マクレガーvsポイエー、チャンドラーvsダン・フッカー振り返り。マクレガーの負け方はストライカー全盛時代の終焉みたいな試合だったな【UFC257感想】

マクレガーvsポイエー、チャンドラーvsダン・フッカー振り返り。マクレガーの負け方はストライカー全盛時代の終焉みたいな試合だったな【UFC257感想】

2020年1月23日(日本時間24日)、UAEで行われたUFC257。メインイベントに登場したコナー・マクレガーが元同級暫定王者ダスティン・ポイエーと対戦し、2R2分32秒TKOでポイエーが勝利。2014年9月以来の再戦でリベンジを果たした一戦である。
 
 
これまで3度の引退を表明し、そのつど撤回してオクタゴンに戻ってきたマクレガー。
対戦相手のダスティン・ポイエーは2014年9月に一度下した相手で、戦線の予想ではマクレガー有利と言われていたが……。
 
試合は開始直後から積極的に前に出て腕を振るマクレガーに対し、ポイエーはカウンターとカーフキックで迎撃。だが、スタンドでの打撃に勝るマクレガーが得意の左ストレートをヒットするなど優位を保ったまま1Rを終える。
 
2Rに入っても依然としてマクレガーの攻勢が続くものの、要所でヒットするポイエーのカーフキックが徐々にマクレガーの機動力を奪う。
 
そして、2分過ぎに金網際でポイエーが放ったカーフキックでマクレガーがガクッと腰を落とすと、それを見たポイエーが一気にペースアップ。マクレガーを金網に押し付けて連打を浴びせ、そのままパウンドに持ち込みレフェリーストップ。約6年半ぶりの再戦でリベンジを果たした。


なお、セミファイナルでは元Bellator世界ライト級王者マイケル・チャンドラーがダン・フッカーと対戦し、1R2分30秒TKOで勝利。鮮烈なUFCデビュー戦を飾っている。


 

○マイケル・チャンドラーvsダン・フッカー×(1R2分30秒TKO)

まずはセミファイナルのチャンドラーvsフッカーについて。
 
マイケル・チャンドラーは2019年末のベラトールJAPANで現地観戦したのだが、その際に思ったのが「王者の風格すげえ」
 
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入場時からめちゃくちゃ自然体で、なおかつ全身から発する大物感といったら……。
試合も強豪のシドニー・アウトローをじっくり攻めた上で、最後は得意のパンチで鮮やかなKO勝利。
試合後のインタビューでの落ち着きっぷりを含め、他の選手とは一段違う風格を感じたことをよく覚えている。
 
僕自身、ベラトールJAPANでこの選手の存在を初めて知ったのだが、「マジですげえ何だコイツ」と。
同大会で来日していたマイケル・“ヴェノム”・ペイジのカッコよさとは一味違う、王道中の王道という雰囲気を持った選手。
 
後日この選手が“ミスター・ベラトール”と呼ばれていることを知り、すべてに合点がいった次第である。
 
 
で、そのチャンドラーのUFCデビュー戦ということでめちゃくちゃ期待していたわけだが。
 
いや〜、素晴らしかったですね。
身長183cmのダン・フッカーを相手にグイグイプレッシャーをかけ、金網際に追い詰めて左フック一閃。上述のアウトロー戦同様、見事なKO勝利でUFCデビュー戦をクリアしてみせた。
 
途中フッカーのカーフキックでバランスを崩すシーンも見られたものの、明確に効かされる前に仕留めたのはさすがだったなと。
 
次戦はコナー・マクレガーorトニー・ファーガソンあたりとのサバイバルマッチとなるのだと思うが、ぜひともこの調子で勝ち進んでもらいたい。
 

×コナー・マクレガーvsダスティン・ポイエー○(2R2分32秒TKO)

そしてメインのマクレガーvsポイエー戦について。
 
この試合は僕にはまったく展開が予想できなかったのだが、どうやら戦前はマクレガー有利というのが多くの識者の見解だったとか。
 
ポイエーが勝つにはスタンドでマクレガーの打撃をしのぐ必要があり、特に1、2Rは要注意。逆にそこを耐えて後半に持ち込めれば、ポイエーのグランド技術がマクレガーを抑え込む可能性も生まれると。
 
なので、僕もそんなイメージで観戦していたところ……。
 
おいおい。
マクレガー負けたぞww
 
しかも2RTKOって。
一番あり得ないと思っていたパターンでの決着にかなり驚かされた。
 
 
ただ、これは完全に後出しジャンケンなのだが、開始直後から積極的に前に出るマクレガーを観て「あ、マクレガー負けるかも知れん」と思ったことをお伝えしておく。
 
僕の中でのマクレガーという選手は本質的にはカウンター使い。
相手に先に攻めさせ、そこにカウンターを合わせるのがめちゃくちゃ上手い反面、今回のように自分から距離を詰めて腕を振るというのはあまり得意ではない印象。
 
約1年ぶりの試合だからか、グランドが得意なポイエー相手だったからなのかは不明だが、とにかくあの立ち上がりは普段のマクレガーとは違うような気がした。
 
落日のファーガソン。ゲイジーのカウンターに血まみれレフェリーストップ。今回がヌルマゴとのラストチャンスだったんだろうな
 
だが、そんな僕の懸念とは裏腹に持ち前の馬力でポイエーを押し込みパンチをヒットしていくマクレガー。
2Rに入ってもマクレガー優位の状況は変わらず、「ああ、これは普通に勝ちそうだな」と思っていると……。
 
2分辺りでこの日何発目かのカーフキックにより、マクレガーがガクッと膝を落とす。
それを見たポイエーが一気にペースアップし、スタンドでのパンチでマクレガーを金網に追い詰める。
さらにダウンしたマクレガーにパウンドを浴びせてレフェリーストップ。あっという間の逆転劇で6年半前のリベンジを果たしてしまった。
 
おお、なるほど。
自ら前に出て腕を振るシーンを観て「おや?」と思ったが、それ以上にカーフキックが効いていたわけか。
確かにガンガン攻めながらもカーフキックをまともにもらっていたし、要所でのカウンターも当たっていた。
 
「最近のMMAはカーフキックを先に効かせた方が勝つゲームになっている」という話はちょいちょい耳にしていたが、今回もそのパターンにモロにハマってしまったわけね。
 

ストライカー全盛時代の終焉を感じさせる試合。マクレガーのファイトスタイルがMMAのトレンドに合わなくなってきている?

表題の通りなのだが、今回のマクレガーvsポイエー戦はストライカー全盛時代の終焉を感じさせる試合だったように思う。
 
2017年のフロイド・メイウェザー戦以降、ヌルマゴにグランドで完封され、ウェルター級でドナルド・セラーニを秒殺したものの、ポイエーのカーフキックに沈んだコナー・マクレガー。
言葉は悪いが、メイウェザーとのボクシングマッチ以降は終わりかけのストライカーを打撃勝負で圧倒しただけである。
 
一方のポイエーは2017年3試合、2018年2試合、2019年2試合、2020年1試合と常に最前線での戦いに身を置いている。対戦相手もジャスティン・ゲイジーやエディ・アルバレス、マックス・ホロウェイ、ハビブ・ヌルマゴメドフと強豪ばかり。
 
当然トレンドの移り変わりも敏感に感じ取っているはずで、この3年で2試合しかこなしていないマクレガーとは情報の鮮度に雲泥の差があったのではないか。
 
 
もちろん両者のコンディションという要素もあるとは思うが、それ以上にマクレガーのファイトスタイルが最先端のMMAに合わなくなってきている方が大きいのかなと。
 

スタンドでの打撃が進化し、マクレガーや朝倉兄弟が台頭した

MMA黎明期はグラップラーのノゲイラ、ストライカーのミルコ、トータルファイターのヒョードルというそれぞれ特徴の違う3人が頂点に君臨していた。
 
で、最終的に生き残ったのがトータルファイターのヒョードルで、それが近代MMAの土台となったのだろうと。
 
 
それ以降、MMAは打投極を高次元で極めた選手たちがしのぎを削る舞台となり、加速度的に競技化が進む。
 
そして、その中で特に進化を果たしたのがスタンドでの打撃。
タックルは一回一回の体力消費が激しい割にリスクが大きく、トータルで考えて燃費がよくない。
わざわざ危険を犯してタックルに入るよりもぶん殴って倒した方が早いだろうということで、スタンドでの打撃が得意な選手が一気に台頭する。
 
その代表格と言えるのがアンデウソン・シウバやT.J.ディラショー、コナー・マクレガー。日本で言えば朝倉兄弟など。
 
K-1出身のマーク・ハントがUFCでそこそこやれたのも、MMA転向がストライカー全盛時代と重なったのが大きかったのだろうと。
 
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カーフキックの登場によりガチガチに打ち合うストライカーのスタイルに限界が…。回り回って原点回帰

ところがわずか数発で下半身をぶっ壊すカーフキックの登場により、中間距離でガチガチに打ち合うスタイルに限界がくる。
 
マクレガーや朝倉海のように重心を落として構えるタイプを攻略するのにカーフキックはめちゃくちゃ効果的。
さらにマクレガーも朝倉も打撃偏重でカットをややおろそかにする面があり、そのせいで早々に足を効かされてまともに動けなくなってしまった。
 
上述のマイケル・チャンドラーも効かされる前にぶっ倒したからよかったものの、あと数発もらっていたら勝敗はどうなっていたかわからない。
 
 
恐らく“ストライカー系はローから崩す”というのはMMAの戦術における基本中の基本。
なおかつカーフキックは昨日今日いきなり出てきた技術ではなく、堀口恭司の言うようにカットの方法もそれなりに出回っているはず。
 
だが、MMAのスタイルがあまりにストライカー寄りになったせいで、回り回って原点回帰したというのが今の状況なのだろうと。
 

技術体系のサイクル、トレンドの移り変わりについていけるかどうかがトップの条件。今回はその大きな節目の一戦だった

MMAの高度な競技化により、立ち技のみに特化した選手が立ち入る余地はなくなり、スタンド技術の向上によって今度はグラップラー系の淘汰が起きた。
そして今、カーフキックの実用化が進んだことでゴリゴリのストライカーに居場所がなくなりつつある。
 
何となくだが、今後は遠間からのタックル技術が見直され、レスリング力の高いグラップラーが台頭する流れになるのかな? という気がしないでもない。
 
てか、ヌルマゴを筆頭にウェルター級のカマル・ウスマン、上り調子のチャールズ・オリヴェイラ、ベラトールのAJ・マッキーなどを見ると、最前線ではすでにそっちが主流と言える? のかな?
 
 
すべてのスポーツに言えることだが、こういう技術体系のサイクル、トレンドの移り変わりは常に起きるし、それについていけるかどうかがトップに君臨し続ける条件でもある。
 
一時代の終わりと言ったら大げさだが、今回は色々な意味で大きな節目を感じさせる試合だった気がする。
 
もっと言うと、間合いの外側からなぎ払うようにカーフキックを蹴り込んだ堀口恭司はやっぱりすごい。
アレをされるとカウンター狙いのストライカーは完全にお手上げで、もしかしたら堀口はあの試合でMMAをさらにもう一歩先へ進めたのかもしれない。
違うかもしれない。
 
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なお、これらは僕の勝手な意見なので、反対意見も全然OKである。
 

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