大沢ラスベガスに散る。オスカル・バルデスに7RTKO負け。実力差を承知で海外のリングに上がるのは本当に「すばらしい」のか?【結果・感想】

NO IMAGE

ロスカボスメキシコイメージ
「ボクシング記事一覧リンク集」へ戻る

2016年11月5日(日本時間6日)、米・ラスベガスにあるトーマス&マックセンターで、WBO世界フェザー級タイトルマッチが行われた。
同級王者オスカル(オスカー)・バルデスとランキング2位の挑戦者大沢宏晋が対戦し、バルデスが7R1分50秒TKOで大沢を下して初防衛に成功した。

初の世界戦が20戦無敗18KOの強打者との一騎打ちとなった日本の大沢。しかも舞台はボクシング市場の中心地であるラスベガス。
 
「村中優惜しい!! ヤファイを追い詰めるが、最後の最後で失速。敵地で絶好のパフォーマンスは次につながる」
 
不利予想が多い中での番狂わせを期待されたが、バルデスの豪打に手も足も出ず。4Rと7Rにダウンを奪われるなど、最後まで自分のボクシングをさせてもらえずに完敗を喫する。

試合後にはリングサイドで観戦していたフロイド・メイウェザーに労をねぎらわれる一幕があったものの、世界のトップクラスとの実力差をまざまざと見せつけられた一戦である。

「パッキャオが復帰戦に快勝!! バルガスに格の違いを見せつけて余裕の判定勝利。次戦? やっぱりアイツしか考えられないだろ」

バルデスってこんなに強引で大雑把だったっけ? ちょっと力み過ぎじゃないか?

バルデス完勝!!
指名挑戦者に力の差を見せつけてのKO勝利!!

まず今回の試合の印象だが、
「バルデスってこんなに大雑把だったっけ?」
といったところだろうか。

もちろんバルデスが両腕を思いきり振り回すタイプの選手だというのはわかっていたが、それにしてもここまでだっけか?

剛腕はわかるのだが、まさかあれだけガチガチに力を入れて腕を振り回すブンブン丸だったとは。

エキサイトマッチの解説者が「大振りのフックを見せておいて、そこから内側のストレートを打ち込むテクニックがすばらしい」と言っていたが、それ本当か?
たまたまじゃないのか?
大振りし過ぎたせいで疲れて肩の力が抜けたとかじゃないのか?

まあ冗談はともかく、恐らくパッキャオ復帰戦のセミファイナルに抜擢されたことで、相当はりきっていたのだろう。
プロモーターに試合の順番を聞かされて「おし、やったろうやんけ!!」などと思ってしまったのかもしれない。
「格下の相手をカッコよく倒してやんよ!! お?」みたいな。

「波乱のマグダレノ勝利!! ドネアを判定で下して王座初奪還!! 感覚派のドネアがサウスポーへの弱点を露呈」

おかげで肩に力が入りまくった揚句にあの有り様というわけである。
あれだけ見え見えのフックを出してりゃ、さすがに耐えられますよ。
ええマジで。

「覚醒した田中がフエンテスに圧勝!! “中京の怪物”が絶不調のフエンテスを5RKO」

KO勝利で防衛を果たしたバルデスだけど、そこまで突出したものは感じなかったな

7RでTKO勝利を飾ったバルデス。
だが、期待のトッププロスペクトの初防衛戦としてはギリギリ及第点といったところだろうか。

予想記事でも申し上げたように、僕はこの選手がそこまでいい選手だとは思わない。

「無謀? 大沢宏晋がオスカー・バルデスに挑む!! 聖地ラスベガスでパッキャオのアンダーカード」

見ての通り腕っ節が強く、フィジカル面での強靭さもある。
距離を詰めようとする大沢を軽々と弾き返すシーンなど、足腰の強さも兼ね備えているのだろう。

あそこまで躊躇なく腕を振れるというのはそれだけで強みになるし、当然相手に脅威を与えることもできる。攻撃がそのまま防御の役目を果たし、特に今回のように体力差のある選手にとっては近づくだけでも相当な体力を消費するはずである。

ただ、前後左右への動きに難があることも確かで、うまくアングルを変えながら詰めてくる相手には脆さを露呈するのではないだろうか。
前回の記事の繰り返しになるが、フランプトンやゲーリー・ラッセルなどの対抗王者と比較すると、若干の格落ち感は否めない。

「サンタクルス初黒星!! ジャッカル・フランプトンに判定で敗れる!! え? そんな大差の試合だったか?」

今後どうするのかはわからないが、ジョシュ・ウォーリントンやレオ・サンタクルスとの対戦を観てみたい気がする。かなり苦戦を強いられるとは思うが。

「ゲイリー・ラッセルvsエスカンドンが楽しみすぐる。両方めちゃくちゃいい選手ですよねこれ?」

大沢宏晋はちょっとアレだな……。何も言うことがないというか、実力差があり過ぎたかな

そして敗れた大沢宏晋についてだが、こちらは何とも言えない。

う~ん……。
ちょっとこれは……。

あらかじめ力の差があるのはわかっていただろうし、もう少し何とかできなかったものか。
あまりにも正攻法で行き過ぎというか、工夫が見られなかったというか。

・身長差を活かしてプレスをかければ?
・大振りのフックに内側からカウンターを狙えば?
・ボディ打ちからのフックで一発逆転狙い?

あれこれ対策を考えてみたのだが、この日の大沢にはこれといって何かをしようとするそぶりも見えず。
ただただ歴然とした戦力差によってボコられ続けたという印象である。

もしかしたら、本人なりに何かを起こそうとはしていたのかもしれない。
 
「はあ、ラッセルたん…。エスカンドンを接近戦で圧倒して勝利!! この試合好き過ぎて、もう5回くらい観てるw」
 
だが、プレスをかけようにもフィジカル差があり過ぎて前に出られず。
接近戦で打ち合おうにもバルデスのパンチが強烈過ぎて近寄れず。
カウンターを狙おうにもガードで手いっぱいでタイミングを計るどころじゃない。
内側からワンツーを打ち込んでもパワーが違い過ぎてまったく効かない。

身体を寄せてバルデスのフックを封じようという意図は何となく感じられたが、相手の圧力に屈してもう一歩踏み込めないのだからどうしようもない。

「ウケルw これリボリオ・ソリス負けなの? マクドネルが不思議判定発動? で防衛成功」

「経験不足」という声も多数聞かれ、確かにそれもあったのかもしれない。
あれだけ下がりながらでも強振できる選手とはこれまで遭遇したことはないだろうし、自分より小さな相手にあそこまでのフィジカル差を見せつけられた経験もなかったのだろう。

5、6Rにサクッとスイッチしたバルデスに戸惑っていたところを見ると、サウスポー対策も十分とは言えなかった可能性もある。
スイッチぐらいでうろたえているようでは話にならないという噂もあるが。

結果的に、大沢ができることは覚悟を決めてバルデスの豪打に耐えるだけ。いかにKOラウンドを遅らせるか、観客にフラストレーションを感じさせるかの一点のみ。

要は実力差があり過ぎたということなのだが、何とも残酷な結末である。

「顔面崩壊で完敗和氣。ダメだ、全然感動しなかった…。グスマン4度のダウンを奪い世界タイトル獲得!!」

まあ、あそこまで力みかえったバルデスのフックに対応できないのなら、最初から大沢に勝てる見込みはなかった。そういうことなのだろう。

ちなみに今回の試合の感想をいろいろと漁ってみたのだが、

「このリングに立つには実力がなさ過ぎる」
「あまりにも場違い」
「日本の恥」
「これが日本のボクサーの実力だと勘違いされたら困る」
「ラスト3試合に出場した選手の中では断トツに格下」

などなど、あまりの辛辣な言葉の数々に驚いてしまった。
正直「そこまで言うか?」的な意見も多く、かなりドン引きした次第であるww

「フランシスコ・バルガスvsミゲール・ベルチェルト予想。豪打のメキシカン対決勃発。ベルチェルトねえ……」

いやいや。
最初から予想できたことやんけ。
さすがにそれは結果論でドヤ顔し過ぎちゃうか?
みたいな。

普段好き勝手言っている割に、ふとそんなことを思ってしまった。

「大森がハスキンスに挑戦!! エストラーダ埋蔵金出ました。やりたい放題のくそったれ英国紳士をぶっとばせ」

「海外へ出ろ!! 強いヤツとやれ」最近のこの風潮がどうも理解できないんですよね

とりあえず今回の大沢ラスベガス初上陸は成功だったのか、それとも無謀な挑戦だったのか。
そもそも指名挑戦者という立場で無謀も何もないのかもしれないが、ボクシングファンの間ではどのような印象を持たれているのだろうか。

ロシアでトロヤノフスキーにケチョンケチョンにされた小原や、タイでプンルアンに軽くひねられた赤穂など。日本人が海外のリングで完膚なきまでにやられるケースは後を絶たない。
だがこれは本当に「勇気ある挑戦」と称えるべきものなのだろうか。

「小原佳太がトロヤノフスキーに場外に吹っ飛ばされる!! 模造テクニシャンを大量に生み出したメイウェザーの功罪」

手頃な王者を呼んで世界戦を開催する選手に対し、ヒステリックに「海外へ行け、海外へ行け」と叫び、国内防衛を重ねる選手を「勇気がない」と切り捨てる。
そして今回の大沢や小原のように、海外で格上の王者に挑戦する選手を「すばらしい」と称賛する。

こういう過激なボクシングファンの声は本当によく聞こえてくるのだが、実際どうなのだろうか。

僕個人の意見としては、正直意味不明である。
海外のリングで格上の王者に挑戦する選手を必要以上に持ち上げ、国内で手頃な相手と防衛戦を重ねる選手を貶す。この思考が僕にはまったく理解できない。

内山高志や山中慎介、井上尚弥など、日本でもトップ中のトップの選手が海外のリングを目指すべきだというのはわかる。彼らのような選手が国内のみでキャリアを消費する姿にもどかしさを感じるのはごく自然なことである。

「神の左()炸裂でモレノを撃破!! 山中慎介が宿敵とのリマッチを制して11度目の防衛に成功!!」

だがそれ以外の、国内防衛路線の選手や手頃な王者を日本に呼んで世界戦に挑む選手。そういった選手たちより、海外のリングで格上の王者に挑戦する選手の方がすばらしいと断言するのは違うと思うのだが、どうだろうか。

選手にはそれぞれ身の丈というものがあり、日本に収まらないほどの器を持った選手もいれば、国内限定のタイトルマッチでキャリアをまっとうする方が向いている者もいる。そういった選手が相応の相手を選んで長く防衛を続けることの何が悪いのか。
何でもかんでもヒステリックに「海外、海外」「強い相手とやれ」と喚き散らすのではなく、自分に見合ったキャリアを歩む選手を普通に応援すればいいと思うのだが。

どっちが優れているとかではなく、どっちもがんばれじゃダメなのか?

「井上尚弥がペッチバンボーンに10RKO勝ち!! 井上が何者なのかがいまだに謎…」

というか、海外で派手に散っている選手も、日本でやれるならやってるからね。
テレビ局やジムの後ろ盾さえあれば、日本に手頃な相手を呼んでるからね。わざわざアウェイのリングで格上の相手と試合なんかしないからね。
それができる知名度や実力がないから不利な条件でワンチャンに賭けてるだけであって。特別尊いことをやってるわけじゃないからね。

「バーンズvsレリクとかいう隠れ名試合。疑惑の判定に興味がわかないのはおかしいのかな?」

どうも最近、過剰に海外挑戦を強要する空気が強過ぎて、それを疑問に感じていた次第である。

「ボクシング記事一覧リンク集」へ戻る

【個人出版支援のFrentopia オンライン書店】送料無料で絶賛営業中!!