アデサニヤvsブラホビッチ、ヌネスvsアンダーソン、ヤンvsスターリング。やっぱりUFCおもしれえな。今回は予習したからなおさら【UFC259感想】
2021年3月6日(日本時間7日)、米・ネバダ州ラスベガスで行われたUFC259。メインイベントで王者ヤン・ブラホビッチvs挑戦者イズラエル・アデサニヤのライトヘビー級タイトルマッチが行われ、3-0(49-46、49-45、49-45)でブラホビッチが勝利。
敗れたアデサニヤはミドル級との2階級同時制覇を逃すとともに、2012年の総合格闘技参戦以来初の敗戦となっている。
僕はこの日の興行を結構楽しみにしていて、当日もWOWOWでのO.A.を楽しんだ次第である。
なお、今回はそれなりに予習をしたおかげでいつも以上に試合観戦が楽しかったことをお伝えしておく。
普段、UFCを観る際は特に予備知識などは入れずに「おおー、がんばれー」とアホ面を晒しているだけなのだが、今回は少し違う。
どういう風の吹き回しか出場選手の戦績や過去の試合をあれこれと調べ、何となくの展望を思い浮かべつつ視聴した経緯がある。
と言うわけで表題の件。
この日行われたメイン3試合についての感想を、事前に僕が感じた印象を併せて言っていこうと思う。
ちなみに勝敗予想なるものはいっさいしていない。
「何となくこんな感じになるんじゃねえの?」というフワッとした展望をニワカなりに考えてみただけの話である。
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×ピョートル・ヤンvsアルジャメイン・スターリング○(4R4分29秒失格)
この試合はメイン3試合の中で僕がもっとも楽しみにしていた一戦。
王者ピョートル・ヤンは2020年7月のジョゼ・アルド戦でのファイトがあまりに淡々としていて、“任務を遂行する”という表現がピッタリだなと思った選手である。
落日のファーガソン。ゲイジーのカウンターに血まみれレフェリーストップ。今回がヌルマゴとのラストチャンスだったんだろうな
一方、挑戦者スターリングについてはこれまで一度も試合を観たことがなく。
大急ぎで過去の試合や戦績を漁ったところ、ほほう、これはなかなか……。
手足が長く身体能力も高い。
遠間からの打撃は多彩かつ強烈で一瞬の爆発力も凄まじい。
その上、前戦ではコーリー・サンドヘイゲンにチョークで1R一本勝ちするなど、タックルからのグランド能力も上々。
すべての面でハイレベルな実力者。いわゆる“オールラウンダー”という印象である。
だが、遠間での打撃技術に比べて近場での打ち合いには脆さが見られる上に、フルラウンドを通したペース配分も微妙。
2016年5月のブライアン・キャラウェイ戦では、1Rにグランドで決めきれずに粘られて以降はあっという間に失速。次々とテイクダウンを許し、ゼーハーゼーハーしながらもどうにか3Rをしのいだ末の判定負けという結果に。
基本性能の高さの割に試合運びにいまいちIQが感じられないというか。
グランドと打撃の配分がすこぶる悪く、恐らくメンタル的にもムラっ気の大きいタイプなのだろうと。
遠間からの打撃を中心に塩に徹すれば楽に勝てそうなところを、あえて前に出てゴンゴン攻めまくった挙句にガス欠を起こす。
そんな感じでこの試合も勝敗はわからない。スピード&パワー、純粋なスペックだけならスターリングの方が上だとは思うが、ピョートル・ヤンにも十分可能性はある。
序盤の猛攻に耐えて近場での打撃勝負に持ち込めれば。スターリングの失速につけ込むことができれば…といった流れを想像していた次第である。
で、実際の試合もほぼそのまんま。
1R開始直後からスターリングが遠間からの打撃でゴリゴリ押し込み、ヤンを追い詰める。
調子乗りの黒人選手がペースを掴んだときに発揮する強さが全部出たようなファイトで、ひょっとしたらこのまま終わるか? と思わせるほどの勢いを感じさせた。
ところが案の定、1R後半からスターリングがガクッと失速。徐々に中間距離でヤンのパンチに顔を跳ね上げられるシーンが増え、あっさりと試合の流れを手放してしまう。
それ以降も試合をコントロールしていたのは明らかにヤンの方だが、決して圧倒していたとまでは言えず。
ヤンにはスターリングを転がした後の攻め手がなく、どうしても攻勢はスタンドに限られる。しかもタックルによって金網に押し付けられたまま降着が続くなど、ポイント的にもどちらがリードしていたかは僕にはよくわからなかった。
結局5R残り30秒での反則の膝蹴りによってヤンが王座から陥落したわけだが、いや〜、どうなんだこれは。
初戴冠を果たしたとは言え、今回の試合でもわかるようにスターリングの攻略法はめちゃくちゃはっきりしている。
開始直後の猛攻をしのいでスターリングをバテさせ、中間距離から近場の差し合いで削る。
序盤のハイペースに耐えさえすれば、その後に必ず逆転のチャンスが巡ってくる。
スターリングとしては、ここから劇的な成長を遂げない限り短命王座に終わりそうな気がするのだが、どうだろうか。
しかもすでにMMA23戦のキャリアを持つ31歳。大きな伸び代が残っているようには思えないのが……。
能力自体は間違いなく高いのでもったいないなぁと。
それこそイスラエル・アデサニヤのようなカウンター重視の塩ファイターに傾倒すれば? という気もするが、軽量級の選手がそれをやってしまうと冷遇される恐れもある? のかな?
○アマンダ・ヌネスvsミーガン・アンダーソン×(1R2分3秒一本)
お疲れアンダーソン。
君は勇敢だった。
そしてアマンダ・ヌネス姐さんは完全に強さが極まっておりますね。
UFC女子フェザー級に存在意義を見出せなくなるほどに。
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×イズラエル・アデサニヤvsヤン・ブラホビッチ○(判定3-0 ※49-46、49-45、49-45)
いよいよメイン、現ミドル級王者イスラエル・アデサニヤが2階級制覇をかけてライトヘビー級王者ヤン・ブラホビッチに挑んだ一戦である。
結果は3-0の判定でブラホビッチが勝利し、初防衛を飾ったわけだが……。
率直な感想としては、やはり階級差は大きかったなぁと。
MMAにおける階級はフェザー級とライト級で世界が一段変わるというのは聞いたことがあるが、それと同じことがミドル級とライトヘビー級でも起きている印象。
ミドル級ではピンチらしいピンチすらなかったアデサニヤだが、やはりライトヘビー級の壁は厚かったということか。
もちろんブラホビッチのようにグランド能力の高いタイプにアデサニヤがこれまで遭遇したことがなかったというのもあるとは思う。
僕自身はどちらが勝つかはわからないが、何となくアデサニヤが有利じゃないの?
ブラホビッチに勝ち筋があるとすればカーフ(ロー)キックに耐えながらテイクダウンのワンチャンにかけるとか、そんな感じかなぁ。
だけど、2019年2月のチアゴ・サントス戦でそれをやろうとして豪快にぶっ倒されてるんだよなコイツ。
などと思っていたところ……。
3R後半以降のブラホビッチは見事にそれを体現していたという。
序盤からアデサニヤの蹴りをバシバシもらっていたものの、階級差もあってかブラホビッチはあまり効いたそぶりを見せず。
アデサニヤに前手で侵入を阻まれてもいたが、決してカウンターにビビっていたわけではない。
逆にアデサニヤはこれまでのようなスウェー→カウンターの得意パターンになかなか入らせてもらえない。
相手の圧力と体格が一段上がったせいで上体反らしだけでは手に負えず、バックステップの動作を必要とする分、常にリターンに遅れが生じてしまう。
で、その瞬間にブラホビッチにより深く踏み込まれ、今までは避けていたはずのジャブを被弾し、脇に腕を差されて金網に押し付けられてしまう。
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正直に申し上げると、僕はここまでのポイント差がついたことに少々驚いている。
かなり微妙ではあるが、わずかにアデサニヤ有利かなぁ。4、5Rは間違いなくブラホビッチだけど、1〜3Rのどこかでブラホビッチが取っていれば…といった印象だったのだが、結果は3-0(49-46、49-45、49-45)の大差判定でブラホビッチ勝利。
アデサニヤのローやカウンターが思った以上に評価されず、逆にブラホビッチの打撃や圧力は効果的だと判断されたわけか。
改めてMMAは難しいと思わされると同時に、階級差の影響も含めて勝負論のある試合だった。個人的には非常に楽しい25分間だったなぁと。
UFC260にはついにヴォルカノフスキーが登場するぞ
そして2021年3月27日(日本時間28日)に米・ネバダ州で予定されているUFC260には、僕が歴代フェザー級王者の中でも屈指の実力者だと思っているアレクサンダー・ヴォルカノフスキーが登場する。
ラグビーをバックボーンとし、肩周りのゴツさと馬力が持ち味のヴォルカノさん。身長168cmの豆タンク体型ながらも182cmという長リーチの持ち主でもある。
以前にも申し上げたが、この選手であればフェザー級時代のコナー・マクレガーともいい勝負をできたのではないかと密かに思っている。
ボクシングの日本ランキングが思った以上にスカスカで驚いた話。格闘技に向いてる? あの競技から引っ張ってこられないんかね
顔面偏差値やファイトスタイルのせいか話題自体が少ないものの、割と過小評価されている選手というヤツ。
あ、一応言っておくと、僕がフェザー級で気に入っているのはマックス・ホロウェイでございますww