中谷正義がロマチェンコに勝つ姿しか想像できない。負ける要素が見当たらない件。偉業でも過去最大のビッグマッチでもない単なる通過点【予想・展望】
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2021年6月26日(日本時間27日)、米・ネバダ州ラスベガスで行われるライト級12回戦。元東洋太平洋同級王者中谷正義が元3階級制覇王者ワシル・ロマチェンコと対戦する一戦である。
この試合はWOWOWでの生中継が予定されており、前週のWBAスーパー/IBF世界バンタム級タイトルマッチ、井上尚弥vsマイケル・ダスマリナス戦に続いて2週連続での生中継となる。
井上尚弥vsダスマリナスどうかなぁ…。ボワイヨよりも粘れるか。ダスマリナスはいい選手だけど、今回は歴史に名を残すレベルの相手…
中谷正義vsワシル・ロマチェンコ戦が近づいている。
何度か申し上げているのだが、この試合で勝利するのは中谷正義。これは決定事項であり、有史以前から定められた自然の摂理である。
元3階級制覇王者&元PFP No.1のワシル・ロマチェンコに日本人選手が挑むだけでもとんでもない偉業。
日本ボクシング界最大のビッグマッチと言っても過言ではない。
などなど。
試合前から驚きと期待が入り混じった声が多数挙がっているが、それもいいかげん聞き飽きた。
だって勝つのは中谷正義だから。
なぜなら僕がそう決めたから。
中谷正義が勝つことがわかっている試合に偉業もクソもない。
そもそも論として、勝敗が確定している試合をビッグマッチなどと呼んでいいものなのか。
というか、ロマチェンコもいつまでAサイドのつもりでいるんだよ?
この試合はあくまでお前が中谷に胸を借りる試合だからな?
わかってんか? お?
中谷正義がロマチェンコにTKO負け…。「悔しい」しか感想が出てこない理由? 中谷正義が負けて悔しいからですよ。完全に攻略されてたな
とまあ、相手がロマチェンコだろうと関係なく中谷正義の勝利を喚き散らしてきたわけだが……。
実はこの試合がどんな内容になるかを考えたことはこれまで一度もない。
中谷の勝利だけは決定しているものの、試合展開についてはいっさい不明。
これはさすがに説得力がなさすぎるということで、今回初めて真剣に過去の試合を観ながら展望を考えてみることにした。
勝敗が決まっている試合の展望を後から考えるというのもおかしな話なのだが、その辺は気にしない方向で。
ロマチェンコvsテオフィモ・ロペス戦を再視聴。スピーディなワンツーで間合いをキープしてたよね
まず最初に観直してみたのが、2020年10月のワシル・ロマチェンコvsテオフィモ・ロペス戦。
ロマチェンコvsテオフィモ・ロペス感想。115-113ロペスかな。ロペスの対策が素晴らしかったしやっぱりスピード&パワー大正義
この試合でロペスは4団体制覇を果たしたわけだが、とにかく一定の距離をキープすることを優先していたように思う。
滑るようなフットワークと的確な連打を持ち味とするロマチェンコだが、その半面リーチが短く上背もない。
しかもライト級では相対的にフィジカル面の優位性も失っている。
有効打を当てるには絶え間ない出入りと右リードを駆使して相手の懐に侵入する必要がある。
逆にロペスが勝機を見出すには、いかにロマチェンコに自分の間合いを作らせないか。サイズ差、パワー差で勝負できる間合いを維持し続けられるかが重要になる。
で、この試合でもっとも効果を発揮した(と思う)のがロペスの高速のワンツーである。
スピード重視の左リードに間髪入れずに打ち出す右ストレート。
初弾の左はなるべく軽めにスピーディに。左手を素早く引くとともにすぐさま右につなぐことでロマチェンコに間合いを詰める時間を与えない。
顔面を狙うのなら極力引き手は速く。ボディを狙うのであればロマチェンコが身体をくの字に曲げるほど深く打ち出す。
これが左リード単発のみの場合、ロマチェンコは引き手に合わせて距離を詰めてくるのでそれをさせないために。
ホルヘ・リナレスやホセ・ペドラサはお互いに手が届く位置でのハンドスピード勝負を挑んだが、ロペスにそこまでの回転力はない。
サイズ差、パワー差、1発の威力の差で対抗するための最適解と言ってよさそうである。
ベルデホ受刑者(ガチ)には鋭い踏み込みと伸びるパンチでダウンを奪われた。ジャブの引き手に合わせてカウンターが飛んできた
そして、次に視聴したのが2020年12月の中谷正義vsフェリックス・ベルデホ受刑者(ガチ)戦。
スピードもパワーもセンスもベルデホの方が上だけど、勝ったのは中谷正義なんですよ。やっぱり中量級以上の日本人には気持ちが入るよね
この試合の中谷は序盤に2度のダウンを奪われるなど、ベルデホ受刑者(ガチ)の猛攻にかなり苦しめられている。
ベルデホ受刑者(ガチ)の失速に伴って10RTKO勝利を挙げたものの、間違いなく苦戦と言っていい試合である。
で、この試合でベルデホ受刑者(ガチ)が狙っていたのが中谷の左リードの打ち終わり。
引き手に合わせて鋭く踏み込み顔面orボディに強打をぶち込む。
中谷も咄嗟のスウェイで反応していたものの、間に合わずに顔面への被弾を繰り返していた。
このジャブの引き手に合わせてカウンターを狙われるパターンは2019年7月のvsテオフィモ・ロペス戦でも見られたもので、中谷の長身のアドバンテージがあっという間に失われた瞬間でもある。
恐らくだが、東洋太平洋時代にはここまでの踏み込みとパンチの伸びを両立する相手がいなかったのだと思う。
懐の深さ、長身とリーチを活かした左があれば、打ち終わりのケアもスウェイだけで問題なく切り抜けられたのだろうと。
それと同じノリでロペス、ベルデホ受刑者(ガチ)と対峙したところ、一段上の踏み込みに面食らってしまったという。
ワシル・ロマチェンコvsホルヘ・リナレス戦でのリナレスがうまかった。肘を張ってサイドへの動きを封じ、左足を軸に方向転換
上記を踏まえた上で2018年5月のワシル・ロマチェンコvsホルヘ・リナレス戦を観てみたところ……。
リナレスがロマチェンコにKO陥落。あ〜惜しい。もう少しだったけどな。これがスピード&パワーの偉大さですよ
ほほう、なるほど。
この試合のリナレスもロペス同様、左リードの単発では終わらず2発、3発と続けることで近場での連打を抑え込んでいることがわかる。
前後の出入りにはなかなか追いつけなかったものの、少なくとも左右の動きにはついていけている。
ニコラス・ウォータースやジェイソン・ソーサ、ギジェルモ・リゴンドーのようにサイドに回り込まれて置いてきぼりを食いまくった試合とはまったく別物である。
さらにリナレスがうまかったのは、ロマチェンコの左右への動きを肘を使って妨害していたこと。
ロマチェンコが距離を詰めてスルスルっとサイドに回り込む瞬間、左肘を張って進行経路を塞ぐ。と同時に左足を軸にクルッと方向転換する。
ほんの一瞬ではあるが、肘を張ることでロマチェンコの動きを鈍らせる。で、ロマチェンコの攻撃姿勢が整う前に左回りで正面に向き直る流れ。
時おり頭を下げて急所を隠す動作も入れていたようだが、ロマチェンコに近場で好き放題させない作戦としては上々だったと思う。
スピーディなワンツーで距離をキープし、間合いが詰まればサイドに回られないように左ボディで迎撃。それでもダメなら肘を突きたて、左足を軸にクルッと方向転換。
改めて観直すと、テオフィモ・ロペスの試合運びにもリナレスを参考にしたのかな? と思う動きが散見される。
ロブ・ブラントvsジャニベク・アリムハヌリ、リンドルフォ・デルガド、オマール・ロサリオ。井上尚弥、中谷正義のアンダーカードを予習する
中谷が勝利する姿しか浮かばない。インタビュー記事を読んでも確信が深まるばかり
マジな話、いくら考えても中谷正義が勝利する姿しか浮かばない。
あれこれとインタビュー記事を漁ってみたが、読めば読むほど確信が深まるばかりである。
「中谷正義、ロマチェンコ戦へ「余裕の通過点。自信しかありません」」
「前半勝負です。KOという意味ではなく、前半でペースを握れるかどうか、それが勝敗に繋がると思っています」
「左ボディーブローですね。ボクが自信を持っているパンチなので、それを打っていきたいですね」
「中谷正義がロマチェンコ戦に「勝算はある」 大谷翔平、笹生優花からも刺激」
「自分の左のサイドを取る動きが速いという。その対処の仕方も教わった」
ロマチェンコは前半数ラウンドを様子見に使うことが多い。
どこかの時点でペースアップ→圧倒するラウンドを作って相手の心を折る流れを得意としている。
ところが直近のロペス戦ではこの様子見が長すぎたせいで逆転の機会を逸してしまった。
なので、中谷の“前半でペースを握れるかが重要”という見立てはめちゃくちゃ正しい(と思う)。
さらに「左ボディブローを打っていきたい」「同僚のリナレスに左サイドを取る動きへの対処も教わった」とも言っている。
左リード+スピーディなワンツーを駆使して前半を支配し、ロマチェンコがペースを上げてくる(と思われる)中盤以降は近場での左ボディ、リナレス仕込みの方向転換で五分以上の展開に持ち込む。
これはもはや、中谷陣営のロマチェンコ対策は完璧と断言してもよさそうである。
飄々としたスタンスもいいよね。騒いでいる側がバカバカしくなるくらいに
さらに言うと、本人のスタンスもなかなかいいんですよね。
「中谷正義、ロマチェンコ戦へ「余裕の通過点。自信しかありません」」
「英語で書いてあることは分からないので、正直いって実感がないですね(笑)」
「自分の中では(ロマチェンコ戦は)余裕の通過点という位置づけです(笑)。楽勝だと思っています。これは誰と戦うときもそうです」
「日本でやろうとアメリカでやろうと別に大したことないですよ」
「自信しかありません。ぶっ倒します!」
「中谷正義がロマチェンコ戦に「勝算はある」 大谷翔平、笹生優花からも刺激」
「僕の評価が高い方がやりにくい」
「米での死闘制して、世界的注目を浴びた中谷正義 ロマチェンコとの対決浮上「うまいけど、怖さない」【ボクシング】」
「逆転なんてしたくないですよ。圧倒して勝ちたいし、圧倒できると思っていた」
・英語で書いてあることはわからないので実感がない
・日本でやろうとアメリカでやろうと大したことない
・評価が高い方がやりにくい
・逆転なんてしたくない。圧倒して勝ちたい
変に意気込むこともなければ相手を侮ることもしない。
激闘をくぐり抜けるよりも苦労せずに勝つ方がよっぽどいい。
場所がどこだろうが誰が相手だろうがいっさい関係ない。常に「通過点」「自信しかない」と言い切る。
飄々としたコメントの数々には清々しさを感じるほどで、偉業だなんだと騒いでいるのがバカバカしくなってくるw
以前はこの自信たっぷりのコメントに批判もあったが、テオフィモ・ロペス戦、フェリックス・ベルデホ受刑者(ガチ)戦を経た今ではそんなことを言う人間はどこにもいない(たぶん)。
ロペス戦の前なんて「殺される」だの「5Rまでもてばいい」だのと散々な言われようでしたからね。
「中谷正義「通過点」強打ロペスとの対戦に自信 7月・米国で挑戦者決定戦」
「通過点なので、勝って世界に力を証明したい」
「若いので雑に来ればKOできそう」
繰り返しになるが、この試合で中谷正義が負ける要素はどこにも見当たらない。
間違いなくロマチェンコに勝利するし、勝敗予想をしろと言われればKOしますよとしか言いようがない。
というわけで、今回の勝敗予想は中谷正義の11RKOとさせていただく。
僕の「勝利は決定事項」発言の歴史(左が勝ち確定と断言した側)
×大竹秀典vsアイザック・ドグボエ○
○尾川堅一vsテビン・ファーマー×(後日無効試合)
○伊藤雅雪vsクリストファー・ディアス×
×中谷正義vsテオフィモ・ロペス○
×亀田和毅vsレイ・バルガス○
○中谷正義vsフェリックス・ベルデホ×
×ホルヘ・リナレスvsデビン・ヘイニー○
うむ。
この栄光の歴史にまた一つ伝説が加わるわけですね(ただの負けフラグじゃねーか)。
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