でも打ち終わりのカウンターに弱いことは露呈されていたが、それを補って余りあるほどの身体能力の高さ、パンチ力、当て勘がハメドにはあった。
 
高過ぎるポテンシャルに頼り切ったスタイルの限界というか、自分の穴を放置し続けたことがこの試合で噴き出したというか。
 
ブレンダン・イングルとの師弟関係の破たんがどの程度影響したかは不明だが、試合巧者のバレラを相手にするにはあまりに無策だった。
 
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あとは単純にフェザー級としては身体が小さかったというのもある。
S・バンタム級時代の試合を観ると、遠い間合いからの踏み込みにカウンターを合わせてくるような相手は皆無。単純なフィジカルと連打の圧力でどうにでもなる印象が強い。
 
その辺の無頓着さもこの選手の弱点であり、魅力でもあったのかもしれない。
 

ケル・ブルックの洗練された動きに軽く感動するw さすがはハメドの正統な後継者()

ちなみにだが、ハメドの試合を観たあとに元IBF世界ウェルター級王者ケル・ブルックの試合を観ると、あまりに洗練された動きに軽く感動してしまうww
 
適度な広さのスタンスと自然な位置でのガード。
見るからに重そうなジャブで相手を追い詰め、相手のジャブに左を被せる。
そして、スペースができたところで大きく踏み込んでの右。
 
左リード+右ストレートという基本的な組み立てに動物的な動きをミックスしつつ、正面衝突で当たり負けしないフィジカルも持ち合わせる。
 
これまで「ハメド二世」と呼ばれる選手は何人か出てきたが、正直どの選手も物足りない。個人的にはこのケル・ブルックこそが正統なハメドの継承者()だと思っている。
 
ハメドほどの大げさな踏み込みやスウェーを使うわけではなく、あくまで動きは必要最低限。堅実さの中にダイナミックさを織り交ぜながらほどよく緩急をつけているイメージ。
 
 
恐らくケル・ブルックも身体能力的にはハメドに近いものがあり、やろうと思えばハメドスタイルも可能なはず。
だが、あそこまで身体能力頼みのオーバーアクションばかりでは燃費も悪く、いずれ頭打ちになるときがくる。
 
ハメドスタイルの長所を残しつつ、無駄をそぎ落として完成型に近づけたのがケル・ブルックだったのかなと。
 
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いや、ケル・ブルックにはホントに期待してたんですけどね。
今さらながら2016年9月のゲンナジー・ゴロフキン戦は余計だった。
 
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