映画「ONE PIECE FILM RED」感想。Adoありきの作品。会話シーンと歌唱シーンが別人。曲によっても歌い方が変わるのでウタのイメージが定着しない。あと登場キャラが多すぎるのも…

映画「ONE PIECE FILM RED」感想。Adoありきの作品。会話シーンと歌唱シーンが別人。曲によっても歌い方が変わるのでウタのイメージが定着しない。あと登場キャラが多すぎるのも…

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アニメ映画「ONE PIECE FILM RED」を観た。
 
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「ONE PIECE FILM RED」(2022年)
 
世界中から愛される歌手、ウタ。
“別次元”とまで言われる歌声を持つ彼女が初めて人前でライブを開催するということで、ファンは大きな盛り上がりを見せている。
 
そしてライブ当日。
大観衆が会場を埋め尽くす中、麦わらの一味も最前列で彼女の歌声に耳を傾けている。
 
ところが会場に来ていたのはウタを応援するファンだけでない。彼女をさらおうと企む海賊や彼女の存在を危険視する海軍なども紛れているのだった。
 
 
ライブの真っ最中に海賊たちに取り囲まれるウタだが、彼女に焦った様子はない。
大急ぎで舞台に上がったルフィたちを制し、バンドメンバーに目配せして躊躇なく歌い始める。
 
すると、彼女を取り囲んだ海賊たちは次々に動きを封じられ……。
 
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終演直前、滑り込みで映画館に足を運ぶ。最近の僕はONE PIECE熱がすっかり冷めている

「ONE PIECE FILM RED」。
 
2022年8月に公開された今作。
「うっせぇわ」で注目された歌手のAdoが主題歌、挿入歌を担当したことが話題となった作品である。
 
「うっせぇわ」の批評記事に対する意見を言ってみる。フィルターを通して見えた世界がすべてだって思いがちだよね。僕もだいぶイタいヤツだったし
 
僕はこれまでこの映画にあまり食指が動かなかったのだが、たまたま目に入った広告で「2023年1月29日で終演!!」とあり「ほう、そうなのか」「せっかくだから行ってみるか」と。
 
なので、予備知識としては「Adoが主題歌、挿入歌を担当している」「ウタがシャンクスの娘」ということくらい。
 
主題歌「新時代」は(YouTubeのおすすめに出てくるせいで)何度も聴いたが、それが作中でどんな使われ方をしているかは知らない、あらすじ等も把握していない状態での鑑賞だったことをお伝えしておく。


 
もっと言うと、僕はここ最近ONE PIECEをまったく読んでいない(アニメも)。
 
うっすらと覚えているのはルフィがビッグマムの息子? のカタクリに勝ったあたり。プリンがサンジにメロメロになる(ガチ)のが先だったか後だったかも判然としない。
 
そういえば行方不明だったジンベエが再登場→正式に麦わらの一味に仲間入りしたのってビッグマム編だっけ? 次のカイドウ編だっけ?
などなど。
 
僕の中でONE PIECE熱がだいぶ冷めていることを前提にお付き合いいただければ幸いである笑
 
アニメ映画「SAND LAND」クッソおもしろい。結局冒険活劇はベタでいい。メカもめちゃくちゃカッコいい。世界が未知のロマンに溢れていた頃
 

「まあまあ」でしたね。僕がONE PIECEに求めているのはド派手なバトル作品。変化球ではなくオーソドックスなヤツでいい

まず全体を通しての感想だが、ひと言で申し上げると「まあまあ」だった
 
鑑賞後にレビューサイトを漁って知ったのだが、今作は賛否両論がかなり分かれているとのこと。
 
批判的な方の意見としては、「Adoのための映画になっている」「展開が見え見え」「麦わらのメンバーが“その他大勢”状態」といったものが中心。
もちろん肯定的な意見も山ほど目にしたが、これまでのONE PIECE映画とは一線を画す内容に拒否反応を示した方が多い印象である。
 
そして、実を言うと僕もそっち側の人間だったりする。
基本的に僕がONE PIECEに求めているのはギャグ要素とドラマ要素が適度に散りばめられたバトルもの。
 
闇を抱えたラスボスとそれを補佐する取り巻き(+巻き込まれるヒロイン)が登場→そこに通りかかった麦わらの一味とのバトルが勃発する。
 
大雑把に言えば「ゾロとサンジが補佐役のNo.2、No.3を担当、ルフィが大苦戦の末にラスボスに勝利→全員ハッピー」までが定番の流れ。
 
ラストバトルの最中にルフィが覚醒し、両者の実力差が徐々に埋まっていく様子に「おお!!」「がんばれルフィ!!」となるのが“いつもの”ONE PIECE映画である。
 
なので、今作のように歌で相手を惑わすスタイルというのは……。
オーソドックスでド派手なバトルものの方がよかったというか、「わざわざこねくり回す必要ないのに」「僕が観たいのは“オーソドックスな”ドンパチなんだよ」といったモヤモヤはずーっと残ってしまった。
 
銀魂 THE FINAL感想。やっちまったなぁ。普通でよかったのに「銀魂らしさ」の呪縛にガッチガチで身動きできなくなってるw
 

会話シーンと歌唱シーンが完全に別人、曲によって歌い方も変わるせいでキャラのイメージが…

また、ウタの歌唱シーンに最後まで慣れなかったのも……。
 
申し上げたように今作は主題歌、挿入歌を歌手のAdoが担当しており、ライブやバトルが発生するたびに(ウタの熱唱に合わせて)Adoの曲が流れる。
ところが平時の声は声優の名塚佳織さんが務めているため、歌唱シーンとそれ以外で中の人がいちいち入れ替わるのである。
 
さらに言うと、曲ごとにAdoが歌い方を変えてくるせいでまったく落ち着かない。
この人の魅力は抜群の表現力と言われているだけあり「うっせぇわ」と「新時代」では声色、歌い方が別人レベルで違う。
歌手としてはそれでいいのかもしれないが、残念ながらアニメは別。あれだけ変化をつけられるとむしろノイズになるまである。
 
普段の会話→歌唱シーン→曲ごとにいちいち声が変わるせいでキャラのイメージが安定しない。
それこそ「ONE PIECE=バトル作品」の前提同様、歌唱シーンも“普通”でよかったのだが。
 
ちなみにウタ役の名塚佳織さんはアニメの主題歌を担当した経験もあるとのこと。それなら今作でも“普通に”歌ってもらえばいいじゃんという話。
 
てか、声優さんってホントに器用ですからね。
声の仕事以外にピンで歌も歌える、舞台の演技もできる、アイドル的な活動もOKの万能型がゴロゴロいる。
 
たまに「歌手や俳優が声優をやるのはダメなのに声優が歌を歌うのはいいの?」というイチャモンを見かけるが、いいに決まっている。職種による棲み分けよりも一定以上の実力があるか? の方が重要なのは当たり前である。
 
まあ、話題性という意味ではまったく物足りないが。
今作に否定的な方のおっしゃる通り、要するに「ONE PIECE FILM RED」は“Adoありき”の作品なのだと思う。
 
劇場版呪術廻戦0感想。乙骨憂太とかいう碇シンジの覚醒。夏油傑とかいう朽木白哉と仙水忍を足して2で割ったラスボスが放つ元気玉。お師匠さまキャラは扱いが難しい
 

ウタの現実感のなさ。Adoの境遇と重ね合わせたせいでいまいち感情移入しにくい

そしてウタ自身にもいまいちつかみどころがないというか、どこか実体を感じないのが……。
 
恐らく今作のテーマは虚飾の自分と本当の自分の対比とか、そんな感じ。
 
自分の歌声で多くの人を幸せにしたいと願ううちに“歌手としてのウタ”に“素顔の自分”が侵食されていく。
エレジアを滅ぼしたのがシャンクスではないことにはとっくに気づいているが、「海賊によって人生を狂わされた」ことにしなければ自我を保てない。
海賊のいない世界こそがみんなの願う幸せだと自らに言い聞かせ、いつしか現実と空想の境界線すらも曖昧になる……。
 
「歌を聴かせた人間を眠らせ、心を仮想世界に閉じ込める」というウタウタの実の能力がウタ本人の二面性を表しているのは一目瞭然である。
 
劇場版「鬼滅の刃」無限列車編感想。映画に向いてないでしょこのエピソード。メインの前のアクセント用のヤツじゃん。煉獄さんの退場にも驚いた
 
また、映像電伝虫によって自分の声を世界に届けることに成功したウタの境遇を自宅のクローゼットで録音したものをネットにアップしているうちに注目を浴びたAdoと重ねているのも間違いない。
 
近年のインターネット環境の発達により、音楽で成功するには必ずしも「バンドを組む→機材を揃える→赤字を垂れ流しながらCDを自作、ライブを重ねる→レーベルから声がかかるのを待つ」という手順を踏む必要はなくなった。
 
それこそ人付き合いが苦手な陰キャでも才能さえあれば素性を隠したままスターダムにのし上がることが可能。
 
ボーカロイドを思わせるエフェクトや本来の自分を押し殺して“表の顔”を演じるウタの姿も、そういった新しいカルチャー(新時代)を反映していたのだと想像する。
 
 
で、困ったことにこれらの表現によってウタの存在が浮世離れしたものになってしまったという。
 
もちろんONE PIECEに浮世離れしていないキャラなどいなのだが、それを踏まえた上で。
何というか、“ONE PIECE世界における現実感”からウタの存在はだいぶかけ離れている。
 
回想シーンでルフィとじゃれる幼いウタと闇落ちした今のウタがどうしてもつながらない。
笑顔もダンスも歌声もすべてが嘘っぽい。
 
声優と歌唱シーンで中の人がコロコロ変わったのもあるが、「私は新時代を創る女」「歌でみんなを幸せにする!!」と宣言するに至った経緯を聞いてもいまいち感情移入できなかった。
 

登場キャラ多すぎ問題。知識も足りないせいでいちいち「コイツ誰だっけ?」ってなる

あとは単純に登場キャラが多すぎましたよね。
 
麦わらの一味に加えてバルトロメとトラファルガー・ロー、ベポ。
ビッグマム海賊団からはシャーロット・ブリュレとシャーロット・オーブン、シャーロット・カタクリ。
海軍からはコビーにヘルメッポ、CP-0のブルーノ、カリファ、ロブ・ルッチ、大将ボルサリーノ、イッショウやモモンガ中将。
そこに赤髪海賊団も加わることで敵味方入り乱れてのしっちゃかめっちゃか状態を形成する。
 
もともとONE PIECEはキャラが増えすぎと言われた作品で、なおかつ僕の知識がビッグマム編前後で止まっていることもあって余計にタチが悪い。
新キャラが登場するたびに「あれ? コイツ誰だっけ?」と一瞬間が開くためにいまいちストーリーに集中できない……。
 
アニメ「BLEACH 千年血戦篇」がおもんない。これはアニメがダメなの? それとも千年血戦篇自体がイケてないの? ずーっと辛気臭いんだけど笑
 
せめて瞬間移動系の能力者は1人に絞ってもよかったんじゃないっすかね。
 
コビーとヘルメッポ、バルトロメオあたりを切ればブルーノのドアドアの実はいらなくなる(CP-0も不要になる)。それで味方パーティを半分くらいには減らせた気がする。
 
ベポとサニー号のモフモフ担当はいいとして、わざわざカタクリを後追いで投入する意味があったのか。だったら最初からオーブンではなくカタクリをスタメンにしておけばよかったんちゃう?
 
(僕の知識が足りないせいで)よく知らないキャラがとっかえひっかえ登場するのはかなりのマイナスだったことを報告させていただく。
 

コビーとシャンクスの声優さんがそろそろキツい。長寿アニメの宿命? よくも悪くも“Adoありき”の作品

さらに言うと、コビーとシャンクスの声優さんがそろそろキツくなっているのが……。
 
特にコビーは登場シーンが多かった分、土井美加さんのキツさが際立ってしまった。
シャンクス役の池田秀一さんもところどころ声がかすれて年齢を感じさせたしね。
 
20年以上同じ声優さんなので仕方ない部分はあるが、そこまでイメージが定着していない(と思う)コビーに関してはフレッシュなメンバーに交代するのもアリかもしれない。
 
この辺は長寿アニメならではの悩みと言えそうである。
 
映画「スーパーマリオブラザーズ・ムービー」は60点かな。マリオシリーズが好きな人にとっては200点。でも僕は敵キャラの名前も出てこない、武闘派のピーチ姫に違和感があるニワカw
 
長々とネガティブなことばかり申し上げてきたが、上述の通り僕の中での「ONE PIECE FILM RED」はまあまあ。
5点満点中3点くらいの評価で、決して観て損はない作品である。
 
ただ、観て損はないけど大騒ぎするほどでもない。
よくも悪くも“Adoありき”の企画、脚本だったなぁと。
 
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