ユーリ阿久井政悟がダラキアンを圧倒して初戴冠。準備、勝負どころの見極めに驚いた。こういうのを“チームの勝利”って呼ぶんじゃないの?【結果・感想】

ユーリ阿久井政悟がダラキアンを圧倒して初戴冠。準備、勝負どころの見極めに驚いた。こういうのを“チームの勝利”って呼ぶんじゃないの?【結果・感想】

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2024年1月23日に大阪・エディオンアリーナ大阪で開催された「Prime Video Presents Live Boxing 6」。
第4試合のWBA世界フライ級タイトルマッチでは王者アルテム・ダラキアンに同級1位ユーリ阿久井政悟が挑戦、3-0(119-109、117-111、116-112)の判定勝利で初戴冠を果たしている。
 
与那覇勇気 vs 辰吉寿以輝、アルテム・ダラキアン vs. ユーリ阿久井政悟、20時頃から那須川天心 vs. ルイス・ロブレス、寺地拳四朗 vs. カルロス・カニサレス
 
世界初挑戦のユーリ阿久井が無敗の王者ダラキアンと対戦した今回。
僕はユーリ阿久井のことをよく知らず、数日前にようやく過去の試合を漁ったという体たらくである笑
 
また王者アルテム・ダラキアンに関しては2018年2月のブライアン・ビロリア戦で観たのが初めて。それ以降はあまり注視していなかったためこちらも大急ぎで予習した次第である。
 
てか、ダラキアンはフライ級時代の井岡一翔と対戦する可能性があったんですよね。
 
ちょうど井岡がゴタゴタしていたせいで実現しなかったが、もし来日していたらどうなっていたかはめちゃくちゃ興味がある。
井岡が負けていたパターンも十分あったと思っております。
 
ユーリ阿久井政悟vs桑原拓、井上拓真vs石田匠。石田は残念だった。ユーリは勝ってよかった。メインと同じくらいのインパクト
 

ユーリ阿久井が勝つならKOだけど、ダラキアンの方が一枚上か? クリンチのうまさが際立つ

まず試合の展望としては、
・ユーリ阿久井が勝つならKO
・ダラキアンが勝つなら判定
・両者を比べるとダラキアン有利なのでは?
・ユーリも健闘すると思うけど
 
拳四朗vsカニサレス、那須川天心vsロブレス、ユーリ阿久井vsダラキアン。カニサレスのアップセット、ロブレスのぶん回し、ユーリ阿久井の右に期待
 
ダラキアンは上体の柔らかさと縦横無尽に動き回るフットワークが持ち味のアウトボクサー。
 
中でもクリンチのうまさが際立っていて、遠間から「相手の動き出しを狙って1発当てる→サッと組み付いて動きを封じる」繰り返しが得意。
決してパンチが軽いわけではなく対戦相手が踏み込みを躊躇するシーンも散見される。
 
ユーリ阿久井の過去の映像を漁っても、ここまでクリンチを多用するタイプは見当たらない。
 
要するにユーリが勝つにはまずあのクリンチを何とかする必要がある。
今回はここが一番の見どころになるのではないか。
 
勝敗予想はダラキアンの判定勝ちだが、ユーリ阿久井のがんばりにも期待する。
 

ユーリ阿久井の周到さにオドレエタ。左を駆使してダラキアンに踏み込みを躊躇させる

実際の試合ではユーリ阿久井の周到さ、陣営の有能さにめちゃくちゃ驚かされた。
 
 
序盤はやや遠い間合いで対峙。
自分から攻めたいユーリは左腕を前に掲げつつ身体を伸ばしてボディストレートを打ち込んでいく。
 
この微妙に前に出した左腕がダラキアンの踏み込みを躊躇させ、低い姿勢で打ち込むボディはつっかえ棒とカウンター封じの役割を果たす。
 
・前に掲げた左腕
・低い姿勢で打ち込むボディストレート
 
このコンボで遠間から動き出しを狙うダラキアンの初手をあっさりとクリアしてしみせた。
 
那須川天心vsルイス・ロブレス。腰を落として被弾を嫌がらずに圧力をかける。過去2戦との違い。練習でやったことをそのまま出せる天心の器用さ
 

クリンチ封じでダラキアンを手詰まりに。ここは相当苦労すると思ってたけど…

中盤からは両者の距離がわずかに詰まり、ダラキアンがクリンチにいくシーンが増える。
僕がこの試合でもっとも注目していた部分である。
 
だが、ここでもユーリ阿久井の対策がダラキアンを上回る。
 
コーナーを背負わされたダラキアンは飛びつくようにクリンチにいく。
 
対するユーリは両腕をガードの位置でがっちりキープ。肘で強引にスペースをこじ開けわずかな隙間からボディを連打。さらに離れ際にフックのぶん回しで顔面を揺らす。
 
正直、これはかなり驚いた。
申し上げたようにユーリの過去の試合を漁ってもダラキアンほどクネクネしたタイプは見当たらない。中でもあのクリンチには相当手を焼くだろうと思っていた。
 
ところが実際にはそこをめちゃくちゃ対策してきたという。
 
 
序盤は左を駆使して初弾とカウンターを封じ、距離が近くなった中盤からはクリンチ対策。
この段階でダラキアンは自分の得意分野をほぼ攻略された印象。全局面でユーリ阿久井が圧倒したと言っていいのではないか。


これはどこかのタイミングで必殺の右が当たるんじゃねえか?
もしくはこのまま最後まで押し切っちゃえ。
 
松本圭佑vs前田稔輝。期待通りのおもしろい試合。松本圭佑の達人っぷりに驚いた。前田稔輝は右リードが通用するかなんだろうな
 

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後半からの出力アップでダラキアンをタジタジに。陣営の勝負どころの見極めがすげえ笑

後半に入るとさらに驚かされる(僕が)。
 
7Rから圧力を強めたユーリ阿久井は足を使うダラキアンを激しく追い回す。
 
すでに手詰まり状態のダラキアンは1発1発のパンチに力を込めて受けて立つが、それ以上の馬力で前に出るユーリに毎回打ち負けてしまう。
 
 
序盤~中盤で相手の攻め手を奪って手詰まりに。
その流れで疲れが出る後半に一段ギアを上げて仕留めにいく。
 
ここのメリハリ、判断力、作戦遂行力はマジですごい。陣営から指示が出たのだと思うが、ダラキアンを山ほど研究した上で準備してきたものがドンピシャリでハマったと想像する。
 
周到な準備に加えて勝負どころの見極め。
この日のユーリ陣営はガチで有能だった(と思う)。
 
メインイベントの寺地拳四朗が11、12Rに足を使ってポイントアウトしたことが「ナイス判断」「陣営のファインプレー」と言われているようだが、むしろ有能だったのはこちらである。
 
8~10Rにユーリがゴングと同時にリング中央まで小走りで向かう姿に僕はめちゃくちゃ感動しましたからね笑
 
 
前のめり過ぎる拳四朗。粘りと誤魔化しのカニサレス。長谷川穂積っぽさがさらに増した気が…。京口戦が一番バランスがよかった
 
いくら読んでも想定外の頻発にトレーナーがテンパりまくっている様子しか伝わってこない笑


僕としては早々にプランが破綻した拳四朗陣営よりもすべてが想定通りに進んだ(と思われる)ユーリ阿久井陣営の話を聞きたい笑
 

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11Rにこの日のベストラウンドを引っ張り出す。こういうのを“チームの勝利”と呼ぶんじゃないの?

そして迎えた11R。
 
これまで通り逃げ場を塞ぎながらダラキアンをコーナーに追い詰めるユーリ。
 
で、ある程度近づいたところで攻撃開始。
左で顔を跳ね上げ、サイドに回り込むダラキアンを素早い方向転換で追いかける。
 
一方のダラキアンは微妙に足取りがおかしい。
序盤は反応できていたユーリの左を被弾し、左右へ逃げても早々に追いつかれてしまう。
7R以降のギアチェンジの効果は明らか過ぎるくらい明らかである。
 
ラウンド終了のゴングと同時に見せたユーリのガッツポーズがすべてだった。
 
 
いや、ホントにすごいっすねユーリ阿久井政悟(と陣営)。
11Rにこの日のベストラウンドを引っ張り出すのだから有能としか言いようがない笑
 
一か八かの賭けでどうにか生き残った拳四朗とはひと味違う。こういうのを“チームの勝利”と呼ぶのだろうと。
 
井上尚弥vsルイス・ネリ、日本開催決定的? 井上は2度の北米進出失敗が響いてるんだろうな。JBCが音速で処分を解除。わかってるじゃねえかJBC笑
 
もちろん王座防衛を繰り返して研究もされる拳四朗と今回が初挑戦のユーリ阿久井では状況が異なることも理解している。
 
それを踏まえた上で文句なしの快勝だった。
 
 
ちなみにダラキアンのコンディションがどうだったのか、衰えがあったのかはよくわかりません。
 
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