ティム・チュークッソ強え…。井上岳志にほぼフルマークの判定勝利。厳しい試合になるとは思ったけど、すでに世界王者よりも強そう【結果・感想】

ティム・チュークッソ強え…。井上岳志にほぼフルマークの判定勝利。厳しい試合になるとは思ったけど、すでに世界王者よりも強そう【結果・感想】

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2021年11月17日、オーストラリア・シドニーで行われたWBO世界S・ウェルター級1位ティム・チューvs同級6位井上岳志の一戦は、3-0(120-107、120-107、119-108)の判定でチューが勝利。自身の保持するゴールド王座の防衛に成功するとともに井上のアジア・パシフィック王座を手に入れた試合である。
 
 
試合は序盤からチューの一方的なペースが続く。
 
開始直後からチューの圧力に押されるシーンが目立ち、井上はなかなか自分の得意な距離に入れない。
どうにか接近戦に持ち込んでも左の1発で突き放され、顔面に重い右を被弾して動きを止められてしまう。
 
さらに5R以降、ペースを上げたチューの猛攻に防戦一方になるなど、反撃の糸口をつかめないまま試合は終盤へ。
最終12Rにはフラッシュ気味のダウンを奪われそのまま終了のゴング。
 
ジャッジ2人がフルマークをつける圧勝で防衛を果たしたチューが戦績を20戦全勝15KOとした。
 
ティム・チューの馬力と経験値の少なさ? テレル・ガウシャの懐の深さとカウンターにモタついたけど圧力で圧倒。こういう相手への対策は日本人選手も必須なんだろう
 

ティム・チューはすでに世界王者クラスの力がありそう。強いとは思っていたけど想像以上に強かった

2020年11月のワクチュ・ナァツ戦以来、約1年ぶりのリングとなった井上岳志。
 
対戦相手のティム・チューは元S・ライト級統一王者コンスタンチン・チューの息子で、現在の戦績が19戦全勝15KOの強豪。この試合を“世界前哨戦”と位置付け、近い将来WBO王者ブライアン・カスターニョに挑戦したい意向を持つ。
 
日本の井上岳志にとっては2019年1月のハイメ・ムンギア戦以来の大チャンス。不利予想を覆す大金星が期待されたわけだが……。
 
 
いや、強かったっすねティム・チュー。
かなり厳しい試合になるとは思っていたが、ここまで一方的になるとは……。
 
表題の通りなのだが、ティム・チューは現時点でも世界王者クラスの力がありそう。3団体統一王者のジャーメル・チャーロになら普通に勝てるのではないか。
 
もっと言うと、今のままミドル級に進出してもそこそこやれてしまう気がする。それこそ井上を下したハイメ・ムンギアにも勝ちそうな……。


強いのは当然だが、想像以上に強かったというのが率直な感想である。
 

チューがデケえ。ムンギア相手にも躊躇なく前に出た井上岳志がまともに近づくことすらできないとは

開始直後にリング上で対峙した両者を観て思ったのが、「チューがデケえ」。
 
計量時やフェイスオフで並んだ写真、映像では「あれ? そこまで体格差はないな」「むしろ井上岳志のがデカいくらいじゃないの?」と思ったし、改めて確認しても両者の体格はほぼ同じ。


だが、実際にリングで向かい合うと……。
チューの方が一回り大柄に感じるというか、背中から漂うオーラのようなものが身体を大きく見せている気がした。
 
 
そして、それを一番感じていたのは恐らくリング上の井上岳志本人。
 
開始のゴングと同時にガードを高く上げ、中に入るタイミングを測る。
ここまではいつも通りなのだが、今回はそこから前に出るのではなくロープ伝いにリングを旋回して距離を取る。
 
あれ? 自分から出ないの? と思っていると、左リードを出しながら距離を詰めるもすぐに離れてしまう。
 
その後もなかなか仕掛けることができず、ガードの上からチューの左をもらって後退させられる流れが続く。
 
うん、ヤバいな。
これはヤバい。
 
ハイメ・ムンギア戦では開始直後からズンズン前に出て腕を振っていたのが、この試合ではまったく仕掛けられずにいる。
 
直接向かい合った瞬間に圧力を感じたか、もしくはファーストコンタクトで警戒心を高めたか。
どちらにしろ開始30秒弱で「チュー、強ええわ」「シャレになっとらん」と思ったことをお伝えしておく。
 
テオフィモ・ロペス陥落。カンボソスの研究と覚悟に無策のロペス。あれだけ顔面丸出しで攻めればw スペックの高さは文句なしだから復活を期待するよ
 

井上岳志が勝機を見出すとすれば接近戦…だけど、正面衝突で当たり負けしないことが大前提

井上岳志と言う選手はS・ウェルター級時代のハイメ・ムンギアにも当たり負けせず押し込んでみせたほどのフィジカル強者。国内では屈指のパワーファイターである。
 
前回も申し上げたように井上が勝機を見出すとすれば接近戦。
 
井上岳志vsティム・チュー11月に!! こうなったらチューをぶちのめして「井上違いだよhahaha」とかほざいてるヤツらを全員黙らせちゃえよ
 
・チューに距離を取られた場合、井上が追いつくのは難しい
・ただ、地元の大歓声の中でアウトボクシングに徹するとは思えない
・チューが序盤から打ち合いに来てくれれば井上にもチャンスはある
 
井上が正面衝突でチューを上回ることが大前提だが、とにかく体力のあるうちに近場で右クロスを当てることさえできれば。何かを起こすことも十分考えらえる? かも?
 
試合前の展望としてはだいたいそんな感じである。
 
 
ところがいざ試合がスタートすると、井上岳志はまったくチューを押し込むことができず。それどころか、遠間からの圧力だけで後退を余儀なくされてしまう。
 
 
マジな話、井上岳志が正面衝突でこれだけ圧倒されるというのはちょっと予想外だった。
この部分ならかろうじて井上に分があると思っていただけに、序盤でそれが崩されたことには結構驚かされた。と同時に「やっぱりコイツすげえなぁ」と、ティム・チューの強さを再認識させられた次第である。
 

いつも通り淡々と作業をこなすティム・チュー。大歓声に背中を押されて打ち合いにくれば井上にもチャンスがあると踏んでいたが…

ナチュラルな構えでジリジリ距離を詰め、ガードの上からの左で身体を揺らしつつタイミングがあれば右ストレート。
井上が入ってくる瞬間をショートのアッパーで迎撃。距離が近くなればフック気味の左でなぎ払い、動きが止まったところに追撃の右。
 
無造作に近づいてワンツー。
相手が入ってくればショートのパンチで迎撃。
 
序盤のティム・チューがやっていたことは主にこれだけ。
 
踏み込みの瞬間に身体をかがめる井上の動きに合わせてショートアッパーをヒットしていたが、はっきりと研究の成果と呼べそうなのはこの部分のみ。
 
それ以外は完全にいつも通り。“淡々と”作業をこなしていたように思える。
 
 
一方の井上岳志にとっては本当に厳しい試合だった。
リング上で対峙したティム・チューの圧力は想像以上で、まともにぶつかっても歯が立たないことは開始直後にわかった。
 
意を決して中に入ろうとするも、踏み込みの瞬間を狙われてアッパーを被弾。自身の攻撃パターンをあっさり封じられてしまう。
 
また、どうにか近づいて自分の距離を作ってもチューの馬力が強すぎてそこに留まっていられない。無造作な左の1発でガードの上から身体を揺らされ、肘でのブロック、ボディで突き放される。
 
近場で回転力を上げるどころか、自分のターンを呼び込むことすらできず。さっさと遠間に戻されそのつどやり直しを強いられる。
 
 
上述の通り、僕は今回のチューは地元の大声援に押されて序盤から打ち合いを挑んでくると思って(希望して)いた。
チューが自分から出てくれば必然的に接近戦が発生するし、井上にもチャンスが巡ってくるだろうと。
 
だが、現実はまったくそうはならず。
むしろ自分の得意な中間距離をキープしながらじっくり相手を削る冷静な立ち上がり。
 
毎回万単位の会場でメインを張っている分、100%ホームの中でも普通に力を発揮できるメンタルを持ち合わせているということか。
 
WBOアジアパシフィック王座とOPBF王座、どちらがチャンスを得やすいの? WBOとWBCの歴代日本人王者数。WBO-APには価値がないって本当?
 

中盤に倒しにきたところが井上の唯一のチャンスだったかな。でも、真正面から圧力を受け止めるだけで精いっぱいだった

中盤5〜8Rあたりにチューがカロリー高く倒しにきたが、井上に唯一チャンスがあるとすればここだったかなと。
 
ティム・チューは凄まじいフィジカルを活かした迫力満点のワンツー、近場でのボディを得意とするが、左のガードが若干低い傾向が見られる。
前回のスティーブ・スパーク戦でも右のクロスをギリギリスウェイで避けるシーンが目につくなど、どこかの時点であの右が当たりそうな印象を受けた。
 
なので、近場での右クロスが得意な井上岳志なら何かが起こせるのでは? と思っていたわけだが。
 
 
まあ、キツかったですよね。
接近戦で右を当てるタイミングは何度かあったが、そもそもチューの押し込みに耐えるだけでギリギリだったのが……。
 
ハイメ・ムンギア戦ではムンギアをロープに押し付けたところから右サイドに回り込んだりといった余裕もあったが、今回はどうにもならない。
足を踏ん張って耐えるのに精一杯で、アングルを変えるなどのアクションを起こすまでに至らなかった印象。
 
それでもあの右クロスでチューをのけぞらせていたし、わずかながらも接近戦での可能性は見せた。劣勢の中でも諦めない姿は文句なしに素晴らしかったと思う。
 
尾川堅一vsアジンガ・フジレ。2021年ベストバウト(僕の中で)出たか? 全盛期の動き、3度のダウンを奪っての判定勝利にクッソ感動しました
 
終盤10R以降は圧力にも少し慣れてきたものの、残念ながらそこから反撃するスタミナはなく。得意の接近戦で踏ん張る力も残っておらず、再びペースを上げたチューの猛攻にひたすら耐える状況。
 
最後はKOされずに終了のゴングを聞いたこと自体に「あ〜、すごかったわ。よくやったわ」と思わされてしまった。
 

鼻息荒く世界王座を狙うティム・チュー。あまり執着がないのかと思ってたから安心したよ

ついでに言うと、ティム・チューがしっかりと世界タイトルマッチを見据えていることが知れてよかったというのもある。
 
僕の勝手な印象だが、オーストラリアのボクシングは独自の生態系というか、非常にオープンなマインドで選手を受け入れている気がしている。
 
2017年7月のジェフ・ホーンvsマニー・パッキャオ戦が5万人超の屋外会場で行われたことからも、中量級以上に関しては相当熱狂的なのだろうと。


中でも偉大な父親を持つティム・チューの人気は凄まじい。今回の試合も入場からクソ豪華な演出が施されるなど、その人気者っぷりを山ほど見せつけられた。
もはや万単位の会場で大歓声を浴びるのが当たり前まである。
 
なので、大急ぎで世界王者を目指さなくても今のまま地元のヒーローをやっているだけで一生食うのに困らないのではないか。
 
正直、世界タイトルマッチへの執着もあまり強くないとすら思っていた次第である。
 
 
だが、ブライアン・カスターニョ、ジャーメル・チャーロの名前をはっきりと出したことでそれが間違いだとわかった。
 
チャーロ弟とかいう強化版カシメロ。カスターニョと大激戦の末にドローで4団体統一ならず。でも、おもしろい試合だったね
 
特にカスターニョは前に出る勢いと両フックのぶん回しが持ち味の選手。近場での右に活路がありそう? なティム・チューとは恐らく噛み合う。
 
もちろんお互いに正面衝突で当たり負けしないことが大前提ですが。
 
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