ジョシュ・テイラーのクズ度がホセ・ラミレスを振り切る。ラミレスはナイスガイ過ぎるんだよなたぶん。勝負どころでの性格の悪さは大事【結果・感想】

ジョシュ・テイラーのクズ度がホセ・ラミレスを振り切る。ラミレスはナイスガイ過ぎるんだよなたぶん。勝負どころでの性格の悪さは大事【結果・感想】

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2021年5月22日(日本時間23日)、米・ネバダ州で行われた世界S・ライト級4団体統一戦。IBF/WBAスーパー同級王者ジョシュ・テイラーとWBC/WBO同級王者ホセ・カルロス・ラミレスの一戦は、3-0(114-112、114-112、114-112)の判定でテイラーが勝利。見事スコットランド人初の4団体統一に成功した。
 
 
細かい右リードの連打で相手を牽制するテイラーに対し、いつも通り上体を振りながら中に入るタイミングをうかがうラミレス。
序盤から主導権が激しく行き来する展開に緊張感が高まる。
 
ガードの上から右リードを当てて鋭い左につなぎ、ラミレスの突進を寸断するテイラーだが、ラミレスもいきなり右を打ち込んだり左でテイラーの右をたたき落したりと、その都度多彩なバリエーションを見せる。
 
一進一退の攻防が続く中盤6R。
テイラーにコーナーを背負わせたラミレスが大きく踏み込み右を打ち込むが、その右を紙一重でかわしたテイラーが左フックをカウンターでヒット。このパンチを顎にもらったラミレスがテイラーに抱きつくようにダウンを喫する。
 
次の7Rにもダウンを奪われたラミレスは終盤怒涛の追い上げを見せるも届かず。
ジャッジ3人全員が114-112をつける大接戦の末、ジョシュ・テイラーの勝利が決定した。
 
2021年、僕のベストバウトTOP10。コロナの影響で注目試合が中止になったり観戦熱が減退もしたけれど、私は元気です()第10〜6位まで発表
 

ジョシュ・テイラーvsホセ・カルロス・ラミレス戦おもしろかった! テイラーが階級最強で異論なしでしょ

2020年10月にワシル・ロマチェンコに勝利したテオフィモ・ロペスに続き、歴代6人目の4団体統一王座戦に挑んだジョシュ・テイラーとホセ・カルロス・ラミレス。
 
テイラーが現在17勝13KO、ラミレスが現在26勝17KOと両者ともにここまで負けなし。しかも激戦区のS・ライト級の王座統一戦とあって、僕自身もかなり楽しみにしていたのだが……。
 
ジョシュ・テイラーvsホセ・カルロス・ラミレスの統一戦は絶対に実現しろよな。グダグダのヘビー級とは違うところを見せろやw
 
結果は期待通りの大激戦の末にジョシュ・テイラーの判定勝利。
しかも2度のダウンがなければorどこかのラウンドがラミレスに流れていれば引き分けというスレスレの試合である。
 
この日は例によってリアルタイムでは視聴できずに結果を知った上で後追いで観たのだが、それを差し引いてもおもしろい試合だった。
 
ジョシュ・テイラーはWBSS優勝の実績通りのパフォーマンスだったし、ホセ・ラミレスもさすがは2団体統一王者という試合運び。
勝者であるジョシュ・テイラーを“階級最強”と呼ぶことに異論はないのではないか。
 

能力的にはラミレスが上回っていたような…。テイラーもうまかったけど前半はラミレスペースだった

申し上げたようにこの試合は実力の拮抗する両者が期待通りのパフォーマンスを発揮した好試合だった。
というより、能力自体はホセ・ラミレスの方がやや上回っていたのでは? とすら思っている。
 
それこそ2度のダウンがなければドローというのも納得だし、ラミレスがダウンのダメージを引きずっていなければ8Rはどちらに転んでいたかはわからない。
流れ的にも7Rのダウンが大きな分岐点だった気がする。
 
 
ジャッジのポイントを見てもわかるように、前半5Rまではどちらかと言えばラミレスのペース。
 
右を小刻みに動かして突進を阻むテイラーに対し、ラミレスは上体を振りながら中に入る機会をうかがう。
 
1R目こそテイラーの左を警戒してうまく距離を潰せなかったラミレスだが、2R以降は左でテイラーの右を叩き落としたり、いきなり右ストレートを伸ばしたりと接近戦に持ち込むまでのバリエーションの多さを発揮。テイラーのバックステップよりも先に顔面を跳ね上げていく。
 
テイラーも右リードと左フックで迎撃しつつ、距離が詰まれば頭を下げてサイドに回り込むなど随所に対応力を見せるが、ラミレスのプレスを完全には抑えきれない。
 
ラウンド前半はテイラーがうまく捌くが、中盤から後半にかけてラミレスに攻略される。激しいペース争いが続く中、わずかにラミレスがテイラーの対応力を上回っていた印象である。
 
ビクトル・ポストルvsアントワン・ラッセル…。何かもう、アレだ。ポストルがんがれ。ラッセル三男のためのマッチメークだと思うけど、それでもアレだ
 

テイラーの性格の悪さ、クズ度の高さが勝利をたぐり寄せた。7Rのダウンが勝負の分かれ目だったかな

そして、試合の勝敗を分けたのはジョシュ・テイラーのクズ度の高さだと思う。
 
実力伯仲同士の大接戦の中、そのつどラミレスはわずかにテイラーを上回る。
 
遠い位置〜中間距離では右リード、左フックが機能するテイラーだが、そこから距離を詰められると一気に苦しくなる。ラミレスはレジス・プログレイスほどガードが低くない上に圧力はイバン・バランチェク以上。
接近戦でも高い実力を発揮するジョシュ・テイラーだが、今回のホセ・ラミレスのプレスは若干持て余し気味だった。
 
だが、それでもペースを渡さなかったのは狡猾な試合運びというか、クズ度の高さ、性格の悪さが大きかった(気がする)。
 
中間距離での差し合いの最中にわざと足を踏んだり、接近戦で肩を顔面にぶつけたり肘で小突いたり。ラミレスが背中を向けた瞬間に後ろから躊躇なく追撃するなど、流れの中とは言えなかなかのクズっぷり……。
 
レフェリーから再三注意を受けていたが、それでもまったく臆することなく突き進む。
 
さらに近距離で形成が悪いと見れば、さっさと諦めてクリンチしたり。接近戦でのラミレスの強さを認める潔さも持ち合わせる。
 
 
カリフォルニア州出身のラミレスに対し、テイラーは英国から乗り込んだ側。
持ち前の性格の悪さに加え、主役を凌駕するためにヒールに徹するメンタル、アウェイでの立場を理解した振る舞いは文句なしに尊敬に値する。
 
特に勝負を分けた7Rのダウンなどは秀逸。
リング中央、距離が詰まった局面で右肩でラミレスの顔を小突き、ラミレスが「またかよ」という表情をした瞬間に左フック? アッパー? をドカン。
 
レフェリーへのアピールか、テイラーのラフファイトに対する憤りかは不明だが、どちらにしろ集中力がフッと切れた瞬間の被弾は効果抜群。結局ラミレスはあのダウンのダメージを9Rまで引きずってしまった。
 
繰り返しになるが、7Rのダウンのダメージがなければ8Rはどちらに流れていたかはわからない。能力的にはラミレスがやや上回っていたことを考えると、まさにあのダウンが勝負を分けたと言っていい。
 
拳四朗vs久田哲也感想。久田には厳しい試合だったな。拳四朗攻略には待っちゃダメなんだろう。そして改めて具志堅用高の偉大さ
 
てか、テイラーのクズ度の高さに思わず笑ってしまうんですよね。
低くダッキングした際にラミレスの腕が頭の上にあったからといって、頭を下げたまましばらく待機するとかww
「いやお前、絶対わざとやってるだろ」と。
 
レフェリーに「頭を抑えるな」と注意されてシュンとなるラミレスがちょっとだけかわいかった笑
 

“計算された性格クズ”のジョシュ・テイラー。相手を蹂躙することに喜びを覚えるのではなく「勝つための最善手」としてのラフファイト

恐らくだが、ジョシュ・テイラーは“計算された性格クズ”なのだと思う。
 
ウェルター級王者のテレンス・クロフォードなどは相手を蹂躙すること自体に喜びを感じるタイプに見えるが、それとはちょっと別物。
 
むしろバーナード・ホプキンスやアムナット・ルエンロエンのように「勝つための最善手」の中にラフファイトが含まれているというか。
“速く走る、高く跳ぶ、遠くへ飛ばす”等の純粋な身体能力で劣っていても、それを凌駕するやり方はいくらでも存在する。その一つとして「相手の嫌がることを迷いなく実行する」ことが重要な要素であると。
 
自分の拳が血まみれになる様子を見て狂気の笑いを浮かべてそうなクロフォードとは完全に別人種(そんなことをするとは言ってない)である。
 
 
もちろん2019年11月の井上尚弥vsノニト・ドネア戦のように、両者が自分の持ち味を目いっぱい出し合った末に大試合が生まれるケースは間違いなくある。
 
だが今回のジョシュ・テイラーvsホセ・カルロス・ラミレス戦はそっち側ではない。
能力でやや遅れをとったテイラーがダーティーテクを駆使してラミレスの圧力をしのぎ切った試合。要するにあの2ポイント差は両者の戦術の幅の差と言っても過言ではない気がする。
 
以前にもちょろっと申し上げたが、相手の嫌がることをするのって楽しいだろ? というヤツ。
 
カルロス・ゴンゴラめちゃくちゃいいw アムナットとかホプキンス的な巧さ。相手の嫌がることをやるって楽しいだろ? 不変のテクニシャンがピアーソンをKO
 
実際、ドネアのフィジカルがあれば井上尚弥相手でも“捌く”戦い方もできたんじゃないの? とも思うわけで。
 
まあ、ヒラヒラと捌ききられるドネアの試合は何度か観たことがあるが、相手を捌くドネアなどこれまで観た試しがないという噂もあるけどね。
 
 
逆にホセ・ラミレスにはもう少し狡猾さがあれば。
ファイトスタイルや試合中の仕草などから相当なナイスガイなのだと想像するが、それでもやや実直すぎた感は強い。
 
同じ突進型の選手としてはマルコス・マイダナやショーン・ポーターが思いつくが、彼らのダーティーさ、躊躇のなさがこの選手に備わっていれば。
 
勝負どころでフッと気を抜くなどといったやらかしもなかったのかもしれない。
 
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