劇場版「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」感想。蛇足でもあり感動再び! でもある。観る人、観るタイミングによって評価がまったく異なる作品じゃないか?
- 2020.10.02
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劇場版「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」を観た。
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「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」(2013年)
めんま(本間芽衣子)が成仏した日からもうすぐ1年。
それぞれにめんまへの思いを秘めつつ日々を過ごしていた超平和バスターズの5人だったが、あの日からちょうど1年後にめんまが残した手紙の「お焚き上げ」をすることに。
1年経ってもいまだ引きこもり気味のじんたん、じんたんへの変わらぬ思いを抱えたあなる、スカした態度だが負けず嫌いのゆきあつ、物静かで冷静さを装い本音をひた隠しにするつるこ、声が大きくお調子者のぽっぽ。
彼らは各々にめんまへ向けた思いを手紙にしたため、秘密基地に集結するのだった。
辺りはまだ明るく「お焚き上げ」を始めるには少し早い。
手持ち無沙汰気味の5人は、ポッポの提案で日が落ちるまでの時間を使ってかくれんぼを始める。
そして基地の中に身を隠したじんたんは、ふと目を移した先に刻まれた文字に気づく。
「超平和バスターズはずっとなかよし」
それはあの日、彼らにずっと仲よしでいてほしいと願うめんまが残した書き置きだったのである。
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この前視聴したアニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の劇場版をWOWOWで観たぞ
2011年6月~11月まで全11話で放送されたアニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の1年後を描いた劇場版。
2013年8月に公開され、2日間で16万人以上の動員、興行収入10.4億円を記録したヒット作である。
ちなみに僕は少し前にアニメ版の全11話を視聴したものの、劇場版には手を出しておらず。
ところが先日、今作がWOWOWでO.A.されたことを知り、せっかくなのでオンデマンドで視聴してみた次第である。
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蛇足でもあり感動再び! でもある。パーフェクトとも言われたアニメ版の最終回をどれくらい鮮明に覚えているかで印象が変わる
表題の通りなのだが、感想としては「蛇足でもあり感動再び! でもある」作品。恐らく観る人、観るタイミングによって大きく評価が割れる映画なのではないか。
全11話のアニメはすこぶる評判がよく、最終話のラストなどは文句のつけようがないほどパーフェクトだったとおっしゃる方もいる。
僕も最初は暇つぶしのつもりでアニメ版をボーっと観始めたのだが、そのうち目が離せなくなり。クライマックスが近づくにつれてどんどん疾走感が増していき、ラストのじんたんの「せーの!!」からのメンバー全員による「めんま、みーつけた!」にはちょっとくるものがあったw
確かに誰が観ても申し分ない終わり方だったし、彼らのその後を想像する楽しさも残してくれた作品だったと思う。
一方、劇場版はレギュラー放送では語られなかったエピソードが追加されており、めんまと5人それぞれの思い出が補完される形で過去を振り返る流れとなっている。
「なるほど、あれはこういうことだったのか」
「この2人の関係はこうなってたのね」
「コイツはこんなトラウマを抱えて……」
などなど。
リアルタイムではっきりと描かれなかった部分が明快になったのに対し、視聴者の想像力を掻き立てる余白を残してくれたアニメ版のよさが消されてしまった側面もある。
いわゆる「鉄を熱いうちに打つ」or「一晩寝かせたカレーを旨く食う」の違い。
レギュラー放送の印象そのままに劇場版を観てしまうと蛇足に感じる部分は多いが、少し期間を置いて適度に記憶が薄れた状態で観れば当時の感動をもう一度味わえる。
そういう意味での「観る人、観るタイミングによって評価が変わる」作品だと申し上げている。
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ただ、今作の公開はアニメ版終了から約2年後の2013年8月。適度に当時の記憶も薄れた頃で、それだけに感動もひとしおだった方も多いのではないか。公開のタイミング、全編99分という適度な上映時間を含めてロングランヒットを記録したのも納得の出来である。
ちなみに僕が今作を観たのはアニメ版視聴から約4か月後。リアルタイムで観ていた方と比べてどうなのかは不明だが、個人的にはちょうどいいブランクだったと感じている。
アニメ版ではやや分散気味だったエピソードが1時間30分ちょいに凝縮されていた分、感動の振れ幅も大きかったしね。
今作の最重要キャラクターはあなること安城鳴子。変わり者が勢揃いする超平和バスターズ
そしてもう一つ。
僕が今作でもっとも重要なキャラクターだと思っているのが、あなること安城鳴子である。
主人公のじんたんではなく、ヒロインのめんまでもない。コメディリリーフ役を全力で務めたぽっぽも捨てがたいが、何だかんだでこの作品を「名作」と呼べる位置まで引き上げた要因はあなるの存在が大きい(と思う)。
はっきり言って、今作の主要キャラクターは変わったヤツばかりである。変態や異常者とまでは言わないが、いわゆる“常識”と呼ばれる範疇からは大きくはみ出たキャラが勢揃いしている。
コメディリリーフかつストーリー進行という重要な役割を担ったぽっぽは明るく人懐っこい大男だが、高校には行かずにアルバイトで稼いだ金で世界中を放浪する風来坊。日本に帰ってきた今も秘密基地で一人暮らしをしている。
端正なルックスにスカした態度、飄々とした空気感を漂わせるゆきあつは、実は負けず嫌いで激情家。じんたんへのコンプレックス、めんまへの思いを拗らせまくった結果、夜な夜な女装をして仲間の前に現れるという奇行ダークサイド野郎である。
一見まともに思えるつるこだが、やたらと洞察力に長けたリアリストで必要以上に他人に厳しい。思いを寄せるゆきあつには素直になれず、感情がすぐに表に出るあなるに嫉妬する自分を受け入れられない。年相応に揺らぐ感情を抑え込んで無理やり平静を装う、何とも面倒くさいひねくれ者キャラである。
こうして見ると、高校受験に失敗して引きこもりになったじんたんなどこの3人に比べれば全然普通。ほかのメンバー同様に過去を引きずってはいるが、めんまの登場によってとりあえずは学校にも行きだしたしバイトも始めた。
相変わらず卑屈でウジウジしているものの、超平和バスターズを率いた全盛期? のカリスマ性も端々に感じさせる。
変わり者には違いないが、上記の3人ほど“常識”の枠から外れいているとは言い難い。
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地縛霊のめんまとあなるの凡人っぷりによるコントラスト。彼女の存在がこの世とあの世をつなぐ架け橋となる
その点、あなるの凡人っぷりと言ったら……。
派手な見た目と言動は男性に対する免疫のなさとコンプレックスの裏返し。
小学校時代からの片思いの相手を今も思い続ける一途な女の子だが、そのせいで自分とは正反対のまっすぐなめんまに愛憎入り混じった複雑な感情を抱いてしまう。
思いを寄せるじんたんがめんまに「誰がこんなブス!」と言い放ったことに内心ホッとしたり、そんな自分に嫌悪感を覚えたり。高校受験に失敗したじんたんが自分と同じ高校に通うことを知って喜んだり。
周りに影響されやすく優柔不断。それなりに色気づいて流行にも敏感だが、好きな男子に優しくされても変な意地を張ってしまう。溢れ出す感情を抑えきれず、ときには豪快に自爆してしまうことも。
それこそ生理などでイライラすることもあったのかもしれない。
いわゆる思春期の不安定さと向き合う年頃の女の子。
ウジウジヒッキーのじんたんですら普通に見えるほどの逸材揃いの中、ここまで人間味のあるキャラクターには心底安心させられるww
いや、そうなんだよな。
浮世離れした超ド級の変わり者の中にあって、あなるの普通キャラが適度なバランサーとなり今作に現実感を生み出してくれる。
まっすぐな性格のまま地縛霊と化しためんまとの対比が見事なコントラストを描き、この世とあの世をつなぐ架け橋となる。
あなるがオドオドしたり顔を赤らめたりするたび、我々オーディエンス()は「うん、わかるぞ」「誰もが通る道だよな」「人間なんてそんなにきれいなもんじゃねえから」と共感を得られる。
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めんま「かっけーんすよ。じんたんは」
そう、確かにじんたんはかっけーんす。
かっけーのだが、あなるのカッコ悪さもそれはそれで親近感と温もりがあっていいよねという話。
ダメな自分を受け入れる潔さやそこから一歩踏み出す勇気、周りを気遣う優しさを持ったじんたんはまさしく主人公だが、そっち側だけじゃつまらないでしょ?
でも、ぽっぽやゆきあつ、つるこほどぶっ飛んだ変わり者ばかりではさすがに胃もたれを起こす。
あなるの“ちょうどよさ”による安心感は、今作「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」を行き過ぎの半歩手前に留まらせる決め手になったと言えるのではないか。
なお重々承知だとは思うが、今作はアニメ版を未視聴の方はいっさいお呼びではない。
ついでに言うと、5人それぞれが過ごした1年や各々の関係の変化にカタルシスを感じたい方にとっては駄作中の駄作だと断言できる。
あくまでアニメ版での感動や思い出を巡る旅、超平和バスターズの変わらぬ友情を確認することが大前提の作品。それを承知した上で視聴しないと思いっきり肩透かしを食うので要注意である。
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