那須川天心vs皇治感想。リスクを背負ったのは那須川天心だし、皇治はホントにおいしい試合だった。K-1を離脱した行動力は素晴らしいけど【RIZIN24】

那須川天心vs皇治感想。リスクを背負ったのは那須川天心だし、皇治はホントにおいしい試合だった。K-1を離脱した行動力は素晴らしいけど【RIZIN24】

2020年9月27日、さいたまスーパーアリーナで行われたRIZIN24。
メインイベントに登場したRISEフェザー級王者那須川天心が元K-1の皇治と対戦し、3-0(30-27、30-27、30-27)の判定で勝利。通算戦績を40戦全勝とした。
 
 
7月にK-1を離脱しRIZINに電撃参戦を果たした皇治。散々那須川天心への挑発を繰り返し、ようやく実現した今回の一戦である。
 
試合は開始直後から那須川がスピード差を発揮して皇治を圧倒する。鋭いワンツーをヒットして皇治を下がらせ、早くも目尻から出血させる。
 
2Rに入ると、スピードに慣れた皇治が右のカウンターをヒット。那須川も一瞬警戒を強めるが、それ以降も細かいパンチの連打と飛び膝を浴びせてペースを渡さない。
 
最終3Rも那須川の一方的な展開が続いたものの、皇治は最後までダウンを拒否し続けて試合終了のゴングを聞く。
3-0の文句なしの判定勝利ながら、終始皇治の粘りが光った一戦となった。
 
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「半沢直樹」の真裏にこの試合をぶつけたRIZINにちょっと感心したww ドラマは一度も観たことないけど

まず今回、21:00ちょうどにこの試合を持ってきたRIZIN側の意気込みに賞賛を送りたいww
 
真裏には大人気ドラマの「半沢直樹」最終回があり、視聴率低迷に苦しむRIZINにとっては致命的とも思えた。だが、あえてそこに那須川天心vs皇治戦をぶつけて真っ向勝負を挑んだことは単純に素晴らしいと思う。
 
まあ、逆に言うとそれ以外にやりようがなかったわけでもあるのだが。
 
 
なお僕はいい年こいたおっさんが変顔で怒鳴り合うドラマにまったく興味がないので、これまで「半沢直樹」は一度も観たことがない。
 
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「そうなるだろうな」って試合だったかな。両者のスピード差が顕著で、那須川天心の試合のおもしろさが凝縮された3R

そして、実際の試合については「そりゃそうだろ」というか、予想の範囲内。那須川天心が3Rを通して一方的に皇治をタコ殴りにするワンサイドゲームだったなと。
 
 
開始直後のハイキックと20秒過ぎの前蹴りだけで皇治は手が出せなくなり、コーナーに詰まって連打を浴びる。
それ以降も手を出すたびにその3倍くらいのカウンターが返ってくるせいでなかなか自分からは攻められず、ひたすらリングを回りながら耐える状況が続く。
 
上と見せかけて下から膝を入れたり、顔面へのワンツーからボディにつないだり、前蹴りに右のカウンターを合わせたり。
時おりアクロバティックな技を織り交ぜながら、那須川天心のやりたい放題、攻撃し放題という流れに。
 
カウンターをチラつかせてプレッシャーをかけ、皇治にコーナーを背負わせたところで挑発する。
入場時から露骨に怒りの表情を見せていた那須川天心だが、試合運びもこれまでとは一味違う。全身に刺々しい雰囲気を漂わせていた。
 
2R開始直後に強引に前に出た皇治の右をカウンターで被弾してピリッとしたものの、そこからパンチ中心に切り替えて以降は手も足も出させず。
 
遠い位置から右ジャブを軽くヒットし、コンビネーションを浴びせてパッと離れる。
皇治が再び自分から手が出せなくなると、またしてもアクロバティックな飛び技や蹴り技でどんどん圧倒していく。
 
基本的に那須川天心はローキックをあまり使わず大技が中心の選手。
一つ一つのアクションが大きくド派手な試合になりやすいのだが、今回のようにスピード差のある相手だとそれが顕著になる。
 
前半は怒りに任せた怒涛のラッシュ。
中盤からはパンチ中心のポイントゲーム。
そして、相手を手も足も出ない状態に追い込んでからもう一度アクロバティックな技でとどめを刺しにいく。
 
初めての-58.5kgということで2019年末の江幡塁戦のような凄まじさはなかったが、多くの選手がこのスピードにやられてきたのが今回もそのまま出た感じか。
 
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那須川天心の試合のおもしろさが凝縮されたような3Rだった。
 

那須川天心の適正階級はやっぱり-55kg。武尊戦は実現してほしいけど、どんな結果が出てもケチがつきそう

ただ、那須川天心の適正階級がここではないというのも改めてはっきりした気がする。
 
リング上で対峙した両者を比べると明らかに皇治の方が一回り大きく、江幡塁戦で感じた那須川天心の肩周りのゴツさも今回はそれほどでもなく。
 
実況席では皇治のタフネスっぷり、ダウンを拒否し続ける根性がことあるごとに賞賛されていたが、階級差による耐久力というのは間違いなくあったと思う。
 
もちろんK-1王者武尊の猛攻を凌ぎ切ったことを考えれば皇治のタフさに疑う余地はないが、2019年9月の志朗戦や今回の動きを観れば那須川天心が本領を発揮できるのはやはり-55kg前後なのだろうと。
 
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ドラマ性や運命的な話題を優先するなら那須川天心vs武尊戦は実現するべき。
だが、それが純粋な軽量級キック界の頂上対決かと聞かれれば決してそうではない。すでに両者は適正階級が微妙にズレていて、どんな結果が出てもケチがついてしまう組み合わせでもある。
 
今回の試合でも皇治が強引に距離を詰めた際に嫌そうな顔を見せていたし、やはり那須川天心攻略は前に出てスペースを潰すことなのだろうと。そして武尊のフィジカルと打たれ強さがあれば、2018年6月のロッタン・ジットムアンノン以上の展開に持ち込める可能性は高い。
 
多くの方がおっしゃる通り、57.0~58.0kg前後に両者のボーダーラインがあるのだと思う。
 

皇治はホントにうまくやりよったよな。周囲を巻き込む自己プロデュース力は半端ない。リスクを負ったのは那須川天心の方だけど

今回の試合が組まれるまでの経緯には賛否両論さまざまな意見が聞かれたが、個人的な意見を言うなら「皇治がうまくやりよったな」という感じか。
 
以前にも申し上げたように、この試合でリスクを負ったのは那須川天心の方。
 
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戦前から両者には大きな実力差があると言われ、那須川天心の圧勝を予想する声がめちゃくちゃ多かった。
 
RISE -61kg王者の白鳥大珠からの対戦オファーを蹴ったことからも、この選手が那須川天心とのワンマッチしか見ていなかったことは明らかである。
 
多額の違約金? を払ってK-1を離脱しRIZINに参戦した行動力は文句なしに素晴らしいが、自分にとっておいしい相手のみを狙いに行っていたのは間違いない。
 
その上、もともと-55kgが適正階級の那須川天心に対して皇治は-61kg。両者には根本的な階級差があり、リング上で対峙しただけでもそれははっきりしていた。
 
・絶対有利
・KO確実
と言われながら階級上の相手と試合をさせられ、万一負ければすべてを失う那須川天心と、
 
・負けてもともと
・挑戦者
の触れ込みで思いきり向かっていける皇治。
しかも階級下の相手の攻撃に3R耐えれば「よくやった」「すごいタフさ」と賞賛され、K-1の看板? も守れる。
 
どう考えても僕には那須川天心のハイリスク・ローリターンな試合にしか思えないのだが。
 
 
もちろん皇治が「立ってさえいればいい」などと考えていたとは言わないし、本気で勝利を目指していたはず。初めての-58.5kgも相当厳しかったと想像する。
「立っていればOK」と言われるなど、格闘家としては屈辱でしかない。
 
それを踏まえた上で「リスクを背負ってRIZINにきた」「格闘技界のためにすべてを捨ててRIZIN参戦を決意した」という印象を周囲に植え付け、自分が損をしない試合にこぎ着けたのは本当においしかったなと。
 
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恐らくこの選手の一連の行動、言動が気に入らない、虫酸が走るという人は多くいると思う。
逆にこれだけ周囲を巻き込んで注目を集めるプロデュース力はとんでもないという意見もあると思う。
 
いろいろな意見があっていいと思うし、人それぞれ楽しみ方があって当然だよねという話。
 
 
僕個人としては、皇治のやり方はコスい部分はあるものの、大勢を巻き込んで乗せる能力はマジですごいという意見。全面同意はしないけど、選手ごとの個性としては全然アリ。
 
まあ、試合前の皇治評が「打たれ強い」「根性がある」「気持ちが強い」ばっかりだったのは笑ったけどww
 

格闘技の本質が分かる試合だと思っていた。試合前から盛り上げるのは大事ですけど、それだけじゃない

那須川天心も鮮やかにKOした上でこれを言いたかっただろうな。
この階級だと決定力が削られるのは、もう仕方ないんでしょうね。
 

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