「モンキーマジック 孫悟空誕生」感想。ドニー・イェンの演技がすっげえ。これは中国版ネバーエンディング・ストーリーやな

「モンキーマジック 孫悟空誕生」感想。ドニー・イェンの演技がすっげえ。これは中国版ネバーエンディング・ストーリーやな

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映画「モンキーマジック 孫悟空誕生」を観た。
 
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「モンキーマジック 孫悟空誕生」(2014年)
 
魔界の統治者牛魔王は三界の覇権を狙って天界に攻め込んだものの、天帝との一騎打ちに敗れて消滅させられそうになってしまう。だが牛魔王を愛する鉄扇公主の命乞いにより、慈悲深い天帝は牛魔王を許すことに。
鉄扇公主とともに魔族を火焔山に追放することで天界はようやく平穏を取り戻す。
 
戦争終結後、創造神女媧は五色の石を用いて崩壊した天界の修復に取り掛かる。その際、石のかけらが一つ、下界へと落下してしまう。
 
岩山に落ちたかけらは、やがて一つの命を宿すのであった。
 
 
時を経て、石に宿った命は大きな猿へと成長する。
猿は生まれ故郷の花果山でリーダーとなり、仲間と毎日を楽しく過ごしていた。
 
 
そんなある日、猿の前に須菩提祖師が現れ“生き返りの術”を教えてやろうと告げる。
 
須菩提祖師に連れられ仙人の山に入った猿はそこで「孫悟空」という名を与えられ、七十二般の変化術を身につけたくましく成長を遂げるのだが……。
 
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孫悟空役のドニー・イェンは続編では降板しちゃった。メイクと衣装があまりにしんどかったんだって

先日「西遊記 孫悟空vs白骨夫人」を視聴したことをお伝えしたが、今回はその前作である「モンキーマジック 孫悟空誕生」。「最遊記」シリーズ三部作の一作目として2014年に公開された作品である。
 
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今作ではドニー・イェンが主人公の孫悟空役を務めているのだが、残念ながら続編では降板している。代わりに今作で牛魔王を演じたアーロン・クオックが孫悟空に抜擢された。
 
なぜそんなことになったかと言うと、孫悟空の特殊メイクがドニー・イェンにとってあまりにしんどかったから。
 
毎回数時間を要す特殊メイクに加えて1人では装着できないほど密着度の高い衣装。ドニー・イェンにとっては撮影以外の部分でしんどいことが多過ぎたとのこと。そのせいで、仮に「モンキーマジック 孫悟空誕生」がヒットしても続編への出演は早々に否定していたという。
 
そんな感じで、今回はシリーズで唯一ドニー・イェンの演技が観られる「モンキーマジック 孫悟空誕生」についての感想を述べていきたい。
 

今作は“中国版ネバーエンディング・ストーリー”。ド派手なバトルと壮大なファンタジー、稚拙な映像が僕のワクワク感を呼び起こす

表題の通りなのだが、「モンキーマジック 孫悟空誕生」は要するに“中国版ネバーエンディング・ストーリー”である。
 
予告動画でも雰囲気が伝わると思うが、今作はとにかくよく戦う。
VFX? CG? を駆使したド派手な演出や主要キャラクターのオーバー過ぎるくらいの演技。
誰もが山を飛び、空を超え、雲に乗り、炎を吐き、城を破壊しまくる。ガチャガチャのアクションがひたすら展開される超大作()となっている。
 
ストーリーは基本的には本家「西遊記」に沿っており、七十二通りの術を使う孫悟空とそのライバルたちが暴れまわる姿が等身大で表現される。それこそかつて脳内再生していた小説内の映像がそのまま再現されていると言っても過言ではない。
 
そして、その映像のほどよいチープさがいい味を出している。
2014年公開の作品だけあり、映像に関してははっきり言って微妙。空中でのバトルや落下シーンなどは合成丸出しで、続編「西遊記 孫悟空vs白骨夫人」と比べても粗が目立つ。
 
これはこの5、6年で映像技術が飛躍的な進歩を遂げた証左でもあるのだが、とにかく今作でのCG技術はまだまだ未熟と言わざるを得ない。
 
だが、それがいい。
ド派手なバトルとゴリゴリのファンタジーとは裏腹の稚拙な映像。
 
手作り感満載の雰囲気とこれから始まる大冒険にワクワクする感じが何とも言えない懐かしさを醸し出しているのである。
 
う〜ん、何だっけこの感覚。
昔、こういう経験した覚えがあるんだけど……。
 
ああ、思い出した!!
「ネバーエンディング・ストーリー」だ!!

そうそうこれこれ。
いや〜、テンション上がるぜおいww
 
この舗装されていない感じがめっちゃ好みなんですよね。
 
伝わりますかね? 僕の言いたいこと。
 

ドニー・イェンの演技はすげえぞ。マジですげえ。大げさで鮮やかにすることによるリアルを生身でやっちゃった

そしてもう一つ。
今作の見どころは何と言っても孫悟空役のドニー・イェンの演技。ここは今作における最大のウリと言っても過言ではない。
 
残念ながら僕はこれまでドニー・イェンの出演作を観たことがない(「ブレイド2」に出ていたらしいが記憶にない)。名前は何度か耳にしたことはあったが、中国映画自体に詳しくないためこれまでほぼノータッチだった次第である。
 
さらに続編「西遊記 孫悟空vs白骨夫人」を先に視聴していたため、自分の中での孫悟空像が何となく出来上がってもいた。
 
その上、ドニー・イェンは2020年現在57歳。2014年当時もそこそこの年齢だったこともあり、率直に申し上げて孫悟空の演技には期待していなかった。
 
すごかった。
 
いや、ドニー・イェンすごいぞ。
マジですごい。
 
姿勢は常に中腰。
瞬きは多めで口をパクパクする喋り方。
「ホーウ、ホーウ」と喜んだり「ガルル〜」と怒ったりと感情表現も豊かで、その姿は猿そのものと言っていい。
 
苦しい中腰姿勢のままピョンピョンと飛び跳ねる演技などは常人には不可能では? と思わせるほどのアクロバティックさ。恐らくCGを駆使しているのだとは思うが、純粋無垢な猿が徐々に自我に目覚めて孫悟空へと成長していく様子を本当にうまく演じていた。
 
それこそ「西遊記 孫悟空vs白骨夫人」のアーロン・クォックとはあらゆる面で格が違う。
感想レビューでは「ドニー・イェンのコミカルな演技を久しぶりに観た」という意見が多かったが、知識のない状態でこれを見せられた僕はただただ驚くばかりである。
 
イメージとしては、“超実写版”の触れ込みでフルCGで2019年に制作・公開された「ライオン・キング」に近い。

この映画は動物を大げさかつ鮮やな色彩で表現することによって視聴側に“リアルを感じさせる”ことに成功した(実際にはまったくリアルではない)わけだが、今作「モンキーマジック 孫悟空誕生」ではそれを生身のドニー・イェンが単独で実現してしまった。
 
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五行山に封印される前の孫悟空ということで無邪気で多感な面を意識していたのだと思うが、その部分においても秀逸。今となってはどうしようもないが、500年の時を経て垢抜けた孫悟空をドニー・イェンがどう演じるかも観てみたかった気もする。
 
 
中腰姿勢のまま如意棒をぶん回しつつバク宙を繰り返す演技とか、マジで本人がやってるんですかね。もしそうだとしたら普通にジャッキー・チェンを超えてると思うんですけど、どうなんでしょうか。
 

基本は原作通りだが、オリジナルの設定も多い。それが視聴後に爽やかな気持ちになれる要因でもある

ついでに言うと、ストーリーの流れが原作の「西遊記」に沿っていたおかげで忘れていたことをいろいろ思い出すきっかけにもなった。
 
天界から「弼馬温(ひつばおん)」の役職を与えらえて大はしゃぎの孫悟空だが、本当は荒くれ者の孫悟空に適当な官職を与えることで懐柔しようという思惑があったり。
 
牛魔王の妻「鉄扇公主=羅刹女」が火焔山の炎を消すことができる「芭蕉扇」の使い手であることや、2人の息子が「紅孩児」であること、その他諸々。
 
「そういえば西遊記ってそんな話だったな」と思い出すことも多く、ファンタジーのワクワクと懐かしさがほどよくミックスされた心地よさ()を感じることができた。
 
 
逆に今作におけるオリジナルも端々に見られ、それはそれで新鮮さを生み出してくれた。
 
え?!
羅刹女ってもともと天界の住人だったんすかw
しかも、その頃から牛魔王とはいい仲だったとは。
 
身分や立場を超えた愛を密かに育んでいたんすね。
魔界の王の割に、そんなロミオとジュリエットみたいな馴れ初めがあるとは!!
 
 
また、原作では手のつけられない荒くれ者として描かれる孫悟空だが、今作での孫悟空は情に厚く仲間思いで人一倍涙もろいキャラ。
恋人である狐のユーシュが殺された際は怒りで我を忘れ、たった1人で天界に乗り込み大立ち回りを演じたり。
 
ラストも自ら進んで五行山に閉じ込めらるなど、自分の行いにけじめを付ける男気も持ち合わせる。
ガサツで未熟な荒くれ者ではあるが、決してろくでなしではない。主人公が1本芯の通ったキャラとして描かれていたことは、ハッピーエンドが大好きな自分にとっては非常にありがたかった。
 
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もちろん「孫悟空はこんなヤツちゃう!!」「もっと自分の欲望に正直な暴れん坊であるべき」とおっしゃる方もいるとは思うが、少なくとも僕はこういう生ぬるい()孫悟空も大アリだと思っている。
 
 
視聴後に爽やかな気持ちになれると言うか、読後感のよさも映画を観る上では重要だなと改めて思った次第である。
 
 
まあ、最後に孫悟空が封印されてしまうおかげでラストバトルの爽快感は全部吹き飛んじゃうんですけどねww
 
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