RENAvs神村エリカ、早すぎた頂上決戦。那須川天心vs武尊戦の爆発っぷりを見るともう少し引っ張ってもよかった?【2011.11.23 RISE85感想】

RENAvs神村エリカ、早すぎた頂上決戦。那須川天心vs武尊戦の爆発っぷりを見るともう少し引っ張ってもよかった?【2011.11.23 RISE85感想】

2011年11月23日に東京ドームシティホールで開催された「RISE85」。
第11試合ではRENAと神村エリカによる初代RISE QUEEN決定戦が行われ、3-0(45-46、46-47、46-48)の判定でRENAが勝利。見事初代RISE QUEENに輝いている。
 
 
現在総合格闘家としてRIZINで活躍中のRENAと、2014年に現役を引退、その後はRISE女子トーナメントのプロデューサーに就任するなど主に裏方? として活動する神村エリカ。
この両者が“立ち技女子最強”の座をかけてRISE85の舞台で激突したわけだが……。
 
 
実を言うと僕はこの大会を現地観戦しており、RENAの試合巧者っぷりにめちゃくちゃ驚いたことを覚えている。
 
少し前に行われたエキシビションで神村がRENAを圧倒したことを受け、下馬評では神村の圧倒的有利。
僕も勢いを考えれば神村が有利か? と思っていたのだが、蓋を開けてみればRENAが神村の長所をことごとく潰して判定勝利を挙げるという。
 
 
そんな感じで、今回はこの試合の感想(今さら?)を適当に言いつつ2022年6月の那須川天心vs武尊戦にも触れてみようと思う。
 

RENAvs神村エリカ戦ってセミファイナルだったの?! 2011年は日本の格闘技が低迷期に入った時期

まず公式HPで大会結果を確認してみたのだが、メインだとばかり思っていたRENAvs神村エリカ戦が実はセミファイナルだった笑
 
「大会結果 RISE85」
 
この日はヘビー級のワンデートーナメントが開催されており、メインはその決勝戦(上原誠vsシング・心・ジャディブ)が行われている。
さらに久保賢司が“KENJI”のリングネームで王者決定戦に出ていたり、全員集合写真にあやまんJAPANが写っていたりとかなり隔世の感がある笑
 
 
またこの大会が行われた2011年は日本格闘技の低迷が始まった時期で、調べてみると2010年大晦日の「Dynamite!! 〜勇気のチカラ2010〜」が最後のDynamiteだったとのこと。
 
ラインアップを見ても当時のことをほとんど思い出せないのだが、唯一「ああ、アレね!!」となったのが第8試合の長島☆自演乙☆雄一郎vs青木真也戦
 
「青木真也が第1R(キックルール)を時間稼ぎに徹する→第2R(総合ルール)開始直後に青木がタックルを仕掛ける→自演乙の膝蹴りがテンプルにヒットし青木が失神→試合終了→実況席の小林雅人が絶叫」というマンガのような結末を迎えた一戦である。
 
そして、それ以外の試合は申し訳ないことにまったく印象に残っていない。
 
 
当然僕が足を運んだRISE85もなかなかのアングラ臭を放っていたことを覚えている。
要するに僕ごときが普通にチケットを買えた時点で“そういうこと”なのだろうと。
 

RENAのうまさが光った試合。神村エリカの持ち味は踏み込みスピードと精度の高い連打

前置きが長くなったが、試合の感想を。
 
まず申し上げたようにこの試合はRENAのうまさ、試合巧者っぷりが光った

ダウンを奪われたエキシビジョンを含めて神村エリカの試合を山ほど研究したのだと思うが、それが見事にハマった印象である。
 
 
具体的には間合いの調整と動き出しのカウンター。
 
神村エリカの持ち味は何と言っても踏み込みの鋭さとハンドスピード。
中間距離から一足飛びで間合いに入り、同時に1発目のパンチを顔面にドカン。そこから間髪入れずに連打に移行しひたすら殴り続ける→女子離れした正確性と回転力であっという間に相手を亀状態に追い込むのがこの選手の勝ちパターンである。
 
エキシビジョンでのRENAもこの踏み込みと回転力に面食らっているうちにモロにカウンターをもらってしまった。
 
神村エリカの前に出る馬力と高精度の連打、これを両立できる選手は当時の女子では皆無と言っても過言ではない。極端な話「踏み込みからの連打」のみで他を寄せ付けないくらいの強さを誇っていた。
 
伊澤星花vsフォントーラ、RENAvsアナスタシア、パク・シウvs浅倉カンナ、浜崎朱加vsジェシカ・アギラー。メインの仕事をした伊澤とカッコいいパク・シウ。やや低調だったRENA
 

距離とカウンター、クリンチで神村の長所を封じるRENA。研究を重ねた上での塩漬け作戦

で、RENAとの頂上決戦でもそれが発揮されるだろうと思っていたら……。
 
開始直後から神村エリカにいつもの思い切りのよさが見られない。
 
クイッ、クイッとフェイントをかけるものの、それに合わせてRENAが小さく反応するためになかなか中に入れない。
それどころか、動き出しの瞬間を狙われ豪快に顔面を跳ね上げられてしまう。
先の先を取られるというか、いつもより間合いも遠くこれまでの神村エリカとは明らかに違っていた。
 
なるほどねぇ。
神村エリカの突進力、連打は確かに脅威だが、射程自体はそこまで広くない。
RENA陣営はそこを目いっぱい利用したのだろうと。
 
射程の半歩外で対峙し、神村の踏み込みスピードを封じた上でサイズ差を活かしてカウンターを狙う。
強引に前に出てくれば自分も前に出てクリンチ。しかもあえてロープを背負うことで神村から腕を絡めている雰囲気を出す。
途中で「クリンチが多い」と神村が注意を受けていたが、まさにRENA側の思惑通りだったのではないか。
 
神村の射程の短さ、接近戦での稚拙さを利用した塩漬け作戦。
突進力とコンビネーションに依存した神村エリカの幅の狭さを見抜いた試合運びはお見事だった。
 
RISE、GLORY、K-1。ルールの異なるキックボクシングに混乱。「対世界!!(キリッ」→どうしても噛み合わない試合が増えるよな。直樹、山田洸誓、海人、原口健飛、ゴンナパー
 

絶対に負けられない一戦で結果を出す精神力、戦術の幅。立ち技選手としてのRENAの奥深さ

正直、試合としておもしろかったか? と聞かれれば微妙なところ。
 
4、5Rなどはもみ合いだらけだし、ド派手な打ち合いや神村の豪快なKOを期待していた人(僕も)にとっては少々物足りない。
 
だが、それはそれとして。
エキシビジョンでまさかのダウンを喫し、直近3試合では1勝2敗。キャリアを通してここまでのスランプは初めてというくらいのどん底状態で、なおかつ神村エリカはRENAのホームであるGirls S-cupで優勝をかっさらっている。
 
そんな中で迎えた敵地RISEでの一騎打ち。
絶対に負けられない、どんな手を使っても勝たなくてはならない試合で選択したのがあの塩漬け作戦である。
 
逆境をはねのける精神力、相手をとことんまで研究するスカウティング力、戦術を実行する幅、その他。
RENAが選手としての奥深さを見せつけた試合だったと言えるのではないか。
 
武尊vsロッタン・ジットムアンノン全然わからんな。OFGのムエタイルールばかりのロッタンと初の水抜きなし+ブランクもある武尊。地元の武尊が有利
 

この試合はもう少し引っ張ってもよかったかもしれないね。神村戦以降のRENAは無双しすぎてやることがなくなってたし

表題の通りなのだが、今振り返るとRENAvs神村エリカ戦はもう少し引っ張ってもよかったのかもしれない。
それこそ2022年6月に東京ドームで開催された「THE MATCH 2022」、那須川天心vs武尊戦の爆発具合を鑑みると時期尚早だった気がしてくる。
 
格闘技ファンは今度から「那須川天心と武尊の試合あったじゃん」と言える。THE MATCHにより天心と武尊はジャンルを超えたスターに。でもフジテレビの判断は正しかったよ
 
もちろん当時は格闘技自体が下火だった上に女子格闘技への理解、認知度はさらに低かったと想像する(総合格闘技は藤井惠と辻結花の二大巨頭だっけ?)。
僕自身もRISEとSHOOT BOXINGの違いもよくわかっていなかったし、キックの団体と言えば完全に旧K-1一択。
 
たとえ対戦を引っ張ったとしても那須川天心vs武尊戦のような熱量にはほど遠かっただろうと。
 
 
ただ、神村戦以降のRENAの無双っぷりを考えると……。
2012年、2014年のGirls S-cupトーナメント優勝を含めて2012年8月〜2017年7月まで18連勝。約5年間負けなしで女子立ち技界では完全にやることがなくなっていた。
 
一方の神村エリカは2010年から続く体調不良を理由に2014年8月に現役を引退。ひそかに両者の再戦を期待していた身としてはかなりショックだったことを覚えている。
 
立ち技界でやれることをやり尽くし、最大のライバルだった神村エリカは引退。圧倒的な強さで勝利を重ねるRENAだったが、その反面コメントの端々からモチベーションの低下が見え隠れしていた。
中でもGirls S-cup 2014トーナメントを制した翌年はそれが顕著だった記憶がある。
 

THE MATCHでの爆発が不毛な時間をすべて“過去”に変えた。RENAvs神村戦もあと2年引っ張れば違ったかも?

はっきり言って那須川天心vs武尊戦は引っ張りすぎだったし、そこに至るまでの喧々がくがくには辟易させられた。
 
閉鎖的な新生K-1、ファン同士の罵り合い、逃げた逃げない等の不毛なギロン……。
あまりのくだらなさに両者の対戦を何回諦めようと思ったかわからない。
 
だが、2022年6月のTHE MATCHの爆発がそういった諸々をすべて“過去”に変えてしまった
 
那須川天心vs武尊感想。衝撃的に強かった天心。この日の天心には誰も勝てないんじゃない? 武尊もあきらめずにがんばった感動的な試合
 
長年の因縁にはっきりと決着をつけ、天心はボクシングに転向、武尊は次の目標に向かって充電中。
長年交わることのなかったK-1、RISE両団体は2023年2月に新たな試みをスタートする(らしい)。


団体同士の確執、ファン同士の罵り合いといった見るに耐えない不毛な時間も2023年に続く道のりだった考えれば一つのストーリーとして成り立つのかもしれない(それでも引っ張りすぎだけど)。
 
 
だが、宿命のライバルとの決着戦を早々に済ませてしまったRENAにはその後がなかった。
もちろん2度のトーナメント優勝もタイトルマッチでの勝利も凄まじいのだが、いわゆる「アイツだけには負けられない」的なモチベーションとは無縁だった(気がする)。
 
THE MATCH直後に天心が「武尊選手がいたからここまでがんばれた」とコメントしていたが、ライバルの存在によって意味不明な力が湧くというのはマジである。
その点、強すぎるが故にモチベーションを保てなくなっていたRENAはある意味不幸なのかもしれない。
 
仮にRENAvs神村エリカ戦があと2年遅ければ。
キック選手としてのRENAのキャリアが尻すぼみになることもなかったのかな? と思ったり、思わなかったり。
 
まあ、神村エリカが2014年に引退(ラストマッチは2013年9月)しているので全盛期の両者がぶつかるには実質あのタイミングしかなかったのだが。
 
 
なお余談だが、RENAをMMAに引き込んだ榊原のおっさんは改めて有能である笑
もし2015年大晦日のRIZIN旗揚げ戦の目玉に抜擢されなければRENAはとっくに引退していたかもしれないわけで。
 
天心vs武尊戦の実現もそうだが、この辺のバイタリティに関してはガチで群を抜いている笑
 
人間性は終わってるけど笑
 

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