クロフォードよ、お前がNo.1だ(1年8か月ぶり2回目)。スペンスを2Rでほぼ攻略、赤子扱いする。スペンスにとっては相性最悪だったかも?【結果・感想】
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2023年7月29日(日本時間30日)に米・ネバダ州で行われた世界ウェルター級4団体統一戦。WBO同級スーパー王者テレンス・クロフォードとWBA/WBC/IBF王者エロール・スペンスJr.が対戦し、9R2分32秒TKOでクロフォードが勝利。史上初の2階級での4団体統一に成功した試合である。
長い間対戦が求められ続けたものの、いわゆる“大人の事情”で実現しなかったウェルター級頂上決戦。
しびれを切らした両者が裏で連絡を取り合い根回しに奔走、何度目かの合意を経てようやく開催にこぎつけたわけだが。
下記の通り僕のお目当てはノニト・ドネアvsアレハンドロ・サンティアゴ戦。
ノニト・ドネアいよいよかもしれんな。サンティアゴはドネアの苦手なタイプだったけど、それ以上にドネアの動きの悪さが…。僕は旅に出ます()
井上尚弥に敗れたドネアが約1年2か月に迎えた復帰戦をめちゃくちゃ楽しみにしていた次第である。
ところが結果はまさかのドネア敗退という。
この事実を受け入れられず、メインのクロフォードvsスペンス戦への興味が一気に薄れてしまった。
ただ、一晩経って整理もついたので(笑)こちらも観てみるかと。
大きな注目を集めた試合の感想を言っていくことにする。
マドリモフのアップセットに期待する。でもクロフォードを攻略できますかね? クロフォードに勝つには前半3Rまでだと思うけど
クロフォード何だコイツ? 井上尚弥vsフルトン戦以上の衝撃。クロフォードvsケル・ブルック戦に匹敵する
試合の感想をひと言で表すと「何だコイツ?」。
クロフォード有利だとは思っていたが、まさかここまでスペンスが赤子扱いされるとは。
2016年12月からKO勝利を継続中のクロフォードだが、ウェルター級では破格のフィジカルを持つスペンスをKOするのは至難の業。逆に圧力でねじ伏せられるパティーンもあるのでは? と思っていた。
下記の通り僕のフワッとした予想はクロフォード:4、スペンス:3、交渉決裂:3くらい。
クロフォードvsスペンス戦正式決定? 僕はここからの決裂もあると思ってるよw 勝敗予想はクロフォード:4、スペンス:3、交渉決裂:3くらい
交渉決裂とスペンスの勝率が同程度というやる気ゼロの展望(笑)だが、試合はそこそこ拮抗すると予想していた。
いや、参ったね。
ドネアの敗戦にも参ったが、クロフォードの強さにも同じくらい参った。
どなたかもおっしゃっていたが、衝撃度的には先日の井上尚弥vsスティーブン・フルトン戦より上。相変わらずPFPランキングには興味がない(デビン・ヘイニーが不動の1位)が、歴代ウェルター級の中でもトップクラスと言えるのではないか。
ちなみにクロフォードの試合で一番ヤバいと思ったのは2020年11月のケル・ブルック戦。
クロフォードよ、お前がNo.1だ…。ケル・ブルックを4RTKOで沈める。見えない右キター♪───O(≧∇≦)O────♪
今回はそれに匹敵するほどの驚きである。
序盤はスペンスが優位に立つと思ったら2Rで攻略されちゃった。おいおい、無敗の3団体統一王者だぞw
僕はこの試合、序盤はスペンスが得意のワンツーを駆使して優位に立つと思っていた。
対するクロフォードは持ち前の学習能力を発揮して中盤からペースを取り返す(はず)。
なので、スペンスとしてはクロフォードが情報収集を終える前に勝負をかけることが重要。たとえば4Rくらいまでにしっかりと流れを作れれば……。
ところがクロフォードはわずか1Rでスペンスの動きを把握してしまった。
開始直後は正面から打ち合うことを避け、スペンスのジャブ、ワンツーをバックステップで回避しつつ遠い間合いをキープ。スペンスが距離を詰めてくれば無理に受けて立たずにクリンチで時間を稼ぐ。
だが、2Rに入るとジャブの打ち終わり、ワンツーの打ち終わりにカウンターを合わせていく。
1Rはスペンスが圧力をかけていたように見えたが、2Rには前手の差し合い、打ち終わりの対応であっさり上回ってみせた。
打ち終わりを狙われ、連打でロープを背負わされ、抜群のタイミングで右をもらってダウン。
無敗の3団体統一王者がもっとも得意とする中間距離で2R持たないという意味不明さである笑
エロール・スペンスがウガスを撃破で3団体統一。キラー・インスティンクト(笑)が違ったな。チャンスで自重したウガスと攻撃に振り切ることでピンチを脱したスペンス
3Rから接近戦に切り替えるスペンス。この判断はよかったよね。まあ、すぐに対応されるんだけど…
中間距離で上回られたスペンスは3Rから接近戦に切り替える。
クロフォードの対応力、強さを肌で感じたのだと思うが、この切り替えはなかなかよかった。
危険な中間距離(すでに危険地帯)に留まらず、さっさと距離を詰めてクロフォードを押し込む。
で、身体を寄せたままボディ、顔面に連打を浴びせる。
身体の強さを活かしたゴリ押しファイトでペースを引き寄せにかかる。
だが、クロフォードはこのフィジカル押しにもあっさり対応してしまう。
ラウンド後半には近場でショートのカウンターをヒット、スペンスの手が止まったところにジャブ、ワンツーで追撃。
4Rには歯が立たないと感じたスペンスが中間距離に退避せざるを得なくなるという。
得意の中間距離で圧倒され、近場でのフィジカル勝負も攻略された。
はっきり言ってこの時点でスペンスはほぼ手詰まり。このあとはクロフォードのフルボッコタイムが続くのみ……。
手詰まり状態からもう一度ギアを上げたスペンス。クロフォードの残虐ゲームを拒否するファイトは間違いではない(と思う)
と思っていたら、スペンスはここからもう一度ギアを上げる。
中間距離では勝負せずに無理やりクロフォードにロープを背負わせ、1発1発に力を込めて腕を振る。
正直、これはちょっと驚いた。
あそこまで全局面で上回られたらできることはほとんどない。ここから先はクロフォードの残虐ゲームと化すのが今までのパターンだったのだが……。
下手に延命するより体力、気力が残っているうちに勝負をかける方を選んだのだと思うが、この選択はかなりすごかった。
7Rのダウンはもう仕方ない。実質勝負ありのダウンとなったが、あの局面で何もしなければ残虐ゲームが続くだけ。にっちもさっちもいかない中で一か八かの1発にかけたのは決して間違いではない(と思う)。
ケル・ブルックのキャリアを振り返ってみた。クロフォードvsスペンス戦を受けてブルックの試合を漁る。ウェルター級最強(当時)が喫した3敗はすべて強豪
相性の悪さはあったと思うよ。クロフォード相手に試合の組み立てなどを考えていてはまったく追いつかない
繰り返しになるが、今回は本当にすごかった。
ドネアの敗北を受け入れられず(笑)、内容をよく知らずに観たのが逆によかったというか(結果は知ってた)。
あれこれ記事を読んでいたらここまでの衝撃はなかったかもしれない。
何となくだが、スペンスにとってクロフォードは相性最悪な相手だった気がする。
もともとサウスポーとの対戦経験が少ない(2015年9月のクリス・バン・ヘイデン戦以来)上に試合運びも徐々にペースを上げて終盤に嫌倒れさせるor総合的に上回るパターンが多い。
どちらかと言うとじっくり組み立てて後半の山場に備えるスタイルだが、クロフォード相手にそんなことをやっていては攻略のネタを与えるだけ。
自分が有利な要素を見つける前にどんどん引き離されてしまう。
それこそショーン・ポーターのような突貫ファイトやエギディウス・カバロウスカス、ユリオルキス・ガンボアのように序盤でビッグパンチをぶち当てる方がよっぽど勝ち筋がありそう。
要するにクロフォード相手に勝機を見出すなら「ジャブの差し合いでペースを~」「どっしり構えてプレスをかけて~」などと組み立てを考えている暇はない。自分の長所を全面に出して序盤に勝負をかけるのが最善手なのではないか(今のところ)。
クロフォードさすが。カバロウスカスを9RTKO。もっと無双してほしかったけど。マジでミドル級に上げるの?
てか、スペンスは再戦する気なの?
これだけ完膚なきまでにやられても闘志が衰えないのはすごいが、現実的にはかなり難しいと思う。
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