映画「西遊記 孫悟空vs白骨夫人」感想。中国エンタメ界の躍進を肌で感じる作品。フワッとしたテンションで観たら超大作でオドレエタ

映画「西遊記 孫悟空vs白骨夫人」感想。中国エンタメ界の躍進を肌で感じる作品。フワッとしたテンションで観たら超大作でオドレエタ

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映画「西遊記 孫悟空vs白骨夫人」を観た。
 
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「西遊記 孫悟空vs白骨夫人」(2016年)
 
経典を得るために天竺に向かう三蔵法師は、その道中、突然巨大な虎に襲われてしまう。
 
とっさに岩陰に隠れた三蔵が息をひそめていると、奥の方から彼を呼ぶ声が聞こえてくる。
ふり返った三蔵の視線の先には、巨大な岩に封じ込められた屈強な猿の姿が……。
 
彼の名前は孫悟空。
500年前に観音菩薩の手によって五行山に閉じ込められ、天竺に向かう三蔵の護衛をするよう命じられているとのこと。
 
そして、彼が言うにはここから出してくれれば虎を退治して助けてやるという。
 
半信半疑の三蔵は戸惑いながらも封印を解くと、自由の身になった孫悟空はあっという間に虎を退治し大喜びでその場を去ってしまう。
 
 
だが、その時。
観音菩薩より授かった金の輪が三蔵の手から飛び立ち、孫悟空の頭にがっちりとはまる。
 
金の輪が外れず、やむを得ず引き返す孫悟空。ことの成り行きを三蔵から聞かされ、しぶしぶ天竺までの帯同を了解するのだった。
 
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「西遊記~はじまりのはじまり~」を観たあとに今作「西遊記 孫悟空vs白骨夫人」を観ました。前作の「モンキー・マジック 孫悟空誕生」は未視聴っス

孫悟空役にアーロン・クォック、白骨夫人役にコン・リーを起用して2016年に中国・香港合作映画として公開された「西遊記 孫悟空vs白骨夫人」。
 
今作は2014年公開「モンキー・マジック 孫悟空誕生」の続編とのことだが、残念ながらこちらは未視聴である。

 
なお、前作では牛魔王役として出演していたアーロン・クォックが今作では孫悟空役に抜擢されたりと、配役面での謎が多い。どうやら前作で孫悟空を演じたドニー・イェンが特殊メイクと衣装の装着に相当苦労し、そのせいで続編への出演を拒否したとか。
 
「モンキーマジック 孫悟空誕生」感想。ドニー・イェンの演技がすっげえ。これは中国版ネバーエンディング・ストーリーやな
 
まあ、西遊記自体はこれまで幾度となく映像化されているし、大まかな流れも知っている。別に観なくても置いてきぼりを食うことはないだろうということで、気にせず視聴した次第である。
 
というか、実を言うと先に観たのは「西遊記~はじまりのはじまり~」なんですよね。

スー・チー姐さんが躍動するコメディ作品をそれなりに楽しんだわけだが、今作に手を出したのもその流れだったりする。
 
アニメ「鉄コン筋クリート」感想。声優の素人臭いザラザラ感と作風が奇跡的に嚙み合った秀作。イタチの正体? 蛇の手下? いろいろ謎も多いけど
 

思った以上に壮大な作品。映像技術の高さから2010年代の中国映画界の躍進を肌で感じることができる。あとコン・リー姐さんクッソ美しい

率直な感想としては、思った以上に壮大な作品だった。
 
申し上げたように今作は「西遊記~はじまりのはじまり~」を観た流れで視聴したもの。「西遊記~はじまりのはじまり~」がだいぶコメディタッチな作風だったこともあり、正直最初はこの作品をどんなテンションで観たらいいかがよくわからなかった。
 
レビューを読むと概ね高評価で映像技術もすごいという。
感想記事やレビューを読めば今作がゴリゴリのコメディではないことは明白だが、スー・チー姐さんの印象がどこかに残ってい たことも確かである。

で、実際に視聴をスタートすると……。
「何じゃこれ!! すげえなオイ」
「マジかよ!! 中国映画ってこんな感じなのかよ」と。
 
VFXをふんだんに使ったアクションは文句なしのド迫力。なおかつ中国の壮大さ、荘厳さも兼ね備える。
 
 
中でもラスボスの白骨夫人はとんでもない。マジでとんでもない。
コン・リー姐さんの美貌にVFXの演出がモロにマッチし、不幸な出生を背負ったダークさと妖艶さが絶妙なバランスで両立する。
言葉にならないというか、息をのむほどの神々しさというものが実際にあるんだなと思わせてくれるシーンの数々だった。
 
冗談でも何でもなく、コン・リー姐さんの美しさ、神々しを拝むだけでもこの作品を観る価値はある。
 
 
また、バトルシーンについても凄まじいのひと言。あらゆる術を駆使して妖怪を退治する孫悟空を筆頭に、コミカルでお調子者の猪八戒やクソ真面目だけど頼りない沙悟浄その他。CGとアクションの融合による安っぽさはまったくなく、広角から中心に向かってズームするカメラワークも素晴らしい。
 
巨大なガイコツをまとった白骨夫人とのラストバトルを含め、全編を通して膨大な金と時間が使われていることがこれでもかというくらい伝わってくる。
 
 
おおう、なるほど。
2010年代の中国の映画界は著しい躍進を遂げていると聞くが、本当にその通り。
 
高い技術を持ったクリエイターやそれを育てる土壌、さらにエンタメ業界に対する莫大な投資、などなど。
今作「西遊記 孫悟空vs白骨夫人」は、現在進行形で躍進する中国エンタメ業界の空気を肌で感じられる作品と言えるのではないか。
 
 
ちなみにVFXを駆使した代表的な作品としては「トランスフォーマー」シリーズや日本の「いぬやしき」などが思い浮かぶが、個人的にはああいう近未来の作風よりも今作のようなファンタジーの方が好みである。
 
トランスフォーマー/ロストエイジ感想。さらっとゾウ・シミン出てきてワロタw ハリウッドの視線が中国市場に向いてることがはっきりわかる作品
 
何というか、西遊記の壮大さ、荘厳さとVFXはかなり相性がいいと思うんですよね。
ビルをぶっ壊したり宇宙船を飛ばしたり、近未来のメカメカした映像よりも僕は断然好きっス。
 

人物描写が若干雑かな。ストーリーにも意外性はない

ただ、ストーリー自体に目新しいものはない。
 
映像技術は文句なしにすごいし、中でもコン・リー姐さんの美しさは言葉を失うほど。
だが基本的には西遊記の一部を切り取ってアレンジしたものなので、意外性や“まさか”のどんでん返し的な驚きは皆無である。
 
 
さらに言うと、人物描写に関してはやや雑な部分が目立つ。
最初は三蔵法師をたぶらかして封印を解かせた挙句、金の輪をはめられたせいで嫌々付き従っていた孫悟空が、いつの間にか三蔵命の超優良弟子になっている謎。
しかも三蔵のピンチを再三救ったにも関わらず、そのがんばりがいっさい報われない。挙句の果てには破門を言い渡される始末である。
 
あそこまで邪険にされて、なぜあれだけ三蔵に入れ込めるのか。
悪ガキキャラだった孫悟空がどこで心変わりしたのか。
三蔵との間にいったい何があったのか。
そのあたりの描写がまったくないせいで、中盤からの違和感が尋常じゃない。
 
そもそも論として、真摯な弟子の言葉よりも出会ったばかりのガキと姉ちゃんの方を信用しちゃうお師匠さんってどうなんすかね?
 
で、ケリー・チャン演じる観音菩薩が言うには、孫悟空は「本当の姿を見る」ことができるが、三蔵は「そのものの本心を見ている」とのこと。たとえ三蔵の身に危険がおよんだとしても、殺してしまっては元も子もない。
 
うん、よくわかりませんね。
 
三蔵の人間的な未熟さ、純粋さを表現したかったのかもしれないが、さすがにここに感情移入するのは難しい。孫悟空のあまりの不憫さに逆にムカついてくるほどw
 
VFXを駆使した映像技術は文句なしに素晴らしいが、“それだけ”。主要キャラクターの人物描写がもう少し丁寧であれば、よりストーリーに没頭できたとも思うのだが。
 
映画「サウスポー」感想。リアリティじゃない。アクションは迫力と臨場感。ロッキーシリーズの秀逸さに改めて気づかされる。まさかのあだち充方式かよw
 

脚本の部分がまだまだ未熟なのかも。人材流出が続くらしいが、原作やキャラクターを作る能力はまだ日本の方が上みたい

恐らくこれは脚本の問題が大きいのだと思う。
 
以前、中国資本が入った映画「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」の感想を述べた際、下記の記事を取り上げている。


日本のアニメ業界を始めとするコンテンツ業界は近年中国への人材流出が続いており、それに伴い中国のエンタメ業界は著しい躍進を見せている。
 
しかも好待遇で実力を発揮できる環境を与えられるため、どのクリエイターも持てる技術を惜しげもなく伝えているとか。
 
「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」感想。ゴジラ番長のブラザーソウルが迸るぜ。オールドスクールなヤンキーによる熱き友情物語
 
下記の記事にあるように、中国人アニメーターが日本で得たノウハウを母国に持ち帰るケースも増えているとのこと。


ただ、記事によると原作やキャラクターを一から作る能力はまだまだ日本のアニメーターには及ばない。その部分は今後もしばらくは日本に依存する状況が続きそうだという。
 
それを加味して今作「西遊記 孫悟空vs白骨夫人」を振り返ると、確かにわかる気がする。人物描写の雑さや強引な理屈など、映像技術の高さに比べて脚本部分の未熟さは全体を通して目につく。
 
 
中国ロケを敢行したことが話題となった映画「キングダム」も、実際には屋内でのバトルが中心。山を飛び谷を超えまくった()今作「西遊記 孫悟空vs白骨夫人」の壮大さ、荘厳さには遠く及ばない。
 
一方、主人公・信や政の人物描写に関してはさすがと思わされる。もちろん日本人の僕が日本人俳優の演技を観ているというのもあるが、やはり「西遊記 孫悟空vs白骨夫人」の人物描写はざっくりしている印象が強い。
 
まあ、日本の作品が必ずしも素晴らしい脚本ばかりと言うつもりもないのだが。
 
映画「キングダム」感想。山崎賢人が超カッコいいw 長澤まさみの背筋ピーンと大沢たかおのキャラが気になってめっちゃ原作を読みたくなる
 
一応言っておくと、この場で日本の映画業界、エンタメ業界の行く末や中国への人材流出についてあれこれ述べるつもりはない。
だが、申し上げたように今作はよくも悪くも中国のエンタメ業界の成熟度を垣間見ることができる作品だった。


 
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